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マーケットアプローチMarket Approach
マーケットアプローチとは、バリエーション(企業価値評価)の手法の一つで、対象企業の時価総額やM&A市場における取引価額に着目し、企業や事業の価値を評価する方法である。他の手法として、インカムアプローチ、コストアプローチがある。
マーケットアプローチは、非公開企業にも適用でき、かつ、市場で取引される価額を基準としているため客観性に優れるメリットがある。一方で、類似の上場企業がない、取引相場情報が入手できない、あるいは類似企業と比較対象企業の成長ステージが異なるなど、類似企業の選定や情報の入手が難しいケースがあるデメリットがある。さらに、類似企業の選定に恣意性が入ることも考慮すると、実際の企業価値算定には他の手法との併用が求められる。
マーケットアプローチの種類としては、市場株価法、株価倍率法(マルチプル法)、類似取引比準法がある。
市場株価法では、評価対象の上場企業の一定期間における株価の平均値を基準に企業価値を計算する。株価には、評価対象企業に対する投資家のさまざまな視点が反映されており客観性の高い反面、市場での取引量(出来高)が少ない流動性の低い銘柄や、直近に風評などによって株価が激しく変動した銘柄に関しては、株価に異常値が含まれている可能性が高いため、その取扱いを検討する必要がある。
株価倍率法(マルチプル法)では、類似する上場企業の売上や利益などの財務指標と株価の関係を示す株価倍率(マルチプル)を基準に、対象企業の企業価値を算出する。代表的な株価倍率の指標に、PER、PBR、PSR(売上高倍率)、EBIT倍率、EBITDA倍率がある。類似企業の一定期間の時価総額の平均値を財務指標(実績、あるいは予測ベース)で除して倍率を計算する。複数の類似企業の倍率の平均値・中央値や業種平均値に、評価対象企業の財務指標を掛けて、企業価値を導出する。ベンチャー企業を評価する際、その企業がスタートアップでまだ利益を計上していないために株価倍率がマイナスの値になる場合には、PSRが用いられることが多い。
類似取引比準法では、類似するM&A取引において成立した価格を基準にした倍率(マルチプル)を評価対象企業のKPI(重要業績評価指標)に乗じて価値を算出する。取引倍率の算定手法は株価倍率法とおおむね同様だが、非公開企業や事業の財務数値は多くの場合、入手困難、あるいは極めて限定的(売上高のみ)となる。また、類似取引比準法のマルチプルには、経営権の移動に伴うコントロールプレミアムや非流動性ディスカウントが含まれている可能性があることに留意する必要がある。
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