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2022年12月08日

2022年12月08日

環境変化の激しい時代、本当に必要なスキルとは?

中村 直太
グロービス経営大学院 教員

AIやロボットをはじめとする技術革新によって、人が担う仕事の価値が厳しく問われはじめている昨今。変わりゆく時代のなかで、20代を中心とした若手のビジネスパーソンは、どのようなスキルを身につければ、市場価値を高め、活躍できるのでしょうか?

グロービス経営大学院の人気科目の一つである『クリティカル・シンキング(論理思考)』や自身のリーダーシップ・キャリアと向き合う科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』を担当し、個人でパーソナルコーチや社外取締役を務める教員の中村直太が、環境変化の激しい時代に、20代に本当に必要なスキルについて説明します。

環境変化の激しい時代、本当に必要なのは、ポータブルスキル

最近、グロービス経営大学院の授業や体験クラスで会う20代の皆さんは、環境が変化することを前提にキャリアを考えています。社内異動や転職による環境の変化だけでなく、テクノロジーの導入により、今やっている仕事のやり方が1~2年後には大きく変わっているかもしれません。

そのような背景もあり、環境変化への感度が高い20代は「変化に備えるために、どのようなスキルを身につけるべきか?」という問いと真剣に向き合っています。

この問いに対する一つの答えは、「ポータブルスキルを身につけるべき」です。ポータブルスキルを直訳すると「持ち運びできるスキル」。つまり、特定の業種・職種・時代背景にとらわれず汎用性高く応用できるスキルのことです。

既に環境の変化は起こっていますが、この先は変化がより激しく、これまで以上に将来の見通しが立ちにくい時代になるでしょう。間違いなく、特定の業種や職種に限定されたスキルの陳腐化やキャリアの移り変わりが加速していきます。そのような未来を見越して、業種や職種を問わずに応用できるポータブルスキルを高いレベルで保有しておくことは、20代のキャリアを下支えし、また活躍できるフィールドの選択肢を広げてくれることにつながるでしょう。


「ポータブルスキル」とは、どのようなスキルなのか?

では「ポータブルスキル」とは、具体的にどのようなスキルなのでしょうか。これはさまざまな考え方があり、また皆さんそれぞれが歩むキャリアのドメイン(領域)で異なりますが、ここでは多くのパターンに当てはまる話をしてみたいと思います。

まずスキルを3つの種類にわけて考えたいと思います。1つ目が「専門スキル」、2つ目が「ビジネススキル」、そして3つ目が「基礎スキル」です。

専門スキルとは、組織内スキルとも表現できるものでポータビリティは低いです。社内の細分化・専門特化された業務をするために必要な具体的なスキルで、特殊な状況でしか使うことができません。例えば、「20代ITエンジニアの転職相談に乗るスキル」や「社内システムの操作スキル」などが挙げられます。目の前の仕事で成果を出すためには必要ですが、業種や職種が変わると応用できない類のものが多いです。

ビジネススキルは、すべてのビジネスパーソンに必要不可欠な知識や視点のことで、よく経営資源に例えて「ヒト・モノ・カネ」というカテゴリーに分けられます。例えば「カネ」であれば会計や財務に関する知見などがあげられます。この3つのカテゴリーは、ビジネスにおける必須の経営資源にあたるので、それぞれの知識や視点は、ポータビリティが高いスキルだと言えます。ただし、例えば建設業界での経験から得た知識や視点をそのまま医療業界で活用することは難しいように、偏った経験から習得したビジネススキルは異なる環境では足枷となることもあり、業種や職種を問わず知識や視点の原理・法則をつかみポータビリティの高い状態でスキルを保有しておく必要があります。この点については、後ほどあらためて触れたいと思います。

基礎スキルは、ポータビリティが高く、どんな仕事をする際にも基盤となるスキルです。さまざまな問題を解決するための「問題解決力」や、プロジェクトを主体的に動かすための「リーダーシップ」、プロジェクトメンバーとの意思疎通に欠かせない「コミュニケーション力」などが代表的な基礎スキルとして、ビジネスパーソンの基盤となっています。足腰の強い人がさまざまなスポーツで活躍できるように、基礎スキルの高い人はさまざまな仕事で活躍することができます。

これらのスキルを厳密に分類することにさして意味はありませんが、各スキルのイメージはつかんでいただけたと思います。

ここで強調しておきたいことは、目の前の仕事で実績を出すための専門スキルはポータビリティが低い場合が多いということです。20代の方の中には、自らの市場価値に不安を感じている方も多く、「市場価値を高めるためにまずは目の前の仕事で実績を積みます」というお話をよく伺います。

たしかに、仕事で実績を積むことは責任を果たすことであり、実績を出してこそ労働市場からの評価もついてくるので重要です。ただそれだけでは安心できないのが、環境変化が激しいこの先の時代です。当たり前ですが、実績はあくまで今の環境・仕事において成果が出せた事実でしかなく、実績があれば異なる環境・仕事でも成果を出せるわけではありません。「目の前の仕事だけをしていると、将来の仕事ができなくなる」と言われる時代です。

そこで強く意識したいのが、「ビジネススキル」と「基礎スキル」の向上なのです。


中村が20代向けキャリアセッションで使用している資料

「基礎スキル」を徹底的に磨き上げる

問題解決力やコミュニケーション力といった能力は、いかなる業種や職種でも必要とされる汎用性の高い基礎スキルです。これらは実務を通しても鍛えることができるスキルなので、もちろん差はあれども、誰もが一定レベルを満たしています。そこで基礎スキルの能力開発で重要なことは、平均点ではなく高いレベルまで磨き上げることです。それによって、他者との差別化ができ、自らの市場価値を向上させることに繋がります。

例えば、私も登壇させていただいているグロービス経営大学院の基本科目のひとつである『クリティカル・シンキング』では、「問題解決力」と「コミュニケーション力」を徹底的に鍛え上げます。これらの基礎スキルは、常日頃から使っているからこその落とし穴があります。それは、我流の偏った考え方が定着していることです。グロービスでは「思考の癖」と言っています。

その思考の癖は、無意識に”いつもの頭の使い方”をさせようと私たちに働きかけます。
例えば、十分に吟味することなく「決め打ち」をしていたり、問題を特定する前に解決策を考えていたり、理由・根拠を確認せずになんとなく思考を進めていたりします。残念ながら、その状態では、高い問題解決力やコミュニケーション力を発揮できているとは言えません。

『クリティカル・シンキング』をはじめとしたグロービスの授業は、ディスカッション形式で行われます。授業前の予習で明確にした自らの意見に対して、授業を通してフィードバックもらうことで思考の癖を認識し、さらに復習をして次回の授業に臨むことで、実務で適切な思考ができるように修正していきます。思いつきや直感、経験を頼って考えを進めるのではなく、客観的な視点をキープしながら頭を回す方法を身につけることで、基礎スキルを高い次元で身につけるための考え方を学びます。

問題解決やコミュニケーションの能力を引き合いに出しましたが、その他の基礎スキルについても基本的には同じです。基盤となるスキルで他者から抜きん出るためには、相応のトレーニングが必要になるということです。どのような仕事をするにしても一生使い倒すことができる基礎スキルこそ、20代のうちから高いレベルに磨き上げていく意味があるのではないかと思います。


「ビジネススキル」をポータビリティ高く保有する

ビジネススキルについては、先ほど、原理・法則をつかみポータビリティの高い状態で保有することが重要だと言いました。この点について触れておきたいと思います。

例えば、「A社で、ある洗剤を30代主婦向けに売るためのマーケティング施策を実行し、成功しました」という話はスキルではなく経験なので、異なる場面-例えばB社で投資用不動産を60代男性に売る-で再現できる可能性は高くありません。

ただし、この経験からの学びを抽象化し、自分なりの学びとして保有できている場合は、異なる場面でも応用が効く可能性が高まります。例えば先ほどの経験からは「市場環境を分析する力」「モノを売る仕組みを構築するプロセス」「多くの人を巻き込み推進する力」「プロジェクトのおカネの流れをモデル化する力」などが学び取れそうです。その抽象度で経験を捉えられていれば、不動産業界の環境分析やマーケティングプロセスの構築、B社における社内の巻き込みやプロジェクトの推進に応用しやすくなります。

ここでのポイントは、具体的な経験に留めず、抽象度を上げた原理・法則として経験から学び取ることです。ただしこれは簡単なことではありません。仮に経験を抽象化して捉えられたとしても、そもそも仕事を通じて経験できることは部分的でしかなく、その量も範囲も限られます。つまり、原理や法則を見出せるほどの全体観は持ちえません。その結果、持論(自分なりの意見)の域を越えられず、「環境が変わると成果が出せない」という悩みが続きます。

ここで認識しておきたいのは、私たちが日々の仕事で経験していることは、極めて特殊な偏った経験であるということです。それがゆえに、経験のみでポータビリティの高いビジネススキルを身につけることは困難だといっていいでしょう。


経験を補完する理論を学ぶ

経験を抽象化し、ビジネススキルのポータビリティを高めてくれるのが理論です。理論とは、業界を問わない様々な事例の中に法則を見出し、本質的な要素を抽出したものだといえます。理論は抽象化の最たるもので、多くの場面に適用できるポータビリティの高い考え方です。

グロービス経営大学院はMBA(経営学修士)のプログラムを提供しています。カリキュラムは主に「ヒト・モノ・カネ」の3領域で構成され、組織行動・リーダーシップ・人材マネジメントやマーケティング・経営戦略、アカウンティング・ファイナンスなど、誰もが理解しておくべきビジネススキルに関する理論を総合的に学ぶことができます。さらに実践性に重きを置くグロービスでは、まず基本科目でビジネスの理論(原理原則)を体系的に理解したうえで応用力や実践力を磨く、というカリキュラムを設定することで、抽象化された理論を仕事に応用していく勘所を鍛え上げていきます。

よくMBAは経営層を目指す一部の人にしか必要ない特別な能力を養うプログラムだと思われがちですが、実は問題解決力やコミュニケーション力などの「基礎スキル」を高いレベルで鍛え上げ、ビジネスに不可欠な知識や視点である「ビジネススキル」をポータビリティ高く保有することができるプログラムなのです。その意味で私は、MBAで学ぶことは「究極のポータブルスキル」を鍛えることだと思っています。

MBAは今の20代にどう役立つのか?

ここまで「環境変化に備えるために、どのようなスキルを身につけるべきか?」というテーマで、「ポータブルスキルを身につけるべき」という考えを述べました。そして「どのようにポータブルスキルを身につけられるのか?」という疑問に対して、「基礎スキル」を高いレベルに鍛え上げることと「ビジネススキルをポータビリティ高く保有する」ことの重要性を述べました。そのための一つの手段に、MBAプログラムをあげました。

ここまでの話を踏まえ、「ぜひポータブルスキルを身につけたい」と思われた皆さんの中には、「いきなりMBAプログラムと言われても…」と躊躇される方も少なくないかと思います。「…」には、例えば、「ハ―ドそうだな」とか「自分にどう役立つのかな」とか「20代の自分には早いのでは?」などの感想・疑問が入るのではないでしょうか。

それもそのはず。授業でご一緒する20代の皆さんの多くも、学び始める前には同じような感想・疑問をお持ちでした。そこからどのようにして一歩前に踏み出していったのでしょうか。その答えは”とりあえずやってみる”ことです。グロービスのWebサイトを眺めるだけ、他人から話を聞くだけでは理解できないことがたくさんあります。実際に自分で体験し、その目その肌で「どのような学びを得られるのか」を確かめるからこそ、納得感を持って次の一歩を踏み出すことができます。

グロービス経営大学院には、「単科生制度」といって、MBAの授業を1科目から学び始められる制度があります。グロービスに通うほとんどの学生の皆さんは、まず単科生として『クリティカル・シンキング』から学び始めています。さらにその一歩手前として、気軽に約1時間の模擬授業を受けることができる『体験クラス&説明会』がオンライン及びキャンパスで常時開催されています。

いずれにしても大事なことは、行動することではないでしょうか。10年に1度と言われる出来事が毎年のように起こり、「今の状況は1年前には想定すらできなかった」というセリフが繰り返されています。それほど環境変化が早い世の中で、自分が立ち止まっているとしたら、それは現状維持ではなく後退を意味します。先ほども言いましたが、”とりあえずやってみる”というマインドを持つことは、激動する時代の生存要件なのかもしれません。

30代、40代、そしてその先も長く続いていく職業人生を見据えたとき、20代でどのようなキャリアの足場を築くのかが重要であることは論をまちません。現在の仕事で担う役割を高いレベルで果たしていくためにも、また将来大きく環境が変わったときに活躍できる人材であるためにも、ポータブルスキルを高いレベルで身につける学びを始めてみませんか。

変化をチャンスに変えるのは、学び、成長し、挑戦する人

皆さんは、なぜ学ぼうと考えておられるのでしょうか。一度読む目を止めて、30秒ほど考えてみてください。

それぞれの学ぶ理由はあるにせよ、大きく括ると「変化をチャンスに転じたい」という想いが根底にあるのではないでしょうか。変化はチャンスか、脅威か。私はどちらでもなく、ただ起こる事実だと思います。その事実にどう向き合い対処するかで、結果的にチャンスか脅威かが決まるのだと思います。

例えば、ビジネス環境がドラスティックに変わっていくことで、組織は根本的な変革を余儀なくされ、そこで働く人にはこれまでとは全く異なる役割や能力が要求されるようになります。一見すると脅威に受け止められるこの事実も、先回りして学んできた人には「学び活かすチャンス」だと映っているかもしれません。また変革を進める組織では、重要なプロジェクトや新規部門・チームが立ち上げられることもあるでしょう。このような挑戦の機会に、どのような人がアサインされやすいでしょうか。変化を見越し、学ぶ力のある人です。

授業でご一緒させていただいた学生の皆さんも、仕事をしながら先回りで学んだ結果として、仕事の役割が大幅に拡大したり、希望する異動が叶ったり、重要かつ挑戦的なプロジェクトに声がかかったりと、様々な変化をチャンスとしてつかんでいます。目の前の仕事で成果を出すことは重要ですが、それだけを頑張るだけでは十分ではない時代に突入していることは、みなさんもお気づきかと思います。

先回りして学ぶことで、変化からチャンスをつかみ、成果につなげられる。すると評価が上がり、さらに挑戦の機会が巡ってくる。その挑戦が自らの足りないところを明らかにし、さらに学び続ける。このようなプロセスを20代のうちに繰り返すことで、頭一つ抜け出し、その先に今の自分では想像もできないような30代、40代の豊かなキャリアが広がっていくのだと思います。グロービスでは、すべてのビジネスパーソンがこうした好循環により早く入るきっかけを提供したいと考えています。20代の皆さんが、自分らしい活躍で社会に貢献されることを応援することができれば嬉しく思います。

興味を持たれた方は、ぜひ「体験クラス&説明会」にご参加ください。グロービス経営大学院の授業の特徴や提供科目の内容、キャンパスライフなどについて詳しくご案内しています。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 2/1(水) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

  • 2/4(土) 14:00~16:15

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催) ※卒業生スピーチあり
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

  • 2/8(水) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトこちらのサイトよりお問い合わせください。

※キャンパスでの体験クラスは、行政のガイドラインを踏まえ、定員を減らすなど安全に配慮した上で開催しています。

中村 直太

グロービス経営大学院 教員

慶應義塾大学理工学部卒業、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程(工学)修了、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了。

株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス・営業企画を担当。その後、グロービスに入社。経営大学院/グロービス・マネジメント・スクールのマーケティング(学生募集)、名古屋校の組織マネジメント、アルムナイサービスチームの設立、学生募集チームの責任者などを経験。現在は、顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、Webコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。

グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカル・シンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。

また、経営の総合コンサルティングサービスを提供する企業の社外取締役を務める。

個人としては、経営者、アーティスト、NPO法人代表、ベンチャー起業家など、様々な人生を本質的変化に導くパーソナルコーチとして活動する。