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投稿日:2023年08月18日

投稿日:2023年08月18日

テクノベートとは? ~テクノロジーがビジネスの在り方を変える時代~

八尾 麻理
グロービス ファカルティグループオフィス テクノベートFGナレッジリーダー| グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)研究員

私たちは日々、テクノロジーの恩恵を享受している

みなさんは毎日、スマートフォンなどのデジタルデバイスであらゆる用事をこなしていませんか?
朝は睡眠アプリで目を覚ますと、AIスピーカーでその日の予定を確認する。動画メディアがおすすめするドラマを観ながら移動して、ランチのお店はSNS上で検索。好きなブランドアプリからの通知で新作をチェックして、そのままスマートフォンで決済。このように、私たちは毎日の生活の中で特に意識することなく、デジタルテクノロジーの恩恵を享受しています。

そのような社会を生きるみなさんにぜひ知ってもらいたい言葉が「テクノベート」です。

テクノベートとは?

"テクノロジー(Technology)"と"イノベーション(Innovation)"を組み合わせたグロービスの造語

テクノベートとは、"テクノロジー(Technology)""イノベーション(Innovation)"を組み合わせたグロービスの造語です。
具体的には、「新しいテクノロジーが私たちの社会にどのようなインパクトを与えるか想像してみること。これまでのビジネスの常識は本当に今のままであり続けるのかを疑ってみること。そうしたテクノロジーを使って新たな価値を生み出すこと。そして、未来に向けてビジネスや社会の在り方を変革すること。」と言えます。
私たちが生きてきた21世紀初頭は、インターネットやスマートフォンといったデジタルな製品・サービスが広く普及した時代と重なります。近年はかつてないスピードで新たな製品やサービスが生まれるようになり、世界を席巻するようになりました。つい最近まで使用されていたアプリも数ヶ月後には陳腐化し、瞬く間に新しいサービスへと置き換わっていきます。

そのような世の中で、テクノロジーが生みだす変化の予兆をみなさんはどのくらい意識しているでしょうか。
日常生活で感じた違和感や疑問、ふとした気づき、そうしたわずかな心掛けの積み重ねで、あなたの未来や社会は変わってくるかもしれません。
営業職や事務職、宅配ドライバーであっても、5年前と今とでは活用しているツールや働き方が大きく変化しました。ましてや少子高齢化でこれから働き手が減少すれば、ソフトウェアの開発はエンジニアに頼る時代ではなくなり、顧客の最前線にいるみなさんが自らノーコードツールを使ってソフトウェアを開発し、イノベーションを生み出す時代になるでしょう。

変化の激しい時代に対応するためには、具体的にどのような事を押さえていけばよいのでしょうか。
まずは、社会の変化から見ていきましょう。

ビジネスはどう変わったのか? ~テクノベート時代に変わらないものと変わるもの~

前述の通り、21世紀初頭はまさに私たちの社会にデジタル化の波が押し寄せ、あらゆる産業に変革を迫るようになりました。初めはごく一部のオフラインサービスがインターネット上に置き換わっただけだったのですが、徐々にあらゆる産業にもデジタルトランスフォーメーション(DX)が迫るようになりました。現在も私たちは、急激なデジタル変革の真っ只中にあります。

ただし、みなさんに覚えておいてほしい事実が、「テクノロジーが進化してもビジネスモデルを考える上での基本的な枠組みは変わらない」ということです。

ビジネスの基本的な枠組みの一例として、米ハーバード大学経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授と共同で戦略コンサルティング会社の代表を努めたマーク・W・ジョンソンが示したビジネスモデルの「4つの箱」と呼ばれるものがあります。
どれだけ革新的なビジネスモデルであろうと、必ず次の4つの箱が必要だと定義しています。それは、「顧客価値」「経営資源」「プロセス」「利益方程式」の4つです。

つまり変化の激しい時代であったとしても、「誰にどのような価値を届け、どのような資源を使ってどう価値を創り、どう儲けるのか?」というビジネスモデルの基本は変わらないのです。では何が大きく変わるのかというと、この一つ一つの箱の中身です。
先程のビジネスモデルの4つの箱について、産業革命以降の工業中心社会だった「これまでの世の中」と、インターネットやスマートフォンの普及に伴うデジタル中心社会となった「いまの世の中」を比較してみましょう。

ビジネスモデルの「4つの箱」

まず工業が全産業の中心であったこれまでの世の中では、多くの人の手に届くように「同じ品質で同じ機能のものを作ること」が顧客価値とされていました。そうした製品は、天然資源・設備・人材・金融資本などの有形資産を用いて、綿密な設計に基づいて製造されて、販売時点の価値を最高の状態にしていました。そのため、利益を得るのも販売時点のワンタイムで売切りモデルでした。

一方、デジタルが中心となったいまの世の中では、「顧客それぞれの状況に最適な体験を提供すること」がもっとも顧客価値のある形になりました。顧客接点から得られるデータから最適な状態を導き出すことで信頼やブランドに対する評価が高まるようになり、そうした無形の資産が経営資源として大切に扱われるようになりました。そうした無形のデータを用いて、ソフトウェアで最適な解を導くようになると、販売後も継続して価値を高められます。このため利益を得る機会も1度きりではなく、継続課金するサブスクリプションやリカーリングに各社が工夫を凝らすようになりました。

こうした変化は、特定の業種・業界に留まるものではありません。

テクノベート時代を象徴するトレンド ~人とAIによる共創~

近年、急速に発展したテクノロジーとして、AI(人工知能)があります。例えば、みなさんが普段使っているネットショッピングや動画サイトのレコメンデーション(おすすめ)、航空券やホテルのダイナミックプライシング(変動価格)、どれ一つとってもAIは欠かせなくなっています。機械学習などのAIでモデル化されたアルゴリズムは、インターネット環境を通してクラウドに集積された大量のデータを学習して、驚異的なスピードでもっともらしい予測値を返してきます。

何となく開いたショッピングサイトで、おすすめされた特売品を思わずクリックして買ってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。まさに、先ほどのビジネスモデルの4つの箱でいう「無形のデータを経営資源」として、AIというソフトウェアを動かすことで継続的に利益を上げる仕組みを構築しているのです。

人工知能による個人の今の情報の最適化

こうして私たちの生活がどんどん便利になる一方で、漠然とした不安を感じることはありませんか?例えば、2022年に急激な進化を見せたChatGPTをはじめとする生成AI(Generative AI)を活用すれば、「SNSでリーチ数が伸びる企画は何?」と入力するだけで、瞬時に数種類の企画案を提示してくれます。今まで人間が作業して当たり前だと思っていた仕事が、ある日突然変わってしまうかもしれないほどのイノベーションが、まさに現実になろうとしています。

これからは、「人とAIが一緒になって価値を生みだすこと」が、非常に重要になってきます。


テクノベート時代に必要な学びとは? ~AIを活用した問題解決アプローチ~

テクノベート時代に必要な学びの第一歩は、「AIの得意なこと・苦手なこと」を知ることです。

AIが一瞬で出力した絵に驚くことはあっても、これらは過去のデータから予測して出力した結果に過ぎません。文章であれイラストであれ、AIの出力をより良くするためには、人間の力が必要です。人間の手によって、学習データの誤りを正すことや、個別の状況に適切な予測が導かれるようにチューニングすることなどを繰り返し行うことで、そのサービスやビジネスが成り立っています。

また人間の持つ豊かな想像力が新しい文明を切り拓いてきたように、クリエイティビティ(創造性)が求められる分野では、過去のデータから予測を返すAIだけで新しいものを生みだすことはまだまだ難しいと言わざるを得ません。そのため、AIを優秀なビジネスパートナーとして、出力されたアプトプットに人間がさらに磨きをかけるつもりで、よりクリエイティブな仕事をしていくことが求められるのです。
グロービス経営大学院が展開している科目「テクノベート・シンキング」では、テクノベート時代における問題解決のアプローチとして次のような流れを提唱しています。

テクノベート時代の問題解決アプローチ

まず解くべき問題(イシュー)を設定するのは、自分自身です。これは、将来の顧客となる誰かに必要とされる「体験価値」の原型でもあります。

解くべき問題と一言で言っても、日ごろから世の中の出来事に広く関心を持ち、ちょっとした気づきや世間の常識に対する疑問を見過ごすことなく、心に留めておく習慣から始まります。利用者の視点に立って、潜在的あるいは本質的な課題を発見していく思考法は「デザイン思考」とも呼ばれます。

そしてそのような気づきを周囲の仲間に投げかけてみたり、生成AIと壁打ちしながらブラッシュアップをしたりして、仮説に仕立てましょう。
イメージが具体的になってきたら、AIの予測を活用するためのプラットフォームを構築しましょう。データをどのように収集するのか、AIによる予測をどのような顧客体験に組み込んで提供するのかといったことを仕組み化するのです。そして小さく始めたプロトタイプを速いスピードで仮説検証することが、非常に大切です。これを「リーンスタートアップ」とも言います。

この仮説検証のサイクルでも人間性が問われます。何故かというと、AIは意図せずに、人間社会の偏見(バイアス)や不平等を取り込んでしまう可能性があるからです。自社の製品やサービスが、知らない間に特定の集団を排除していたり、見ず知らずの人の利益を損ねていたりしてしまわないように、「社会で何が問題とされているか?」「自分たちのサービスは大丈夫か?」といった監視の目を持つことが、より良い社会の構築には不可欠であることを覚えておきましょう。


テクノベート時代に価値を上げるには? ~生の体験で「知覚」を鍛える~

いま私たちは誰もが当たり前のようにAIを使う時代の入り口に立っています。その恩恵が全産業へ行き渡るようになると、さらに多くの産業でテクノロジーの進化が加速することは間違いないでしょう。多くのことがAIによって代替され、自動化される社会が間違いなくやってきます。ではその時、私たちビジネスパーソンはどのように自分の価値を高めればよいのでしょうか。その価値に差がつくのはいったいどのような能力でしょうか。それは、AIには獲得が難しい人間ならではの知能を磨くことにほかなりません。

アメリカの心理学者ロバート・スターンバーグは、人間の知能は解が一意に定まる問題だけでは測れないとして早くからIQによる測定の限界に言及しました。そして私たちの知能は、「分析知能」、「創造知能」、「実践知能」の3つを併せ持っていると定義しました。現在のAIは、このうちの1つである「分析知能」を知識の量的拡大によって徹底的に強化したものと考えることができます。ただ人間には及ばない高い精度で高速に処理できる「分析知能」を持ち合わせていても、それだけでは行動は生まれません。人は「分析知能」で得られた状況に対して適切なリスクを考慮しながら、無限の想像力・創造力を働かせて、時に不確実な状況に身を投じるような行動・冒険に挑むことができます。これが「創造知能」です。そして「分析知能」と「創造知能」のバランスを取り、現実社会の様々な問題に適応しながら、状況によっては合理的でない選択をも容認し、個々の判断を積み重ね自分を変容させながら現実世界の課題へ適応する術を身に着けていくことができます。これが「実践知能」です。

では現代のビジネスパーソンが、AIには難しい「創造知能」や「実践知能」を磨くにはどうすればよいのでしょうか。それは、人間ならではの身体性から得られる「知覚」を研ぎ澄ませることです。「知覚」は、人間の五感を総動員して得られる「生の体験」の質と量を高めることで鍛えることが可能です。

ビジネススクールでは、そうした「生の体験」が得られる場所として質・量ともに最適です。授業では毎回、年齢や職業経験の異なる多様なバックグラウンドを持つ学生同士がチームを組んで、リアルなケース(企業事例)に取り組みます。このケースメソッドは、世界の多種多様な地域や産業、市場から選りすぐられた実際のビジネス状況を再現したもので、企業やその意思決定者が直面する複雑な課題を仮想的に解決する実践的な学びです。また卒業生のネットワークを活かすことで企業訪問や役員へのインタビューを実施したり、フィールドリサーチへ出掛けたり、ワークショップを開催したりすることで、生のフィードバックを浴びる機会を増やすこともできます。

こうした「生の体験」で鍛え抜かれた「知覚」や人とのつながりは、AIに代替されない「創造知能」や「実践知能」を大いに刺激し、テクノベート時代に自らのキャリアを切り拓く上で強力な武器となるでしょう。

テクノベート時代におけるビジネスの最前線を学びたい方へ

グロービス経営大学院は、「テクノベート」という概念を提唱し、旧来のMBAの枠組みにとらわれず時代の変化に適応するために必要な科目をいち早く導入してきました。また、MBAのリーディングスクールとして、予習や復習、受講効果の測定などの様々なシーンでテクノロジーを活用し、学習環境の改善にも日夜取り組んでいます。加えて、グロービスでは以下の研究所を有しており、テクノベート時代に合わせた経営及び教育の研究にも積極的に取り組んでいます。

グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)
国内最大のビジネススクールのノウハウと企業の人材育成や組織変革など教育現場から得られる知見、AI(人工知能)をはじめとするデジタルテクノロジーや認知科学の発展がもたらすイノベーションを統合した次世代経営教育モデルを研究開発しています。

テクノベート経営研究所(TechMaRI)
「テクノベート時代の世界No.1 MBA」を目指すグロービス経営大学院の知的基盤、特にスタートアップを包含するテクノベートの知見構築を目的とする学内シンクタンクです。蓄積した知見をテクノベート・創造系科目を中心とする教育カリキュラムに反映・創出すると共に、産業創造を目指すグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)との連携のもと、「日本発のデカコーン輩出」に寄与します。

これまで開発してきたテクノベート関連の科目は、累計で34科目(※日英MBAプログラムの合算)にのぼります。これらの科目は、株式会社メルカリやスマートニュース株式会社などテクノロジー系のスタートアップへの投資や経営支援事業、「グロービス学び放題」「GLOPLA LMS」などテクノロジーを活用した教育支援事業、企業研修事業など、グロービスグループの知見を活かして、経営とテクノロジーをアラインした実践的な科目となっています。

グロービス経営大学院にご興味を持たれた方は、ぜひ「体験クラス&説明会」にお越しください。授業の特徴や提供科目の内容、キャンパスライフなどについて詳しくご案内しています。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 4/23(火) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

  • 4/27(土) 10:00~12:00

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

  • 5/11(土) 10:00~12:00

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    単科で1科目から学びたい方・グロービスMBAの特徴を確認したい方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。

八尾 麻理

グロービス ファカルティグループオフィス テクノベートFGナレッジリーダー| グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)研究員

大阪大学工学部卒業後、日本総合研究所にて官公庁の政策立案や企業の変革支援に従事。その後、スタートアップのインキュベーションと大企業の新規事業をレバレッジとした価値創造を志向するコンサルティングファームの創業期に参画。二児の出産・育児と並行して、社会課題をビジネスで解決する事業プロデュースの分野で執行役員を務める。

グロービスでは、戦略・テクノベート領域の科目開発や学習体験をアップデートするプロダクトの開発、社会の変化・潮流を読み解くコラムの執筆、社内へのナレッジの還流などを行う。ダイヤモンド・オンライン連載『事例で身につく・超経営思考』等、メディアへの寄稿多数。

3人の子育て期に親の介護・みとりを経て、医学研究科修士課程在学中。共著:『[新版]グロービスMBA経営戦略』(ダイヤモンド社)、共訳著:『TOCハンドブック 制約条件の理論』(日刊工業新聞社)