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【卒業後~MBAを終えて~】専門スキルだけでは社会に貢献できない!~医療職にも経営学の知識を~

杉浦さんブログ写真.jpg【名前】  杉浦 太紀

【勤務先】 総合病院

【入学年】 2017

<自己紹介>

2010年に理学療法士国家資格を取得し、愛知県内の総合病院に就職。救命救急センター、一般病床、回復期リハビリテーション病床など、院内の様々な部署で、多くの患者のリハビリテーションに携わる。2015年からの2年間は同法人の療養型病院に出向し、終末期の医療を経験。2017年に総合病院に戻ると同時にグロービス経営大学院入学、2019年に修了。

◆グロービスとの出会い、入学までの経緯

私がグロービスを知ったのは、書店で27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10という書籍を手に取った時でした。当時27才だった私は、「自分のことだ!」と衝撃を受け(まんまと罠にはまり?)、その本を購入しました。直感で購入した本でしたが、その内容のわかりやすさが2度目の衝撃でした。ビジネス書と呼ばれる本は何冊か読んだことはありましたが、こんなに網羅的でわかりやすい本は初めてでした。そして、この本のタイトルにあるグロービスという学校が名古屋にもあると知り、迷わず体験授業を受けることにしました。

体験授業は、ビジネスの世界に疎い私でも理解できる、とても分かりやすい内容でした。また、講義を聴くだけではなく、自ら考え、発言をする授業スタイルが新鮮で、もっと学んでみたいと感じました。そのため、まずは1科目、3か月間だけ頑張ろうと思い、単科生制度クリティカル・シンキングを学ぶことにしたのです。

クリティカル・シンキングを受講した3か月間での成長は、本当に大きかったと自信を持って言えます。漏れなくダブりなく考えることが習慣化され作業効率が良くなり、院内の急性期リハビリテーションの標準化を目的としたプロジェクトで成功を収めることができました。この場に身を置けばさらに成長し、キャリアアップに繋がるのではという期待感から、2科目、3科目と受講し、いつの間にか本科への出願を決めていました。


◆医療従事者がグロービスで学ぶことの意義

私は、MBAを学ぶことによる成長度合いが最も大きいのは医療従事者だと思っています。なぜならば、現在の日本では、病院経営が難しくなっているにも関わらず、医療従事者の学びは専門分野が中心であり、組織として永続的に質の高い医療を提供するにはどうすべきかという視点が少ないからです。

日本には「国民皆保険制度」という、どこでも誰もが適切な医療サービスを安価に受けられる素晴らしい制度があります。しかし、高齢化の進行により、総医療費の増加という弊害が出ています。このままでは、社会保証制度が崩壊してしまうため、総医療費を抑える(=患者単価が下がる)よう制度が変わり、病院経営が苦しくなっているのです。

数十年前の病院であれば、どんぶり勘定で経営していても黒字でした。また、医療従事者として、「目の前の患者のためになることをしたい。」という熱い気持ちは非常に大切だと思っています。しかし、現在では、いい加減な病院経営では、持続的に医療を提供できなくなっています。そして、この危機を感じている人は決して多くありません。

私自身も、20代前半の頃は、『自身の技術を高めること=患者の利益』と考えて、毎週末のように研修会に行き、専門知識・技術の習得に励んでいました。ところが、異動をキッカケに、自身の技術に加え、多職種とコミュニケーションをとり、他者を介して患者に貢献する必要性に気づきました。

周囲を巻き込むには、論理的に考え、適切に伝える力が必要です。事務職や経営層に対して提案するには、財務のことも理解していなければなりません。部下や後輩の育成は医療の専門知識だけでは済まないことが多くあります。限られた資源でサービスを提供するには、現場をより効率よく回すオペレーションの知識も必要となります。このように、医療の世界こそ、MBAの学びで改善できることが多く潜んでいるのです。

◆多種多様な仲間との議論だからこそ、得られたアイデア

グロービスで経営を体系的に学び、この春で卒業を迎えましたが、予想以上に実務に活きる部分が多いと感じています。

例えば、他職種との連携では、ポジションパワーのある医師や看護師長などと関わることが多いため、パワーと影響力での学びをフル活用し、コミュニケーションを図っています。科内では、ビジネス・プレゼンテーションファシリテーション&ネゴシエーションでの学びを活かし、会議を円滑に進めることができるようになり、自身の意見が反映されやすくなりました。

さらに、労働組合の業務では、人材マネジメント組織行動とリーダーシップなどのヒト系科目の学びを活かして、人事部と交渉したり、アカウンティングのクラスの学びを活かし、財務諸表の読み解き勉強会を労働組合の執行部向けに開催したりもしています。

医療従事者として、目の前の患者には全力で関わりながら、他職種のスタッフとどう連携して成果を出すか、労働組合としてどう職場環境を整えるかなど、現在も試行錯誤しています。そんな何かを試す際のアイデアは、科目の学びはもちろん、多種多様な業界・職種の仲間とのディスカッションを重ねたからこそ得られたと感じています。

◆自分が社会に対して貢献できること、自分が本当にやりたいこと

入学当初に公言していた志は、『多くの人がより良い医療を受けられるような社会を作る!』であり、そのためには医療従事者がやりがいを感じて働ける環境が必要だと考えていました。その志は、現在も変わっていません。しかし、その言葉に含まれる意味や具体的な行動計画は大きく変わりました。それは、志系のクラスや学事行事で、『自分が本当にしたいことは何なのか、それはなぜなのか』を見つめ直す機会があったからです。

まずは1年次の志系クラス「リーダーシップ開発と倫理・価値観」です。ここで、「やりたいこと」と「やるべきこと」について考えさせられました。困っている患者さんの役に立ちたい!という気持ちで就職しましたが、いつの間にか、組織の中で与えられたやるべきことを優先して仕事をしていたことに気づきました。決してどちらが正しいというわけではないですが、改めて、理学療法士になろうと決意した自分の原点を思い出す機会となりました。『自分が心の底から楽しさを感じる仕事は何か』を考えながら生活していたのがこの時期でした。

その後、1年次振り返りセッションや2年次学長セッション、志系クラス「企業家リーダーシップ」を通して、自分のやりたいことで社会に貢献するにはどのような働き方がいいのか、自問自答を繰り返していました。その傍ら、職場では労働組合の役員を務め、職員の労働環境に対する悩み相談に対峙していました。

そんな中、同期の仲間から声をかけられ、学習成果の総まとめとして行う「研究プロジェクト」へのチャレンジを決めました。約半年間の準備期間、企画案の応募を経て、合格。卒業前の半年間、ビジネスプランを考える機会を得ました。

ビジネスプランは、私の志にも通ずる『健康』に関するテーマで考えることとなり、スタート当初は、中高年向けのフィットネスビジネスを計画していました。しかし、計画を進める中で、既存の競合他社を超えられるプランには至らず、大きく方向転換することを決めました。

幾度となくメンバーとの議論を重ね、最終的には、より自分の思い入れが深いプランに辿り着きました。

総合病院で働いていると、転倒による骨折を経験した高齢者に多く出会います。高齢者の骨折は、その後の人生を大きく変えてしまいます。たった1回の骨折で要介護状態になってしまう方も少なくありません。病院での治療を終え、やっとの思いで退院した直後に自宅で転倒し、再び入院するというケースもあり、非常に心苦しくなったこともあります。

そんな思い入れのある「高齢者の転倒による骨折を予防する事業」というビジネスプラン、今後どのような立場で参画するか詳細は決まっていませんが、卒業した今でも平日の夜や休日にはビジネスプランの実現に向けて、チームで活動を継続しています。

そして、このビジネスプランを作成する過程を通じて、志の根源が明確になりました。

『多くの人がより良い医療を受けられるような社会を作る!』

『そのためには医療従事者がやりがいを感じて働ける環境が必要!』

と考えるようになった背景に、上記のような転倒にまつわるエピソードだけではなく、医療現場の様々なジレンマに日々苦しんできたことに気づいたのです。

このようにグロービスには、経営の知見を得るだけではなく、自身の志について考える機会が数多くあります。入学当初に抱いていた志が全く別のものに変わる人もいれば、志の方向性は変わらず、具体性が高まる人もいます。私は後者でした。

グロービスで学んでいなければ、今の生活は想像もできません。人生の選択の幅が大きく広がったと感じています。「自分のやりたいこと」と「社会に貢献できること」の働き方のバランスについて悩むこともありますが、むしろこのような贅沢な悩みができたのはグロービスのおかげです。

◆最後に

私はグロービスに出会い、今まで知らなかった経営の知見が増え、今まで知り合わなかった人たちと出会い、世界が大きく広がりました。より良い医療を提供したいと日々もがいている医療従事者の方は、是非1度グロービスの体験授業を受けてみてはいかがでしょうか。自分の人生も日本の未来も明るくできる可能性がここにはあります。