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答えを出せる問いなのか?ロジカルシンキングの基本を学ぶ<DAY5>

2019年05月23日

  • 思考
  • 実践的
岩越 祥晃 グロービス経営大学院教員/グロービス・マネジメント・スクール教員

前回のコラム(DAY4)で、「答えるべき問い」の優先順位をつける際に、最低限押さえておくべきことは、


・今、答えを出すべきなのか?(緊急度)
・担当業務の目標やミッションに対して大きなインパクトを与え得るのか?(重要度)
・答えを出せるのか?(実現可能性)


の3つとご紹介しました。


今回は、前回の最後に触れた「答えを出せるのか?(実現可能性)」について確認したいと思います。この論点について考える際には、考慮すべきポイントが3つあります。


1つめは、「問いの内容が抽象的で、何を意味しているのかわからない状態になっていないか?」を確認することです。言い換えると、どんな答えを出せば「問い」に答えたことになるのか、よくわからない「問い」の表現になっていないかをチェックしてください。


例えば、「チームの一体感を醸成するにはどうするべきか?」や「社員のビジネスライフを豊かにするには何が必要か?」といった「問い」は、使われている言葉が抽象的で、人によって認識がずれる可能性があります。認識の齟齬が生じたまま「問い」に答えを出しても、周囲の期待に応えることは難しいでしょう。抽象度の高い「問い」になっている場合は、使われている言葉を具体化し、「問い」の意味する内容について、周囲と認識を合わせる必要があります。


例えば、


「一体感とはどういう意味?メンバーが助け合って全員で目標を達成すること?飲み会の参加率が高いこと?」
「醸成するとはどういう意味?醸成された状態をどのように定義する?」
「ビジネスライフとはどういう意味?自社でのキャリア?それとも引退までのキャリア?」
「豊かとはどういう意味?出世すること?稼げること?やりたい仕事ができること?」


といったことを問いかけながら、抽象的な言葉を具体的な言葉に置き換えましょう。


もし「問い」の具体化がうまくできないのであれば、現時点では適切な答えを導くことができない可能性が高いと言えるでしょう。


2つめは、「答えを出すために必要な情報を集められるのか?」「自分が扱える分析手法で答えが出せそうか?」など、自分でコントロール可能なリソースで答えが出せそうなのかを確認することです。取り組んでも、悩んでいるばかりで答えが出せないのであれば成果につながりません。周囲に助けを求める、優先順位を下げる、などを検討しましょう。


3つめは、「答えを出すことができる大きさの問いになっているか?」を確認することです。今の「問い」のままでは、考慮しなければならないことが多すぎて、手に負えないと感じた場合は、答えを出せる大きさの「問い」にできないかを考えてみてください。


具体的に考えてみましょう。前回の通販会社の事例の中で、「派遣会社や派遣社員のマネジメントを今後どのように変えていくべきか?」という「問い」がありました。この「問い」が大きすぎて扱いにくい場合は、「どのような問いに答えれば、この大きな問いに答えが出せるだろうか?」と自分に問いかけ、「大きな問い」を「小さな問い」に分けてみましょう。


例えば、「自社のコールセンターの理想とする姿はどのようなものか?」「理想の姿に対して、現状のコールセンターはどのような状況なのか?」「理想と現状とギャップが生じている部分はどこで、何が原因でギャップが生じているのか?」「そのギャップを埋めるためのマネジメント手法はどのようなものが考えられるのか?」といった「問い」について順番に考えれば、「派遣会社や派遣社員のマネジメントを今後どのように変えていくべきか?」という「問い」に答えを出せる可能性が高まります。

どうすれば「小さな問い」を立てられるようになるのか?

グロービス経営大学院やグロービス・マネジメント・スクールの授業の中でこうした頭の使い方について触れると、「小さな問いが思いつかない場合はどうすればよいですか?」といった質問が出てきます。私がいつもお話しているのは、主に以下の2点です。


(1)フレームワークや分解の方法を知る


「小さな問い」に当たるものは、論理的に考える際の枠組み(=フレームワーク)として、先人たちがすでに整理してくれている場合が多く、さまざまな分野の書籍を読み、知識をインプットしましょう。さきほど通販会社の事例の際にあげた「小さな問い」は、「問題とは、あるべき姿(理想)と現状とのギャップのことであり、このギャップを埋める施策が解決策となる」という考え方に基づいて導き出しています。


分解についても、よく使われるパターンをあらかじめ知っておくと、スムーズに「大きな問い」を分解できる可能性が高まります。こちらは、論理思考に関する書籍にさまざまな分解パターンが例示されていると思いますので、頭に入れておくとよいでしょう。記事末に参考図書も挙げておきます。


フレームワークの例:3C、4P、バリューチェーン、5F、PESTなど
分解の例:利益=売上-コスト、売上=客数×客単価など


(2)周囲の人の力を借りる


内容によっては、フレームワークを当てはめることが難しい場合や分解の方法をまったく思いつかない場合もあるかもしれません。そうした場合は、「どのような問い(小さな問い)に答えることができれば、この問い(大きな問い)に答えられるかな?」といった質問を周囲に投げかけながら、積極的に意見交換してみてください。初回(DAY1)のコラムでもお伝えしましたが、1人で悩み続けていても視野が狭くなる可能性が高く、ブレイクスルーを起こすために、ぜひ周囲の人たちと議論してみてください。


ただし、人の意見を聞く前に「どんな小さな問いが考えられるか?」を自分の頭で考えることを忘れないようにしてください。常に人を頼っていては、周囲の能力によってアウトプットのクオリティが左右されることになりますし、思考力がいつまでたっても向上しません。


次回(DAY6)は、「緊急度・重要度が高い=答えるべき優先順位が高い問いとは限らない」というテーマについて考えたいと思います。



【参考図書】
グロービスMBAマネジメント・ブック【改訂3版】(ダイヤモンド社)
グロービスMBAクリティカル・シンキング【改訂3版】(ダイヤモンド社)
グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50(ダイヤモンド社)

岩越 祥晃グロービス経営大学院教員/グロービス・マネジメント・スクール教員

担当科目は「クリティカル・シンキング」「ビジネス・プレゼンテーション」「ファシリテーション&ネゴシエーション」。同志社大学法学部政治学科卒業、関西学院大学大学院経営戦略研究科修了(MBA)。エンタテインメント関連企業を経て、グロービスに入社。現在は、グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールの教員及び教材の開発を担当するとともに、株式会社グロービスにてマーケティング業務のマネジャーも務めている。

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