GLOBIS Articles

  • 思考
  • テクノロジー
  • イノベーション
  • テクノベートMBA

投稿日:2025年06月06日

投稿日:2025年06月06日

ブロックチェーンとは?活用事例や仕組み、いま学ぶメリットを説明

ブロックチェーンとは?活用事例や仕組み、いま学ぶメリットを説明

近年、ニュースやビジネスシーンで「ブロックチェーン」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、「なんとなく聞いたことはあるけれど、具体的にどんな技術で、何ができるのかはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

ブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の基盤技術として注目を集めました。しかし、その可能性は金融分野にとどまりません。契約の自動化から商品の追跡、新しいビジネスモデルの創出まで、幅広い分野での活用が期待されています。

テクノロジーが急速に進歩する現代において、ブロックチェーンの知識は、ビジネスパーソンにとって必須の教養のひとつと言えるでしょう。この記事では、ブロックチェーンの基本的な仕組みから具体的な活用事例まで、分かりやすく解説します。

ブロックチェーンとは何かを分かりやすく解説

ブロックチェーンは、情報を記録・管理するための革新的な技術です。最大の特徴は、特定の管理者がいなくても、みんなでデータを安全に管理できるという点です。

従来のシステムでは、銀行や企業といった特定の管理者がデータを管理していました。しかし、ブロックチェーンでは、ネットワークに参加する複数のコンピューターが同じデータを共有し、お互いに監視することで、不正な変更を防ぎます。

この仕組みにより、透明性が高く、セキュリティに優れた情報管理が可能になっています。さまざまな業界での応用が進んでおり、私たちの生活やビジネスを大きく変える可能性を秘めているのです。より詳細な情報については、以下の関連情報もご参照ください。

関連:グロービス経営大学院 MBA用語集「ブロックチェーン

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンについて、一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)は、「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術」と定義しています。

これを分かりやすく言うと、「参加者みんなで同じ情報を持ち、お互いに見張ることで、データの不正な書き換えを防ぐ、信頼性の高いデジタル台帳」のようなものです。

取引データは「ブロック」という単位で記録され、時系列順に鎖(チェーン)のようにつながっていくことから「ブロックチェーン」と呼ばれています。一度記録された情報は後から変更や削除が極めて困難なため、高い信頼性が求められる情報の記録に適しています。

ブロックチェーンの特徴とできること

ブロックチェーンが注目される理由のひとつに、「公正で透明な取引ができる」という特徴があります。これは、特定の管理者や仲介者を必要とせず、参加者同士が直接、安全で透明性の高い取引を行える仕組みによって実現されます。

ブロックチェーンが注目される理由のひとつに、「公正で透明な取引ができる」という特徴があります。これは、特定の管理者や仲介者を必要とせず、参加者同士が直接、安全で透明性の高い取引を行える仕組みによって実現されます。

従来の取引では、銀行やクレジットカード会社のような中央集権的な機関が取引の承認や記録を行っていました。一方、ブロックチェーンでは、ネットワークに参加する多数のコンピューターが取引記録を共有し、検証することで、単一組織による不正やデータ改ざんを防ぎます。

これにより、以下のようなことが可能になります。

①透明性の向上
取引記録はネットワーク参加者に公開されるため、誰でも内容を確認できます(プライバシーに配慮した設計も可能です)。

②セキュリティの強化
データが分散管理され、暗号技術で保護されているため、サイバー攻撃や不正アクセスによる改ざんが極めて困難です。

③コスト削減
仲介機関を介さない直接取引により、手数料などのコストを削減できる可能性があります。

④効率化
取引の承認プロセスが自動化・迅速化され、業務効率の向上が期待できます。

これらの特徴から、ブロックチェーンは金融取引だけでなく、不動産登記、著作権管理、サプライチェーン管理、選挙システムなど、信頼性が重要な様々な分野での活用が期待されています。

ブロックチェーンとデータベースの違い

ブロックチェーンは「分散型のデジタル台帳」と表現されることがありますが、従来のデータベースとはいくつかの重要な違いがあります。

ブロックチェーンは「分散型のデジタル台帳」と表現されることがありますが、従来のデータベースとはいくつかの重要な違いがあります。

ブロックチェーンの主な利点は、データの改ざん耐性と透明性の高さ、そして中央集権的な管理者を必要としない点です。これにより、信頼性の高い情報共有や、仲介者を介さない直接取引が可能になります。

一方、従来のデータベースは、データの管理や更新の速度、柔軟性において優れている場合があります。どちらの技術が適しているかは、利用目的やシステム要件によって異なります。

ブロックチェーンと仮想通貨・暗号通貨の関係


ブロックチェーン技術が世界に広く知られるきっかけとなったのが、ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)です。ビットコインは、ブロックチェーンを基盤技術として活用した最初の成功例と言えるでしょう。

仮想通貨において、ブロックチェーンの役割は取引記録を安全かつ透明に管理することです。誰が誰にいくら送金したか、といった取引履歴はすべてブロックチェーン上に記録され、ネットワーク参加者によって検証・共有されます。これにより、特定の金融機関を介さずに、個人間での直接的な価値移転が可能になります。

ブロックチェーン技術は仮想通貨の信頼性と安全性を担保する根幹ですが、「仮想通貨=ブロックチェーン」ではありません。両者は密接に関連していますが、ブロックチェーンは仮想通貨を実現するための技術のひとつであり、仮想通貨はブロックチェーンの数ある応用例のひとつと理解するとよいでしょう。

近年では、仮想通貨だけでなく、NFT(非代替性トークン)などもブロックチェーン上で発行・取引されており、デジタル資産の所有権証明などにも活用されています。

関連:グロービス経営大学院 MBA用語集「仮想通貨

関連:グロービス経営大学院 MBA用語集「暗号通貨


ブロックチェーンの影響と市場規模

ブロックチェーン技術は、単なる技術革新にとどまらず、社会や経済の在り方に大きな影響を与える可能性を秘めています。データの透明性と信頼性を高め、中央集権的な仲介者を不要にするその特性は、さまざまな業界で既存のビジネスモデルを変革し、新たな価値創出をもたらすと期待されています。

例えば、金融業界では国際送金の高速化・低コスト化、サプライチェーンでは製品のトレーサビリティ向上による偽造品防止や品質管理の強化、不動産業界では契約プロセスの簡略化と透明化などが進むと考えられています。

世界のブロックチェーン市場規模は急速な成長を続けています。各種市場調査レポートによると、今後も年平均成長率(CAGR)は数十パーセントの高い水準で推移すると予測されており、2030年に向けて市場規模は数兆円から数十兆円規模に達するとも見込まれています。

この成長の背景には、企業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の加速、IoTやAIといった他技術との融合、そしてWeb3.0という新たなインターネット概念への関心の高まりなどがあります。ブロックチェーンは、これらの動きを支える基盤技術として、ますますその重要性を増していくでしょう。

ブロックチェーンを活用したサービス・企業

ブロックチェーン技術は、理論や実験段階を超え、すでにさまざまなサービスや企業活動で実用化が進んでいます。その活用範囲は金融分野から始まり、製造、物流、医療、エンターテイメントなど、多岐にわたる業界へと広がりを見せています。

ここでは、ブロックチェーンが具体的にどのようなサービスで活用され、どのような企業が導入を進めているのか、その概要と代表的な事例をご紹介します。

ブロックチェーンとスマートコントラクト

ブロックチェーンの活用を語る上で欠かせないのが「スマートコントラクト」という技術です。スマートコントラクトとは、契約条件をプログラム化し、条件が満たされると自動的に契約が実行される仕組みです。

ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用することで、契約の履行を人の手を介さずに自動化し、透明性を高めることができます。例えば、「商品Aが納品されたら、自動的に代金Bが支払われる」といった契約をプログラムとしてブロックチェーンに記録しておけば、納品確認と同時に自動的に支払い処理が行われます。

スマートコントラクトの主なメリットは、自動化による効率向上です。契約の履行や確認作業が自動化されるため、時間と手間を大幅に削減できます。また、仲介者や契約履行のための人件費などを削減できるため、大幅なコスト削減も期待できます。

さらに、契約内容と実行プロセスがブロックチェーン上に記録されるため、透明性が高く、改ざんも困難という特徴があります。これにより信頼性の向上が図られます。加えて、プログラムによって自動実行されるため、人的なミスを防ぐことができ、ヒューマンエラーの削減にも大きく貢献します。

このスマートコントラクトの仕組みは、不動産取引、保険金の支払い、著作権管理、サプライチェーンにおける契約履行など、さまざまな分野での応用が期待されています。

ブロックチェーンを導入したサービスの具体例

ブロックチェーン技術は、すでに世界中の多くの企業で導入が進められ、具体的なサービスとして提供されています。以下に分野別の活用事例をご紹介します。

金融サービス

国際送金
従来の国際送金は手数料が高く時間もかかりましたが、ブロックチェーンを活用することで、より迅速かつ低コストな送金サービスが実現しています。

貿易金融
貿易取引における煩雑な書類手続きや信用状のやり取りを電子化し、効率化と透明性を高めるプラットフォームが登場しています。

サプライチェーン管理

トレーサビリティ
製品の生産地から消費者に届くまでの流通過程をブロックチェーンに記録することで、食品の産地偽装防止や医薬品の真正性担保などに役立てられています。例えば、高級食材や医薬品の流通過程を追跡し、信頼性を高める取り組みがあります。

不動産取引

登記情報の管理
不動産の所有権や取引履歴をブロックチェーンで管理することで、登記情報の改ざんを防ぎ、取引の透明性と安全性を向上させる試みが進んでいます。

契約プロセスの効率化
スマートコントラクトを活用し、物件の売買契約や賃貸契約の手続きを自動化・効率化するサービスも開発されています。

著作権・コンテンツ管理

デジタルコンテンツの権利保護
音楽やアート作品などのデジタルコンテンツの著作権情報をブロックチェーンに記録し、不正利用を防いだり、クリエイターへの正当な収益分配を実現したりするプラットフォームが登場しています。NFT(非代替性トークン)もこの分野の代表的な活用例です。

医療・ヘルスケア

医療記録の共有
患者の同意のもと、医療記録を安全に共有し、異なる医療機関間での連携をスムーズにするシステムの研究開発が進められています。

医薬品の真正性証明
医薬品の製造から流通までの情報をブロックチェーンで追跡し、偽造医薬品の流通を防ぐ取り組みが行われています。

ブロックチェーンの仕組みと技術

ブロックチェーンがなぜこれほど注目され、高い信頼性とセキュリティを実現できるのでしょうか。その秘密は、複数の重要な技術要素が巧みに組み合わされているからです。

ここでは、ブロックチェーンを支える主要な技術である「P2Pネットワーク」「ハッシュ」「電子署名」「コンセンサスアルゴリズム」について、それぞれの役割を分かりやすく解説します。これらの技術が連携することで、データの分散管理、改ざん防止、そして正当な取引の承認といったブロックチェーンの核となる機能が実現されています。

P2Pネットワーク

P2P(ピアツーピア)ネットワークとは、特定のサーバーを介さずに、個々のコンピューター(ピア)同士が直接接続し、データをやり取りするネットワーク形態です。

従来のクライアントサーバー型システムでは、中央のサーバーがデータ管理や処理を一手に担います。一方、P2Pネットワークでは、参加するコンピューターが対等な立場で機能や情報を分散して保持します。

ブロックチェーンにおいて、P2Pネットワークは取引情報やブロック情報をネットワーク参加者全員で共有し、分散管理するための基盤となります。一部のコンピューターがダウンしても、他のコンピューターが稼働していればシステム全体が停止することなく、データの可用性と耐障害性を高めることができます。また、中央集権的な管理者が存在しないため、単一障害点(システム全体が停止してしまう可能性のある箇所)をなくすことにもつながります。

ハッシュ

ハッシュ(ハッシュ関数)とは、任意の長さの入力データから、固定長の短いデータ(ハッシュ値)を生成する関数です。ハッシュ値は、元のデータが少しでも変わると全く異なる値になる一方で、あるハッシュ値から元のデータを推定することが極めて困難です(一方向)。また、異なるデータから同じハッシュ値が生成される確率が極めて低い特徴(衝突耐性)を持っています。ブロックチェーンでは、このハッシュ技術が主に以下の目的で利用されます。

①データの改ざん検知
ブロックには、そのブロックに含まれる取引データと、ひとつ前のブロックのハッシュ値が含まれています。もし誰かが過去の取引データを改ざんしようとすると、そのブロックのハッシュ値が変わり、それ以降の全てのブロックのハッシュ値も整合性が取れなくなるため、改ざんを即座に検知できます。

②データの要約
大量の取引データを短いハッシュ値で表現できるため、データの取り扱いや比較が効率的になります。

このように、ハッシュ技術はブロックチェーンのデータの完全性と連続性を保証する上で非常に重要な役割を担っています。

電子署名

電子署名とは、デジタル文書の作成者を証明し、その文書が改ざんされていないことを保証するための技術です。公開鍵暗号方式という暗号技術が用いられ、署名者は自身の「秘密鍵」でデータに署名し、受信者は署名者の「公開鍵」を使ってその署名を検証します。

ブロックチェーンにおいては、主に取引の正当性を保証し、なりすましを防ぐために電子署名が利用されます。例えば、あるユーザーが仮想通貨を送金する際、その取引データに対して自身の秘密鍵で電子署名を行います。ネットワーク上の他の参加者は、そのユーザーの公開鍵を使って署名を検証することで、確かにそのユーザー本人からの取引依頼であり、取引内容が途中で改ざんされていないことを確認できます。

これにより、ブロックチェーン上の取引は、送信者の身元(正確には公開鍵に対応する秘密鍵の所有者であること)とデータの完全性が保証された状態で記録されることになります。

コンセンサスアルゴリズム

コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンネットワークにおいて、新しい取引が正当であるか、また、どの取引記録を新しいブロックとしてチェーンに追加するかについて、参加者間で合意を形成するためのルールや手順です。

中央管理者がいない分散型のP2Pネットワークでは、誰がどのように取引を承認し、記録を更新するのかを明確に定める必要があります。そのための仕組みがコンセンサスアルゴリズムです。

代表的なコンセンサスアルゴリズム

①Proof of Work (PoW)
ビットコインなどで採用されている方式。計算量の多い作業(マイニング)を最初に完了した参加者(マイナー)にブロックの生成権と報酬が与えられます。

②Proof of Stake (PoS)
対象となる暗号資産の保有量や保有期間に応じて、ブロックの承認権が与えられやすくなる方式。PoWに比べて消費電力が少ないとされています。

③Proof of Authority (PoA)
あらかじめ選ばれた信頼できる承認者(バリデーター)によって取引が承認される方式。プライベートチェーンやコンソーシアムチェーンで利用されることが多いです。

コンセンサスアルゴリズムは、ブロックチェーンのセキュリティ、処理速度、スケーラビリティ(拡張性)、分散性の度合いなどに大きな影響を与えるため、ブロックチェーンの種類や目的に応じて適切なものが選択されます。

ブロックチェーンの種類とそれぞれの特徴

ブロックチェーンは、その公開範囲や管理者の有無によって、いくつかの種類に分類されます。それぞれの種類は、参加できる対象者、取引の透明性、処理速度、管理コストなどに特徴があり、利用目的に応じて最適なものが選択されます。

ここでは、代表的なブロックチェーンの種類である「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」「コンソーシアムチェーン」について、それぞれの特徴とメリットを解説します。

パブリックチェーン

パブリックチェーンは、誰でも自由にネットワークに参加し、取引の閲覧や承認作業(マイニングなど)に参加できるオープンなブロックチェーンです。ビットコインやイーサリアムなどが代表例です。

パブリックチェーンの特徴として、まず高い透明性が挙げられます。取引記録は原則としてすべて公開され、誰でも閲覧可能です。また、分散性が非常に高く、特定の管理者が存在せず、多数の不特定な参加者によって運営されます。さらに、多くの参加者によって検証されるため、データの改ざんが極めて困難で、改ざん耐性が非常に高いという特徴があります。

これらの特徴がもたらすメリットとして、特定の組織に依存しないため、非常に公平で中立的なプラットフォームを構築できる点があります。また、誰でも参加できるため、イノベーションが生まれやすい環境を提供します。

一方で、考慮すべき点もあります。取引の承認に時間がかかる場合があり、処理速度が遅くなることがあります。また、誰でも参加できる反面、悪意のある参加者による攻撃のリスクも考慮する必要があります。さらに、時期によっては取引手数料が高騰することもあります。

プライベートチェーン

プライベートチェーンは、単一の組織または企業が管理・運営する、許可された参加者のみがアクセスできるクローズドなブロックチェーンです。特定の企業内システムや、厳格なアクセス管理が必要な用途で利用されます。

プライベートチェーンの特徴として、管理者が明確に定められている点があります。特定の組織がネットワークを管理し、参加者を承認します。また、参加者が限定されているため、取引の承認が迅速に行われ、高い処理性能を発揮できます。さらに、管理組織の判断で、ブロックチェーンのルールや機能を柔軟に変更できるという柔軟性も持っています。

これらの特徴により、取引の承認が高速であるため、リアルタイム性が求められる業務に適しています。参加者が限定されているため、機密性の高い情報を扱うことができるのも大きなメリットです。パブリックチェーンに比べて運用コストを抑えられる場合もあります。

ただし、管理者が存在するため、分散性はパブリックチェーンに比べて低くなります。また、管理者の意向によってシステムが左右される可能性があり、中央集権的な側面を持つという点は考慮する必要があります。

コンソーシアムチェーン

コンソーシアムチェーンは、複数の組織が共同で管理・運営するブロックチェーンです。パブリックチェーンとプライベートチェーンの中間的な性質を持ち、特定の業界団体や複数の企業間での情報共有などに利用されます。

コンソーシアムチェーンの特徴として、単一ではなく、複数の信頼できる組織が共同でネットワークを管理する点があります。参加はコンソーシアム(共同事業体)のメンバー企業などに限定される、限定的な公開性を持っています。また、パブリックチェーンほどの完全なオープン性はないものの、プライベートチェーンよりは分散性が高いという、中間的な特性を持っています。

これらの特徴により、参加組織間での合意形成に基づき運営されるため、一定の公平性と透明性を保ちつつ、プライベートチェーンに近い処理速度や機密性を確保できます。とくに、業界標準のプラットフォーム構築や、企業間のデータ連携などに適しています。

一方で、コンソーシアム参加組織間の合意形成に時間がかかる場合があります。また、運営ルールや参加条件の設定が複雑になることもあり、これらは考慮すべき点として挙げられます。

ブロックチェーンを用いるメリット

ブロックチェーン技術は、従来のシステムでは解決困難だった多くの課題に対するソリューションを提供し、ビジネスや社会に様々なメリットをもたらします。その核となるのは、データの信頼性と透明性を高め、仲介者を介さない効率的な取引を可能にする点です。ここでは、ブロックチェーンを活用することの主なメリットについて、具体的に見ていきましょう。

改ざんに高い耐性を持つ

ブロックチェーンは、ネットワーク全体でのデータ管理と高度な暗号技術により、改ざんが極めて困難な構造を持っています。記録の整合性は常に保たれ、不正な書き換えは即座に検知・排除されます。

この強固な仕組みにより、金融取引や契約、知的財産管理、投票システムなど、高い信頼性が求められる分野での活用が期待されています。

システムダウンしにくい(ゼロダウンタイム)

ブロックチェーンは、P2Pネットワーク上でデータを分散管理しているため、システム全体がダウンしにくいというメリットがあります。

従来のクライアントサーバー型システムでは、中央のサーバーに障害が発生すると、システム全体が停止してしまうリスクがありました(単一障害点)。しかし、ブロックチェーンでは、ネットワークに参加している多数のコンピューター(ノード)が同じデータを保持し、互いに同期を取り合っています。

そのため、一部のノードが故障したり、ネットワークから離脱したりしても、他のノードが稼働し続ける限り、システム全体としては機能し続けることができます。この特性は「ゼロダウンタイム」(システムが停止しないこと)の実現に貢献し、24時間365日稼働し続けることが求められる金融システムや、重要な社会インフラなどにおいて大きな利点となります。

運用コストの削減

ブロックチェーンを活用することで、特定の条件下においては、従来のシステムと比較して運用コストを削減できる可能性があります。とくに、中央集権的な管理者や仲介機関を必要としないパブリックチェーンのような仕組みでは、大きなコスト削減効果が期待できます。

まず、金融取引や不動産取引などにおいて、銀行や仲介業者といった第三者機関を介さずに直接取引を行えるため、従来かかっていた仲介手数料を削減できる場合があります。また、特定のサーバーを持たず、P2Pネットワークでシステムが運用されるため、大規模なサーバー設備投資やその維持管理コストを抑えられる可能性があります。さらに、スマートコントラクトを活用することで、契約の履行や管理に関わる人的コストも削減できます。

ただし、ブロックチェーンの種類や運用方法、トランザクションの処理に伴うマイニング報酬によっては、必ずしもコストが低くなるとは限りません。プライベートチェーンやコンソーシアムチェーンの構築・運用には専門的な知識や初期投資が必要となる場合もあります。そのため、コストメリットについては、具体的なユースケースやシステム設計を考慮して評価する必要があります。

ブロックチェーンを用いるデメリット

ブロックチェーンは多くのメリットを持つ一方で、導入や運用にあたってはいくつかのデメリットや課題も存在します。これらの点を理解しておくことは、ブロックチェーン技術を適切に評価し、活用を検討する上で非常に重要です。ここでは、ブロックチェーンを用いる際に考慮すべき主なデメリットについて詳しく解説します。

1度データを記録すると、消去や隠匿が出来ない

ブロックチェーンの特徴である「改ざん耐性の高さ」は、逆に考える*「一度記録されたデータを消去したり、隠したりすることが極めて困難である」というデメリットにもなり得ます。

ブロックチェーンに書き込まれた情報は、ネットワーク上の多数の参加者によって共有・検証され、チェーン状に記録されていきます。そのため、後から特定の情報を削除したり、非公開にしたりすることは、技術的に非常に難しい、あるいは不可能な場合があります。

これは、間違った情報やプライバシーに関わる情報が記録されてしまった場合、それを完全に消去することができず、情報漏洩のリスクが永続的に残ってしまうという問題を引き起こす可能性があります。また、GDPR(EU一般データ保護規則)などで定められている「忘れられる権利」といった概念との整合性も課題となる場合があります。

そのため、ブロックチェーンにどのような情報を記録するかについては、事前に十分な検討と慎重な判断が必要です。

決済や送金など、合意形成・承認に時間がかかる

ブロックチェーン、特にパブリックチェーンにおいては、取引の承認(合意形成)に時間がかかり、決済や送金の処理速度が遅くなるというデメリットがあります。これはスケーラビリティ問題とも呼ばれます。

取引がブロックチェーンに記録されるためには、ネットワーク参加者による検証と合意形成(コンセンサスアルゴリズムによる処理)が必要です。例えば、ビットコインでは、新しいブロックが生成されるまでに約10分かかると言われています。さらに、多くの取引が集中すると、処理待ちの行列ができ、さらに時間がかかることもあります。これは、クレジットカード決済のように即時性が求められる用途や、大量のトランザクションを高速に処理する必要があるシステムにとっては、大きな制約となります。

このスケーラビリティ問題を解決するために、ライトニングネットワークのようなオフチェーン技術や、より処理能力の高いコンセンサスアルゴリズムの開発が進められています。

「51%攻撃」などの特定の攻撃に弱い

ブロックチェーンは高いセキュリティを持つとされていますが、完全に無敵というわけではなく、「51%攻撃」のような特定の攻撃に対して脆弱性を持つ場合があります。

51%攻撃とは、悪意のある個人またはグループが、ブロックチェーンネットワーク全体の計算能力(ハッシュパワー)の過半数(51%以上)を支配することで、不正な取引の承認、正当な取引の拒否、過去の取引の改ざん(二重支払いなど)といった不正行為を行うことが可能になる攻撃です。

特に、参加者が少なく計算能力が集中しやすい小規模なパブリックチェーンでは、この攻撃のリスクが高まります。ビットコインのような大規模なネットワークでは、51%の計算能力を確保することは極めて困難かつコストがかかるため、現実的には起こりにくいとされていますが、理論上のリスクとして存在します。この他にも、スマートコントラクトのプログラム上の脆弱性を突いた攻撃など、ブロックチェーン特有のセキュリティリスクも存在するため、継続的な監視と対策が必要です。

個人情報が流出した際、消せなくなる

前述の「1度データを記録すると、消去や隠匿ができない」というデメリットと関連しますが、万が一、ブロックチェーン上に個人情報が記録され、それが流出してしまった場合、その情報を完全に消去することが極めて困難であるという深刻な問題があります。

個人情報保護の観点からは、情報主体からの削除要求に応じて適切に対応できる体制が求められますが、ブロックチェーンの特性上、これに応えることが難しい場合があります。

そのため、ブロックチェーン上で個人情報を扱う際には、情報そのものはオフチェーン(ブロックチェーン外)で管理し、ブロックチェーン上にはその情報への参照やハッシュ値のみを記録するなどの対策が不可欠です。

また、どの種類のブロックチェーンを利用するか(パブリックかプライベートかなど)を慎重に検討することも重要です。これらのプライバシー保護を考慮した設計により、ブロックチェーンの利点を活かしながらも、個人情報の適切な管理を両立させることが可能になります。

ブロックチェーンをITの時代に学ぶメリット

ブロックチェーンは、単なる技術トレンドのひとつではなく、社会や経済の仕組みを根底から変革する可能性を秘めた基盤技術です。このような変革の時代において、ブロックチェーンを学ぶことは、自身のキャリアやビジネスに大きなアドバンテージをもたらすでしょう。

新たなビジネスモデルを構想する洞察力が身に付く

ブロックチェーン技術を学ぶことで、従来の常識にとらわれない、新しいビジネスモデルやサービスを構想するための洞察力が養われます。

ブロックチェーンが持つ非中央集権性、透明性、改ざん耐性といった特性は、既存のビジネスプロセスを効率化するだけでなく、これまで実現不可能だった新しい価値提供の仕組みを生み出す原動力となります。

テクノロジー起点の戦略立案能力が向上する

現代のビジネスにおいて、テクノロジーを理解し、それを戦略に活かす能力は不可欠です。ブロックチェーンのような先端技術を学ぶことは、テクノロジーを起点とした事業戦略や経営戦略を立案する能力を高めます。その本質を理解することで、表面的な技術導入にとどまらない、持続的な成長に繋がる戦略を描くことができるようになります。

市場価値の高い専門性とキャリアの選択肢が広がる

ブロックチェーン技術は、金融、製造、物流、医療、エンターテイメントなど、あらゆる産業での活用が期待されており、その専門知識を持つ人材への需要は急速に高まっています。ブロックチェーンを学ぶことは、市場価値の高い専門性を身に付け、自身のキャリアにおける選択肢を大きく広げることにつながります。

グロービス経営大学院で「テクノベート」を学ぶ

グロービス経営大学院では、テクノロジーの進化がビジネスに与える影響を深く理解し、それを戦略的に活用できるリーダーの育成を目指しています。

とくに注目されているのが「テクノベート」領域です。テクノベートとは、テクノロジー(Technology)とイノベーション(Innovation)を融合させたグロービスの造語で、テクノロジーの本質を理解し、その可能性をビジネス変革に活用する能力を身に付けることを目的としています。

テクノベート基礎

モノ・カネ領域として、テクノベートがビジネスにもたらす可能性の理解、思考領域として、AIの理解と時代に合わせた問題解決アプローチ、ヒト領域として、テクノベート時代に求められるリーダーシップやキャリアについて学びます。デジタル時代に求められる基礎となるビジネス・リテラシーを身に付けることを目的とします。

>詳細はこちら

>実際に受講した学生の鼎談インタビュー記事はこちら

テクノベート・ストラテジー

本科目では、ICTの劇的な進歩によって生じた経済原理をひもとき、従来の企業戦略の定石とされてきた考え方とは異なる「テクノベート」時代の企業戦略の定石を明らかにし、それに基づいた戦略思考を身に付けることを狙いとしています。

>詳細はこちら

>実際に受講した学生の鼎談インタビュー記事はこちら

AI&データサイエンス

AIを賢く活用するために最先端の機械学習の自動化ツールを実際に操作しながら、ハンズオンでデータ処理と機械学習の流れを体感します。AIを賢く活用するために必須となるデータサイエンス分野の先端的な知見を、ビジネスリーダーにとって必要な要所に絞り込んで学びます。

>詳細はこちら

ビジネス・サイバーセキュリティ

テクノベート時代、サイバーセキュリティはIT専門家だけでなく経営全体にとって重要なテーマです。本クラスでは経営の観点からリスクと機会をとらえ、基盤技術、危機に備える組織マネジメント、危機対応の考え方など、ビジネスリーダーに求められるサイバーセキュリティのリテラシー向上を目指します。

>詳細はこちら

これらの科目を通じて、単なる技術の理解にとどまらず、テクノロジーを起点とした事業戦略の立案、新しいビジネスモデルの構想、そして組織変革を牽引するリーダーシップを身に付けることができます。ご興味をお持ちの方は、ぜひ体験クラス&説明会にご参加ください。

まとめ

本記事では、ブロックチェーンの基本的な概念から、その仕組み、種類、メリット・デメリット、そして具体的な活用事例に至るまで、網羅的に解説してきました。

変化の激しい現代において、ブロックチェーンのような先端技術を理解し、その可能性を見抜く力は、ビジネスパーソンにとって不可欠なスキルです。技術の本質を理解することで、表面的なブームに惑わされることなく、真の価値創造の機会を見つけることができるでしょう。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

ご希望の受講形式と同じ形式での参加をおすすめしています。

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 6/12(木) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 6/21(土) 13:00~16:00

    オープンキャンパス

    開催:オンライン(Zoom開催) ※体験クラス・卒業生スピーチあり
    本科(MBA)への進学や入試への出願を検討している方向け

  • 6/25(水) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。