【名前】白須 誠
【勤務先】住友商事株式会社
【入学年】2015年
<自己紹介>
2009年4月住友商事株式会社に入社。入社以来、一貫してリスクマネジメントを担当。現在はリスクマネジメント第二部にて、資源・エネルギー分野を中心に大型投資案件の審査に従事。グロービス経営大学院2015年入学、2017年修了。
■GMS、単科生、そして本科へ
私は新卒で住友商事に入社し、約3年半、全社的な視点でリスクマネジメントに関する社内制度設計やシステム開発等に従事しました。その後、中部支社に異動し、金属事業部門のリスクマネジメント担当として、主に自動車メーカー向け鋼板取引に係る与信審査、法務関連サポート等を行うこととなりました。
与信審査では取引先の信用力を様々な視点で評価し、自社がどこまでリスクを取るのか判断する必要があります。一方、与信判断に説得力を持たせることが出来ない壁に突き当たっていました。原因は経営戦略、財務会計等、経営全般に関する知識・スキル不足であり、体系的に学習する機会が必要だと感じました。
書籍等による自学自習では限界があるとも感じていた中、会社派遣でGMSに通学していた同僚が事前課題(ケーススタディ)に取り組む場面に遭遇し、課題を見せてもらったところ、直感的に「これは面白そうだ!」と思いました。経営の意思決定を迫られているケーススタディの登場人物に、自分自身が重なったのです。「実践的な学びを得られる」との同僚の後押しもあり、GMSの受講を決めました。
最初に受講した科目は「マーケティング・経営戦略基礎」です。事前課題は、正解ではなく「個人の意見・判断」を問うものであり非常にタフでしたが、自分が納得出来るまで推敲を重ねました。ディスカッションを中心に進行するクラスの中で、経営の最前線で活躍する講師陣、他の受講生から自分の回答に対して指摘が入るたび、説得力のある反論が出来ない自分の至らなさを痛感しましたが、それ以上に「そのような見方もあるのか」という新たな気付きが得られ、「互いに学び合う」面白さを実感したのです。
また、クラス終了後の懇親会を通じて、講師や他の受講生と話す中で、個人の想い、組織文化の違いなどに触れ、「人とのつながりを創る」事も自分の視野を広げる上で大切だと気付きました。
GMSの受講を重ねる中で、「学びを深め、人とのつながりを築いていきたい」との想いが強まり、グロービス経営大学院 本科への出願を決意。(後に本科同期生となるのですが)「マーケティング・経営戦略基礎」クラスで出会った仲間と想いを語り合い、互いの願書を添削したりしました。無事、本科入学が決まった後は、単科生として本科生と共に学ぶ中で更に刺激を受け、モチベーションの高まりを感じました。
■実践的な学びが、経験ゼロの業務でトップスピードを生んだ グロービスの受講を開始してから1年が経過した頃、
私はリスクマネジメント担当として、
自動車業界向けに金属製品を取り扱う営業部署をサポートしていま
した。ある時、担当営業部署から「自社とパートナー(
国内自動車部品メーカー)
の2社で中国に設立済の自動車部品事業に関して、
出資持分買い増しを検討したいので側面支援をお願いしたい」と、
事業価値評価や法務関連等、
様々な面でサポートを求められました。
実際の製造現場に赴いた経験も、
ましてや事業価値を評価した経験もない中、会計・
ファイナンス等の知識に加え、
実際の製造販売オペレーションに関する深い理解を求められるとい
う、私にとっては非常にチャレンジングな案件でした。
実務経験こそないものの、
経営戦略、
アカウンティング、
ファイナンス等、
ケーススタディやディスカッションを通じて得たグロービスの学び
が活かされました。例えば経営戦略の視点では、
中国自動車部品市場における合弁事業の競争優位性、
ポジションを理解した上で、
合弁事業の売上高やコストの将来予測に関する妥当性を裏付ける必
要がありました。具体的には、規模、成長性、
収益性等の観点から中国自動車部品市場の業界構造を分析すると共
に、顧客(自動車メーカー)
が部品調達に際して重要視するポイントを理解しました。加えて、
営業部署の担当者と共に合弁事業の製造現場を訪問し、
従業員の方々にヒアリングしながら、受注から生産、
納品に至るオペレーションフローを把握し、
品質やコスト面等でどのように競争優位性を構築しているのか理解
しました。
得られた情報、評価結果を予測財務諸表に落とし込み、
事業価値評価を実施した結果、「今回の株式取得価格は妥当」
との結論に至りました。最終的に稟議書にまとめ上げ、
社内で投資実行に関する意思決定がなされた時は非常に感慨深かっ
たです。実務経験はなくとも、
具体的なアウトプットのイメージを持ち、
スピード感を持って行動出来たのは、
ケーススタディやディスカッションを中心としたグロービスのカリ
キュラムが極めて実践的であることの証だと考えています。
■学ぶとは変化すること。「学びの習慣」が大きな財産に グロービス生活を通じて得られたことは「学びの習慣」
という言葉に集約されます。
経営の学びの範囲は実に広いです。仕事以外でも、
対人関係やチーム運営など様々な場面で応用できます。また、
様々な人と意見交換・議論する中で、
自分が知らない世界が見えてくると共に、
深いつながりが生まれます。
特に印象に残っているクラスは、「
グローバル・パースペクティブ」という国・地域の動向を、「戦略×
コンテクスト×パフォーマンス」という3つの軸で分析・
評価するクラスです。政治・経済・社会・文化・宗教・
歴史等の諸要素間の因果関係を捉え、
国の指導者の立場でどのように行動するかを考える、
実にエキサイティングなクラスでした。
時代の変化が加速する現代だからこそ、様々な「視野・視座・
視点」で物事のつながりを紐解くことが重要です。クラス受講後、
日常に溢れる膨大な情報が自然と自分の中で取捨選択され、
情報間のつながり、
裏側にあるメカニズムに意識が向くようになりました。
「どのような意味があるのだろうか」「
どのように活かせるだろうか」
日々直面する出来事をやり過ごさずに自分事として捉え、
新しい気付きを得る。何からでも学ぶという「学びの習慣」は、
大きな財産となっています。
■あすか委員を通じて学んだ「最高のチーム」の作り方
グロービス経営大学院では、毎年「あすか会議」というカンファレンスを開催しており、私は運営を担う「あすか委員」として学生主体の企画である「パワーモーニング」を担当しました。
約3ヶ月という短期間で、約1000名の参加者が集う企画を成功に導かなければならない中、あすか委員のメンバーは、東京・大阪・名古屋・仙台・福岡の複数拠点に分散しており、コミュニケーションの難しさがありました。
そんな中、私は「各人がプロセスを楽しみ、恐れずに正面から議論し、互いに支援し合って結果を出す」という最高のチームを目指し、以下の3点を徹底して取り組みました。
①各人が目標にコミットし、素早く結果を出す(=プロトタイプを素早く作り、フィードバックを受けて素早く改善する)
②最初の一言は"ありがとう"(=互いを信頼し、些細なことにも感謝する。)
③包容力(=リーダーは自律的に活動出来る場を整え、後は適度に気を配りながら、極力何もしない。いざという時はバックアップできるように腹を括る。)
特に②は重要で、「ありがとう」の一言が、"互いに学び支援する"というチームの文化を形成する原動力になったと思います。仕事でも仕事以外でも、個人・組織として行動する上で私の軸となっています。
大変な取り組みではありましたが、結果的には、大きなトラブルもなく無事にパワーモーニングを終えることができ、朝7時から生き生きとした表情で議論が交わされる熱気に満ちたその光景は、今でも忘れられません。
■今後の目標
「万人の心身が健やかで、持続可能な社会を創造する」これが私の志です。
「いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいたほうがいい。」
これは、ベストセラーとなった「LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略~」(著:リンダ・グラットン)の一節です。漫然と長く生きれば良いということではないですし、人工知能(AI)の登場により、人間が今まで担っていた仕事の一部はAIに代替され、人の役割も変化していきます。人口増加等を背景に地球環境への負荷は高まり、社会情勢も不透明さを増すばかりです。また、私は大学で環境経済学という分野を専攻しており、「持続可能性」という概念に心惹かれていました。こうした問題意識、興味関心が一つとなり、以下の問いに対する答えを導きたいと思うようになりました。
「100年時代を1人1人が心身共に"健やかに"過ごすためには、どうすればよいのだろうか?」
「現在のライフスタイルは、果たして持続可能なのだろうか?」
グロービスでの生活を通じて、人生・生活を豊かにする要素が見つかりました。それは、「能力開発に励み、人とつながり、建設的な議論を通じて共創する」中で、自分自身を表現し、誰かに対して少しでも貢献するということです。現在、本業の傍、「AI・食・農業・発酵・ヨガ・本」を軸に様々なコミュニティに属しながら活動しています。「色々と試してみる。遊びながら見つける。続ける中で萌芽を育てる。」こうしたライフスタイルにシフトしながら、目標に向かって一歩ずつ進んでいきたいと思います。
■最後に
この記事を読んで下さっている方の中には、MBAについてこう考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「経営って何だか難しそう」「正直ついていけるか不安」
かく言う私自身もそうでした。だからこそ「チャンスしかありません。」「現在を起点にして未来を考えるのではなく、未来を起点にして現在を考えませんか?」ということを伝えたいです。最初は分からないと思うことばかりかもしれませんが、それで良いと思うのです。正直に打ち明ければ、手を差し伸べてくれる仲間が必ずそこにいます。
「疑問を持つこと。何が分からないのか言語化すること。問いを立てること。問いを共有すること。」
それこそが一番価値あることだと思っています。皆さんが疑問に思うことは、他の方も疑問に思っているかもしれません。理解している方からすれば、「どうすれば理解してもらえるか」を考えるきっかけになります。自ら意味のある問いを立て、問いを解決していく。その積み重ねが自らの人生を悔いなく生き抜くことではないでしょうか。その方法の1つとして、グロービスでの学びは必ず役立つと思います。まずは体験からでも良いと思いますので、是非、肌で感じて頂きたいと思います。そして、少しでも可能性を感じたのであれば、ぜひMBAにチャンレジしてみてください!