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投稿日:2026年05月14日

投稿日:2026年05月14日

【グロービス産官学連携クラブインタビュー】「熱量」と「伴走」で、ディープテックの事業化に挑む

竹内 健吾
株式会社オキサイド執行役員 企画本部長
グロービス経営大学院 英語MBAプログラム2021年卒業
GIAC(グロービス産官学連携クラブ)幹事
池田 桃香
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
【グロービス産官学連携クラブインタビュー】「熱量」と「伴走」で、ディープテックの事業化に挑む

研究者が生み出した技術を、どう事業へとつなげるか。大学発スタートアップが増える一方で、経営ノウハウの不足は多くの現場で共通の課題です。その課題に向き合おうと、グロービス経営大学院の在校生・卒業生たちが有志で立ち上げたのが、GIAC(グロービス産官学連携クラブ)です。研究シーズを持つ大学や研究機関と、経営を学んだMBA人材をつなぎ、事業プランをゼロからともにつくることを目指しています。

2025年からは横浜市・市内3大学と連携し、産・官・学が一体となった新たなプログラムを始動させました。前回の記事では、横浜市・横浜国立大学の担当者の視点からこの取り組みの背景を紹介しました。今回は、GIACを立ち上げ、プログラムを運営してきた幹事メンバーの竹内健吾さんに話を聞きます。ディープテック系スタートアップの経営陣として最前線に立ちながら、卒業生としてGIACを引っ張ってきた竹内さんが、クラブの立ち上げから横浜市との連携、今後の展望までを率直に語ってくれました。

ディープテックを語れる場が、グロービスになかった

GIAC(グロービス産官学連携クラブ)立ち上げのきっかけは、2021年のオンラインあすか会議※。産官学連携をテーマにしたナイトセッションのサポーターを務めた竹内さんは、そこで初めて「グロービスの中にも、産学連携やディープテックに関心を持つ人が意外に多い」ことを実感したといいます。

※「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。

竹内「その頃、私は京都大学発のディープテックスタートアップに転職して1年ほどが経ったタイミングでした。ど真ん中にいる立場として『これは大事なテーマだ』という実感はあったのですが、グロービスの中でディープテックや大学発スタートアップについて話せる場がほとんどなかった。周りを見渡しても、自分のように大学発のスタートアップにいる人は当時ほとんどいなかったんです。

そのナイトセッションで、GIACの共同立ち上げメンバーとなる仲間と出会い、『グロービスで経営を学んだ人材と、研究シーズを持つ研究者が協働できる場をつくれないか』という想いを共有するようになりました」

共同立ち上げメンバーも、同じ課題感を持っていました。産学連携の現場では、外部の支援者が表面的な助言だけして去っていくケースや、イベントだけ実施されるがその後の事業化が進まないケースも少なくない。グロービスで経営を学んだ人材が、1回きりのアイデア出しで終わらず、3〜6ヶ月間は伴走できる仕組みをつくりたい——それがGIACの原点でした。

外資系メーカーから、大学発スタートアップへ

竹内さん自身のキャリアも、GIACの立ち上げと深く重なっています。グロービス入学前は外資系半導体メーカーで日本の営業・マーケティング責任者を務めていましたが、グロービスで志を掘り下げる中で、「日本発の企業として世界に出ていく事業に携わりたい」という思いが固まっていきました。

竹内「ちょうどその時、京都大学発の半導体材料スタートアップと出会い、転職を決めました。3年間の単身赴任でしたし、給与もかなり下がりました。しかしそれ以上に、資金調達交渉や事業会社との提携など、営業・マーケティングの枠では担えなかった仕事を経験できた。今は別のアカデミア発ディープテックスタートアップの執行役員を務めていますが、グロービス入学時には5年後に自分がこうなっているとは全く想像していませんでした」

「実績のない段階で、組むメリットはありません」

こうして動き始めたGIACでしたが、最初の壁はすぐに現れました。連携を相談しに産学連携の第一人者のもとを訪ねたところ、「すでにさまざまな機関と連携している中で、実績がない団体と手を組むメリットはありません」とはっきり言われたのです。

竹内「振り返ると、あの言葉で大事なことに気が付きました。いきなり大御所と組もうとするのではなく、まず自分たちで実績を積み重ねるしかないと腹をくくれた。2021年中は活動の形を模索しながら準備を進め、2022年から本格的に動き始めました。

当時の日本のディープテック界隈は、2022〜23年から一気に盛り上がる直前の時期でした。知っている人は知っているけれど、まだブームになっていない。だからこそ、今動かなければという気持ちがありました」

「有志だからこそできる」ことは何か

2022年から本格的に動き始めたGIACは、国内の研究機関との取り組みから最初の「型」をつくりました。研究シーズを持つ研究者とMBA生がチームを組み、事業プランをゼロから練り上げるプログラムです。その型をもとに、関東・関西・東北・沖縄など複数の大学・研究機関へと連携先を広げていきました。

竹内「補助金を獲得したチームもあれば、MBA生がスタートアップに実際に社員として参画するケースも生まれました。並行して、ディープテック系のVCや研究者支援団体と組んだ別のプログラムも動かしていました。研究者とMBA生をマッチングして3ヶ月間で事業プランをつくり、デモデイで発表するという仕組みです。投資には至らなかったものの、5チーム中4チームが事業化に向けて前向きに動いた。手応えを感じた結果でした」

ところが2023年ごろから、外部環境が変わり始めます。同じようなディープテックと経営人材のマッチングに取り組む専業のVCやアクセラレーターが次々と登場してきたのです。「自分たちにしかできないことは何か」——そんな問いがGIAC幹事メンバーの間で生まれるようになりました。

竹内「プログラムの質や講師の陣容では、専業のプロには正直勝てません。でも、有志だからこそのフットワークの軽さと熱量がある。2、3人で話し合ったことをすぐに動きに変えられる。その自由度とスピード感こそが、自分たちの強みだと思っています」

その熱量の源泉は、メンバーの志にあるといいます。ディープテックは成果が出るまでに時間がかかる領域。短期的な利益を求めるなら、もっと早く結果が出る選択肢は他にもあります。それでも幹事メンバーが腰を据えて取り組み続けられるのは、グロービスで志を磨く中で「社会をこう変えたい」という思いを真剣に考えてきた人たちが集まっているからです。

産官学の“空白地帯”に生まれた、新しい連携のかたち

次の一手を模索していたGIACに、横浜市との連携という新たな可能性が開けてきました。竹内さんが2023年夏に京都から横浜へ戻っていたことも、この動きを後押しします。

竹内「2024年半ばごろに、『横浜という場でGIACの活動ができないか』と考え始めました。横浜は大学も企業も多いのに、大学発のディープテックスタートアップという文脈ではほとんど空白地帯でした。東大周辺、京大、東北大、阪大……という文脈で語られることが多く、横浜のイメージはなかった。だからこそ、やる意味があると思いました」

さらに、産官学の「官」を加えた仕組みづくりが課題になっていました。大学と1対1の連携はできていたものの、補助金の活用や実証実験の場づくりなど、行政が絡むことで初めて実現できることがある。自治体を巻き込むことで、地域のエコシステムとして広げていける——そんな構想が生まれていました。

横浜市という求心力が、点と点をつないだ

きっかけは、グロービス経営大学院の横浜キャンパスで開催していたイベントでした。そこで竹内さんが横浜市の担当者と出会ったことが、今回のプログラムへとつながっていきます。

横浜市が率先してコミットすることで、プログラムは「公式な仕組み」として認識されるようになりました。それまでは個別の研究者が関心を持ってくれても、大学や研究機関に組織として動いてもらうことはなかなか難しかった。ところが横浜市が旗を振ることで、大学の事務局もプログラムを正式な枠組みとして受け止めてくれ、3大学の参加に至ったといいます。

プログラムの説明を行う竹内さん

竹内「普段は近しい分野の研究者とつながることが多い大学の先生方が、同じ地域でも全く異なる分野の先生と出会い、横断的に話し合える場が生まれました。行政という求心力があってこそで、私たちが個別に3校へ飛び込んでいたら絶対に実現しなかったと思います」

経営人材の参加者も、過去のプログラムと比べて大きく増えました。キックオフには30名以上が集まり、プログラム参加者も15名ほどに。横浜市が産官学連携に本腰を入れるという事実と、ディープテックスタートアップの「空白地帯」だった横浜で新たな動きが生まれるという目新しさが、関係するコミュニティの関心を引いたといいます。

竹内「本業以外に時間を割いてディープテックの事業化支援に関わっている。そういう人が世の中にいるんだ、という事実自体が、行政や大学の担当者には新鮮に映ったようでした。営利目的ではない有志の集団が、経営の知見を持ってこういう活動をしているということを、横浜市の方に見てもらえたのは大きかったと思います」

1年かけてつくった、連携のリアル

ただし、ここまで来るには時間がかかりました。横浜市との連携協議は、実に1年を要したのです。

竹内「定款も規約もない任意団体との連携は、行政の手続き上かなり難しい部分がありました。それでも横浜市の担当者が新しい取り組みに対して前向きに動いてくれて、GIACに対してプログラム実施の協力依頼を正式に発効してくれました。前例のない連携形態にもかかわらず、最後まで粘り強く動いてくれた。その姿勢が、最終的にこのプロジェクトを前に進めたと思っています。

同じような課題を抱える地方自治体にとっても、ひとつのモデルになれるのではないかと思っています。行政と動くということのリアルを、身をもって知った経験でした」

さらに、グロービス以外で起業や新規事業への思いを共有するコミュニティを巻き込めたことも、このプロジェクトを前に進める大きな力になりました。

竹内「グロービス以外では、起業参謀集団であるSAA(スタートアップ・アドバイザー・アカデミー)のディープテック分科会のメンバーも、このプロジェクトに参画してくれました。SAAは、『起業の科学』で知られる田所雅之さんが主催するコミュニティで、私自身、その中でディープテック領域に関心を持つメンバーによる分科会の運営リーダーを務めていました。そこから、起業や新規事業開発において豊富な経験を持つメンバーが加わってくれたことで、プロジェクトはさらに力強く進んでいったと思います。」

「0→0.1」から始まる、事業化への道

こうした連携を重ねながら、GIACが一貫して大切にしてきた考え方があります。それが「0→0.1起業」です。一歩目を0→1にしようとすると、大半の人は動けない。でも0.1なら踏み出せる。失敗しても戻りやすく、気付いたら1になっていた——そういうプロセスをつくることが重要だと語ります。

研究者が事業化に踏み出すためには、「できる感」の醸成が鍵になります。まず同じ立場の人の話を聞いて面白そうだと思う。次に基礎的なスキルを学ぶ。そして実際にやってみる——この3ステップを経て、初めて「自分にもできるかもしれない」という感覚が生まれる。GIACのプログラムは、そこに向けて設計されています。

こうした活動を支えているのが、グロービスでの学びです。事業プランをゼロからつくることは、その学びが活きる最たる例と言えるでしょう。グロービスではベンチャー戦略や事業プランニングを体系的に学ぶ科目があるため、メンバーの多くがその素地を持っています。

加えて、産官学連携の現場では、関わる人それぞれが持つ前提が異なります。「そもそも何が問題なのか」を正確に問い直す力で関係者の認識を丁寧に揃え、ひとつの方向に向かっていく——そのプロセスが、グロービスで培ったスキルの中でも特に実践で活きているといいます。また、幹事メンバーの多くが、グロービスで「社会をこう変えたい」という思いを一度は真剣に考えてきた人たちであることも、時間のかかるディープテックの領域で腰を据えて向き合い続けられる理由のひとつです。

竹内「グロービスで志を磨いた仲間が集まり、そこを起点に学外のネットワークともつながっていった。グロービスで自分が本当にやりたいことを掘り下げていくと、日本の産業や社会課題に向き合いたいという思いにたどり着く人が多い。だから自然と、同じ方向を向いた人たちが集まってくる。それがGIACの今につながっていると思います」

プログラムの説明を行う竹内さん

横浜から、全国へ

2026年3月末、参加チームが事業プランを発表する最終発表会を控えています(執筆当時)。今回は横浜市が会場を用意し、行政・大学・企業の関係者を前にリアルな場でプレゼンする形式です。発表の場が整っていることで参加者の準備への本気度も自ずと上がると、GIACのメンバーは期待を込めます。

竹内「1つでも2つでも、事業化に向けて具体的に動くものを生み出したい。チームが実際に起業するのがベストですが、それだけがゴールではありません。研究者の方が自ら起業を検討する大きな一歩になるでも、事業プランをもとに補助金申請へ進むでも、横浜市内の企業が新規事業として採択するでもいい。社会実装に向けて何かが動くこと——それが今回のプロジェクトの目指すところです」

今回の取り組みを起点に、横浜市との連携をより発展させる形で続けていきたいと竹内さんは言います。さらに視野は横浜にとどまりません。同じような課題——大学の技術シーズをどう事業化につなげるか——を抱える自治体は、全国に数多くあるはずです。

竹内「今回初めて行政と組む形ができました。横浜市でできたなら、日本の他の地域でも同じことができるはず。同じ課題感を持つ自治体や、思いを共にする団体と緩やかに組みながら、少しずつ広げていけたらと思っています」

こうした活動に携わることで得られるものは少なくないと、幹事メンバーは口をそろえます。グロービスで学んだことを実践の場で試せること、大学・自治体を含む多様なネットワークが広がること、そして今この時期にしかないディープテック振興の大きな流れに当事者として乗れること。

竹内「この活動に共感してくれる仲間も、引き続き募集しています。メンバーはディープテックスタートアップの経営や事業開発のど真ん中にいる人間ばかり。幹事が集まるミーティングの後半は、最前線でしか聞けないリアルな知見の共有の場になっています。ディープテックや大学発スタートアップに関わりたいという方は、ぜひ一緒にやりましょう」

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

ご希望の受講形式と同じ形式での参加をおすすめしています。

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 5/26(火) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 6/6(土) 10:00~12:00

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 6/10(水) 19:30~21:30

    オープンキャンパス

    開催:オンライン(Zoom開催) ※体験クラスはありません。
    グロービスMBAプログラムへの進学(出願)を検討している方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。

竹内 健吾

株式会社オキサイド執行役員 企画本部長
グロービス経営大学院 英語MBAプログラム2021年卒業
GIAC(グロービス産官学連携クラブ)幹事

池田 桃香

グロービス コンテンツオウンドメディアチーム