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投稿日:2025年05月29日
投稿日:2025年05月29日
【教員×学生 鼎談】ビジネスを俯瞰する「目」を養う——「マーケティング・経営戦略基礎」で学ぶビジネスのOS
スピーカー
- 柳井 悠太さん
- 在校生 東京校・2024年入学
- 木村 成志さん
- 在校生 東京校・2025年入学
- 高田 穣さん
- 在校生 東京校・2024年入学
モデレーター
- 平野 善隆
- グロービス経営大学院 教員
ビジネス環境の変化が加速する現代、単に目の前の業務をこなすだけでなく、事業や戦略を俯瞰して「本質的な課題」を見抜く力が求められています。市場、顧客、競合を深く理解し、そこから戦略を立て、実行していく——そんな思考プロセスは、あらゆるビジネスパーソンに必要な基本スキルです。
グロービス経営大学院の「マーケティング・経営戦略基礎」は、ビジネスを俯瞰して捉える「目」を養う科目です。単なる理論やフレームワークの暗記ではなく、実際のケースを通じて「なぜそれを使うのか」「どう活用すれば価値を生み出せるのか」を体得する場として、多くの学生が学び始めに受講する科目として選んでいます。ビジネスの現場では、状況や相手ごとに求められる課題解決のアプローチが異なります。ただ知識を持っているだけでは、複雑な課題や変化に柔軟に対応できません。「どのフレームワークを、どんな場面で、なぜ使うのか」を自ら考え抜き、現場で実践する力があってこそ、初めて“成果につながります。
本記事では、グロービス経営大学院の教員と実際に「マーケティング・経営戦略基礎」を受講された学生の鼎談インタビューを通して、受講のきっかけや得られた気付き、そして実務にどう活かされているかをご紹介します。経営やマーケティングに関わる方に限らず、あらゆる業種・職種の方に、ぜひご覧いただきたい内容です。
ビジネスを学ぶための"OS"となる科目
平野 善隆:グロービスでは、多くの方が初めに受講する科目が大きく2つあります。ひとつは論理思考を鍛える「クリティカル・シンキング」、もうひとつがこの「マーケティング・経営戦略基礎」です。
なぜこの科目が入口として相応しいのか。それは、ビジネスを俯瞰して見る「目」を養う、まさに基礎中の基礎だからです。この科目では、ビジネス環境をどう分析し、顧客にどのように価値を届け、市場でどう選ばれるのかという本質的な問いに向き合います。
グロービスでは「クリティカル・シンキング」を"学びのOS"と呼んでいます。思考力という「基盤(OS:オペレーティングシステム)」の上に、ヒト・モノ・カネといった領域の科目が「アプリケーション」として乗る、という例えです。しかし私は、この「マーケティング・経営戦略基礎」もまた、"ビジネスを学ぶ上での重要なOS"だと考えています。
なぜなら、皆さんが日々の業務で直面する問題に向き合うとき、最も必要なのは目の前の仕事だけでなく、一歩引いた視点でビジネス環境全体を捉えることだからです。外部環境はどうなっているか、自社は今どのようなポジションにあるのか。その中で本質的な経営課題は何か。これらを見抜き、現場の施策に落とし込んでいく——そのような思考プロセスがビジネスパーソンには欠かせません。
この科目では、外部環境分析から、自社の状況を踏まえた課題設定、解決策の検討、そして顧客への価値提供に至るまでの一連の流れを学びます。これから経営やビジネスを学ぼうとする方、特に入門者にとって必須の科目といえるでしょう。
現場経験や独学だけでは超えられなかった壁
平野:では、実際に「マーケティング・経営戦略基礎」を受講された3名の方に、その学びと気付きについてお話を伺っていきましょう。まずは、皆さんが科目を受講されたきっかけや、受講前に感じていた不安についてお聞かせください。
柳井 悠太さん(以下、敬称略):入社以来ずっと営業部署にいる中で、お客さまへの提案内容に物足りなさを感じていたことがきっかけです。自分なりに分析を行ってから提案に臨んでいましたが、どこか浅い印象が拭えませんでした。
営業として「刺さる提案」をするには、お客さまである経営層がどんなことを考え、どんな課題を持ち、それに対してどんな打ち手を取っているのか。そうした基本的な経営知識を、自分自身がきちんと理解する必要があると考えたのです。
しかし受講する前は、営業現場にずっといた自分が、マーケティングや経営戦略を理解できるのかという不安もありました。ただ、「クリティカル・シンキング」を受講して、教員の方とのやり取りやクラスメートとのディスカッションを経験したことで、このスタイルなら学べそうだと思ったのです。
木村 成志さん(以下、敬称略):私には大きく2つの理由がありました。1つ目は、仕事で企業の有価証券報告書やIR資料を見る中で、そこに書かれている会社の戦略や方向性が理解できないことがあったのです。自社についても同様で、今どんな事業をやっていて、それが何につながるのか、何が課題なのか。こうしたことを理解していない自分自身に対して危機感を覚えました。
2つ目は、営業時代に経営者と商談する機会があったのですが、自身の知識不足で会話のレベルが合っていないと感じました。いくら経営の話を対等にしたいと思っていても、経営者に何が刺さるのか、どんな課題を抱えているのか、そうした引き出しが自分の中になかった。だからこそ学ぶ必要があると思いました。
高田 穣さん(以下、敬称略):私も事業会社の営業としてのキャリアが長かったのですが、2年前に親会社の経営企画部門に異動になりました。しかし経営に関する知識の土台がなく、「どう仕事をすればいいのか」「この業務における自分の価値は何なのか」というところから始まりました。そんなとき、会社の先輩からグロービスを紹介されたのです。調べてみると、ビジネスの第一線で活躍する教員から学べると知り、興味を持ちました。
営業時代はOJTだけでも成果を出せていましたが、経営や戦略となると、一定の知識やスキルがないと議論すらできません。そうした危機感を抱き、グロービスの門を叩きました。
平野:グロービス受講前にも、独学で何かチャレンジされたのでしょうか?
高田:もちろん関連する本は読みましたが、フレームワークの使い方が腑に落ちなかったのです。本を読むだけだと分かった気になっても、実際には使いこなせないと痛感しました。
「マーケティング・経営戦略基礎」を受講して、ケースを通じてその企業がどのように経営戦略を展開していったのかを教員やクラスメートと議論する中で、目的や状況に応じたフレームワークの使い方や示唆の出し方への理解が深まりました。実際の事例に即して学べる環境だからこそ、知識が腑に落ちる感覚があったのです。
「機能」では差別化できない時代に必要な視点
平野:次に、皆さんが印象に残った学びや気付きについてお聞かせください。特に印象に残った回の授業(Day1〜Day6)と、なぜそれを選ばれたかをお伺いできればと思います。
柳井:私はDay1が印象に残っています。最初の授業ということもありますが、そこでさまざまなフレームワークをご紹介いただいた中で、「ただフレームワークを使えばいいというものではない」という点が心に残りました。
企業を分析する際には、分析する立場や時代、環境、どこに焦点を当てるのかを最初にしっかり明確にする必要があります。また、分析するときの「問い」と「目的」を明確にすることも重要です。これは「クリティカル・シンキング」の学びとも共通していると感じました。こうした軸がないと、結局浅い分析になってしまうのです。
平野:この科目ではたくさんのフレームワークが登場するので、それをただ覚えようとすると記憶の海に溺れてしまいます。しかし、それぞれのツールが何を目的に使うのか、どう紐づくのかという点を最初に強く意識できたのは大きいですね。
高田:私が特に印象に残ったのはDay2で学んだ、バリューチェーン全体で経営戦略を実行し、顧客への提供価値を実現していくという考え方です。ややもすると部門間で縦割りになったり、責任の押し付け合いになったりしがちですが、バリューチェーン全体でお客さまに価値を提供することが競争優位につながるという視点に感銘を受けました。
平野:経営企画に移られた高田さんにとって、企業や戦略の全体をどう捉えるかは重要な視点ですよね。経営企画部門というとポジション的にどうしても調整役に回りがちで、かえって全体が見えなくなることもありますから。
高田:そうですね。実際にニトリの事例をもとに、企業全体で経営戦略を実現していく意識付けの仕組みがあることを学びました。ここでの学びは今の仕事にも活きています。
平野:経営企画として「人や組織をどう動かすか」という視点も大切ですが、その前提として「会社をどう見るか」「戦略をどう捉えるか」という視点が身に付いたということですね。
柳井:先ほどDay1についてお話ししましたが、マーケティングの基本的な考え方を学んだDay4も印象に残っています。特に「機能的価値だけでなく、情緒的価値も踏まえてターゲット顧客に訴求していくことが大切」という考え方が印象深かったです。
それまでの私は機能的価値に目を向けがちでした。「当社の商品は競合と比べてこの部分がこれだけ優れています」という提案は分かりやすいものの、保険商品はコモディティ化しやすく、結局は「真似されてしまう」「他社と同じではないか」という疑問や、「本当に差別化につながっているのか」というもやもや感がありました。
この授業を通じて、価値の訴求は機能的なものだけではないと知れたことは、大きな気付きでした。また、当たり前のようで実践できていなかった「お客様の立場に立ってニーズを考える」という視点も、改めて意識するようになりました。
平野:保険商品のように機能で勝負すると、どうしても価格競争に陥りがちですよね。「いくらまで安くできるか」という料率の話だけになってしまう。そうした視点の転換ができたことで、実務に変化はありましたか?
柳井:価格競争に陥らないための提案をより意識するようになりました。受講を通じて、自社が提供できる価値や強みを深く考えるようになったのです。
具体的には、価格以外の要素、例えば「事故対応力」や「事故削減のコンサルティング」といった付加価値を前面に出すようになりました。また、何より大切なのは、お客さまにとって本当に必要なものは何かを考えること。必要でないものは売らずに、本当に必要なものを探す姿勢が身に付いたと思います。
木村:私はDay5のバーミキュラのケースが印象に残っています。実はグロービスで学ぶ前にも、外部のマーケティング研修を受けたことがあったんです。そこでは3C分析やPEST分析、SWOT分析などを勉強したものの、「そこから先、何が言えるのか」が分からず、実務で使えませんでした。結局腹落ちせず、使える知識として蓄積されなかったんですね。
しかし今回のバーミキュラのケースは違いました。まず外部の市場分析から始め、企業が置かれている環境などの経営戦略を分析し、そこからセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングなどマーケティングの分析へと考えを進めていく流れが、Day1からの学びとつながっていて非常に納得感がありました。
特に優れていたのは「顧客体験」の部分です。マーケティングで商品を売る際、その商品がお客さまにどう捉えられ、どのような価値体験を生み出すのか。実際の商品をもとにしたケースで、グループワークでも「私だったらこういう言い方をされると嬉しい」「こういうところにメリットを感じて買う」といったさまざまな意見を聞く中で、マーケティングにはストーリーがあり、お客さまには特定のポイントが刺さるのだと実感できました。
実は私、このケースを学んだ後に実際にバーミキュラの製品を購入したのです。ケースで議論した顧客体験を自分自身で体験することができ、リアルな学びを深められました。
平野:マーケティングはリアリティが何より大事ですよね。成功事例の記事をいくら読んでも分かったつもりになるだけで、実際に自分でやろうとすると難しいものです。
木村さんは、自ら顧客になって実際に購入し、どのような感情や体験をするのかを身をもって知ることができた。その体験を通じて得た感覚を、ビジネスの文脈では「どうやって社内で説得力を持たせるか」という課題もありますね。企画として成立させるにはロジックも必要になってくる。つまり、感覚とロジックを行き来しながら形作っていく、それがマーケティングを学ぶ上での本質なのかもしれませんね。
職種を問わず“本当に使える”学びが得られる
平野:最後に、この科目を受講するか検討している方へのメッセージをお願いします。
高田:まずお伝えしたいのは、迷っているなら受けた方がいいということです。私も最初は不安を感じていました。名の知れた企業の方々や、やる気に満ちた学生が多くて、「自分が受けても大丈夫かな」と思う方もいるかもしれません。
しかし、受講を通じて視野が広がり、思考や視座が一段上がるような感覚を掴むことができると思います。本当におすすめの科目です。
木村:特に「経営戦略やマーケティングが得意ではない」と思っている方にこそ受けてほしいと思います。私もほとんど知識ゼロの状態で受講を始めました。しかし、グロービスの授業はリスクフリーで、気軽に意見を言い合ったり、お互いの会社の状況や課題をフレームワークを使ってともに深め合ったりできる環境があります。
ケースは実際の企業の事例をもとにしているので、学んだ翌日から実務で使える内容になっています。気になる方は、迷わずにぜひ一歩踏み出してみてください。
柳井:私も平野さんがおっしゃったように、この「マーケティング・経営戦略基礎」は「クリティカル・シンキング」と同じくらい重要な「ビジネスのOS」だと強く感じています。
実際に、本科生(大学院生)としてグロービスで学ぶ中で、アカウンティングやファイナンスなど他の科目でも「マーケティング・経営戦略基礎」の学びが活きてきます。むしろ、この科目をしっかり押さえておかないと次に進めないと感じることも多いです。
実際にファイナンスを教えている教員の方が言われていたのは、「定量分析は最後で、まず定性分析をしっかりやる。外部環境や事業分析をした上で、最後にその裏付けとして数字を分析するという流れが重要」ということでした。
私のような営業部門の人間を含め、あらゆる業種、あらゆる部門の全てのビジネスパーソンが実務で活用できる学びが得られる科目だと思います。
平野:お三方から素晴らしいメッセージをいただきました。「マーケティング・経営戦略基礎」は、ビジネスの奥行きや幅広さを体感できる科目です。ぜひ受講してみてください。本日はありがとうございました。
編集後記
――「マーケティング・経営戦略基礎」は、グロービス経営大学院の入門科目でありながら、ビジネスの全体像を俯瞰する視点を養う重要な科目です。日々の業務に追われる中でも、一歩引いて全体を見る目、そして顧客の本質的なニーズを捉える視点。これらはどんな職種、どんな業界でも必要とされる普遍的な力です。この科目で得られる「ビジネスのOS」は、キャリアの長い道のりで何度も立ち返るべき原点となるでしょう。
▼「マーケティング・経営戦略基礎」の科目詳細はこちら
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スピーカー
柳井 悠太さん
在校生 東京校・2024年入学
損害保険会社に勤務。入社以来、営業部門でキャリアを積む。現在は製薬・化学業界のグローバル企業を担当する法人営業部門に所属している。
木村 成志さん
在校生 東京校・2025年入学
自動車リース会社に勤務。新卒入社後10年間、法人営業として車両管理や事故削減の提案に従事。現在は本社部門へ異動しリースの審査業務を担当している。
高田 穣さん
在校生 東京校・2024年入学
新卒で専門商社に入社。長く営業を経験した後、2年前に経営企画部門へ異動。現在はグループ内事業会社の経営戦略の企画立案・実行支援に携わっている。
モデレーター
平野 善隆
グロービス経営大学院 教員
住友商事株式会社に入社し、財務経理部門にて発電プラント・電子材料・自動車・建設機械等、幅広いビジネスに従事。海外税務申告や決算業務のみならず、グローバルレベルでの節税スキーム構築など、社内コンサルティングを行う。また、カナダの事業会社に出向し、会計システムの導入や経営管理業務全般に携わる。
その後、グロービスに参画し、法人営業や法人向けプログラムの開発・マーケティングを手掛けるとともに、製薬・食品メーカーを中心に人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・コンサルティングに従事。現在は、主に教員として、「クリティカル・シンキング」等の思考系科目や戦略・マーケティング領域、アカウンティング領域等を担当している。
2016年より少年サッカークラブの経営を担い、会員数を2倍にするなどV字回復を果たした後、元J1リーガーを監督に招聘するなどして戦略転換を図り、さらなる成長を目指すとともに、こどもの健全な成長や地域社会への貢献に寄与すべく、マネジメント業務や現場指導にあたっている。
また、2024年度より小学校のPTA会長に就任し、PTA活動の改革に取り組んでいる。