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投稿日:2025年04月04日
投稿日:2025年04月04日
【卒業生インタビュー】岩国医療センター 長谷川美加氏「どんな仕事も自分事化すれば価値になる」
- 長谷川 美加
- 独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 前看護部長
MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞者の一覧はこちら)。
今回は2024年「特別賞」の受賞者、独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 前看護部長 長谷川 美加氏にインタビュー。授賞式のスピーチで語った「当たり前のことを一つ一つ愚直に行い、スモールウィンを積み重ねてきた」というこれまでのキャリアの歩み、そして今後の展望について聞いた(インタビュアー:清水 香奈慧)。
2024年4月、国から瑞宝双光章を授与
清水:この度は国の勲章である瑞宝双光章の授与、そしてアルムナイ・アワードの受賞、誠におめでとうございます。まずは、受賞された率直なご感想をお聞かせください。
長谷川:勲章のほうは「長年頑張ったね」という賞なので、いわゆる変革や創造という要素はあまりない中で、私には過分な表彰をいただいたと思っています。
グロービスのアルムナイ・アワードについても、正直なところ「本当に私でよいのだろうか」という気持ちがありました。しかし、教員の田久保さんや村尾さんから、「自分が決めたことをずっとやっているというのは価値がある」と背中を押していただき、お受けすることを決めました。
あすか会議でスピーチした際も、至らない部分もあったかもしれませんが、後から「感銘を受けた」と声を掛けてくださる方もいました。素直な気持ちや考えをお話しすることで、皆さんに何かしら伝わったのならよかったのかなと思っています。
自立を目指す中で見つけた、看護師という仕事
清水:最初に、看護師を目指された背景を教えてください。
長谷川:「人の命を救うために」と言えたらかっこいいのですが、当初は全然そういうことではなくて。実は、もともと歴史が好きで、考古学を学びたいと思っていました。しかし、それで生計を立てるのは難しい。そう考えたとき、私の中で何より大事だったのは「自立すること」でした。自分の力で生きていける道を探す中で、いわゆる資格のある免許職種、看護師、栄養士、保育士になることを考えるようになりました。その中でも、働いてお金を稼ぐだけでなく、誰かの助けになれる仕事がしたいと思い、看護師を選んだのです。
でも、東京の看護学校に進学してすぐ、「あぁ、大変なところに来た」と思ったんですよね。厳しい環境だったこともあって、心が折れそうになることもありました。ただ、「免許は絶対取る」と決めていたので、途中で辞めるという選択肢はありませんでした。しかし卒業後、いざ就職を考えたとき、「私はこのまま看護師になってしまって大丈夫なんだろうか」と迷いました。
清水:そこから本格的に看護師を志すことになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
長谷川:看護学校の実習で、患者さんを受け持たせていただいた経験が大きかったですね。患者さんにとって、経験の浅い学生からケアを受けることはメリットではないわけです。私自身、「私がこの人を受け持たなければ、プロの看護師さんにケアしてもらえて、もっと快適に入院生活を過ごせるのではないか」という気持ちがどこかにありました。
しかし、身体を拭くにしても、注射をするにしても、皆さん「いいよ、いいよ。練習しな」と快く言ってくれました。そのおかげで学ばせてもらえた経験や想いを、次の誰かに返したい。もし私がここで辞めてしまったら、患者さんの厚意や善意、そこでの経験がゼロになってしまう。だからこそ、感謝の気持ちとともに、想いに応え続けたいと思いました。
長谷川:もうひとつ、岡山県の旭川児童院という施設で夜勤バイトをした経験も、看護師を志すきっかけになりました。そこは、重症心身障害のある方々が生活する施設で、とくに知的障害の特性が強い方が多くいらっしゃいました。ある日、ひとりの子どもに水分補給をするときに、叩かれそうになって。しかし、その子は誰にでもそうするわけではないので、「なんで私を叩こうとしたのだろう」と考えました。
それから「この子の信頼を絶対獲得してみせる」と火がついて、自分からその子にどんどん関わるようになったんです。すると、何ヶ月後かに、その子が私の手を取って、「お茶」って言ってくれました。叩くのではなく、言葉で伝えてくれて。それが本当に嬉しくて、やっぱり人は関わり方や対応によって変わるのだと実感しました。たぶん、この経験があったからこそ、私は「看護をやっていこう」と決意できたのだと思います。
師長になって知るマネジメントの難しさ
清水:キャリアの中で、看護師長や看護部長としてマネジメントに関わっていた期間も長かったと思います。マネジメント職を歩まれることになったきっかけを教えてください。
長谷川:国立病院は、経験年数等によって師長に登用する試験があります。私も試験を受けるか迷っていたのですが、周囲の先輩やお世話になった指導員の先生、ドクターから「現場で患者さんに向き合うことはもちろん大事なことだけど、それだけでなく、自分が病棟全体をまとめる視点を持つことも重要だよ」と助言をいただきました。その言葉をきっかけに、マネジメントの道に進む決意をしました。
清水:マネジメントを経験した中で、記憶に残っているエピソードや体験はありますか?
長谷川:師長に昇任したのは30歳の頃でした。国立病院では転勤が必須なので、本当に誰ひとり知り合いのいない、仕組みも分からない病院で、師長としての業務をスタートすることになりました。当初は「師長になったのだから、ひとりで頑張らなきゃ」と肩肘を張っていて、人に頼ることに抵抗感がありましたね。
しかし、半年ほど経った頃、自分をよく見せようとすることや、全てを自分でやろうとすることは違うのではないかと気付きました。そもそも病棟というのは、患者さんのケアをしっかり行うためにあって、そこにスタッフたちがいて、私がいる。大切なのは、患者さんにとって最善のケアができているかどうかで、「誰が指示する」「誰が何をする」とかは関係ない。そう覚悟が決まってからは、ようやく肩の力が抜けた感覚がありました。
与えられた仕事を自分事化し、考え、実行し続けることが楽しい
清水:これまでのキャリアの中で挑戦した仕事には、どのようなものがありましたか。
長谷川:振り返ると、自分から飛び込むというよりも、周囲から次々と舞い込んでくる“お題”に向き合う中で、さまざまなことに挑戦する機会をいただきました。
例えば、山口県の湯田温泉病院に勤めていたときは、病院の統廃合に関わりました。これは滅多にない経験でしたが、とある社会福祉法人が病院を買収することになり、スタッフが公務員として国立病院へ行くのか、新体制の病院に残るのかを選択しなければならない状況に直面しました。それに伴い、看護支援システムなどのあらゆる物事の整理や、スタッフへの指導など、多くの調整業務が発生しました。看護部長の指示のもと動くことが多かったものの、状況に応じて柔軟に対応する必要があり、ハードながらも貴重な経験でしたね。
また、島根県の浜田医療センターでは、院長が変わったことで肝胆膵外科の専門チームが新たに加わることになったのですが、それを甘く見ていて事前の準備が全然足りていなくて。今まで対応したことのない手術に看護部としてどうケアしていくのか、というのを必死に考えました。
スタッフ全員で意見を出し合いながら「この曜日とこの曜日に先生たちに大きいオペを組んでもらうから、この日とこの日は夜勤体制を変えよう」「そうするとしばらく夜勤回数が増えるかもしれないから、遅出シフトをこうしよう」「体制が安定するまでの間、大変だけどここまでは頑張ってもらって……」と細かい部分まで考えて実行しました。最初はとても大変でしたが、事故も起こさずにみんなで協力して乗り切ることができましたね。そのとき一緒に働いていた仲間とは、今でも連絡を取り合っており、「あの頃は大変だったけど、一番やりがいがあった」と当時を振り返ることもあります。
清水:そうした難しい課題に対して、長谷川さんご自身が前向きに取り組めたのはなぜでしょうか?
長谷川:やっぱり「いかに自分事として捉えられるか」が大きいですね。自分が働いていく中で、与えられた課題に対して「なんで私がこの仕事をやらなきゃいけないのだろう」ではなく、「患者さんやスタッフ、病院に対するインパクトがどれくらいあるのか」を考える。その上で「もっとこんなことができるんじゃないか」「別のやり方はないだろうか」と考えて抜くことを楽しんでいましたね。どんな仕事も、自分なりに工夫し、前向きに取り組むことで、挑戦のしがいがあるものになる。そんなふうに思っています。
グロービスの学びが自分の世界を広げてくれた
清水:グロービスで学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
長谷川:看護部長に就任するタイミングで、「私が看護部長になって本当にいいのか」という不安があって。経験が長くなると、ある程度の答えが予測できるようになり、つい「それはこうやったらいいよ」と答えを先に提示してしまうことが多かったんです。でも、それでは後輩たちの成長の機会を奪ってしまうのではないかと考えるようになりました。そこで、リーダーシップやフォロワーシップをどう発揮すれば、組織が自律的に動けるようになるのか学びたいと思い、グロービスへの入学を決めました。どうすれば戦艦ヤマトみたいな病院という巨大な組織を動かすことができるのか。「私がこうする」ではなく、スタッフたちが「こうしよう」と自ら考え、行動できる環境をどうつくるのか。そんなことを学びたいという想いがありましたね。
清水:実際に学んでみて、長谷川さんにとって在学生活はどんな価値がありましたか?
長谷川:まずは、学ぶことによって「自分が全く知らなかったことが分かるようになる」というのがとても楽しかったですね。とくに大学院(本科)に入学した時点では、看護部長として徳島にいたので、副看護部長・師長にも学んだことを共有して、「これやってみよう」と、実際の業務に活かせる環境があったのは大きかったです。
また、医療の世界は日進月歩で進んでいくので、専門的な勉強は常に続けています。しかし、それだけでは、医療分野に対する知識は深まるものの、自分の視野がどうしても限られてしまうことがあります。その点、グロービスでは、全くフィールドの違う人たちと出会い、さまざまな人の考えや価値観に触れる機会がたくさんあります。仕事で悩んでいることを語り合ってみると、「ほかの業界や仕事でも共通する悩みや課題があるんだ」「こういうところは全然知らないな」と色んな発見がありました。
こうした一つ一つの気付きや人との出会いが、自分の世界を広げてくれたと思います。この間、リユニオン(※卒業後の同窓会)に参加しましたが、卒業後も変わらずに気兼ねなく話せる場があるって嬉しいですね。立場や利害関係のようなしがらみを気にすることなく、何年経っても率直に何でも会話ができる関係性でいられるって大事だなと思います。
今後は自分の手で患者さんをケアしたい
清水:これからの志や目標について教えてください。
長谷川:これまで仕事中心の生活を送ってきたので、「丁寧に生活する」とか「ちゃんと自分で料理を作る」とか、今はそういう日々の時間を大切に過ごしています。
ありがたいことに、「看護部長をやりませんか」とお声をかけていただくこともあるのですが、これからは自分の手で患者さんをケアしたいという想いが強いですね。というのも、私が直接、看護師として患者さんをケアしていたのは8年ほどで、マネジメントする立場になってからは現場を離れていました。もともと重症心身障害児のケアをしたくて国立病院に入ったという経緯もあるので、これからは特別支援学校の看護師や放課後デイサービスなど、貢献できることがあればやってみたいと思っています。あとは、看護師の後輩から相談があればサポートもしたいですし、グロービスのつながりの中でやれることもあれば大事にしていきたいですね。
「あなたは何をしたい人」で「何を成し遂げたいのか」という問いを忘れずに学んでほしい
清水:最後に、これからMBAを目指す方や在校生に向けて、ぜひメッセージをお願いします。
長谷川:グロービスに通っていたときに自分が心がけていたのは、「手段の目的化はしない」ということでした。MBAを取得すること自体が目的ではなく、「自分の実践を豊かにし、よりよいものにしたい」という想いがあってグロービスに通っていました。毎日忙しい中で学んでいると、つい「仕事はほどほどにしたら、勉強する時間が取れるかもしれない」と考えたくなる瞬間はたくさんあるわけです。だけど私は、それだけはしてはいけないと思っていました。「グロービスを卒業すること」「MBAを取得すること」が目的になってしまうと、本当に大事なことを見失ってしまう。だからこそ、「あなたは何をしたい人」で「何を成し遂げたいのか」という問いとともに、グロービスが大切にしている志を忘れずに学んでほしいなと思います。
清水:今学んでいる人、これから学ぼうとしている人の心に響く言葉ですね。本日はありがとうございました。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
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体験クラス
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学校説明
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※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
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大学院・単科生の概要や
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授業を体験
卒業生
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※参加費は無料。
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長谷川 美加
独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 前看護部長