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投稿日:2026年03月11日

投稿日:2026年03月11日

大企業で新規事業に挑戦する卒業生に聞く「正解がない現場のリアルな悩み」

大野 淳史
TOPPANホールディングス株式会社
グロービス経営大学院 2021年卒業
村上 裕太
富士フイルム株式会社
グロービス経営大学院 2025年卒業
得能 淳
グロービス経営大学院 特設キャンパス責任者
池田 桃香
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
大企業で新規事業に挑戦する卒業生に聞く「正解がない現場のリアルな悩み」

新規事業に取り組む中で、「このやり方でいいのだろうか」「他の会社ではどうしているのだろうか」と感じた経験はありませんか。唯一絶対の解がない中で、新規事業に向き合う人たちは、現場でどのような悩みを抱え、何を拠り所に前へ進んでいるのでしょうか。

本記事では、グロービス経営大学院の卒業生であり、現在も大企業の中で新規事業に携わる、TOPPANホールディングスの大野 淳史さんと富士フイルムの村上 裕太さんによる対談をお届けします。企業という組織の中で新規事業に挑戦する中で感じている葛藤や迷い、そしてその向き合い方について、率直に語っていただきました。

※本対談は、グロービス経営大学院 横浜・特設キャンパス主催のイベント「越境Lab~新規事業~」第1回で行われたものです。イベント全体の様子や、第2回の取り組みについては、こちらの開催レポートで紹介しています。あわせてご覧ください。

新規事業に踏み出したきっかけ

得能:まずは簡単に、お二人が今どんなお仕事をされているのかを教えてください。

大野:私は現在、TOPPANホールディングスで2つの仕事を担当しています。ひとつは、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として、スタートアップ企業に投資をしながら一緒に新規事業を創っていく仕事。もうひとつは、社内での新規事業、いわゆる0→1を作るための仕組みづくりです。この2つを並行して進めています。

村上:現在はライフサイエンス領域で、研究開発と事業開発を兼務しています。富士フイルムは、写真フィルムの会社から化粧品、医薬品へと事業を広げてきた会社ですが、僕自身も写真事業からライフサイエンス事業へ転換していく過程を経験してきました。その中で、新しい機能やテーマの立ち上げにいくつか関わってきたのが、これまでのキャリアです。

「このままでいいのか」から、新しい挑戦を求めて

得能:事前にお二人から、「新規事業に携わる人は何に悩んでいるのか」「何が一番大変なのか」という話を聞かせてもらいました。今日はその率直な思いや、なぜこの場に立ってくださっているのかをお話しいただければと思います。まずは大野さんからお願いします。

大野:私がグロービスに通ったきっかけは、営業を続ける中で「このままでいいのだろうか」と感じたことでした。もともと社会課題に対する問題意識もあり、何か新しいことにチャレンジしたいと思ったんです。

ただ、自分ひとりでテーマを持って進めるには限界がある。だったら、会社の力も借りながら新規事業に取り組めないかと考え、グロービス卒業後に今の本部へ異動し、新規事業に関わるようになりました。

キャプション:左から村上さん、大野さん

「なんとなく」から始まった新規事業への関わり

得能:ありがとうございます。では村上さん、お願いします。

村上:今日はグロービス関係の方も多いので、志を持って新規事業に飛び込んだと思われるかもしれませんが、正直そんなにかっこいい話ではありません。すごく恥ずかしいですが、「新規事業ってなんとなくかっこいいな」というのが、最初の動機でした。

得能:響き的に。

村上:そうなんです。僕は、人生の主導権を誰かに握られるのが本当に嫌で、若い頃から「自分で意思決定できる範囲を広げたい」と思っていました。入社して最初に与えられたテーマにあまり興味を持てなかったこともあり、「僕はこれがやりたいです」と手を挙げたところから、新規事業に関わるようになったんです。

その時点では、志をきちんと言語化できていたわけではありませんでした。今は医療系の事業をやっていますが、「人の命を救う」という分かりやすい志は、ある意味で最初から目の前にありました。ただ、新規事業で壁にぶつかったときに必要だったのは、もっと自分事として腹落ちした志だったんだと思います。

当時の僕はそれを持たないまま進んでしまい、結果として多くの失敗をし、壁を越えられなかった。若い頃の、正直かなり悔しい経験です。

その経験を通じて、「このままではいけない」「ちゃんとビジネスを学び直さなければ」と思い、グロービスの門を叩きました。今振り返ると、そこが自分にとって新規事業に本気で向き合い始めた原点だったと感じています。

得能:それは何年ぐらい前ですか。

村上:20代後半から30代前半ぐらいですね。そんな試行錯誤を繰り返していました。

なぜ今、社外・地域でつながる場が必要なのか

横浜という地域のポテンシャルや熱量を広げたい

得能:ここまでのお話も踏まえて伺いたいのが、今回のような、新規事業に関わる人たちが社外・地域でつながるこの場について、なぜ必要だと感じ、参加してくださったのか、という点です。個人でも、会社の視点でも構いません。まずは大野さんからお願いします。

大野:僕は横浜生まれ横浜育ちで、横浜が本当に好きなんです。横浜キャンパスができると聞いた瞬間に出願を決意したくらいです。

横浜では、イノベーション都市としての取り組みも進んでいますし、研究所やものづくりの拠点も多い。母校の横浜市立大学を含め、この地域でさまざまな活動が行われているのをずっと見てきました。

今の部署に異動してからは、新規事業やスタートアップに関わる立場を活かして、横浜でイノベーションに取り組む方々と交流する機会も増えました。そうした中で感じているのは、この地域が持つポテンシャルや、挑戦している人たちの熱量です。

横浜ならではの研究開発やものづくりの強みを、新しい事業につなげていく。その意味で、得能さんたちが取り組んでいる横浜キャンパスの活動と掛け合わせて、一緒に何かできたらいいなと思い、この場に立たせてもらいました。

得能:純粋な横浜愛ですね。

横浜という地域のポテンシャルや熱量を広げたい

社外に出て初めて見えた、自社の価値と可能性

得能:では、村上さんはいかがでしょうか。

村上:得能さんからこのイベントにかける思いが詰まった、かなり熱い長文メールをもらいまして。それに強く共感したというのが、前提としてあります。

加えて、僕は社外の人とのネットワーキングがとても大事だと思っています。とくに大きな会社で新規事業をやろうとすると、社内のルールやしがらみといった、固定化された枠組みの中で行き詰まってしまうことが少なくありません。

グロービスに通って一番よかったのは、社内の視点だけでなく、社外から自分の会社を見る視点を持てたことでした。社外の人の知見や経験を取り入れることで、「自分たちの会社はもっとよくできるんじゃないか」と思えるようになったんです。

そうしたネットワークや情報は、待っていてもなかなか手に入らない。自分から外に出ていくことで、初めて得られるものだと思います。

今回のイベントは、同じような悩みを持ち、これから新規事業に挑戦しようとしている人たちが、社外で、しかも同じ地域でつながれる場です。さらに、この取り組みが継続していくという点も含めて、大きな広がりの可能性を感じ、参加を決めました。

入社のきっかけと、今の仕事との関係

みんなが考えていないことを考えるのが好きだった

得能:ここから少しテーマを変えて、会社に入ったきっかけと、今やっていることはつながっているのかを伺いたいと思います。最初からつなげようとしていたのか、結果的につながったのか、あるいはあまり関係がないのか。学生時代やこれまでの価値観とも関係しているのか、そのあたりを教えてください。まずは大野さんからお願いします。

大野:正直に言うと、あまり直接はつながっていないかなという感覚があります。入社したのがだいぶ昔ということもありますし。

TOPPANはもともと印刷の会社で、今は事業構成も大きく変わっていますが、当時は「いろんな業界のクライアントと関われる」という点が魅力でした。安定している会社だという印象もあり、それが入社の理由でした。

今やっているのは、その屋台骨を次のものに変えていくような新しい挑戦なので、フェーズとしては全然違います。ただ、クライアントと向き合う中で、業界やユーザーの課題に触れてきた経験は、新しい事業を考えるうえでとても役に立っていると感じています。

得能:会社としても、大きくフェーズが変わっていますよね。

大野:そうですね。そうした中で、グロービスの授業などで新しい事業のアイデアを考えている時間が、すごく楽しかったというのも大きいです。振り返ると、もともと新しいものを考えること自体が好きだったのかもしれません。

得能:最初からそういう素質があった、という感じですか。

大野:どちらかというと天邪鬼な性格で、みんなが考えていないことを考えてやってみよう、というのが楽しかったんだと思います。新しいものをつくることに触れられる場所にいたい、という思いは昔からあったのかもしれません。

志は、後から育っていった

得能:では村上さんはいかがでしょうか。

村上:僕の場合、最初に新規事業を始めた理由は、今振り返るとかなり漠然としたものでした。その後、いろいろな壁にぶつかりましたが、「ひとつの壁を越えたな」と思えたのが、自分の志をしっかり言語化できたときでした。それが、今の仕事につながる原点だったと思っています。

ちょうど、最初に立ち上げたプロジェクトが失敗に終わり、かなりショックを受けていた頃に、アメリカに1年間駐在することになりました。M&Aで買収した現地のスタートアップに派遣されたのですが、そこで強い衝撃を受けたんです。

彼らは、自分たちの技術に強い誇りを持ち、「この技術で人の命を救える。だから人生をかけてやっている」と、全員が同じ熱量で語っていました。

その姿を見たときに、「自分はなんて浅かったんだろう」と思いました。なんか面白そうだから新規事業をやっている、という自分の動機が、とても情けなく感じたんです。そこから、「なぜ自分は人の命を救いたいと思ったのか」「なぜ創薬やライフサイエンスに関わっているのか」を、改めて自分の中で言語化しようとしました。

帰国後に新しいテーマを立ち上げたときは、人に「自分はこういうことをやりたい」と伝える言葉も変わりましたし、仲間を集めるときの熱量も、以前とはまったく違っていたと思います。そのテーマは最終的に20人規模のプロジェクトになり、技術的にも成果を出すことができました。それが、僕にとってのひとつの成功体験です。

得能:他者と比べる中で、自分の足りない部分に気付いた、という側面もありそうですね。

村上:まさにそうだと思います。新規事業で活躍している人って、もともと何でもできるキラキラした人、というイメージがあるかもしれません。でも僕は全然そうではなくて、人を惹きつけるような明確な理由や志があったわけではありませんでした。

ただ、新規事業に取り組む中で、自分に足りない部分が見え、それを補っていける。そのことに気付きやすいのが、新規事業だと思っています。

決められたレールの上を走っていると、自分の弱さや成長課題にはなかなか気付けない。でも、新規事業は、何もないところに自分で絵を描いていく仕事です。だからこそ、多くの発見があり、成長の機会も多い。そういう意味で、新規事業に挑戦してきてよかったと、今は感じています。

志は、後から育っていった

新規事業が、会社と社会にもたらすもの

チャレンジが受け入れられる土壌をつくる

得能:では最後に、少し視点を広げた問いを投げかけたいと思います。ここまではご自身の経験にフォーカスしてお話しいただきましたが、今取り組んでいる新規事業が、会社や社会にとってどんな意味やインパクトを持ち得るのか。少し難しい問いかもしれませんが、今の時点で感じていることを教えてください。まずは大野さんからお願いします。

大野:正直、すごく難しい問いだなと思います。自分が新規事業に関わっていること自体がモチベーションになっている部分もありますし、それを最終的には大きなインパクトにつなげたいと思ってはいますが、そこに一足飛びで行けるとは、なかなか思えていません。

どちらかというと、今は失敗したり、検証したり、そうした機会をどれだけ増やせるかが、会社にとって重要なフェーズなんじゃないかと感じています。大きく社会を変えることは最終的な目標として持ちつつも、まずは一歩ずつ前に進めるためのステップをつくっていく。今はその「積み上げの時期」なのかな、という感覚です。

得能:その中でも、会社の中で挑戦や失敗が許容される風土を育てていきたい、という思いが強いということですね。

大野:そうですね。会社の中もそうですし、今日このイベントに参加されている皆さんや、横浜という地域全体も同じだと思っています。

グロービスの同期を見ていても、横浜で新規事業を副業として始めたり、副業起業に挑戦していたりする人が増えてきました。社会全体として、そうしたチャレンジが少しずつ受け入れられるようになってきていると感じます。

だからこそ、そういう挑戦をしている人たちとつながりたいですし、どうやっているのかを知りたい。一緒にできるメンバーを、会社の中からも外からも見つけていきたい。そうした場づくりに関わっていくことが、今の自分にできる社会への貢献なのかなと思っています。

失敗や経験を重ね、志がアップデートされる

村上:会社に対して、という意味で言うと、若い頃は正直「富士フイルムがどのようにイノベーションを生み出してきたのか」を十分に理解できていなかったと思います。

新規事業に挑戦したいと思って提案しても、「まだ検討が必要だ」「ここは整理したほうがいい」といったフィードバックを受けることが多く、当時は理想と現実の間にギャップを感じていたと思います。30代前半くらいの頃ですね。

成功事例はどうしてもきれいに語られますが、その裏にはうまくいかなかった試みがたくさんある。そこを自分自身も間近で見てきました。ただ、最近になって意識が少し変わってきたのは、社外に出て、社外から自分の会社を見るようになったことがきっかけです。

例えば、今日も研究所に海外からメンバーが来ていて、「なぜ富士フイルムに入ったのか」と聞いたら、「イノベーションがやりたくて来た」と言ってくれた。そういう言葉を聞いたときに、正直すごくうれしかったんです。

グローバルには、今も富士フイルムをイノベーションの会社だと期待して入ってきてくれる人たちがいる。その事実に気付いたときに、じゃあ自分は、この会社がこれからもイノベイティブであり続けるために何ができるんだろう、と考えるようになりました。

それは、グロービスで言うところの「志のアップデート」なのかもしれません。自分自身のやりたい事業や夢ももちろんありますが、それ以上に、この会社が新規事業を生み出し続けられる会社であるために、自分はどんな役割を果たせるのか。少しずつ、視野が個人から会社へと広がってきているのを感じています。

得能:最初からそうだったわけではなく、経験や失敗を重ねる中で、外から見たことで変わってきた、ということですね。

村上:そうだと思います。志がなければ新規事業に挑戦できない、ということはないと思っています。志は、きっとどこかで必要になるものですが、それを見つけていく過程そのものが、新規事業への挑戦なんだと思います。まずは挑戦してみる。その中で悩み、失敗しながら、自分なりの意味を見つけていく。そこが一番大事なんじゃないでしょうか。

得能:お二人とも、今日は赤裸々に語っていただき、本当にありがとうございました。

【関連記事】地域と人をつなぐ学びの場――グロービス横浜・特設キャンパスの歩み

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大野 淳史

TOPPANホールディングス株式会社
グロービス経営大学院 2021年卒業

村上 裕太

富士フイルム株式会社
グロービス経営大学院 2025年卒業

得能 淳

グロービス経営大学院 特設キャンパス責任者

池田 桃香

グロービス コンテンツオウンドメディアチーム