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投稿日:2024年04月30日
投稿日:2024年04月30日
PdMとは?PMやPMMとの違い、プロダクトの開発責任者としての役割・スキルを解説
PdMとは
PdMは「プロダクトマネージャー(Product Manager)」を意味し、企業が顧客に提供する製品やサービス、いわゆるプロダクトの開発と販売を総括する責任者です。PdMはプロダクトの企画、戦略策定、設計、開発、そして販売に至るまでの全過程を管理し、そのプロダクトをビジネスとして成功に導く役割を担います。
PdMという表記の理由
なぜPdMの表記に小文字の「d」が使用されるのでしょうか。これは、プロジェクトマネージャー(Project Manager)とプロダクトマネージャー(Product Manager)の職種が混同されることを避けるためです。両職種はしばしば「PM」と省略され、この略称では区別が難しく混乱が生じることがあります。このため、「product」に含まれて「project」には含まれない「d」を使用し、「PdM」という表記が採用されています。
また、プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーが同じチームで働くことが多く、それぞれの役割や業務範囲を明確にするためにこの表記が用いられています。プロダクトマネージャーという役職はもともと製造業やメーカーでの役職として登場しましたが、インターネットの発展とともに、システム開発やアプリ開発など、さまざまなビジネス分野で広く用いられるようになっています。この記事では、IT分野の企業におけるPdMを念頭に、同様の用語であるPMやPMMとの違いを踏まえ、PdMの役割や求められるスキルについて詳しく解説します。
PdMと混同しやすい言葉との違い
先に述べたように、PdMはPMやPMMと混同されやすい用語です。それぞれの意味と違いを正しく理解することが重要です。
PMとの違い
PdMとPMの違いについて、もう一度確認しましょう。PM(プロジェクトマネージャー)はプロジェクトの管理や実施を担当し、その成功を目指します。ここでプロジェクトとは、ある目的を持った一連の企画、業務といった意味です。
対照的に、PdMは製品やサービス(プロダクト)の開発から販売に至る戦略を担当し、その成功を目指す責任者です。何を、どのような目的で、誰に向けて作るか、どんな問題を解決するプロダクトなのかに焦点を当て、長期的なビジョンでプロダクトの品質向上に取り組みます。
PMはそのプロジェクトの目的に対する達成度に責任を持つのに対して、PdMは担当プロダクトがビジネスとして成功するかどうかに責任があるのです。
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PM(プロジェクトマネジャー)とは?仕事内容や必要なスキルを解説
PMMとの違い
PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)は、主にセールスや市場を重視し、プロダクトの市場導入や販売の成功に特化して取り組みます。プロダクトの市場投入に向けたセールスやマーケティング、カスタマーサクセスの分野での販売戦略の立案、実行、意思決定を担当します。
対して、PdMはマーケティングの分野にとどまらず、市場のニーズを理解し、プロダクトの企画、開発から販売に至るまでの管理を行い、ビジネスと開発の両方の領域にまたがってプロダクトの品質を向上させます。ただし、企業やプロジェクトの規模によっては、一人の担当者がPdMとPMMの役割を兼ねて担う場合もあります。PdMと同様に、PMMも近年注目されている比較的新しい職種です。
PdMが注目される理由
PdMという概念は元々日用品や食品などの消費財を扱う業界で重視されていました。では、近年なぜPdMがIT業界でも重要視されるようになったのでしょうか。その背景には3つの理由があります。
IT分野の競争激化
ひとつは、ITプロダクトを提供する企業の増加と競争の激化があります。アプリやSaaSの普及によって、個人相手にせよ法人相手にせよ、ITプロダクトを広く顧客に売る機会自体が増えました。その上、ITプロダクトは小規模な企業でも開発・提供可能であり、中堅や大手企業を超える成功を収める例が続出しています。現在、DXの推進や働き方改革の流れにより、ITプロダクトへの需要はますます細分化しつつ全体としては増加が見込まれています。
このように、IT企業は競合他社に劣らないマーケティングと優れたプロダクト開発の両面に注力する必要に迫られており、開発からマーケティングまで一貫して責任を持つPdMの役割が重要視されるようになったのです。
市場と開発のギャップ
近年、市場と開発のギャップが問題視されています。これまでIT分野の開発では、技術が重視される一方で、ユーザーのニーズに応えるといったマーケティングの発想が(一部の企業を除いて)必ずしも重視されませんでした。
しかし、プロダクトの開発と市場の要求との間にギャップがある場合、成功は困難です。とくに近年、ITプロダクトではUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性が高まっています。現代の消費者はITプロダクトの利便性や操作容易性に対して高い期待を持つ傾向があります。ユーザーの視点を深く理解し、市場に魅力的で使いやすいプロダクトを示せるかがビジネス成功の鍵になっているのです。
PdMはPMMと協力し、開発と市場の間のギャップを埋める重要な役割を果たしています。PdMは市場のトレンドやユーザーの要望を取りまとめ、それを開発プロセスや最終プロダクトのUI/UXに適切に反映させることで、一貫性のあるマネジメントを期待されているのです。
アジャイル開発の広がり
アジャイル開発手法の普及も、PdMの重要性を高める要因となっています。アジャイル開発では、開発過程での柔軟な仕様変更を通じて、迅速な開発と市場ニーズの素早い反映を実現しています。
この開発手法を成功させるためには、ニーズの変化が起きた場合にそれを迅速に取り入れ、必要であればプロダクトの開発を方向転換することが重要です。PdMの導入により、こうした意思決定および実行過程での変更を効果的に調整し、アジャイル開発の利点を最大限に活用することが可能になります。
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アジャイル(アジャイル開発)とは?開発手法の特徴やメリットを解説
PdMのやるべき仕事とは
PdMの主要な業務は、3つのステップに分けることができます。
①プロダクトの企画
PdMは市場の需要と競合他社の動向を分析し、新たなプロダクトの企画をリードします。このステップでは、競合分析や市場動向調査、ユーザーインタビューやアンケートを実施し、場合によってはプロトタイプを用いて実際のユーザー体験を検証することもあります。
プロダクトがどのような市場の課題を解決し、どんな価値を提供できるかを明確にし、全体の事業戦略と連携させること、そして、プロダクトの成功に向けたビジョンを開発チームと共有し、方向性を定めることが重要です。
②ロードマップの作成
プロダクトの持続的な成長と目標達成に向けた実行計画の立案は、PdMの重要な業務のひとつです。いつまでに、誰が、どのような仕事を行い、何を達成するのかといったロードマップを描くのです。
PdMは、将来のプロダクト成長を予測して戦略的な目標を定め、その達成度合いを測るために市場調査から導き出されたKPIを設定します。また、適宜途中段階のマイルストーンを定め、チーム内で短期的および長期的な目標とビジョンを共有します。
こうしたロードマップは、市場の変化に応じて定期的に確認し、調整することも必要です。市場のニーズに柔軟に対応しつつ、プロダクト戦略が継続的に実行される仕組みを構築することで、長期的に市場で受け入れられるプロダクトの開発を実現します。
③リリース後の効果測定
プロダクトを市場にリリースした後、PdMはその成果を測定し、課題があれば解決策を策定して実行し、プロダクトの持続的な成長を図ります。
プロダクトのライフサイクルは、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階に分けられます。PdMはプロダクトがどのライフサイクル段階にあるかを正確に把握し、各段階に合わせた適切な施策を実施します。リリース後もPdMの役割は終わるわけではなく、市場の動向を継続的に監視し、仮説検証を通じてプロダクトの成長を追求していくのです。
PdMに必要なスキルとは
PdMとして成功するためには、経験に加えて一定レベル以上のスキルを習得することが求められます。ここでは、PdMに必要なスキルについて説明します。
マーケティングスキル
PdMは、そもそもどのようなプロダクトを開発するべきか構想し、開発したプロダクトを市場に広めるために、マーケティングスキルを必要とします。ターゲット市場や顧客セグメントのニーズを正確に理解し、必要な機能や現在の問題点を見極めることで、市場で受け入れられるプロダクトは何かを調査し分析します。
また、PdMは価格や流通チャネル、プロモーション戦略の企画も行います。値付けをどうするか、流通チャネルはどこを選び、どう働きかけるか、キャンペーンや広告戦略はどうするかといった、マーケティングの実行施策を一貫性をもってコーディネートすることが重要です。
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マネジメントスキル
PdMは、プロダクト開発において多様なステークホルダーの統合と連携を担います。そのため、ヒト・モノ・カネの経営資源をどのように使っていくか、高度なマネジメントスキルが欠かせません。PdMの主要な任務は、プロダクトの開発から販売に至るまでの全方針を決定し、チームメンバーがそれぞれの役割を効果的に果たせるよう環境を整備することです。
とくに、コミュニケーションスキルはマネジメントスキルの中でも特に重要です。関係者との良好な関係を築き、安心感のある環境を構築することにより、チーム全体でプロジェクトの成功を目指すことができます。また、プロジェクト進行中には予期せぬ問題が生じることもあり、PdMは柔軟で迅速な問題解決力と適切なタイムマネジメント能力を持つことが求められます。
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エンジニアとしてのスキル
PdMが直接開発作業に従事することは稀ですが、とくにIT系のプロダクト開発においては、エンジニアとして一定以上の知識とスキルが不可欠です。アイデアを生み出す過程や、実現可能性評価、リソース配分、コスト算定といった場面で、エンジニアとしての判断力にあまりに欠けるようでは、満足に開発が進まないでしょう。
さらにエンジニアと技術的な対話を行う能力は、さまざまな分野を横断してマネジメントを行うPdMにとって重要なコミュニケーションスキルです。PdMがエンジニアである必要はありませんし、求められる知識、スキルの水準はケース・バイ・ケースではありますが、一定のエンジニア経験があれば、PdMとしてのキャリアにその経験は活かせるといえます。
UI/UXデザインのスキル
優れたプロダクトの開発には、ユーザーの視点を取り入れることが不可欠です。ユーザーのニーズに的確に応えるためには、UI/UXデザインのスキルと視点が必要になります。適切なUI/UXデザインは、ユーザーにより良い体験を提供し、満足度を高め、プロダクトの長期的な利用を促進します。UI/UXデザイナーと協力し、ユーザーが快適にプロダクトを使用できるよう配慮することは、PdMにとって重要な役割です。
PdMの将来性について
急速に進化するテクノロジーと変動する市場環境に適応しながら、企業が競争力を保持・強化するためには、PdMの役割が重要です。
プロダクト開発の各フェーズにおける方針決定、ビジョンの策定、市場調査、戦略立案、開発管理、リリース後の効果測定などは、プロダクトの成功に必要なプロセスです。ビジネスとテクノロジーの両分野に精通し、変化に柔軟に対応しながらこれらのプロセスを統括するPdMは、将来ますます求められる存在になるでしょう。
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PdMはエンジニアリングのスキルやデザインに関する知識だけでなく、ビジネスリーダー全般に求められる幅広い能力を持つ必要があります。
グロービスでは、「テクノベート・プロダクトマネジメント」をはじめとする、最新のテクノロジーとイノベーションに関して学ぶ「テクノベート」領域の科目を学べます。そのほかマーケティング戦略やリーダーシップ、人材マネジメントといったPdMに必要なスキルを体系的に習得できるカリキュラムを用意しています。
さらに、エンジニア、デザイナー、経営者など多様なバックグラウンドを持つ学生とともに学ぶことで、チーム運営に必要な多様な視点を得ることができます。コミュニケーションを通じて、PdMとして現場で活かせる実践的な能力を育成する機会を持てるのです。
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まとめ
PdMは、マーケティングの視点、エンジニアの視点、マネジャーとしての視点など、ビジネスに関わる多様な視点を理解し統合する、重要な役職です。多くの業界でDXを通じてUI/UXに注力する中、市場で真に求められるプロダクトを創出するためにはPdMの役割が不可欠なのです。企業経営において、PdMの重要性はますます注目され、戦略的なポジションを占めていくことでしょう。
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