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投稿日:2026年04月06日
投稿日:2026年04月06日
【卒業生インタビュー】株式会社フライヤー久保彩氏「ヒラメキあふれる世界をつくる しなやかな挑戦」
- 久保 彩
- 株式会社フライヤー 執行役員CCO カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー
グロービス経営大学院 2017年卒業 - 金澤 英明
- グロービス経営大学院 教員
MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞者の一覧はこちら)。
今回は2025年「創造部門」の受賞者、株式会社フライヤー執行役員・久保彩氏にインタビュー。システムエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、コンサルタントを経て事業会社のリーダーへと転身した久保氏に、激動のキャリア変遷の裏側や、そこで得た学び、そしてグロービスで出会った「知と対話」がもたらす未来への展望について聞いた(インタビュアー:金澤 英明)。
※記事の内容や肩書はインタビュー当時(2025年12月時点)のものです
一歩一歩積み重ねてきた「地続き」なキャリア
――「アルムナイ・アワード」創造部門の受賞、おめでとうございます。率直にどう感じていますか?
久保:2015年、オンライン校の1期生としてグロービスの門を叩いた当時は、キャリアに悩み、最も苦しんでいた時期でした。ですから、まさか自分がこのような賞をいただくとは想像もしていませんでした。
受賞自体、何か特別なことを成し遂げたというよりも、目の前に現れる壁を一つ一つ必死に乗り越えようとしていたら、気付けば今の状態になっていた。そんな「地続き」な感覚です。常に目の前の課題に対して、少しずつ挑戦を続けた結果だと捉えています。
アルムナイ・アワード授賞式の壇上からは、在校生や卒業生の皆さんの非常に熱量の高い瞳が見えました。「自分もやってやるぞ」という目の方もいれば、不安そうな方もいらっしゃいました。そうした皆さんに向けて、「完璧な状態を目指すのではなく、目の前にあることに一歩ずつ踏み出していったら徐々に変わる」「それは大それたことではなく、本当に日々の積み重ねなんだ」ということをお伝えし、誰かの背中を押すようなスピーチになればいいなと思っていました。
第21回「グロービス アルムナイ・アワード」授賞式スピーチの様子
家族の海外駐在と、オンラインMBAとの出会い
――システムエンジニアから始まったキャリア。グロービスに入学されるまではどのような経緯でしたか?
久保:実は私は哲学専攻だったのですが、出版や新聞といった既存の情報を扱うのではなく、社会に対して新しいことを生み出す領域で自分を高めたいという願いがあり、新卒で富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧:富士ゼロックス株式会社)に入社しました。当時IT業界が伸びていたことに加え、「知の創造と活用を進める環境の構築」というミッションに深く共感したからです。技術が発達しても、人の知をベースに物事を創り出す領域は変わらないと考え、文系からシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。
最初は非常に苦戦しました。しかし14年間経験を積む中で、幸いにも変化の大きいプロジェクトや、新しい経験が必要なことにもアサインしてもらう機会も増え、独自の立ち位置を築くことができました。単にシステムを作るのではなく、顧客企業の経営ビジョンや上位目的を理解した上で、それを実行可能なオペレーションに落とし込む。そうした仕事の在り方にやりがいを感じていました。ありがたいことに周囲に恵まれ、仕事においても非常に充実した環境に身を置いていました。しかし順調だからこそ、「今の殻を破りたい」という思いも芽生えていました。
そんな中、転機となったのが夫の海外赴任でした。シンガポールへの渡航に伴い仕事を辞めましたが、大企業での肩書きや役割を失った途端、自分が何をしたいのか分からなくなり、絶望するほどの喪失感を味わいました。子どもに向き合いたいと思って選んだ道でしたが、100%育児に専念しても漠然と満たされない。仕事を通じて人に求められ、組織の力を活用しながら価値を生み出してきた経験が、いかに私にとってアイデンティティの一部であったかを痛感していたとき、夫がグロービスの体験クラスがあると教えてくれたんです。
「やるんだったら中途半端は嫌だ」という気持ちもあり、単科ではなく大学院(本科)を調べ、当時開講されたばかりのオンライン校に入学しました。在学中は仕事を持たない状況だったため、志を語る場面などで難しさを感じることもありました。ただ、学びを通じて、これまでのシステムエンジニアとしての仕事の在り方がよみがえってきました。業務システムを作る際には、業務課題だけでなく、企業の理念や成し遂げたいことまで理解してからオペレーションに落とし込む。私が大切にしていた経営や中長期の視点は間違っていなかったのだと、腹落ちしました。過去の経験が意味付けされていく感覚があり、入学から半年ほどで精神的にも大きな安定を得ることができました。
プロとしての「実行力」と経営の「視座」
――MBA在学中にコンサルティングファームへ転職されています。そこでの経験と、MBAの学びはどう結びついたのでしょうか?
久保:帰国に合わせて、在学中にコンサルティングファームのフォーティエンスコンサルティング株式会社(旧:株式会社クニエ)に転職しました。コンサルティングはそれまで経験のない領域でしたが、MBAでさまざまなケース(企業事例)を通じて経営の視点を学んでいたこともあり、躊躇することなくチャレンジできました。
同社は総合系コンサルティング会社で、扱う業界やテーマはさまざま。戦略からオペレーションまで幅広く扱っていましたが、私は新規事業専門のチームに所属しました。複数の大手企業の新規事業部門に常駐し、企画段階からリリース後の組織作りまで、クライアントの社員のような立場で実行支援を行いました。農業ビジネスや子育て事業、当時最先端だった音声デバイスなど、多岐にわたるテーマに関わりました。
未知の領域であっても、求められるのはクライアントの「やりたいこと」を実行可能な形に落とし込むことです。システムエンジニア時代に培ったビジョンをオペレーションに接続する力に加え、MBAでさまざまな業界や領域のケース(企業事例)を深く学んだことで、より俯瞰した経営の視座を持てるようになっていました。
実際にコンサルティングの現場に携わることで、どんな領域でも課題に対して解を導き出す課題解決力が身に付き、プロとしての実行力に自信がつきました。
自分の情熱の源泉である「知の創造」への回帰
――プロとして順調にキャリアを積む中で、なぜ事業会社であるフライヤーへの転身を考えたのですか?
久保:プロとしての汎用的なスキルは磨かれた一方で、自分自身が当事者として情熱を注ぎこみ続ける「核」となる領域に、改めて注力したいという思いが強くなっていきました。農業も音声テックも面白い。でも一方で、富士ゼロックス時代から大切にしていた「知の領域」へのこだわり――自分が心から「好きだ」と思える領域で価値を発揮できている感覚が薄れてしまったのです。経験を積み、どんな領域でも一定の成果を出せるようになったからこそ、自分の情熱の源泉であるドメインを見定め、事業会社へ戻りたいという思いが強くなっていきました。
そんなとき、ご縁があって出会ったのがフライヤーでした。衝撃を受けたのは、若手社員たちが「市場が求めているから」ではなく、「私がこれをやりたいから」という自分たちの「意志(Will)」を起点に仕事をしていたことです。ずっとクライアントの要望に応える立場で仕事をしてきた私にとって、そのカルチャーは新鮮で、強烈に惹かれました。そして何より、「ヒラメキあふれる世界を作る」という理念は、かつて私が志した「知の創造」そのものだったのです。
当初、スタートアップへの転身は想定していませんでした。しかし、フライヤーの「ヒラメキあふれる世界を作る」という理念と、コミュニティ事業や法人向けサービスに、これまでの経験を活かせると考えました。
実際、未知の領域が8割でしたが、システムエンジニア、コンサルと経験を重ねてきた中で、経験的にも地続きだという感覚がありました。グロービスで学んだことも含め、ベースがあれば何とかなる、そう思えたのです。
また、グロービスで多様な人々に触れていたことが大きかったです。大企業だけでなく、スタートアップや中小企業の経営者と学ぶ中で、異なる価値観やロジックに触れ、キャリアチェンジへの壁が取り払われ、可能性を広げてくれたのです。
個で完結するプロから組織のリーダーへ、変化の中で獲得した「しなやかさ」
――フライヤーに入社されて、苦労したことはどのようなことでしたか?
久保:2020年に入社してからは、フライヤーとして初めてのコミュニティ事業「flier book labo」の責任者を担い、本の実践講座「flier book camp」も立ち上げました。その過程で組織の再構築なども経験しています。システムエンジニアからコンサルへの転換は“地続き”でつながっている感覚が強かったのですが、事業会社への転換はこれまでにない大きく3つのギャップに直面しました。
まず「何をやるか(What)」を自分で描くことです。これまでは、クライアントの課題に対して解を提示する支援者の立場でした。しかし事業会社では、正解のない領域で、自分自身が「作り上げるもの」を定義しなければならなくなりました。代表から「久保さんはどうしたいの?」と問われたとき、この問いにどう向き合うべきなのか分からず戸惑ったことを、今でもよく覚えています。
このギャップを乗り越えるまでには、2年ほどかかりました。ただ私は、「お客さんが何を求めているのか」を考えること自体は得意でした。そこで、ひとりで答えを出そうとするのではなく、お客さんと一緒に作り、共鳴してもらいながら形にしていく。そうしたプロセスを通じて、少しずつ自分なりのWhatが育っていきました。
次に、事業の永続性です。外部からのコンサルティング支援では、リリースがひとつのゴールでした。しかし事業は、納品したら終わりではありません。リリースしてからが始まりなのです。ユーザーの反応を受けて、改めて企画段階から見直したり、軌道修正を繰り返したりして、ようやく価値が積み上がっていく。黒字化まで含めて、忍耐強く向き合い続ける必要があります。
久保:最後は、組織におけるリーダーシップです。個人のプロフェッショナルとして完結する仕事から、組織を率いる立場へと役割が変わりました。特に少人数のスタートアップでは、「属人化を排除する」よりも、「今いるメンバーの強みをどう最大化するか」が重要になります。ときには採用したメンバーの強みに合わせて、サービスの在り方を変えていく。そんな柔軟なチーム作りが必要だと気付きました。結局、事業は人あってこそ。組織を持つことで、本当の意味でのリーダーシップは「個」にあると実感しました。
振り返ると、グロービスで人と組織、リーダーシップを学んでいたことで、組織を持つ難しさを先回りして理解できていました。とはいえ、テックや事業がどれだけ進化しても、人と組織の悩みは尽きません。だからこそ、時代に合わせて学び続け、アップデートし続ける必要があると思っています。
これらを乗り越えていく中で、私自身の仕事に対する価値観も変わりました。かつてはプロ意識が強く、「自分ひとりで全てやりきらないと価値がない」と考えていました。コンサルタントとして、個人の専門性やアウトプットの質で評価される世界にいたからです。しかし事業会社に移ってからは、仕組みや組織全体で価値を担保することの重要性を実感するようになりました。
これは子育てにも似ています。全てをひとりで抱え込まず、力を抜くことで、周囲が手を差し伸べてくれる。頑張り方が変わったのです。以前は自身の成長を追い求めていた私が、今は「誰かが成長し、喜んでいる姿を見るほうが嬉しい」と感じられるようになり、メンバーを信じて任せられるようになりました。
「しなやかさ」という言葉が、私は好きです。ストイックさも大切ですが、事業においてもキャリアにおいても、環境や人に合わせて形を変えながら続いていく。このしなやかさこそが、今の自分にとって一番大事な軸になっています。
「縁」と「人」を軸にしたテックサービスの未来
――激動のキャリアの中で、久保さんが一貫して大切にされている価値観は何でしょうか。また、今後の展望についてもお聞かせください。
久保:大切にしている軸は2つあります。
1つ目は、パートナーシップと人間関係を大事にするということ。プロジェクトで一度縁ができれば、また違う形でご一緒することもあります。最初は個人向けのコミュニティから始まり、後に法人向けサービスへと広がることもある。縁を大切にしていれば、自然と関係が広がっていくのです。そのために私が心がけているのは、相手が何を大切にし、どんな世界を作りたいのか、仕事の基準は何かを理解しようとすることです。
2つ目は、テックサービスであっても必ず「人」が媒介するということです。フライヤーは本の要約というデジタルコンテンツを提供するサービスですが、使うのは人である以上、最終的に人の心を動かすのは「人」だと考えています。「フライヤーの人がいるからこのサービスを使いたい」と思ってもらえるような、人の魅力を組み込むことを大事にしています。
現在、力を入れているのは、組織内の対話を促進するサービスです。AIやテクノロジーが進化する中でも、事業を推し進める起点はやはり「これいいよね」「やりたい」という人のエネルギーであり、対話がその起爆剤になると信じています。フライヤーの要約には、分厚い書籍とは異なり「余白」があります。その余白があるからこそ、「その概念って私の場合だと……」と自分たちの経験で補完し合う対話が生まれやすいのです。日常的な会話として、組織内に「対話し学び合う文化」を作っていきたいと考えています。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
ヒントを得る
大学院への入学をご検討中の方向けにグロービスMBAの特徴や他校との違い、入試概要・出願準備について詳しくご案内します。
※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
久保 彩
株式会社フライヤー 執行役員CCO カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー
グロービス経営大学院 2017年卒業
金澤 英明
グロービス経営大学院 教員

