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投稿日:2025年02月21日
投稿日:2025年02月21日
「G-CHALLENGE 2024~失敗したっていいじゃないか。ガンガンに行こう!~」最終選考会を開催 過去最多の5チームが受賞
グロービス経営大学院は2月16日(日)、在校生・卒業生を対象にしたビジネスプランコンテスト「G-CHALLENGE 2024 ~失敗したっていいじゃないか。ガンガンに行こう!~」の最終選考会を東京校で開催しました。第1回から今年の第12回までに合計462チームがエントリーし、多くのグロービス生が新たな未来への一歩を踏みだしてきました。今回は33チームが応募。最終選考に進んだ7チームは、在学中の起業に関わる学びや、卒業後も続く起業支援の仕組みを活用してエントリーしました。
最終選考に進んだ7チームのプレゼンテーションを審査した結果、「PHOSLOOP」「ソコラボ株式会社」「株式会社エルシオ」「SlidePlus株式会社」の4チームが大賞の栄誉に輝きました。社会的インパクトを審査基準に加えた「KIBOW賞」は、「PHOSLOOP」「バイオソノ株式会社」が受賞。受賞チームには、特典として最大1,000万円の出資を受けられる機会が提供されます。
G-CHALLENGE 2024 概要
G-CHALLENGE*は、起業を目指す多くの在校生・卒業生にビジネスプランを競う場を提供し、立ち上げ資金を支援することで、より多くの起業を促すものです。加えて、その企業が将来的にメガベンチャーへ成長する足掛かりをグロービス・コミュニティから得られることを目的としています。出資にあたっては、学校法人グロービス経営大学院と株式会社グロービスがファンドを組成。受賞者は最大1,000万円の出資を受けられる機会を得ます。審査基準は、ビジネスプランの市場性、競争優位性、実現可能性、収益性が見込めることに加えて、社会性や経営メンバーの意志や志などグロービスの教育理念に即しているかを重視します。
*旧GVC。2019年より通称が変わりました。
代表者:青柳 拓也さん(東京校、2023年入学)
概要:私たちは、未利用たい肥を価値ある資源に変え、リン資源の循環型社会の実現を目指す会社です。養豚場から毎日大量に排出されるたい肥は、肥料成分が薄く大量散布が必要なため、農家にとって使いにくいという課題があります。PHOSLOOPは、このたい肥を炭化し肥料成分を濃縮したバイオ炭肥料を開発しました。農家が利用しやすい形に加工することで、リン資源循環の促進や土壌中への炭素固定によるCO2削減、農作物の収量向上に貢献します。
世界的にリン資源の需要が高まり、大きな成長が見込まれるリン市場。輸入に頼るリン資源を国内で循環させ、持続可能な未来に貢献していきます。
代表者:奈良 晃寛さん(名古屋校、2024年卒業)
概要:ソコラボは、ものづくりアイデアを簡単に発信し、収益化できる展示・資金調達プラットフォーム「Game of Makers」を提供する会社です。
ものづくりのアイデアはあるが資金やスキルが足りない人と、キャリアに悩むエンジニアをつなぎ、チームを作ってアイデアを具現化できる場を提供します。個人のアイデアに個人が資金やスキルを投下し、商品化を目指す新たな仕組みを構築。ソーシャルゲームの要素を取り入れ、参加者が楽しみながら創作し、価値を生み出せるプラットフォームを目指します。
私たちは「創るを解き放て」をミッションに掲げ、ものづくりの在り方を変革することを目指します。
代表者:李 蕣里さん(大阪校、2022年卒業)
概要:独自の液晶技術を活用し、自動でピント調整が可能なレンズを搭載した眼鏡「オートフォーカスグラス」を開発する大阪大学発スタートアップです。
私たちは、デジタルデバイス普及による目の負担増加や老眼などの課題を解決すべく、液晶技術を活用し、レンズの度数をリアルタイムに調整する「オートフォーカスグラス」を開発しました。将来的には、眼病リスクの早期発見や健康モニタリングが可能なセンシング技術を搭載し、眼病予防向けのフルオートフォーカスレンズを実現します。
エルシオは、視力負担を軽減する新しい選択肢を提供し、未来のライフスタイルをデザインします。
代表者:宮城 新さん(東京校、2024年卒業)
概要:SlidePlus株式会社は、BtoBセールスの提案資料を組織的に管理し、営業企画や責任者の「事業を強くする」課題を解決するサービスを提供しています。「“ハタラク”体温を上げる」をビジョンに掲げ、提案資料の属人化や品質管理の難しさを解消し、営業の生産性を向上させます。
営業責任者がリアルタイムで資料をレビューし、品質を監督できる仕組みを提供。高品質な提案環境を整え、完成資料の自動資産化やバージョン管理、実績分析を可能にします。これにより、営業の成功パターンを可視化し、知見を組織に蓄積。人材の流動化やAIの活用が進んでも、提案品質を維持し、事業の成長を後押しします。
代表者:遠山 賢さん(仙台校、2018年卒業)
概要:誤嚥は、介護事故における主な死因の一つと言われています。また、日本全体における死因上位である肺炎も、その多くは高齢者の誤嚥に起因しているとされています。誤嚥に関連した損失や医療費の負担は大きく、介護業界全体で見たとき、社会課題と言える規模の機会損失や医療費が発生していると考えられます。
バイオソノはこの誤嚥という社会課題に対し、音響センシングとAI技術を活用したデジタル・ヘルス・プロダクト『食通(ショクツー)』を開発。誤嚥に起因する医療費の抑制や介護事業者の損失回避に貢献しつつ、蓄積されるノドの音データの二次活用により、デジタルヘルスケア市場において独自のポジションを確立することを目指します。
最終選考7チームの飽くなき挑戦
今回、最終選考に進んだのは、以下の「コペルニクス」「PHOSLOOP」「ソコラボ株式会社」「バイオソノ株式会社」「スマイル」「株式会社エルシオ」「SlidePlus株式会社」の7チームです。
「コペルニクス」は、暗黙知を可視化し、業務の属人化や技術継承における課題を多視点動画マニュアルで解決するツール『ナレッジリレーSaaS』ついて熱く語りました。
「スマイル」は子どもを離婚の被害者にしないために、養育費や面会交流の取り決めを効率化し、元夫婦間のコミュニケーションをサポートするサービスについてプレゼンしました。
最終選考会には、日本全国・全世界から多くのグロービス生が参加しました。プレゼンターの志や熱意あふれるプレゼン、綿密に練られたビジネスプランや成長戦略に、全ての参加者が真剣に耳を傾けていました。
審査員は常に真摯な姿勢でプレゼンに向き合い、「今後の成長シナリオに向けて、ステークホルダーをどのように巻き込んでいくのか」「マルチサイドプラットフォームをどのように構築し、スケールさせていくのか」「ユーザーのペインやインサイトをどのように捉えているのか」といった鋭い質問が飛び交いました。
7チームのプレゼンの後、グロービス経営大学院で「創造」系の科目を担当する教員・鳥潟 幸志がグロービスの『創造の生態系』について説明しました。
起業家を取り巻く「創造の生態系」とは
「創造」系科目、研究・企業プロジェクト、起業家ネットワーク
グロービス経営大学院では、「ベンチャー・マネジメント」「ベンチャー戦略プランニング」など、ベンチャー企業の成功事例から学ぶ「創造」系の科目や、『G-CHALLENGE』への挑戦を目標に学生の起業活動を支援する半年間におよぶ研究・起業プロジェクト『G-INCUBATE』を提供。また、起業準備中の方へのメンタリングの実施、新規事業の実行支援など、在学生だけではなく卒業生へも、起業支援のための様々な仕組みを提供しています。さらに4,000人を超える在校生・卒業生が在籍する学校公認クラブ活動「GEC(グロービス・アントレプレナーズ・クラブ)」では、起業を志す多くのメンバーが交流しています。
卒業生起業のベンチャー企業への投資プログラム「G-GROWTH」
2018年10月には、在校生または卒業生が起業したベンチャー企業を対象とする投資プログラム『GLOBIS Alumni Growth Investment(通称:G-GROWTH)』を開始。累計1億円以上の調達実績を条件に、1社あたり最大1億円を出資するプログラムで、これまでに9社へ投資を行っています。
アクセラレータープログラム「G-STARTUP」
グロービスでは、ユニコーン企業を100社輩出するプラットフォームの構築を目指し、シード期の起業家を対象とするアクセラレータープログラム『G-STARTUP』を2019年4月に開始。将来的に日本を代表するユニコーン企業へ成長することが期待されるスタートアップを採択し、成功した起業家やスタートアップ支援の専門家などによる講義を実施。メンターには、グロービス・キャピタル・パートナーズの現役ベンチャー・キャピタリストも参画し伴走することで、プロダクト開発・事業開発を支援しています。
VC事業で培った知見を活かした「起業」に直結する科目
「創造」系の科目では、起業や新規事業立ち上げを志す学生が、現場で直面する課題を具体的にイメージできるように、グロービスが有するベンチャーキャピタル部門(グロービス・キャピタル・パートナーズ)の投資先のベンチャー企業の経営経験をもとに作成したケースも織り交ぜながら議論していきます。グロービス・キャピタル・パートナーズは、1,800億円規模のファンドを運営し、202社の企業に投資している国内最大規模の独立系ベンチャーキャピタル。ケースには、豊富な投資成功事例から得た知見を色濃く反映させています。実際にこれらの科目を通じて作成したビジネスプランをもとに多くの起業家が誕生しています。
*右画像:創造系科目のケースに登場するベンチャー企業の例
<「創造」系科目>
≫ベンチャー・マネジメント
≫ベンチャー・キャピタル&ファイナンス
≫ベンチャー戦略プランニング
グロービス・アントレプレナーズ・クラブ(GEC)
グロービスには、起業家・起業をこれから目指す方を支援し、それぞれを結びつける組織として、グロービス経営大学院公認の「グロービス・アントレプレナーズ・クラブ(GEC)」というクラブ活動が存在します。「日本を代表する起業家を輩出し、相互支援を果たす」ことを目的とした、在校生・卒業生4,742名(2025年1⽉26⽇現在)が在籍するグロービス最大のクラブ活動です。起業に関する情報共有、人材のマッチング、起業家を招いた講演、新規ビジネスの相談の場として、知恵・経験・人脈の全国におよぶ起業家支援のプラットフォームの役割を果たしています。これまで、この活動を通じて、100名を超える方々が起業し、うち数社が数十億円レベルのベンチャー企業へ成長しています。
≫グロービス・アントレプレナーズ・クラブ(GEC)活動レポートはこちら
≫起業家にグロービスが選ばれる理由はこちら
≫卒業生・在校生の起業サポートはこちら
審査員
井上 陽介
グロービス経営大学院 教員 創造ファカルティ・グループ リーダー
仮屋薗 聡一
グロービス経営大学院 教員
グロービス・キャピタル・パートナーズ 共同創業パートナー
一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 最高顧問
髙原 康次
グロービス経営大学院 教員 創造ファカルティ・グループ ファカルティ・コンテンツリーダー(「ベンチャー戦略プランニング」「G-INCUBATE」等 担当)
田村 菜津紀
グロービス ベンチャー・サポート・チーム リーダー G-STARTUP事務局長
KIBOW社会投資ファンド インベストメント・プロフェッショナル
山中 礼二
グロービス経営大学院 教員(「ベンチャー・キャピタル&ファイナンス」等担当)
KIBOW社会投資ファンド 代表パートナー
審査委員長コメント
その後、審査員の議論を経て、審査員長の井上 陽介が受賞チームを発表し、エールを送りました。
改めまして、今回はエントリーされた皆さん、本当にお疲れさまでした。受賞されたチームの皆さんも、惜しくも受賞を逃したチームの皆さんも、それぞれのプレゼンテーションを通じて私たちに多くの気付きや学びを与えてくださいました。皆さんの熱意に触れ、非常に考えさせられる時間となりました。受賞されたチームの皆さんは、今後さらに仮説検証を繰り返しながら、事業の成長に向けて取り組んでいかれることと思います。グロービスの在校生や卒業生、教員など、周囲の人たちを積極的に巻き込みながら前進していただきたいと思います。
今回、会場にお越しくださった皆さん、そしてオンラインでご参加いただいた皆さんも、プレゼンテーションを聞きながら、心が動かされた方もいると思います。「自分も何かできるかもしれない」とワクワク感や新たな視点が広がったのではないでしょうか。グロービスは、創造と変革の志士を輩出するための学校です。学びの場だけでなく、このような実践的な創造の場を皆さんと作り上げ、「創造の生態系」をさらに広げていきたいと思っています。
G-CHALLENGEは、今年で12回目を迎えました。立ち上げ当初、グロービス経営大学院を支援してくださった起業家の方が「失敗してもいいじゃないか。挑戦することに意味がある」という言葉を残してくださいました。まさにその言葉の通り、13回目へと続いていくこの場が、引き続き新しい挑戦者の成長の機会となることを願っています。
受賞チームコメント
受賞したチームのみなさんに受賞後に心境を伺いました。
PHOSLOOP 青柳さん
「このたびは栄誉ある賞をいただき、ありがとうございます。実は昨年度もこの賞に応募したのですが、なかなか思うようにいかない部分がありました。その後、ビジネスプランをさらにブラッシュアップし、挑戦を続けてきました。私たちはまだ法人化には至っておりませんが、これを機に、より一層の成長を目指していきたいと思います」
審査員の講評
「リンを取り巻く環境には、課題は山積みで、検証すべき仮説も数多くあるということを実感しました。しかし、これこそがスタート地点だと思います。前に進みながら、一つひとつの仮説を丁寧に検証していく。そのプロセスを、皆さんのチームならきっとやり遂げられるのではないかと感じています。もちろん、サプライチェーンの構築は簡単ではありません。さまざまな不安や乗り越えるべき壁があると思います。ただ、皆さんのこれまでの事業開発におけるプロセスや仮説検証のクオリティの高さを考えると、最後までやり切る力を十分に備えていると確信しました」
ソコラボ株式会社 奈良さん
「率直に嬉しいです。昨年も応募したのですが、1次予選で落選してしまいました。また、今年は会社を辞めて新たな挑戦を始めたものの、本当にビジネスとして立ち上がるのかという不安が常にありました。今も毎日、どうすれば自分が実現したいことを形にしていけるかを考え続けています。そんな中で、何か突破口となるきっかけが欲しいと思い、エントリーしました。絶対に受賞すると心に決めていたので、本当によかったです」
審査員の講評
「本当にエネルギッシュで、引き込まれるような素晴らしいプレゼンテーションでした。ビジネスモデルについては、まだ成長の余地が大きく残されているように感じました。今後、顧客へのヒアリングを通じて、さらにブラッシュアップしていけば、事業の可能性はさらに広がるのではないでしょうか。審査員の中でも『このチームのパワーがあれば、数億円規模のビジネスに成長するのも十分可能だ』という声が上がるなど、大きな期待が寄せられていました」
株式会社エルシオ 李さん
「このたびはありがとうございました。実は、2020年に一度応募し、ファイナルで落選してしまいました。今回、満を持して大賞を受賞でき、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。審査の際には『もっと強気で臨んでよいのでは』というコメントをいただき、このタイミングでグロービスから公式的なサポートが得られるということを非常に心強く感じています。これからさらに頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします」
審査員の講評
「ディープテック領域において、技術的な難易度が高く、かつ市場に大きな変革をもたらし得る“ディスラプティブ”なテクノロジーだと思います。また、この技術は汎用性が高いため、プレゼンテーションにおいてもう一段階ブラッシュアップできる余地があるように感じました。さまざまなユースケースを具体的に示すことで、その技術の幅広い可能性がより明確に伝わるのではないでしょうか。例えば、この技術を活用することで、このような課題が解決できるといった事例を2~3つ挙げるだけでも、技術の応用可能性が伝わりやすくなると思います」
SlidePlus株式会社 宮城さん
「ようやくファイナリストになることができ、今年リベンジを果たせたことを非常に嬉しく思っています。グロービスの門を叩いて、気付けば3年半、もうすぐ4年が経ちます。学び始めた頃から、多くの教員の方々に支えていただき、本当に感謝しています。起業してからは、資本の重要性を強く感じるようになりました。それらをグロービスで学べたことは、非常に大きな財産になっています。このアカデミックな知識を、しっかりと社会に還元できるよう、これからも頑張っていきたいと思います」
審査員の講評
「このシードステージにおいて、大きなマーケットを狙っていくことは非常に重要です。セールスイネーブルメントの分野は、世界的に見ても今後さらに進化していくと予想されますし、次々に新しい製品が生まれ、変化していく分野です。この可能性については、審査員全員が強く共感していました。その中で、宮城さんが実証実験を重ねながら、チームの皆さんとともに素晴らしいプロダクトを生み出していくだろうという期待を込めて、今回大賞に選びました」
バイオソノ株式会社 遠山さん
「私は、グロービスを卒業してから6年の月日を経て、今日この場に立つことができています。私たちは、日本が直面する高齢化社会の課題を、ネガティブに捉えるのではなく、いかにポジティブに転換できるかを常に考えてきました。高齢者の方々が社会で持つ価値をどのように再定義し、どう生み出すかということに取り組んでいます。アメリカがトランプ大統領のもとで“ゴールドラッシュ”を宣言しているように、私たちは“オールドラッシュ”を掲げ、これからも挑戦を続けていきます」
審査員の講評
「誤嚥性肺炎は日本の死因の第6位と言われています。専門家でなくても、この誤嚥性肺炎のリスクを評価できる技術が生まれれば、多くの命を救うことにつながるかもしれない。そうした潜在的に大きなインパクトを持つ取り組みだと感じ、今回KIBOW賞に選ばせていただきました。今後は、評価だけで終わるのではなく、解決策まで含めたパッケージとして提案できれば、より説得力が増すのではないでしょうか」