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2021年11月26日

2021年11月26日

アカウンティングとは?企業会計を学んで経営への理解を深める

溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員

アカウンティングとは?

「アカウンティングとは?」

アカウンティングとは、会社の経営成績や財政状態を数字で表す技法や考え方を意味します。また、アカウンティングによって作成される計算書類を財務諸表と言います。財務諸表には、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュ・フロー計算書などが含まれます。

アカウンティングは、日本語では「会計」と言いますが、グロービス経営大学院では「アカウンティング」と表現しています。日本において会計は、簿記など財務諸表の作成者を養成する学問として発展してきました。それにより一定の成果はありましたが、一方で、多くのビジネスパーソンにとってアカウンティングは専門的な領域であり、自分たちとは直接関係のない分野と思われることも少なくありません。

一方、アカウンティングの語源であるアカウントには「報告する・説明する」という意味が含まれます。会社には、株主、銀行、取引先、従業員など、さまざまな立場の利害関係を持つ人々が存在します。これらの利害関係者を総称してステークホルダーと呼びます。例えば、株主であれば「会社は安定して成長するのだろうか?」、銀行であれば「融資したおカネは(利息とともに)返済されるのだろうか?」、取引先であれば「安心して取引を継続できるだろうか?」など、それぞれの立場で会社との関係を継続(あるいは開始)するかどうかを判断します。

その際、重要な判断材料のひとつが会社の経営状態でしょう。もちろん、経営者が会社の経営状態について口頭で説明することも考えられます。しかし、その都度ステークホルダーに説明することは大変ですし、効率的ではありません。また、口頭での説明は主観を伴うため、却って誤解を招くおそれもあります。故に、口頭よりも客観的な数字、つまり財務諸表によってステークホルダーに対して会社の経営状態である経営成績や財政状態を説明するのです。その結果、会社に多くの資金や人材などの経営資源が集まり、事業が大きく成長することが期待されます。

また、アカウンティングは、社内での予算の達成状況の把握や問題点の分析、新規プロジェクトの意思決定などについても活用されます。外部環境や戦略などの定性的な分析や説明だけでなく、アカウンティングをつかった定量的な情報や分析を加えることでより説明力が増すと同時に、意思決定の精度が高まるでしょう。

まさに、アカウンティングはビジネスにおけるコミュニケーションツールとしての役割を果たす存在と言えます。

なぜ今、アカウンティングが重要なのか?

「なぜ今アカウンティングが重要なのか」

営業、製造、購買、開発などの部門担当者の中には、日頃あまりおカネにまつわる数字に接することがなく、アカウンティングに対して距離を感じる人もいるでしょう。しかし、むしろそうした事業部門で活躍している方こそ、アカウンティングを理解し活用することが重要です。

例えば会社の戦略を実行するために、中期経営計画を立て、各年度に落とし込んで年間予算を策定します。各事業部は予算を達成するために日々奮闘するわけですが、現在の進捗状況を言葉で説明されたらどうでしょうか。

「もう少しで予算達成です」「もっと頑張ってください」と言われても、「もう少し」や「もっと」は主観的な表現であり、人によって解釈が違うことがあります。その結果、現在の状況などの把握に誤解が生じてしまいます。予算に対する実績を数字で把握することで、予算の達成状況を客観的に理解できます。そのため、事業部門のアカウンティングの理解に基づく正しいアクションこそが会社の収益性、効率性、安全性などの財務数値の改善につながるのです。

最近の企業を取り巻く環境の変化により、経営におけるアカウンティングの重要性は高まっています。例えば、客観的な経営指標で会社を評価する外国投資家などのステークホルダーの増加です。従来は、メインバンクや取引先などの安定株主の存在や、あるいは一般投資家においても、経営者を信頼して株主になっているという場合が多く見られました。昨今は、外国人投資家だけでなく、国内の一般投資家の中にも数字に明るい投資家が増えてきた結果、数字を通じての会社の状況に関するコミュニケーションが当たり前になってきています。

またアカウンティングが今こそ重要である理由として、ビジネスの複雑化・多様化が挙げられます。消費者志向などの外部環境の変化のスピードが速まっているため、「今まで通り」が通用しにくくなっています。そのため会社としては、未経験の分野に果敢にチャレンジしていく必要も生じます。その場合、これまでの勘と経験に頼った意思決定が通用しなくなるおそれがあるため、将来の事業計画やその進捗状況を数字によって把握、分析し、改善策を立てることが求められます。

加えて、ビジネスパーソン個人に視点を移せば、退職年金制度の確定拠出年金への移行、NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの個人による資産運用の普及により、我々一人一人が金融資産へ投資する機会が増えています。投資先の企業の将来性や収益性を評価、検討する上でもアカウンティングの理解は必須と言えるでしょう。

アカウンティングにおける基本的な考え方「企業会計原則」とは?

7つの企業会計原則

会計ルールでは、売上、費用の金額の測定や計上のタイミングなどについて、それぞれに細かいルールが設定されています。それらの会計ルールの大元になる考え方が「企業会計原則」です。企業会計原則は、言わば会計ルールの憲法のような存在であり、細かい会計ルールに明記されていない事象については、企業会計原則に立ち返って会計処理などを判断します。

企業会計原則(一般原則)は、次の7つの原則から構成されます。

①真実性の原則:企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して真実な報告を提供するものでなければならないとする一般原則の最上位に位置づけられる原則。

②正規の簿記の原則:企業会計は、全ての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

③資本取引・損益取引区分の原則:資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、とくに資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

④明瞭性の原則:企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

⑤継続性の原則:企業会計は、その処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

⑥保守主義の原則:企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

⑦単一性の原則:株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

尚、一般原則には該当しませんが、それらに準ずるものとして重要性の原則があります。

重要性の原則:企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないでほかの簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

尚、企業会計原則にはほかに、損益計算書原則(発生主義の原則、総額主義の原則、費用収益対応の原則)、貸借対照表原則および注解が含まれます。

アカウンティングにおける基本中の基本「P/L」「B/S」とは?

PLとBSの違い

P/L(損益計算書:Profit and Loss Statement)

P/L(損益計算書:Profit and Loss Statement)は、簡単に言うと会社の「儲け」を示す計算書です。この場合、儲けは「利益」を指します。同じ儲けであっても、例えば、売上高が1,000で利益が10の会社Aと、売上高が100で利益が10の会社Bでは、儲けの度合いが異なります。また、売上の大きさは会社の事業規模の把握や取引における信頼性を判断するために重要な情報となるでしょう。

そこで、P/Lでは売上などの収益から費用を差し引いて利益を表示する形式をとります。また、一概に利益と言っても、本業から得た利益なのか、利息などの財務活動から得た利益なのか、土地の売却など一時的な活動から得た利益なのかによって会社の稼ぐ力(収益力)の評価は変わります。そこで、P/Lでは利益を売上総利益(製品などの販売による利益)営業利益(本業による利益)経常利益(営業利益+営業外(主に財務)活動による利益)当期純利益(経常利益+特別(臨時的な)損益-税金費用)に段階的に表示します。

B/S(貸借対照表:Balance Sheet)

B/S(貸借対照表:Balance Sheet)は、簡単に言うと会社の「財産」の状況を示す計算書です。財産には不動産のような正の財産と借金のような負の財産があり、前者を資産、後者を負債と言います。そして、B/Sでは、資産から負債を差し引いて正味の財産を示します。正味の財産を純資産と言います。資産、負債、純資産がB/Sの主な構造になります。B/Sの大きな役割は、資産、負債、純資産によって会社の倒産リスクを示すことです。負債と純資産のバランスを見ることによって、あまりにも負債過多の場合など、倒産リスクを把握できます。

損益計算書(P/L)の考え方と読み方

日本の会計基準によるP/Lは、次の形式で表示されます。

P/Lで表記される形式

例えば家電製品のメーカーであれば、売上総利益は売上高から販売された製品などの製造コストを差し引いた利益です。そして、売上総利益から販売部門や本社の人員の人件費、家賃、事務コストなどの販売費および一般管理費を控除して得られる利益が営業利益です。営業利益には、研究開発、購買、製造、販売、物流、回収など、会社の本業に関わる一連のプロセスの成果が反映されることから、本業の利益と言われます。

営業外収益/費用とは、会社にとって本業外の活動から得られる成果です。主な内容は、利息の受け払いや為替差損益などの財務活動による収益費用ですが、ほかに副業として行っている余剰資金の運用や不動産の賃貸収益などが含まれます。営業利益から営業外収益費用を加減することで経常利益が計算されます。経常利益は、本業と本業以外の活動も含めて会社が通常利益を創出する力を反映しています。特別利益/損失は、土地の売却によって得た利益や、火災などによる工場の消失に係る損失などの臨時的な利益/損失指します。経常利益に特別利益/損失を加減して税前利益が得られます。そして、税前利益から当期に支払う法人税などを控除して当期純利益が計算されます(*)。

(*)尚、連結損益計算書では親会社株主に帰属する当期純益以降に「包括利益」が計算されます

売上はいつ計上すればよいのでしょうか?いつでも好きなタイミングで売上計上が可能になると、会社の業績をP/Lに正しく反映できなくなるおそれがあります。そこで、会計ルールでは売上の計上タイミングに一定の決まりがあります。従来は、「実現基準」に従って売上の計上タイミングを判断していましたが、2021年4月1日以降の売上取引については「収益認識に関する会計基準(収益認識会計基準)」に従って判断します。

収益認識会計基準の基本的な考え方は、顧客との契約内容および履行義務を把握し、履行義務を果たした時点で売上を計上します。簡単な例として、店頭での商品の販売を考えてみます。この場合、契約内容は顧客の望む商品を顧客へ引き渡すことであり、履行義務は商品を顧客へ引き渡した時点で果たされます。したがって、顧客へ商品を引き渡した時点で売上を計上します。実際の取引の中には、契約内容や履行義務が複雑なものもありますので、収益認識の基本的な考え方に即して、取引ごとに売上計上のタイミングを判断します。

費用は発生主義に従って計上されます。発生主義は、おカネの支出ではなく経済的価値を消費した時点で費用を認識する考え方です。おカネの支出の時点で費用を認識する考え方を現金主義と言います。工場の電気代を例にとると、当月の電気代の支払いは来月ですが、当月に電気を消費した事実を重視し、当月の使用分を当月の費用として計上します。

貸借対照表(B/S)の考え方と読み方

貸借対照表(B/S)は、会社の財産の状況を示す計算書です。財産と言うと、一般的には不動産のような正の財産を思い浮かべると思いますが、借金のような負の財産も含まれます。例えば、住宅ローン3,000万円を借りて4,000万円の住宅を建てる場合、住宅自体は4,000万円の価値があるとしてもその内の3,000万円部分はまだ自分のものではないということです。そして、正の財産から負の財産を差し引いた残りが正味の財産となります。では、正味の財産だけ示せば足りるのではないかと思うかもしれません。例えば、正味の財産が、A社:100億円、B社:100億円と同額だったとします。

ところが、A社は500億円の総資産を400億円の負債を活用して事業運営をしており、B社は、150億円の総資産に対して負債は50億円であるとします。正味の資産を純資産と言いますが、純資産が同じ100億円であっても、事業に活用している資産の規模、つまりビジネスの規模や借金の割合が異なります。それによって、会社の財産の状況に対する見方も変わってくるのではないでしょうか?したがって、B/Sでは、純資産だけを示すのではなく総資産から負債を差し引いて正味の資産を示す仕組みとなっています。

アカウンティングの用語としては、正の資産は「資産」、負の資産は「負債」と言います。資産は総じて将来においておカネで回収されるものです。また、負債は、第三者からの債務を負っていることであり早晩返済する必要があるものです。資産と負債については、流動、固定に区分されます。資産は、最終的におカネで回収されるものですが、いつ回収されるのかについて時期を示しています。

簡単に言うと、1年以内におカネで回収できる資産が流動資産いつかおカネで回収されるが1年以内でないものが固定資産となります。負債も同様に、1年以内に返済する負債は流動負債返済までの期間が1年超である負債は固定負債となります(*)。

(*)売上債権、棚卸資産、仕入債務などは、正常営業循基準によって流動・固定に区分されます。

貸借対照表(B/S)の5つのカテゴリー

その結果、B/Sは5つのカテゴリーに区分されます。この5つの区分と意味を理解するだけで、会社の財産の状況の重要な点は読み解けます。例えば、負債と純資産のバランスをチェックして、負債があまりにも大きいと負債の返済が怪しくなります。また、流動資産よりも流動負債のほうが大きい場合は、短期的な資金繰りに不安が生じます。

アカウンティングの知識を応用して企業会計を読み解こう

ニトリの企業会計事例

では、これまでの理解を踏まえて、ニトリの2021年/2月期のP/L、B/Sを読み解いてみましょう。

ニトリの企業会計事例

ニトリは前期(2020年2月期)から売上高を11.6%伸ばしています。すでに相当な売上規模の会社が、たった1年で売上高を1割超も増加させるのは容易ではありません。どのように売上高を成長させたのかが気になります(売上高の成長要因は別途分析することになります)。

次に、ニトリの利益率を確認していきましょう。利益率などの財務指標の値の評価は、絶対値としての評価は難しく、競合他社、業界平均、時系列などとの比較によって相対的になされることが通常と考えます。ここでは、中小企業庁がまとめた「平成29年中小企業実態基本調査速報(平成28年度決算実績)」の全産業の合計値と比較してみたいと思います。

ニトリと中小企業庁データの利益率比較

ニトリの売上総利益率は57.4%です。中小企業庁のデータでは、全産業の売上総利益率の平均値は約25.6%(小売業は27.6%)ですので、ニトリの売上総利益率が突出して高いことが分かります。ニトリの商品販売価格がお手頃価格であることを考慮すると、相当な原価削減を達成していることが推察されます。

一方、ニトリは売上高に対する販売費および一般管理費の比率が大きいです。多数の店舗の運営に関わるコスト、製品および店舗の開発や店舗管理などの本社費用などが影響しているのではないかと推測します。総じて、ニトリの収益性の高さは、製造工程における徹底したコスト削減にあると考えることができそうです。

次にB/Sを見てみましょう。

ニトリの貸借対照表(B /S)

総資産(流動資産と固定資産の合計)の内、純資産が73.6%を占めています。財務安全性はかなり高いことが分かります。尚、現金および預金は、158,577百万円(17.1%)と売上高の2.5ヶ月超です。一般に、手元流動性は売上高の1ヶ月分が目安とされており、短期的な支払い能力が高いことが分かります。当座比率は98.9%と100%を若干下回るものの、流動比率は146.7%とこちらもおおむね問題ない水準と言えるでしょう。  

ニトリは多店舗展開しているため、有形固定資産の中でも店舗に関わる土地建物の割合が多いことが予想されます。確認してみると、有形固定資産の内約93.8%が土地建物であり、総資産の約46.6%です。効率性では、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間、仕入債務回転期間は、それぞれ19.2日、96.6日、53.3日であり、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は、62.5日となります。店頭での個人顧客への販売が中心であることから売上債権の回収期間は比較的短期間ですが、棚卸資産の回転期間が3ヶ月超と比較的長いことが分かります。2020年度の上場会社約3,700社のCCCの平均は33日程度とのデータもあります。それと比較すると、ニトリの62.5日は長いという見方もできます。しかし、CCCは販売形態(BtoBかBtoCか)や業種(製造業か非製造業)による在庫水準の違いなどの影響もあるため、業種やビジネスモデルに照らしての評価が望ましいでしょう。

  

最後に、総合力の指標であるROEを見てみましょう。2021年3月期のROEは14.3%と中長企業庁データの平均値9.3%を大幅に上回っています。ROE=当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジに分解すると、ニトリのROEの高さは当期純利益率が主要因であることが分かります。

アカウンティングはどう学ぶのが効率的?

これまで見てきたように、企業会計を読み解ければ、その企業の経営状態が客観的に把握できるようになり、ビジネスの基本的なルールを理解することで、あらゆる立場の人と数字をもとにしたコミュニケーションが取れます。そのことで、ビジネスパーソンとしてより結果の出せる行動がとれるようになれるのです。

 では、最後に「アカウンティングの知識を仕事で活かせるレベルまで身に付けるためにはどうすればよいのか?」について考えたいと思います。ポイントは、以下の4つです。この4つのプロセスを回し続けない限り、アカウンティングが身に付くことは絶対にありません。

①知識をインプットする

②知識をつかいアウトプットする

③アウトプットに対し他者からフィードバックを受ける

④フィードバックを踏まえて、自分の思考を改善する

身につけるための4つのプロセス

まず、「アカウンティング」のスキルが身に付いている状態について、考えてみましょう。

「アカウンティング」のスキルが身に付いている状態とは、

・アカウンティングに必要な知識を「知っている」

・それらの知識を日々の「仕事でつかえている」

という2つを満たしている状態です。「知っている」だけで、「仕事でつかえる」ようになっていなければ、「身に付いている」とは言えないのです。では、「仕事でつかえる」ようになるためには、どうすればよいのでしょうか。

「インプットした知識をつかって自分で考えアウトプットし、フィードバックを受け、考え方を改善する」という営みを繰り返すことです。

よくある学びの手段として「動画視聴」「読書」「他者とディスカッション」などがあげられますが、それぞれの学び方の特徴を確認しておきましょう。日々忙しく過ごす皆さんにとって、時間はとても貴重だと思いますので、それぞれの学び方のメリットとデメリットを認識しておくことはとても重要です。

まず「動画視聴」について考えてみましょう。最近は完成度が高く、安価で分かりやすいものが数多く提供されています。動画で学ぶメリットは、読書に比べると時間あたりの情報量が多く、短時間で大量の知識をインプットできるので、「勉強したぞ!」という満足感を得られます。一方で、落とし穴もあります。それは動画を視聴するだけでは、「自分の頭で考える(思考力を鍛える)」という営みがほとんど生じないという点です。

動画視聴の落とし穴

「読書」は、動画に比べて時間あたりの情報量が少なくなってしまいますが、筆者の思考を追体験しつつ、行間を自分なりの解釈で埋めることが必要なので、「自分の頭で考える」という時間は動画と比べて多いと言えるでしょう。本を読む際はおそらく皆さんも、「筆者がここで伝えたいことは何だろう?」「この書籍の最大のポイントはどこだろう?」などと、自分に「問い」を投げかけながら読んでいる人が多いのではないでしょうか。とはいえ、読書も動画と同様に「作者→読者」の一方通行であり、受動的に学んでいることに変わりはありません。

読書の落とし穴

「ディスカッション」についても考えてみましょう。誰かと意見交換するためには、学んできた知識を用いて、自分の考えをまとめて言語化し、他者に伝える内容を事前に考える必要があります。また、ディスカッションを通じて、自分の考えにフィードバックを得ることができ、そのフィードバックに対してまた自分の意見を考え伝える営みが繰り返されます。つまり、客観的な視点を意識しながら、何度も繰り返し“考えるトレーニング”ができるのです。また、この営みを通じて、自分の思考の癖にも気付くことができ、徐々に思いつきや直感、経験だけに頼った思考スタイルから抜け出せるようになります。

能動的に考えるトレーニングをすること

皆さんに認識していただきたいことは、アカウンティングに関する知識を「知っている」レベルから、「仕事でつかえる」レベルに引き上げるには、多様なバックグラウンドを有する人たちとのディスカッションが必要だということです。

知識をいくらインプットしても、それらの知識をつかってアウトプットのトレーニングを繰り返し、そのアウトプットに対して自分とは異なるフィールドにいる人たちからのフィードバックを得ない限り、知識を仕事に活かせるレベルに到達させることは難しいのです。

「仕事で使える」レベルに引き上げる

知識がなければ、それらを活かすことはできませんから、動画視聴や読書など知識をインプットすることは必要です。ただ、仕事で成果を出すことを常に求められるビジネスパーソンは、知識を得ることにとどまり、学んだつもりで終わってしまうという「独学の罠」の存在を知っておいてもらいたいと思います。

まとめ

アカウンティングは、数字の羅列を読み解かなければならないなど、会計になじみのない人からすると一見とっつきづらく、理解しづらい分野に見えます。しかし、会計はビジネスに関するどんな分野・業界でも用いられている基礎的なビジネスルールです。どんな企業もアカウンティングなしでビジネスはできません。ビジネスパーソンとして成果を出し続けるためにも必須の知識と言えるでしょう。

溝口 聖規

グロービス経営大学院 教員

京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。

(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)