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投稿日:2019年12月26日
投稿日:2019年12月26日
クリティカル・シンキング×テクノベート・シンキング×デザイン思考、3つの思考法で新時代のイシューを解く ――「思考力サミット! 〜3つの“思考”系科目を体感する〜<後編>」 イベントレポート
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グロービス経営大学院の単科生として「クリティカル・シンキング」を受講した方、または受講中の方を対象に行われたセミナー「思考力サミット! 〜3つの“思考”系科目を体感する〜」。グロービスが提供する3つの思考系科目「クリティカル・シンキング」「テクノベート・シンキング」「デザイン思考と体験価値」を知り、それぞれの特徴や考え方を体感できるイベントである。
前回の記事では「クリティカル・シンキング」「テクノベート・シンキング」の担当教員である岡重文のインタビューを通じて、3 つの思考法の概要や違いを解説した。今回は実際のセミナーの様子と、参加された方々のコメントをお届けしたい。
100名近い参加者が集まった本セミナーは、グロービス経営大学院・東京校3階のラウンジで、手もとにお菓子が配られるなどカジュアルな雰囲気で行われた。「いつもの授業とは気分を変えて、リラックスしながら学んでもらいたい」と岡。
今回のスピーカーは、グロービスで「クリティカル・シンキング」「テクノベート・シンキング」を教える岡、「テクノベート・シンキング」を教える鈴木健一、そして「デザイン思考と体験価値」を教える難波美帆の3名。これらの思考系科目の担当教員が一堂に会して行うセミナーは今回が初めてだ。
参加者は4人ずつのグループに分かれ、はじめに自己紹介と参加目的のシェアを行った。セミナーは第一部と第二部で構成されており、それぞれスピーカーから出される課題をグループごとに各思考法で考えるというワークショップ型の内容だ。
ここでは具体的な課題内容に触れることは差し控えるが、各思考法を理解する上で重要となる教員のコメントなどを抜粋して紹介する。
第一部は、「ある商品Aの売上が競合より下回っている。売上を上げる方法は?」という課題について3つの思考法でアプローチした。
まずはクリティカル・シンキングから。クリティカル・シンキングの特徴は、生じている状況を明確に把握し、因果関係を丁寧に考え、合理的な解決策を打ち出す点。最初に行うべきことは、イシューの特定だ。ぼんやりとしたイシューからスタートすると、その後の考えもぼんやりしたまま進み、効果的な解決策が出ないことが多くなってしまう。
対して、テクノベート・シンキングは、コンピュータの力を借りて解決策を見出す思考法。大量のデータから相関関係を見つけ、1,000人の顧客がいれば1,000人それぞれの属性や購買履歴をもとに、Aさんには○○、Bさんには△△、といった個別対応ができることが特徴のひとつだ。
「クリティカル・シンキングとの大きな違いは、因果関係を求めないこと。人間では処理できない大量のデータから相関を見つけるのが得意なのがコンピュータ。この特徴を活かして仮説検証を高速に回すことに用いる」と岡は説明する。
コンピュータが導き出す解決策の精度は、データのインプットとアウトプットを繰り返すたびに高まっていく。機械学習が発達した現代ならではの思考法といえるだろう。
最後は、デザイン思考。デザインファームのIDEO(アイディオ)のチームで取り組む仕事ぶりをテレビ放送が取り上げ、世界中から注目を集めた。彼らのクライアントの課題解決プロセスは、デザイナーの思考プロセスを非デザイナーの人たちが取り入れやすいようにパッケージ化したものである。特徴は、「顧客への共感」からイシューの特定を行っていく点だ。
「デザイン思考のプロセスは、『共感』『課題発見』『アイデア』『試作』『テスト』。誰のどんな困りごとを解決するのか、誰にどんな新しい価値を提供するのか、を重視する『人間中心設計』の思考法です」と難波は語った。
第二部 〜自社の未来を切り開く新規事業を考える〜
第二部は、ある企業のマネージャーになったつもりで新規事業のアイデアを考えるというテーマ。過去に起こった出来事を分析するのではない点が、第一部のイシューとの大きな違いだ。
「クリティカル・シンキングでは、アイデアが単なる思いつきによる羅列にならないことが重要」と岡。
続けて、テクノベート・シンキングについて、「コンピュータ] とデータの力を十二分に活用することによって、実現できることから着想を得る。世界中のすべての人に個別の店舗を持てばいいと考えたAmazon、世界中のすべての情報が整理できると判断したGoogle、利用者と提供者のマッチングができると考えたUberやAirbnbのような発想は、おそらく従来の問題解決的なアプローチの延長では思いつけなかったもの。今日的なコンピューティング技術とデータの可能性について、適切な理解が持てていないと着想そのものが難しいアプローチ」と述べた。
一方、デザイン思考については、難波によるミニワークショップが行なわれ、実際に「共感」、「課題定義」「アイデア」のプロセスを体感した。
途中、難波から「デザイン思考においては、徹底的な顧客視点で、かつ自分たちのノウハウややりたいことが活かせるアイデアであることが大事。本来はまず、観察やインタビューを実施したいところだが、みなさんを未来の想定顧客として、自身の望みや悩みを付箋に書き出してください。付箋が増えてきたら、同じカテゴリーだと思われるものでグループ化してみて。」と声がかかった。
最初は黙々と付箋を書くグループもあったが、「口を動かしながら、手を動かして」と難波が促すと、グループメンバー間の対話から、「そういえばこういうことも」と次第に付箋の数が増えていった。
「時代の変遷とともに、ビジネスにおいて関心の高いイシューも変わってきました」と鈴木。「モノ(HAVE/所有すること)」が重視された2000年以前と比べ、2000年以降は「コト(DO/体験すること)」や「トキ(BE/そこにいること)」が重視されるようになり、モノが飽和する中で顧客の体験価値をいかに高めるかが重要な時代となった。
それにともない、思考法に対する世の中の関心も移り変わってきている。汎用性の高いクリティカル・シンキングは依然として関心が高いが、 AIの進化によりテクノロジーを活用した課題解決(グロービスでいうところのテクノベート・シンキング)が注目され始め、2011年の震災以降はとくにデザイン思考への関心の高まりが顕著だという。
「クリティカル・シンキングは、人間が得意な限られたデータの中で分析し、因果関係を導き出す思考法。テクノベート・シンキングは、ビッグデータ×アルゴリズムによる個別化で『顧客の体験価値を最適化』する思考法。そしてデザイン思考は、そもそものスタート地点が顧客の体験価値をいかに高めるかであり、そこからさらに新しいものを作りながら『顧客の体験価値を創造』する思考法。それぞれの思考法をブレンドしながら使っていくことで、解けるイシューが大幅に広がりつつある現代は、極めておもしろい時代になってきていると感じます」と、鈴木はイベントを締めくくった。
イベント終了後の参加者からのコメント
最後に、イベントを終えたばかりの参加者に率直な感想を聞いた。
今、単科生として「クリティカル・シンキング」を受講しているという参加者からは、「本科への入学を前に3つの思考法に触れることができ、学びになりました。思考法に関するトレンドや、今後AIがどのように活用されていくのかについて知ることができてよかったです。解けるイシューの幅が広がるという大きな気づきもありました。分野が異なる3人の教員の方から一度にお話が聞けて、贅沢なイベントでした」という感想があった。
さらに、今日の学びを自身の仕事に重ね合わせていた参加者も。「テクノベート・シンキングはデータが大事ですが、それ以前に『結局自分は何をしたいのか』が重要であると考えさせられました。また、いつもと違う自分になって、アイデアを出すデザイン思考にも興味が湧きました。」とコメント。
企業でデータ分析を手がけているという参加者からは、「それぞれの思考法の使える領域がクリアになってよかった。現在『クリティカル・シンキング』を受講中で、デザイン思考は独学で勉強しています。『テクノベート・シンキング』については今日初めて学びましたが、仕事に取り入れたらおもしろそうだと感じました。同じ課題を3つのアプローチで考えてみたり、併用してみたり、いろいろな使い方ができそうです」という感想をもらった。
同じ課題を3つの思考法で考えてみることで、それぞれの特徴や違いが明確になった本セミナー。これらを適切に使い分け、あるいは掛け合わせていく力が、これからの時代には必要といえる。「クリティカル・シンキング」「テクノベート・シンキング」「デザイン思考と体験価値」の各科目では、ケース(企業事例)を通じてより実践的な活用方法を学べるので、自身の思考力向上にぜひ役立てていただきたい。
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