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- 思考
投稿日:2019年05月02日
投稿日:2019年05月02日
「論理的に考える」ってどういうこと?ロジカルシンキングの基本を学ぶ<DAY2>
- 岩越 祥晃
- グロービス経営大学院教員/グロービス・マネジメント・スクール教員
「論理的に考える」とは、「問い」と「答え」を考えること
私は、グロービス経営大学院やグロービス・マネジメント・スクールで「クリティカル・シンキング」という科目に登壇する際、受講生の皆さんに以下の質問を投げかけるときがあります。
「“論理的思考”という言葉を、皆さんなりの言葉で言い換えてみてください」
4~6名でグループを組み(※)、ホワイトボードに各グループの意見をまとめてもらいます。グループワークの後に各グループのホワイトボード眺めてみると、多少の違いはありますが、ほとんどのグループで以下のような言葉が並んでいます。
- 筋道が通っている
- 納得感がある
- 客観的である
- 因果関係がある
- 構造的である
- 一貫性がある
- 思い込みがない
- 感情的でない
- 理性的である
- 妥当性がある
- 話に飛躍がない など
いずれも「確かにその通り」という回答なのですが、こうした言葉を眺めてみて「なるほど!さっそく明日から仕事で意識してみよう!」「考え方が変わりそう!」と素直に思えるかというと疑問です。いずれも間違ってはいないけれども、具体的に何をどのように行えばよいのかが明確にならないので、ビジネスに転用しようとすると壁にぶつかってしまうのです。
そこで本コラムでは、仕事で常に意識できるように、論理的思考とは何かについて一言でまとめたいと思います。
論理的に考えるとは、
「問い」と「答え(=主張と根拠のセット)」を考えること
です。
つまり、今ここで答えを出すべき「問い」を明確に設定し、その「問い」に「答え」を出す。その「答え」は自分の言いたいこと、つまり主張だけではなく、なぜそう考えたのかという理由(=根拠)もセットで明示するということです。
ゆえに、論理的な説明を求められる場面では、以下のように説明する必要があるのです。
「今回、私が意見を述べたいテーマ(問い)は、●●●●です」
「このテーマについての私の考えは、■■■■です」
「その理由として(なぜならば)、○○○○と△△△△と□□□□が上げられます。それぞれ、詳細を説明します・・・・」
実際にこのように話すのかは別として、少なくともこういった流れで説明ができるように事前に頭の中を整理しておく必要があります。
なぜ「問い」なのか?
グロービスのクラスで、「論理的に考えるとは、問いと答えを考えることだ」と説明をすると、「なぜ“問い”の形にする必要があるのですか?」という質問をよく受けます。その際に私がお伝えしているのは、以下の3つです。
1. 人間は「問い」があると本能的に「答え」を出したくなる
例えば、「リーダーシップを発揮するために押さえるべきポイントは何か?」と問われたら、今この瞬間に皆さんの頭はなんらかの答えを求めて動き出したのではないでしょうか。例えば、「皆さんの会社の売上好調(不調)の主要因は、営業担当者にあるのか?」と問われたとすると、とっさに「YESだ!」「いや、NOだ!」といった自分の意見(主張)を求めて、頭が回転し始めたのではないでしょうか。このように、人間は「問い」があると自分の意見を求めて思考が前に進み始めるのです。
心理学者で臨床心理士でもあるロバート・マウラーの著書『脳が教える!1つの習慣』(講談社)にこんな記述があります。
「質問は脳を目覚めさせ、喜ばせる。脳は、たとえばかばかしい質問だろうと奇妙な質問だろうと、質問を受け入れ、じっくり考えるのが好きなのだ」
脳を刺激し、思考をドライブさせるための方法として、「問い」を立てることがいかに重要なのかを教えてくれています。
2. 「問い」を立てることで、余計なことを考えなくなる
例えば、あなたがある会社の営業部門のチームリーダーで、「ここ数ヶ月、月間売上目標に達しない月が続いており、最近メンバーに覇気がない」と感じているとします。この状況において、あなたが考えるべきことを「問い」の形で言葉にしてみてください。
例えば、「売上目標に到達しない原因は何か?」「誰がどの程度目標に達していないのか?」「挽回するための方法はあるか?」「メンバーに覇気がないのはなぜか?」「メンバーに覇気がないことで生じるデメリットは何か?」「メンバーに覇気がないとは具体的にどのような状態なのか?」など色々と考えられます。
仮に「メンバーに覇気がないのはなぜか?」について考えることにしたとするならば、答えは例えば「原因は、訪問回数を重視しているため日中はほぼ外出となり、帰社後は翌日の営業のための提案資料の作成だけで1日が終わってしまい、上司や先輩に悩みごとを相談する時間が取れないこと」といった内容になるでしょう。
このように、「問い」を立てることで、どのような内容を「答え」として出せば、考えたことになるのかを自分で判断できるようになるのです。逆に、「問い」を意識することなく考え始めた場合は、「目標設定がまずいのではないか」「戦略の見直しが必要なのではないか」「同行営業で挽回するしかないか」など、さまざまな方向に思考が発散してしまう可能性があります。
「問い」を立てることで、考えるという営みの終着点が見えるので、ゴールラインを越えているにも関わらず考え続けてしまい、時間をムダにしてしまうといったことを避けることができます。また、「問い」や「答え」とは関係のないことを考えてしまうといった寄り道も防ぐこともできるのです。
3. 論理的思考が求められる場面の多くは「問題解決」である
ビジネスにおいて、私たちが論理的に考えることを求められるのは、なんらかの「問題」に対して、解決策の検討や意思決定を行う場面といってよいでしょう。一言でいうと「問題解決」の場面です。では、「問題」とはどのような意味を持っているのでしょうか。辞書によって表現は異なりますが、おおむね「答えを出すことを前提とした“問い”」といった文言が並んでいます。つまり、論理的に考える際には、常に答えを出すべき「問い」が先にあるはずなのです。
次回(DAY3)は、この「答えを出すべき問い」について考えたいと思います。
※グロービスの授業はグループワークとクラス全体でのディスカッションを中心に進むため、教室のレイアウトは4名〜6名ごとにグループを作って座る形式になっています。
岩越 祥晃
グロービス経営大学院教員/グロービス・マネジメント・スクール教員
担当科目は「クリティカル・シンキング」「ビジネス・プレゼンテーション」「ファシリテーション&ネゴシエーション」。同志社大学法学部政治学科卒業、関西学院大学大学院経営戦略研究科修了(MBA)。エンタテインメント関連企業を経て、グロービスに入社。現在は、グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールの教員及び教材の開発を担当するとともに、株式会社グロービスにてマーケティング業務のマネジャーも務めている。