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投稿日:2020年04月14日

投稿日:2020年04月14日

クラブメンバー6名の変革リアルケースに触れる! 変革チャレンジ2019 ――グロービス公認クラブ「変革クラブ」 イベントレポート(1)

クラブ活動
グロービス変革クラブ 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。

「火をつける」。設立時から変わらないこの想いを原動力に、変革クラブはこれまで進化を遂げてきた。2014年の設立から60回以上にわたり、講演会や事例発表会など、さまざまなイベントを開催。「組織や企業、業界、社会の『変革』を成し遂げる人材を世の中に輩出する」という目的に共感して集まったクラブメンバーは、今や2,100名(2020年3月時点)にのぼる。

今回レポートするのは、2019年10月に開催された全体会「変革チャレンジ2019」。変革の一歩を踏み出したクラブメンバーの事例発表を通じて、変革のリアルケースに触れられる貴重なイベントだ。今回、登壇する6名のメンバーたちはどのような変革に挑み、何を学んだのだろうか。

「変革クラブ」の主役は、クラブメンバー自身

最初に登壇したのは幹事の一人である澁谷直幸氏(2018期)。クラブの概要説明を行った。

「変革クラブは、『変革』という共通テーマで集まった在校生・卒業生1,900名(2019年10月当時)によるコミュニティ。幹事が何かを提供したり、登壇者から一方的に話を聞いたりする場ではありません。主役は、クラブメンバーであるみなさん自身です」と強調した。

「変革を成し遂げる人材を世の中に輩出するためには、参加されたみなさんが自分の変革の定義と方法を創り上げること、そして強いコミットメントとやり抜く覚悟をもつことが重要です。私はこのクラブに入ってから、毎回全体会に参加していますが、参加していつも思うのは『変革するのはいつも自分自身から。まず自分が変わる。そうしてはじめて、周囲の人たちに変革のきっかけを広げられる』ということです」

変革クラブでは、「全体会(インプット)」「コミットメントシート記入(アウトプット)」「実践」のサイクルをまわして、各自の変革活動をブラッシュアップしていくことを重視している。今回の事例発表もまた、その内容を単にインプットするだけでなく、自身の変革にどう落とし込んでいくかを考えることに意味があるのだ。

ここからは登壇者6名(5組)による発表と、コメンテーター3名による感想やアドバイスをレポートしていく。コメンテーターは、株式会社メルカリ 執行役員(当時)であり変革クラブ設立メンバーでもある唐澤俊輔氏、株式会社高崎髙島屋 代表取締役社長(当時)で卒業生でもある中川徹氏、そしてグロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長の廣瀬聡が務めた。

事例1. 味の素の若手有志団体、CFF(Class For the Future)の立ち上げ

■豊泉俊一郎氏(2018期)、塩谷美咲氏(2017期)

「会社の未来は自ら興す」をテーマに発表を行ったのは、味の素グループで大手アカウント営業を担当する豊泉俊一郎氏と、ダイレクトマーケティングを担当する塩谷美咲氏。

豊泉氏は、味の素グループの若手・中堅メンバーを中心に、組織の壁や年次を超えた自由なコミュニケーションと繋がりを創るために「CFF(Class For the Future)」と称した有志団体を立ち上げたメンバーの一人だ。2018年9月にスタートし、わずか1年で事務局メンバーは4名から30名に増えた。また、いつでも自由にメンバー同士でコミュニケーションできるよう、Facebook上にコミュニティグループを設置。メンバーは約270名にものぼる(2020年3月時点)。65回におよぶイベントには、のべ約800名が参加し、今では経営陣も関心を寄せるほどだ。そのひろがりは、他社の事例と比較しても非常に早く、業務の枠を超えた繋がりを求める社員が、いかに多いかを物語っている。

「CFFを立ち上げたのは、簡単に言うと、大企業病をどうにかしたいという想いからでした。やりたいことがあるなら一歩踏み出してしまえばいいし、やりたいことがわからないなら探せばいい。そのために必要なのは『仲間』と『きっかけ』だという仮説を立ててスタートしました」と豊泉氏。

まずは、「ミライを一緒に考える」をテーマにしたイベントを企画。MBAホルダーでもある人事部長が自身のキャリアやHR戦略を直接話す場と、参加者が自ら考えるグループワークを設けたところ、初回にもかかわらず80名が参加し大盛況に終わった。

そこで挙がった声をもとに次に開催したのが、「ここがスゴいよ味の素、ここがヘンだよ味の素」をテーマにしたイベント。外部講師による自社社員の強み・弱みのレビュー、中途入社社員とのパネルディスカッション、今後の自己変革を考えるグループワークという構成で、60名の社員が参加した。

これらを経て、新しい動きが生じるようになる。Facebookのコミュニティグループでは毎日のように情報の共有やコミュニケーションが生まれるように。活動範囲は首都圏だけでなく全国にも広がる。リクルートが主催する新規事業アイデアコンテストへの応募、楽天やスタディサプリとのコラボ提案など、社外とのネットワーク構築も積極的に行われるようになった。

さらに社外取締役の名和高司氏をスピーカーに招いたイベントを開催。狙いは「自社の未来を自ら考えるために『問い』をいただく場を創る」こと。自社を取り巻く環境や戦略の背景を経営に関わる方から直接学び、一緒に考える機会となったこのイベントには、国内外からオンライン参加を含めて約160名もの参加者が集った。企画からわずか1ヶ月半で実現したスピード感に、豊泉氏は組織変革に向けての大きな可能性を感じた。

「もし実務で、さまざまな部門からこれだけの人数が集まる会議を行うとなれば、承認作業や打ち合わせの調整が必要で準備に半年はかかるでしょう。それがこれだけの短期間で実現できてしまう。『Will』の凄さを感じました。CFFの活動は、ありたい姿を自分たちで構想して、組織や自身を変革していく取り組みです。実務の現場で『Will』を自由に語り合うことはなかなか難しいですが、自分たちのやりたいことをオープンにできる『場』をCFFで実現できたのではないかと感じています。職種や勤務地などを問わず、さまざまな軸で多様な人が集まっている点も大きな魅力です。だからこそ、これだけの社員がCFFに集まっているのだと思います」

メンバーが増え多様性が広がると、ルールや規律も必要になってくる。そういった課題もみんなでワイワイ議論し、楽しみながら答えを出していきたいと語る豊泉氏。「大きな組織を一人で変えるには限界がある。一人で必死にがんばるよりも、みんなで肩を組みながら0.1歩でも踏み出すほうが、早く・大きく・楽しく変えることができる」と聴衆にメッセージを送った。

最後に塩谷氏は、CFF加入後の変化と気づきについて触れた。

「『仕事で何をしたいか』から『仕事+生き方を通じて何をしたいか』へ、そして『会社でどうなりたいか』から『一個人としてどうなりたいか』へ、自分の中で考えの枠組みが大きく変わった。それによって気づいたのは、最初の一歩を踏み出して行動することがとても重要だということ。コミュニティを立ち上げた豊泉さんは大きな一歩で、そこに加わった私は小さな一歩かもしれませんが、大きさは関係ありません。その一歩があるかないかで、見える景色が大きく変わることを実感しました」

■コメンテーターによるコメント

<唐澤>
有志活動はやっていることで満足してしまうケースが多いが、ビジョンを共有するなど心理的な目線を高く置き、みんなが同じ方向を向いて動ける状態にしているのは素晴らしい。活動を大きくすることで大企業と同じ課題が浮上してくると思うが、自分たちの存在意義・目的を問い続け、課題に対してどう戦うのか考え続けてほしい。

<中川>
やってみる中で効果を見つけていくという「圧倒的なスピード感」、幅広い人が参加してみたくなる「参加ハードルの低さ」、人事部長や社外取締役など「会社を巻き込んでいる」点がいいと思った。今後も活動を続ける中で、会社の方針や方向性と合致しないジレンマが出てくると思うが、その際にどう対処していくかが興味深い。

<廣瀬>
「場をつくる」「C&D(コネクトアンドデベロップ)」「背中を押し合う」など素晴らしいキーワードが出てきた。私は社会人1年目から「結局お前はこの会社をどうしたいのか、常に考えろ、常に語れ、常に動け」と言われてきたが、それをどんなポジションでも言いきれることが重要だったと思う。参加者一人ひとりがそのような想いをもつようになれば、今後も活動を維持できるのでは。

事例2. 「医療」「人事」「経営」の変革による、歯科医療インフラの創造

■新見隆行氏(2019期)

医療法人幸成会の理事長として、群馬県で明治歯科診療所を経営する新見(しんみ)氏。「みんながしあわせになる診療所」を理念に掲げ、業界全体の上位4%、年間医業収入1億円以上の規模を誇る。

新見氏の変革は「医療」「人事」「経営」の3つ。歯科医師歴17年目の新見氏は、開業前は群馬大学病院でがん治療を専門にしていた。そのときに頭から離れなかったのが、「自分のすべてを注ぎ込んでも人は死ぬ。この医療は役に立ったのだろうか」という疑問だった。

そこでまず新見氏が着手したのは「医療の変革」。「みんながしあわせになる医療」を目指し、病気になる前の健康づくりから携わるべく、30歳で開業を決意。大学病院勤務のかたわら、毎週土曜に近隣の歯科医院で地域の医療に触れ、自分のあり方を模索した。

しかしそこで業界特有の「人」の課題を目の当たりにし、「人事の変革」の必要性を痛感する。歯科衛生士の離職理由で多いのは、結婚・出産による退職や、職場内での人間関係。女性が中心の小さな職場内で生じやすい課題を人事で解決することで、専門職である歯科衛生士が長くキャリアを積み重ねていける環境をつくろうと考えた。

「開業後は3ヶ月ごとにスタッフと定期面談をし、仕事と人間性について振り返りと目標設定を行うようにしました。また、短期目標と長期目標を設定してもらい、両者に整合性が見えないようならきちんとコミュニケーションをとって確認します。これを長く続けているうちに、キャリアを重ねるにつれて目標のレベルがマズローの欲求5段階説に沿って上がっていくことや、「仕事の目標」と「人間性の目標」がだんだんひとつに重なっていくことなど、いろいろなことが見えてきました。スタッフと信頼関係を築き、職場で自己実現ができる環境をつくったことで、離職者は11年で一人だけ。成熟した業界ながら、年率8%成長を実現しています」

こうした変革を地域へと広げるために、グロービスに入学した新見氏。人口減少社会に突入し、これからの医療過疎が問題視されている群馬県で、個人経営が招く縮小再生産からの脱却を目指して地域歯科医療の変革にチャレンジする――。これが、新見氏の挑もうとしている3つ目の変革「経営の変革」である。

「私は2013年に『志(こころざし)迷子』になりました。『勝ち組歯科医院』と言われ調子に乗って規模拡大した結果、赤字に転落して身も心もボロボロになったのです。何をしたいかまったくわからなくなり、歯医者を辞めたいとまで思いました」

一度挫折しかけた新見氏だが、スタッフや友人との対話、自分自身への「自分らしさとは何か」という問いかけを繰り返したことで、自身の志を取り戻したという。「変革は自分への気付きから始まる。ムリに自分を変えるのではなく、より自分らしくなることが大切。この自己変革こそが、全ての変革の第一歩です。」と、自らの苦しい経験を通じて得た学びを力強い言葉に代えて、新見氏は発表を締めくくった。

■コメンテーターによるコメント

<唐澤>
挫折や修羅場を乗り越えた方は強い。僕自身、いろいろな人に触れる中で「自分は自分らしくあればいい」と思えたときが、「前に進もう」と思えたときだった。「志とは何か」をあらためて考えさせられ、心を打たれた。

<中川>
私自身が背中を押してもらえた発表だった。トップとして自社を変革することはすでに成し遂げておられて素晴らしいと感じた。これから医療業界や地域経済に立ち向かう新見さんを心から応援している。

<廣瀬>
サービス業はピープルビジネスだとあらためて思った。難しさはあるが、うまくまわり始めるとどんどん好転して、人をしあわせにしていることを実感できる。この世界を本当に知っている人は少ない。苦しみは財産と言える。今後どう標準化・横展開していくかは、新見さんのスキル・志・人間性にかかっている。リーダーとして「演じきる」ことが重要。

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グロービス変革クラブとは

組織や企業、業界、社会の「変革」を成し遂げる人材の輩出を目指すクラブ。在校生・卒業生約2,100名(2020年3月時点)が在籍し、変革コミットメントシートの作成やワークショップ、分科会などの活動を通して「一人ひとりが変革に強いコミットメントを持ち、自身の変革プランを磨き上げる」場を提供しています。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。

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