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株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室淑恵氏から学ぶ、経営戦略としての「真」の働き方改革 ――グロービス経営大学院・公認クラブ「価値観共有クラブ」 イベントレポート

2019年10月31日

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クラブ活動 価値観共有クラブ 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。

前回の代表幹事インタビューに続き、先日行われたグロービス経営大学院・公認クラブ「価値観共有クラブ」が主催する講演イベントの内容をお届けします。


2019年3月22日、「経営戦略としての働き方改革」と題した講演イベントが開催された。登壇者は、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏。安倍内閣「産業競争力会議」民間議員、経済産業省「産業構造審議会委員」などを兼任し、講演や情報番組のコメンテーターなども務める「働き方改革」のプロフェッショナルである。


会場に集まったのはグロービスの学生169名、関連企業の方々56名。オンラインでも32名の参加があった。イベントは、前半は小室氏による講演、後半は参加者全員が自分にとっての働き方改革について考えシェアするワークの時間という二部構成。「クラブの幹事たち自身も企業変革に携わっており、働き方改革やダイバーシティ推進は必要不可欠なポイントだと実感しています」と、価値観共有クラブ代表幹事の中島星沙氏による挨拶でイベントは幕を開けた。

ワーク・ライフバランスとワーク・ファミリーバランスの違い

「ワーク・ライフバランス(WLB)に力を入れているという企業ほど、ワーク・ファミリーバランス(WFB)であることが多い」と小室氏。WFBの対象は育児・介護者のため、家庭のある人とそれ以外との対立構造が深まってしまい、チームの関係性が悪化し、ひいては業績のマイナスに陥る。


一方でWLBの対象は育児・介護者だけでなく全従業員。AI本格化の脅威にさらされる20〜30代はワークだけでなく、自力で社外のコミュニティを築いて自己研鑽に励むライフが必要だ。また40〜50代は健康維持に励むライフが必要(リンダ・グラットンの『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』によると、現役時代に脳にダメージを与えるのは睡眠不足と運動不足に加え、家族からのマイナス感情の伝播。自分を優先して家族を顧みずにいると、健康が著しく損なわれる)。すべての従業員がライフを大切にできる環境があるとチームワークは良好になり、それぞれがワークやライフの引き出しを持ち寄ることでイノベーションも起こりやすくなる。そうしてはじめて業績はプラスにつながるのだ。

人口オーナス期の日本が直面している現状

日本の週49時間以上の就業者比率は、アメリカの16.4%を大きく上回る20.8%(2015年 ILOデータベースより)。しかしながら、労働生産性はOECD加盟諸国のうち20位(2016年 財団法人日本生産性本部 労働生産性の国際比較より)で、21年間にわたり先進主要国中最下位。つまり最も時間をかけて仕事をしているにもかかわらず、生み出す付加価値はもっとも低い国なのだ。


その原因を説明する前に、日本が現在直面している課題に触れておきたい。


「人口ボーナス期とオーナス期という言葉をご存じでしょうか。ボーナス期は若者が多く高齢者が少ない人口構造で、生産年齢比率が高いため経済的にプラスになります。一方でオーナス期は、労働世代よりも引退世代が多くなり、それを支える社会保障制度の維持が難しく経済の負荷が増す時期を指します」

日本のボーナス期は1960年頃〜1990年代半ば。1950年代のベビーブームを経て労働力が爆発的に増え、高度経済成長期に突入した。一度ボーナス期が終わると、その社会には二度とボーナス期は訪れない。そのため、いかに早くからオーナス期に合った対策を講じられるかがポイントとなる。


「オーナス期に入ってからが本当の経済成長であり、国の腕の見せどころ」と小室氏は言う。オーナス期のポイントは2つ。1つ目は、生産年齢人口である18〜65歳でありながら働けていない女性・障がい者・介護者を、どれだけ労働参画させられるか。男女問わず教育が受けられる日本では、女性の潜在労働力は難局打開の大きなカギになる。2つ目は、未来の労働力を確保するための有効な少子化対策をどれだけ講じられるか。単なる「女性活躍推進」は夫婦共働きを推進することになり、少子化をさらに進めてしまうため、本当に必要なのはワーキングペアレンツへの対策なのだという。

現在と未来の労働力確保のためには、「男性の働き方改革」が必須

小室氏の紹介した厚生労働省の調査データが興味深い。夫が休日に家事・育児をする時間が6時間以上ある夫婦の間には、この11年間で80%の割合で第2子以降が産まれている。だが、家事・育児の時間が少なくなるごとに出生の割合は減っていき、まったく家事・育児をしない場合には11.9%まで減少しているのだ(2015年 厚生労働省 第2回21世紀成年者縦断調査および第12回21世紀成年者縦断調査)。


「これは、第1子を産んだ際の孤独な育児が妻のトラウマになっているということ。産後の女性はホルモンバランスが崩れていて、些細なことでもツライ気持ちになるのですが、この状態の妻と夜遅くに仕事から帰ってくる夫とは最悪の組み合わせ。熟年離婚を切り出すのはたいてい妻で、離婚を考え始めた時期は育児期というケースがとても多いです。つまり、少子化対策には実は『男性の働き方改革』が必須なのです」


人口ボーナス期とオーナス期では、経済を発展させやすい働き方が異なる。ボーナス期は、力仕事の多い重工業の比率が高いため「①なるべく男性が働く」。他社に勝つには早く安く大量につくることが重要であり、時間が成果に直結するため「②なるべく長時間働く」。そして均一なものをたくさん提供することで、市場ニーズが満たせるため「③なるべく同じ条件の人を揃える」。


一方でオーナス期は、頭脳労働の比率が高く、かつ労働力不足のため「①なるべく男女ともに働く」。時間あたりの費用が高騰し、短時間で成果を出さなければ利益が出ないため「②なるべく短時間で働く」。そして多様な市場ニーズを満たすには、多様な人材がフラットに議論する場が必要なため「③なるべく違う条件の人を揃える」。


日本の労基法は今春まで、36協定さえ結べば労働時間の上限は企業ごとに委ねるというルールにあった。それは長時間働かせたいボーナス期に非常に適しており、だからこそ日本は著しい経済成長を遂げることができた。しかしその成功体験は、オーナス期では通用しない。現在のマネジメント層の大半はボーナス期で成功体験を積んでいるため、働き方に対する意識の転換が図れず、部下にも強制したり評価に結びつけたりする。それが、長時間労働なのに生産性が低いという今の状況をつくり出してしまっているのだ。

また男性の働き方改革と切っても切り離せない問題が「介護」。待機児童は2万人だが、特別養護老人ホームの待機者は37万人。介護離職は年間10万人を超えている。2017年には団塊世代が70代に突入し、要介護者数は今後一気に跳ね上がるだろう。デイサービスは早いところで16時半に終了するため、自費で2時間ヘルパーを追加したとしても18時には退勤したい。残業ゼロは極めて重要な施策といえる。


「厚生労働省の『女性の活躍推進企業データベース』では、従業員301人以上の企業における女性管理職比率や残業時間が可視化されています。学生はそれを見て就活をするので、いい人材を採用できる企業とできない企業は二極化。働き方を改善できない企業は、イノベーションに必要なダイバーシティを生むことを、働き方で門前払いしている状態なのです。『勝ちに行くために働き方を変えましょう』と、みなさんが経営層や上司に対してきちんと説明できなければいけません」と、小室氏は力強く語った。

「価値観共有クラブ」とは

一人ひとり異なる価値観を共有することで、自身の座標軸やゴールを認識し、イキイキと過ごすための自分流の生き方・働き方を創ることを目的としたクラブ。参加者が大切にしている価値観や目指すこと、想い、悩み、取組事例などを安心してアウトプットできるよう、さまざまなイベントを開催している。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。


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