

GLOBIS Articles
- 思考
- 志
- グローバル
- リーダーシップ
- キャリア
- 卒業生の活躍
- 起業
投稿日:2025年09月18日
投稿日:2025年09月18日
【卒業生体験談】起業・海外駐在・子会社経営へ――キャリアを変える“実践型MBA”とは?
- 中野 智哉氏
- 株式会社i-plug 代表取締役CEO
- 元家 淳志氏
- パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 環境エネルギービジネスユニット長
MBAでの学びに関心を持つ方向けに、MBAプログラムの特徴や実践的な学びの内容を紹介する説明会をグロービス経営大学院大阪校で開催しました。今回は、大阪校の卒業生2名をゲストに迎え、パネルディスカッション形式で、グロービスで得た学びや人的ネットワークが、その後のキャリアにどう活かされたのかを語っていただきました。
本記事では、当日のパネルディスカッションを中心に、起業やキャリア転換、リーダーシップの実践といったリアルな体験談を通して、MBAで学ぶ意義についてお届けします。
中野 智哉氏(以下、敬称略):私は2010年にグロービス経営大学院に入学し、2012年に卒業しました。卒業と同時に仲間と共に立ち上げたのが、現在の株式会社i-plugです。主力事業は「OfferBox(オファーボックス)」という、大学生の就職活動におけるダイレクトリクルーティングサービスを提供しています。
一般的には、学生が企業の採用ページにエントリーする形式が主流ですが、私たちが開発したのはその“逆”のモデルです。学生自身が自分のプロフィールを公開し、それを見た企業がオファーを送るという仕組みです。
現在、OfferBoxは全国で毎年約24万人の学生と、2万1200社の企業に利用されています。企業側・学生側ともに、ほぼ均等に利用されている点も特徴です。会社全体としては、グループ全体で約340名の従業員が在籍しており、前期の売上は約50億円、営業利益は約6億円規模になっています。
経営体制としてもユニークで、私と同じくグロービスの同期だったメンバーと会社を立ち上げました。今でもその同期が取締役として活躍しています。3人で集まってチームを組み「会社を作ろう」と決意した日が、まるで昨日のことのように思い出されます。
元家 淳志氏(以下、敬称略):私は2004年に松下電器産業(現在のパナソニック)にエンジニアとして入社しました。そこから技術畑を歩んでいましたが、2018年にインドへ赴任し、現地での新規事業開発を担う「インドイノベーションセンター」の責任者を4年間務めました。
赴任して最初の2年はコロナ禍前でしたが、後半の2年はまさにパンデミックの真っただ中。日本に一時帰国もできず、家族とも離れた生活の中で、インド人スタッフと協力しながら新規事業をゼロから立ち上げる日々が続きました。振り返っても、自分の中で大きな挑戦と成長の機会だったと思います。
帰国後は、パナソニック株式会社で綜合企画部長を経て、子会社である「パナソニックEW ネットワークス株式会社」の社長を2年間務めました。オフィスビルの監視カメラや入退室管理システムといったITインフラ設備の設計から保守までを一貫して担う会社で、年商100億円、社員約300名の組織を率いていました。
そして現在は、パナソニック株式会社に戻り、パナソニックグループにおけるエネルギー関連事業を束ねる立場にあります。太陽光発電システムや蓄電池、水素燃料電池など、次世代のエネルギー技術を活用したソリューションの開発・展開を進めています。事業規模は約1,000億円、所属する社員は1,500名にのぼります。
振り返ると、私がグロービスに通い始めた2015年当初は、まだ主任というポジションでした。そこから10年足らずで、想像もしなかったような責任ある役割を担うようになったのは、グロービスで学んだ思考法やリーダーシップが土台にあったからだと感じています。
君島:なぜMBAを学ぼうと思ったのですか?きっかけや動機について教えてください。
中野:私がグロービスに初めて足を運んだのは、2008年9月のことです。リーマンショックのニュースが毎日のように流れ、仕事が急激に減っていた時期でした。
当時はインテリジェンス(現パーソルグループ)で、飛び込み営業やテレアポに日々奔走していました。しかし、景気の冷え込みで人材業界全体が停滞。終電まで働くような毎日から一転し、会社からは「19時には電気を消して退社してください」という指示が出され、突然、時間だけがぽっかり空いたのです。
そんな折に耳にしたのが、グロービスの体験クラスでした。軽い気持ちで参加してみたのですが、その空気に圧倒されました。授業中に次々と手が挙がり、活発な意見交換が行われる。さまざまな職種の方がいて、異なる視点や考え方に触れられる環境も新鮮でした。刺激的な時間を過ごし、授業が終わる頃には「もっと学びたい」と思うようになったのです。
その後、単科での受講を始めました。「アカウンティング」「経営戦略」「マーケティング」「人材マネジメント」などの科目を学び、得た知識はすぐに仕事で実践。すると、生産性が目に見えて向上していったのです。これまで、勉強とはあまり縁のない人生を送ってきましたが、グロービスの学びにはすっかり夢中になっていました。
やがて、「ここで学べば、自分も経営者になれるかもしれない」と考えるようになり、起業を決意。そして大学院(本科)に進学することにしました。
元家:私は2004年にパナソニック(当時は松下電器産業)にエンジニアとして入社しました。当時は「技術で一番になってやる」という思いで仕事に取り組んでいて、2007年から2008年にかけては、自分が開発に携わった製品が中国で量産化されることになり、現地の工場立ち上げにも関わることになったんです。
人材の採用から現地スタッフとの連携まで、本当に一から関わるプロジェクトで、初めて「自分がつくったものが実際に世に出ていく」という体験ができました。やりがいを感じましたし、「やっぱり技術の仕事って面白いな」と改めて実感する機会でもありました。
しかし、その約1年半後、会社から突然「あの工場は閉鎖する」と通達がありました。あまりにも急な話で、正直、驚きました。閉鎖の理由は、LED化の波が一気に押し寄せてきたからでした。私が関わっていたのは蛍光灯関連の技術だったのですが、会社としてはその領域を縮小していく方針に切り替えたんです。
そのとき、強く感じたのは、「いくら技術的に優れていても、時流や投資判断を見誤ると意味がなくなるんだな」ということでした。技術者としての視点だけでは見えてこないことがある。やはり、市場や顧客の動向、さらには経営全体の視座がなければ、本当に価値あるものは届けられない。そう痛感しました。
そこから、独学で勉強を始めました。アカウンティング、ファイナンス、マーケティング、組織行動など、独学でひと通り学んでみたのですが、どうしても知識が“点”でしか理解できなかった。個別にはわかるけれど、全体がつながらない感覚が残っていました。
でも実際の経営って、すべてがつながっているんですよね。戦略を変えれば組織が変わるし、組織が変わればリーダーシップのあり方も変わる。そして、その結果は最終的に財務に表れる。ヒト・モノ・カネ・情報、それぞれが有機的につながっている。その「全体感」を体系的に学びたいと思うようになり、MBAに進もうと決めました。
いくつかのビジネススクールの体験授業にも参加しましたが、最終的にグロービスを選んだ一番の理由は「志(こころざし)科目」の存在でした。経営って、やっぱり“人”が決めるものだと思うんです。どれだけ知識やスキルがあっても、それをどう活かすかはその人のマインドセットや価値観にかかっている。つまり「志」が問われる領域なんですよね。
グロービスでは、その「志」と向き合う仕組みがしっかりある。そこに大きな魅力を感じて、「ここで学ぼう」と決めました。
君島:では、学生生活の中でどんな学びが印象に残っているのか、あるいは何がその後のキャリアに影響を与えたのか、そんなところをぜひ伺っていきたいと思います。中野さんは起業を決めてから入学されたそうですが、学生生活の中でその決意に変化はありましたか?
中野:そうですね。僕の場合は、グロービスに入る前から起業したいという憧れはずっと抱いていました。父が起業家だったこともあって、自然とそう考えていたんです。でも、社会人になりたての頃はとてもじゃないけど、起業できるようなレベルではありませんでした。
インテリジェンスで10年間営業をやって、グロービスで単科生として4科目ほど受けたあたりで、「あ、これならいけるかも」と思えるようになってきたんです。ちょうどその頃、M&Aで統合された子会社にいて、営業としては結果を出していたんですけど、このまま会社の中で上を目指していくイメージがどうしても湧かなかった。たぶん、29歳のときだったと思います。「50歳になってから起業するって、本当に待てるか?」と自分に問いかけて、「いや、無理だな」と思ったんですよね。それで、「今しかない」と決めました。
MBAって決して安くはないですよね。学費だけで300万円くらいかかりますし、当時は家族もいたので、本気で選ばないといけないと思って。他のビジネススクールも全部調べて、最終的に、柔軟に通えるグロービスを選びました。
君島:では、実際に入学してからは、どんな出会いがあったのでしょうか。
中野:入学して半年ほどで、のちに創業メンバーとなる仲間と出会ったんです。「学長セッション」というイベントがあって、その懇親会で隣に座ってたのが山田というエンジニアでした。そのときに彼から「起業の勉強をしませんか?」と声をかけられました。
最初は社外の人も交えて勉強会を始めたんですが、そのうち山田と僕の2人で活動を続けるようになりました。ちょうどその頃、ビジネススクール向けの「マーケティングプランコンテスト」があって、エントリーに必要な5人のメンバーを集めることになったんです。
そこで声をかけたのが田中で、さらにクラスメートの協力もあって5人のチームができました。その活動の中で特に強い思いを持って取り組んでいた山田と田中、そして僕が、最終的に創業メンバーになったんです。
その後、もう1人グロービスの同期がジョインして、取締役として加わりました。会社は順調に成長し、9期目で上場を果たしました。300万円の学費を払って、仲間と出会い、学び、会社をつくって、上場までたどり着けた。この経験は、本当にラッキーだったと思っていますし、グロービスを徹底的に活用できた実感があります。
君島:では、元家さんはいかがでしょうか。学生生活の中で、特に印象に残っていることがあれば教えてください。
元家:印象に残っていることは本当にたくさんあるのですが、特に大きかったのは2つあります。ひとつは、「自分とはまったく異なる価値観に出会えたこと」です。
私は、いわゆる“大企業の管理職”としてグロービスに入学しましたが、クラスにはベンチャー企業の創業者や他業界の若手社員など、実に多様なバックグラウンドを持つ人たちが集まっていました。普段の仕事ではなかなか出会わないような方々と、本気で議論し、率直に意見を交わすことができたのはとても新鮮でした。
特にケースのディスカッションでは、考え方の違いに何度も驚かされました。自分の中では当たり前だと思っていた価値観が、他の人にはまったく通じないこともある。そのたびに視野が広がっていくのを感じました。
私は新卒以来ずっとパナソニックで、同質性の高い組織で育ってきたので、自分でも気付かないうちに「パナソニックの視点」が染みついていたのかもしれません。でも、グロービスではそれが次々と覆される。多様な考え方に触れることで、自分の中の前提がどんどん塗り替えられていくようでした。
もうひとつは、JBCC※を通じたグループワークの経験です。青山学院や慶應、神戸大学など、複数のビジネススクールのチームと事業再生プランを競い合う形式だったのですが、合宿のようにホテルに集まって、夜通し仲間と議論を重ねながらプランを練り上げていきました。まるで“大人の部活”のような体験で、とても楽しかったですね。
※日本ビジネススクール・ケース・コンペティション(JBCC)…日本企業が抱える問題をテーマに、全国のビジネススクール生が課題解決に向けた戦略立案の内容を競い合う国内最大級の大会のこと。
仕事ではないからこそ、「学びたい」「成長したい」という純粋な気持ちだけで向き合える。あのときの経験は、今でも本当に宝物です。
また、グロービスの学びの場は、リスクフリーであることも魅力です。会社と違って、発言が事業に影響するわけではないので、自分の考えを自由にぶつけることができる。だからこそ、本音で議論できるし、失敗を恐れずにチャレンジできたのだと思います。私はそれを「ポジティブ成長モード」と呼んでいるのですが、「何か正しい事をいわなければいけないという責任感」よりも、「まずは積極的に考えを発してみよう」という姿勢で授業に臨めたのは、グロービスならではの経験でした。
君島:では次に、お二人の卒業後のキャリアについて伺っていきたいと思います。グロービスで得た学びや経験を、どのようにその後のキャリアに活かされたのか。そして、今後どのようなチャレンジを描いていらっしゃるのかをお聞きできればと思います。
中野:卒業は2012年の3月末で、その翌月、4月18日に会社を設立しました。まさにそのままの勢いでスタートしたかたちです。創業メンバーは、全員がグロービスの同期。いわば、グロービスの仲間で立ち上げた会社ですね。
事業は人材領域ですが、実質はIT企業で、プラットフォームビジネスを展開しています。ビジネスモデルの設計やマーケティング、顧客インサイトの分析、定量評価に至るまで、グロービスで学んだフレームワークや知識をフル活用しました。
なかでも特に役立ったのが、ファイナンスの学びです。営業出身で経理の経験もなかった私が、CEO兼CFOとして、資金調達まで担うことになりました。創業から7期目までに調達したのは、デット(借入)が約5億円、エクイティ(資本)が約37億円。劣後ローンや資本性ローンなどのスキームも駆使し、ある融資は「日本初の事例」と言われたほどでした。
証券会社や銀行と交渉をすると、「営業出身ならファイナンスは弱いだろう」と甘く見られることもあります。でも、提示された条件に違和感があれば、「これ、どの類似企業をベースにしてますか?」とすぐに指摘できる。それだけで、相手の態度が一変するんです。企業価値にも直結する話で、実際に株価評価で数十億円の差が出たケースもありました。
だから声を大にして伝えたいんですが、ファイナンスは本当に学んでおいた方がいい。確かに難しいし、使えるようになるまで時間もかかります。でも一度身に付ければ一生使える武器になる。会計や財務が分かることで、経済や政策の影響を自分のビジネスにリアルに結びつけて考えられるようになります。
上場後も、IR資料の作成は創業メンバー3人で手がけていました。当時のIR担当もグロービスの卒業生だったので、「グロービスの知識だけでやりきった」と言っても過言ではない。実際、東証からも事例として取り上げられたくらいです。
それでも、上場はあくまで通過点です。僕たちが本当にやりたかったのは、「よりよいキャリアづくりを支えるサービス」をつくること。創業当初から、メンバー全員で「自分たちの子どもが大学生になったとき、使いたいと思えるサービスをつくろう」と話してきました。
ようやく「次の挑戦」の土台が整ったと感じています。社会に何かを還元できるフェーズに入りました。これからが本番です。会社の成長に満足するのではなく、社会にしっかりとインパクトを与えていきたい。今はそんな想いでいます。
元家:グロービスでは、学びの集大成として「自分の志」をプレゼンテーションする機会があります。私にとってそれは、自分の軸を再確認する大きなきっかけになりました。
私の志は、「モノづくりを通じて世の中をより良くすること」です。少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、あえてそうしているのには理由があります。私はパナソニックという、多様な事業領域をもつ企業に所属しています。志が特定の分野に偏っていると、異動のたびに考え方を変えなければならない。それは避けたいと思ったんです。
インドに駐在していたときは、「デジタルの力でインドの社会を良くする」という志を掲げていました。ちょうどコロナ禍にデルタ株が猛威をふるっていた時期で、現地の同僚を亡くすという非常に辛い経験もありました。会社からは帰国の提案もありましたが、「インドの仲間と交わした約束を、途中で投げ出すわけにはいかない」と、その地に残ることを選びました。
当時、自分の中の軸がぶれなかったのは、グロービスで「志」と真剣に向き合ってきたからだと感じています。困難なときほど、志は大きな支えになる。それを実感した経験でした。
そうした経験を経て、今はその志を「モノづくりと人づくりを通じて、世の中をより良くする」と進化させています。現在はグロービスが提供する法人向けの経営研修にも関わっています。次世代のリーダー育成に、教育者としても貢献したいと考えたからです。
また、グロービスでの出会いをきっかけに、中野さんと一緒に、パナソニックとi-plugの若手社員向けリーダー研修にも取り組んでいます。キャラクターは全く違いますが、志の部分で深く共感し合っていたので、研修を一緒につくる過程もとても刺激的でした。
元家:こうした「人との出会い」もまた、グロービスがくれた大きな財産です。企業も業界も違う人たちが、志を共有し、学び合い、そして社会に還元していく。この経験は、何にも代えがたいものだと思っています。
会場:創業メンバーなど、信頼できる仲間と出会うにはどうしたらよいでしょうか。良い人材と出会うための心構えや工夫があれば、教えてください。
中野:正直、創業メンバーとの出会いは「運」が大きいと思っていて、再現性はあまり高くないんですよね。でも、人生を通じて学び合える仲間を見つけるという意味では、意識して行動することは大事だと思っています。
一番大切なのは、「自分が何をやりたいか」をちゃんと言葉にして発信し続けること。僕も、ずっと「起業したい」と言い続けていたからこそ、まわりの人が覚えてくれて、興味を持ってくれたんだと思います。言わないと誰にも届かないし、きっかけは生まれません。
あとは「その時」はいつ来るか分からない。もしかしたら今日かもしれないし、10年後かもしれない。だからこそ、いつでも動けるようにしておくこと、そして能動的に動き続けることがすごく大事です。
実際、僕は2008年に「クリティカル・シンキング」を受けたときのクラスメートと、今でもつながっています。10年以上経った今も一緒にテニスしたり、集まって振り返りや勉強会をやったりしていて、そういう関係性が生まれるのも、自分から働きかけていたからこそだと思うんです。
やっぱり受け身では何も起こらない。だから、「チャンスが来たら掴む」ではなくて、「チャンスをつくりに行く」くらいの姿勢が必要なんじゃないでしょうか。それでも最後は運。でも、その運を引き寄せる準備は、きっとできると思っています。
中野:僕は当時、営業として2つの業界を担当していました。ひとつは全国展開しているパチンコ店チェーン、もうひとつは派遣業務を手がける会社。どちらの業界も、リーマンショックの影響で大打撃を受けていました。
派遣業界は、いわゆる“派遣切り”が加速し、雇用が一気に冷え込んでいました。一方、パチンコ業界では、ロードサイド店の2階部分がまるごと空きスペースになっていたのです。この2つを、それぞれに3C分析などを用いて深く分析していく中で、「あれ?この課題、つながっているかも」と気付いたんです。
つまり、「住む場所を失っている派遣スタッフ」と、「人手不足で困っているパチンコ店」。この2つを組み合わせれば、解決できるのではないかと。そこで、パチンコ店の空きスペースを社員寮として活用し、そこに派遣スタッフが住み込みで働くというスキームを提案したんです。
結果的に、それまで一度も採用充足できなかった大手パチンコチェーンが、わずか1か月半で人員を確保。ものすごい応募が集まり、全国で最初の成功事例になりました。採用枠が一瞬で充足して、社内でもかなり話題になりましたね。
このアプローチによって、お客様からの信頼も一気に高まりました。その後も、業界を横断した分析で、人材の流動を設計する手法はどんどん応用できるようになり、自分の営業スタイルそのものが変わっていきました。まさに、グロービスで学んだことを現場で活かし切った経験のひとつです。
元家:次に、その環境変化が自分の属する業界にどんな影響を与えているのかを見ていきます。ここで使えるのが、例えば「5F(ファイブフォース)分析」。仕入れ先や顧客との力関係、業界の競争構造を把握しながら、市場における自社の立ち位置を見極めていくんです。
さらにそこからは、「どの顧客を狙うか」というターゲティングと、そのためのセグメンテーション(性別や年齢層などによる分類)を行い、自社が提供できる差別化された価値を明確にしていきます。これはマーケティングの基本ですね。そして、その価値をどう届けるかを決めるのが、いわゆる4P(商品、価格、流通チャネル、プロモーション)です。
その後、それらを実現するために必要なのが、バリューチェーンの構築です。調達、生産、販売、保守など、企業内の活動をどう組み立てるか。そして、それを支える組織をどのように設計するかが重要になります。
加えて組織には、理念を中心に据えて、「構造・仕組み・戦略」などのハードな要素と、「人材・カルチャー・スキル」などのソフトな要素があり、それらをバランスよく整えていく必要があります。これらを紐解く上で役に立つのが、7S分析です。
最終的に、これらの活動の結果は、財務諸表にすべて表れます。だから私は、どの業界の経営を任されても、まず最初に財務分析から入るんです。キャッシュフローや損益計算書、貸借対照表を見れば、その会社の“病巣”が見えてくる。そこから、戦略・組織にブレイクダウンしていくのが私のアプローチです。
中野:元家さんがおっしゃった通りで、これらを図で説明すると、損益計算書(PL)では売上から売上原価を引いた粗利があって、そこから販売管理費を差し引いて営業利益、さらに営業外損益を加味して経常利益、税金を引いて当期純利益という流れになります。
一方で、貸借対照表(BS)には総資産があって、それが負債と純資産に分かれている。この総資産を使って売上を生み出していくわけです。ROA(総資産利益率)やROE(株主資本利益率)といった指標は、どれだけ効率よく利益を生んでいるかを示しています。
でも、数字の奥にはもっと大切なものがある。売上の先にはお客さんがいて、原価の先には仕入れ先がいる。つまり、経営戦略やマーケティングの力で「安く仕入れて、高く売る」ことで粗利が生まれ、そこから販管費を支払って残ったものが営業利益になる。その営業利益に金融収支が加わって経常利益となり、税金を払った後の当期純利益が最終的に株主に還元される、という一連の循環があるんです。
結局、ヒト・モノ・カネがすべてつながっていて、これが経営の全体像なんですよね。この構造を2次元で表現できる「型」があるからこそ、どんな課題にも体系的にアプローチできるようになる。これがまさに、経営がサイエンスだと言える理由だと思います。
元家:この一連の流れは、どんな業界でも基本は同じ。このあたりは、グロービスの授業の中で一つ一つ丁寧に学ぶことができます。必修科目を終える頃には、きっと皆さんも、こうした一連の思考プロセスを自分の言葉で説明できるようになっているはずです。ぜひ、楽しみながら学びを深めてください。
限られた時間の中で、どう学びと両立した?
会場:お仕事と並行してグロービスに通われていたと思いますが、限られた時間の中で、どのように学びの時間を確保していたのでしょうか?時間のマネジメントの工夫について教えてください。
元家:私は「お金は増やせるけれど、時間は増やせない資産」だと常々思っています。時間は誰にとっても1日24時間しかない。だからこそ、いかに無駄を減らすかがすごく大事なんです。
グロービスに通っていた3年間は、まさに“フルコミット”の姿勢で臨んでいました。テレビはほぼ見ませんでしたし、友人と遊びに行くこともなく、土日も授業や課題に充てて、休みはゼロに近かったです。もちろん、家族にも迷惑をかけましたが、「3年間だけ本気でやろう」と決めて取り組みました。
元家:それだけの覚悟で学びに向き合えば、人生は本当に変わります。私自身、グロービスに入学した当時は主任でしたが、その後、課長、新規事業責任者、インド駐在、子会社の社長、そして今は1500人規模のエネルギー事業を束ねる立場になりました。
自分自身まだまだ足りない部分はたくさんありますが、このような立場で仕事をさせていただけているのは、もちろん多くの人に支えていただいたおかげですが、グロービスでの学びがあったからこそ、チャレンジの機会を掴む準備ができていたとも思います。
「人生を変える出会いが、ここにはある」というのは、私にとっては真実でした。だからこそ、もしこれから学びに本気で取り組むなら、ぜひ全力で向き合ってみてください。必ず、その分の成果は返ってくると思います。
編集後記
今回のイベントでは、卒業生お二人が「グロービスでの学びを、どうキャリアに活かしてきたか」を率直に語ってくれました。
起業や海外駐在、子会社の経営など、一見まったく異なる道を歩んできたお二人に共通していたのは、「学びを実践に結びつける力」と、「志を軸にキャリアの選択を重ねていく姿勢」だったように思います。
知識だけではなく、仲間との出会いや、自分の志と向き合う経験こそが、人生の転機になっていく。そんなグロービスらしさが伝わるパネルディスカッションでした。この記事が、「今、学ぶ意味」を再確認するきっかけになれば嬉しく思います。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
ヒントを得る
大学院への入学をご検討中の方向けにグロービスMBAの特徴や他校との違い、入試概要・出願準備について詳しくご案内します。
※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
中野 智哉氏
株式会社i-plug 代表取締役CEO
2001年 中京大学経営学部 経営学科卒業
2012年 グロービス経営大学院大学 経営研究科経営専攻修了(MBA)
インテリジェンス10年間で求人広告(転職サイトDODA、アルバイトサイトan )の企画営業に従事。2012年4月に株式会社i-plugを設立。新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を運営。2021年3月18日東証グロース市場に上場。
元家 淳志氏
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 環境エネルギービジネスユニット長
松下電器産業(現パナソニック)入社後、LED照明やプロジェクターの研究開発、工場立ち上げに従事し、「平成25年経済産業大臣発明賞」「第10回照明学会技術開発賞」を受賞するなど、技術発展と商品化に大きく貢献。2018年より4年間インド・デリーに駐在し、インドイノベーションセンター長を務め、インド市場を起点とした新事業創造に従事。IoTプラットフォーム「MirAIe」など、在任約4年間で10件を超える事業化を果たす。2022年の帰国後は、パナソニック株式会社にて綜合企画部長を務めた後、パナソニックEWネットワークス株式会社の代表取締役社長に就任。パーパスを軸にした人的資本経営の実践により、24年度には過去最高販売を達成するなど、ターンアラウンドを実現。2025年4月より現職にてエネルギー事業を担当。2021年グロービス経営大学院アルムナイアワード変革部門受賞。