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投稿日:2026年08月26日

投稿日:2026年08月26日

【20周年記念ロゴコンペ受賞者インタビュー】熊高 慎太郎氏「自分のことのように喜んでくれる人が、こんなにいるんだ」

熊高 慎太郎
株式会社CAKE 代表 クリエイティブディレクター・コピーライター
グロービス経営大学院 2025年度卒業
猪口 裕子
グロービス経営大学院 事務局

グロービス経営大学院は2026年に開学20周年を迎え、記念ロゴを在校生・卒業生から公募した。テーマは「超進化」。約50点近くの応募作品の中から選ばれたのは、蝶の羽ばたきや開いた扉をモチーフとした「20」のフォルムの一案。

制作したのは、大阪校2025年度卒業の熊高慎太郎さん。テレビCMや新聞広告、Webサイトなどを手がける広告制作会社の代表であり、自身もクリエイティブディレクターとして現場に立つ。

ただ、熊高さんは在学中、クラス以外の行事やセクション()の活動に中心的に参加するタイプではなかったという。1年目には、あまりの大変さから「もう辞めようと思う」と事務局に相談したこともあった。そんな熊高さんに、ロゴコンペに参加して感じたことや、この春に卒業したばかりの2年間を振り返ってお話を聞いた。(インタビュアー:猪口 裕子)

※記事の内容や肩書はインタビュー当時(2026年7月時点)のものです。
※セクション・・・2年間の学生生活を共にする約40名の同期コミュニティ。

「卒業のタイミングだし、みんなが応援してくれるならやってみようかな」

――このたびは、受賞おめでとうございます。まず、ロゴコンペに応募された理由やきっかけを教えていただけますか。

熊高:きっかけは些細なことで、知り合いから「ロゴのコンペがあるから出たら」と言われてロゴコンペの存在を知りました。最初は、受賞したら会社の宣伝になるかな、くらいの興味でした。

でも、応募した理由はそれだけではないです。同じセクションの、白井さんというクラスメートが「絶対ロゴコンペに出たほうがいいよ」と言ってくれて。彼女は、同じ授業がきっかけで、僕の働く業界や企画・デザインにも興味を持ってくれて、僕に勉強会をやってほしいと声をかけてくれたんです。なので、僕が授業以外でのグロービスの活動に参加するきっかけを作ってくれた人でした。それで「出たら彼女が喜んでくれるかな」と思ったんです。卒業のタイミングだし、最後に何か思い出づくりをしようかな、みんなが言ってくれるんだったら応募しようかな、という気持ちで応募を決めました。

「超進化」の源泉は、ここに集う「人」

――今回のテーマは「超進化」でした。どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。

熊高:「超進化」をどう捉えるかは、結構時間をかけて考えました。超進化というのは、単純に「グロービスの進化」とだけ捉えることもできます。でも、実際に2年間通った自分の感覚として、グロービスが進化していくということは、ここで学んでいる人たちとか、学校を運営されている皆さんとか、ここにいる人たちの進化が「超進化の源泉」なんじゃないかなと思ったんです。

そう考えたときに、グロービスの進化を表現するというよりは、その源泉のほう——人と人との関わりとか、何かが始まるところ——にフォーカスを当てた方がいいなと思いました。そして最終的に、羽ばたくとか、扉とか、新しい景色を開いていく窓とか、そういう表現にたどり着きました。

なので、単に「グロービスが進化していく」ということではなくて、「そこで学ぶ人たちの力で、超進化が叶えられている」というところがコンセプトになっています。

――実は、他にもいくつも案を考えられていたとお聞きしました。

熊高:はい。実は5〜6案つくっていて、その中から1つを選んで応募しました。

制作の過程として、まずは1週間くらい、特に手を動かさずに、まずはいろんな周年ロゴを見るということをやりました。例えば公的機関とか、県の何十周年とか、僕の中でグロービスはトレンドに左右されずにあり続けるものだと思ったので、そういった佇まいのロゴをたくさん観察しました。そうすると、良いものや悪いものがわかってきた。それから、実際にロゴを作り始めました。

そしていくつか作ってみて、次は家族や、クラスメートなど、周りの人に意見を聞きました。普段の仕事でも、「伝えることと伝わることは違うんですよ」という話をよくするのですが、まさにそうで、シンプルな案でないと、「20」ということは適切に伝わらないということがよくわかりました。

しかも今回はコンペですから、横並びで審査されて選ばれますよね。プレゼンテーションはなく、マークだけでしか見られないわけで、作った人の気持ちなんて、よほどちゃんと資料を読まないとわからない。基本的には見た目で直感的に選ぶことになります。じゃあどうやって戦うかといったときに、やっぱり「わかりやすいこと」が大事だなと思い、最終的にこの案に決めました。

AIとデザイナーが競う、初めてのロゴコンペ。投票でどういう答えが出るんだろう?

――受賞のご連絡を受けたときの、率直なお気持ちをお聞かせください。

熊高:びっくりしました。ただ、約50点近くの応募作品が並んだときに、自分の狙った「伝わりやすさ」は機能していそうだ、という感触もありました。やっぱりシンプルに「20」をポイントにしておいてよかったな、と。

今回のロゴコンペは、AIでの制作を許可した点がとても興味深かったですよね。AIで作るのが良いとか悪いとかは全くなくて、AIで誰もがデザインできる時代の中で、みんなが選ぶものは何なのか。もっと言えば、デザイナーが論理に則って作るデザインが、AIを駆使して作ったロゴと並んで比べられて、投票でどういう答えが出るんだろう?ということに、とても興味がありました。

――普段のお仕事も含めて、生成AIの使い方についてどのように考えていますか。

熊高:例えばクライアントから、以前は言葉で伝えられていた撮影のイメージが、「生成AIで作ってみました」と送られてくることがあります。イメージを共有できる良さももちろんありますが、本質的にはそのイメージにクライアントが囚われることに危機感を覚えています。言い方は悪いかもしれませんが、適当にAIにバーッと入れて何かが出てきて、「そうそう、私が思ってたのはこれだよ」となる。本当は違ったかもしれないのに、そっちに囚われてしまう。かなり強く意識しておかないと、AIが出したものは自分が思っていた通りのものだって、やっぱり思っちゃうと思うんです。今回のロゴコンペも同じことがあったかもしれません。AIの使い方はしっかり考えないといけないですよね。

――在学中にも、授業でAIを使う機会があったそうですね。

熊高:テクノベート系()の授業で、AIを使ってクラスのポスターをつくるというワークがありました。それで出てきた5〜6案が、ほぼ全部、青ベースのポスターだったんです。たぶん「テクノロジー」とか「大学院」とか打ち込むと、知的なイメージから自然とブルーベースになって、サイバー空間みたいな絵が出てくる。それぞれが「綺麗なポスターを作ったぞ」と思って出しているんですが、並べてみると全部青い。つまり、差異化はできていないわけです。

これって、正しいかもしれないけれど、デザインとして機能しているんだっけ?と考えることがすごく大事だと思うんですよね。AIが出してくれる正解は、過去に見てきたものでしかない。その中から違いをつくって選ばれるためにはどうしたらいいのか。僕はそのとき赤いポスターを出したんですが、目立ったからすごいでしょということではなくて、「機能する」とはどういうことなのかを考えた結果でした。AIを使いこなすのも、AIが出したものを疑うことも、同じくらい大事だと思います。

広告を作る仕事において言えば、「伝えたい」という意向をどう解釈するかは、人間の仕事です。情報のどこを抜き出すのか、どこに光を当てるのか、その上で、それをどう表現するのか。そういったプロセスを正解のない中で考え抜いていくのは、人間にしかできないのではないかと考えています。逆に言えば、AIはプロセスをすっ飛ばすので、僕らはプロセスにちゃんと価値とか意味をつけないといけない。一緒にものをつくっていくプロセスを大事にするために、時には泥臭くやるということも必要だと思っています。

※テクノベート・・・「テクノロジー(Technology)」と「イノベーション(Innovation)」を合わせたグロービスの造語。

「自分のことのように嬉しい」というコメントが嬉しかった

――応募や受賞をきっかけに、周囲からはどんな反応がありましたか。

熊高:まずコンペの最中に、東京校の方から「このロゴがすごく好きで、思わずメッセージしました」というご連絡をいただきました。初対面どころか、喋ったこともない方です。そんな連絡が来るとは思っていなかったので、それにはびっくりしました。

受賞してからは、とにかく見たことがないぐらいLINEにメッセージが来ました(笑)。

お祝いのコメントには2種類あって、一つは「さすが」。デザインの仕事をしているし、さすがですねという話です。でもそれよりも嬉しかったのは、「嬉しい」というコメント。そういうメッセージをくれた人が結構たくさんいたんです。人のことを自分のことのように喜べる人たちがこんなにいるってすごいことだなと、内心驚きながら皆さんからのメッセージを受け取っていました。正直なところ、僕は学事行事やセクションの活動に中心的に参加するタイプではなかったのですが、「自分は意外とみんなに受け入れられていたんだ」と思えて嬉しかったです。7月のあすか会議()でも、たくさんの人がパネルやステッカーを持って写真撮影を楽しんでくれたと聞きました。

※あすか会議・・・グロービス経営大学院が年に一度開催するカンファレンス。在校生・卒業生・教員に加え、経営者や学者などのトップリーダーが一堂に集う。
※写真は、2026年あすか会議学生企画委員の皆さん。

――つくっているときには想像していなかった反応もありましたか。

熊高:同じセクションの中野善之さんが、「卒業してもグロービスに残るものをつくれたのはすごくいいことだよね。同じセクションの仲間として誇らしい」と言ってくれたんです。

確かに、このロゴって、当然20周年の証なので、残っていくものですよね。でも、つくっているときはその認識はなかったんです。考えてみれば、10年後に振り返って、20周年のときはこうだったな、というのが残っている。歴史の一部に自分が関われたんだな、ということに気が付きました。

――今回のロゴコンペを通して、熊高さんが感じた「グロービスらしさ」はありますか。

熊高:「人のことを自分のことのように喜べる」ということです。僕は実を言うと、「みんなで頑張っていこうぜ」みたいなことは、苦手なんです。でも、損得なしに人を大事にして、いい時は一緒に喜べるし、何かあった時には一緒に悩む。そういう関係がグロービスでは本当にできているんだというのを感じました。

「嬉しい」と言ってもらえたときに、自分のことを一緒に喜んでくれる仲間がいるということをリアルに感じられたのは自分にとって大きな経験でした。「人的ネットワーク」という言葉を使うのはあんまり好きじゃないんですけど、人と人とのつながりを大事にするとか、常に前向きに頑張っているお互いを応援するとか、そういう人たちの満ちあふれるエネルギーみたいなものが、やっぱりグロービスらしさなんじゃないかと思います。

入学してぶつかった壁。「自分って、こんなに何も知らないんだ」

――ここからは在学中のことをお聞きします。まずはグロービスで学び始めた頃のことについて教えてください。

熊高:独立してすぐのタイミングで、少し時間とお金に余裕ができて、このタイミングで自分に投資しようと思って通い始めました。

実際に入学してみてすぐ、「自分って、こんなに何も知らないんだ」と気づきました。なんなら、自分ではなんでもできる方だと思っていたんですよ。でもグロービスに来てみたら全く違った。信じられないかもしれませんが、「利益=売上ーコストです」と言われたときに、そんなこと考えたこともなかった!って思ったんですよ(笑)。広告会社にいた自分にとって、コストを下げるなんて戦略はなかったんです。とにかく売上を上げるという方向しか考えていなかった。でも、最初の授業で、周りのみんなが当たり前のように、売上を上げるだけではなくコストを下げるという方法もあるよね、と議論している。自分の狭さを心から痛感しましたね。

最初の1年は周りと自分を比べていたので、自信をなくして心が折れることも多かったです。大変で、もう辞めようと思って事務局に相談したこともありました。でも、自分が何を学ぶかを大事にしようと気づいて――気づくというか、自分に言い聞かせながら、なんとか卒業まで続けてきました。

――最も印象に残っている学びを教えてください。

熊高:ものすごくオーソドックスな話なんですが、「今とありたい姿の差分を戦略と呼ぶ」ということです。何が言いたいかというと、今を知るということは、思ったよりもずっと大事だということなんです。当たり前だと思っていることとか、世の中の普通とか、意外とわかっているようでわかっていない。スタンダードみたいなことをちゃんと自分なりの軸を持って理解しておけば、それと違うものはおのずと見えてきます。審美眼とか、センスってなんですか、とよく聞かれますが、自分で判断軸を持つということに尽きると思います。

仲間を通じて気づいた「社会って、別に誰かがつくっているものじゃないんだ」

――2年間を通じて、価値観や考え方の変化はありましたか。

熊高:ノートに気になった言葉は全部メモしてあるんですけど、その中のひとつに、堀さんの「哲学は良い生き方を考え続けること。経営哲学は良い経営とは何かを考え続けること」というのがあります。

ここだけの話ですが、ビジョンとか理念をつくる仕事をしている中で、自分で作っておきながら「嘘くさいな」って思うことが結構あったんですよ。「より良い社会をつくる」みたいなことを企業理念に掲げていても、その当事者という意識があんまり持てなかったというか、どこかで誰かが言っていることだという感じが抜けなかった。

でも、どこかのタイミングで、「自分自身が、社会を良くしていく責任を果たさなければならない存在である」ということに気づいたんですよね。これに気づけたことは本当によかった。人間には信念というものがあるんだ、と信じられたというか。

――なぜそのように考え方が変わったのでしょうか。

熊高:うまく言えないですが、グロービスに来ている人たちが、こんなにもピュアに、志みたいなものと真摯に向き合っているーーそういった仲間の姿を見てきたことなんじゃないかなと思います。自然と、「ああ、そうか」と。自分も社会の一人なんだ、社会というのは別に誰かがつくっているものじゃなくて、自分もそのうちの一人なんだというのを実感するようになっていったんだと思います。

互いの10年後を楽しみにできる、仲間の存在

――今年の春に、ご卒業されました。2年間を振り返って、いかがでしたか。

熊高:ヘビーでしたね(笑)。実は、卒業時のアンケートで「グロービスを人に勧めたいですか」と聞かれて、「勧めたくない」って答えたんです。でもその意図は、グロービスは誰かに勧められて行くべき場所じゃないから、ということなんです。

自分で選んで、自分なりの覚悟で、自分なりに学んだことを大切に解釈していく。そうしないと意味がない。AIが出てきて、単にビジネスフレームワークを使って何か分析していくことにどれだけの価値があるんだ、というのはよく言われる話ですよね。単純な方法論とかテクニックとかスキルじゃないものを、たぶんこの面倒で大変な2年間なり3年間なりの中で、自分で見つけていくわけです。世の中がどう変わろうとも変わらないものはあるはずで、何のためにグロービスで学ぶのか、はとことん自分に問いかけた方がいいと思います。

――今後、挑戦していきたいことを教えてください。

熊高:自分が培ってきたスキルや経験を、今やっている仕事以外にも使いたいと思っています。一つは、教育です。

物事の捉え方とか、アイデアの出し方みたいなものって、別に広告の仕事だけに限るものじゃないと思うんですよね。さっきのAIの話も同じで、どこに光を当てるかを自分で決めることや、プロセスを大事にすることは、どんな仕事にも、生き方にも通じるはずです。そういうものを周りの人、特に子どもたちに向けて、ちゃんと教えていける仕組みみたいなものがつくれたらいいなと思っています。

――最後に一言。

熊高:この春、卒業を記念して、セクションでアルバムをつくったんです。その時に10年後の自分に向けてメッセージを書くところがあって。そこで僕、「誰かの10年先を楽しみにできるっていいな」と思ったことを書いたんです。だって、自分じゃない誰かの10年後が楽しみになるって、すごいことじゃないですか。そういう意味で、一緒に学んだ仲間というのは、やっぱり自分にとって大事なものなんだと思います。 

グロービスで学んだことって、どう活かしていくかの方が大事だと思います。10年後に振り返ったときに、「あのときグロービスにいたからだ」と胸を張って言えるようになりたいと思っています。

編集後記

「学事行事やセクションの活動に中心的に参加するタイプではなかった」「大変で、もう辞めようと思ったこともあった」と、事務局にご相談されたこともある熊高さん。

そんな彼が、今回20周年のロゴコンペに応募してくれたことが、事務局として、とても嬉しかったです。

実は在学中にも、大阪校同期の仲間の誘いを受け、「まいどおおきに会議2025(※)」のクリエイティブをデザインしてくれたことがありました。その”誘われ力”と溢れるクリエイティビティで唯一無二の輝きを放っていた熊高さんの名前がグロービスの歴史に刻まれたこと、私も誇らしく思います!(インタビュアー・猪口裕子)

※まいどおおきに会議・・・学生主催によるグロービス大阪校のイベント。例年、大阪校でのリアル開催にて、在校生や卒業生のパネリストによるディスカッションや交流セッションなどを実施。

グロービス経営大学院 開学20周年特設ページ

グロービス経営大学院は、開学20周年を記念して特設ページを公開しています。
本ページでは、グロービス経営大学院の20年の軌跡や、「20年分のありがとうメッセージ」と題し、社会の創造と変革を担うリーダーとして活躍する卒業生や教員の声なども紹介しています。
また20名の創造と変革の志士(卒業生)のインタビュー記事や動画、開学20周年記念セミナーなどのお知らせも順次更新しています。

特設ページURL:https://mba.globis.ac.jp/20th-anniversary/

熊高 慎太郎

株式会社CAKE 代表 クリエイティブディレクター・コピーライター
グロービス経営大学院 2025年度卒業

猪口 裕子

グロービス経営大学院 事務局