GLOBIS Articles
- テクノベートMBA
- エグゼクティブMBA
- GLOBIS Learning Insights
投稿日:2026年03月24日
投稿日:2026年03月24日
【GLOBIS Learning Insights】
「2年後に圧倒的な差がつく」のはなぜか?
〜 グロービスが考える、「本質的な成長戦略」とは? ~
- 松永正樹
- グロービス経営大学院 教員
- 鈴木由理
- グロービス経営大学院 事務局スタッフ
こんにちは。グロービス経営大学院(以下、グロービス)事務局の鈴木です。
グロービスでは、単なる知識習得に留まらない、実践的な学びを大切にしています。そのため、独自の学習メソッドや仕組みを数多く取り入れています。
この連載コラム「GLOBIS Learning Insights」では、「なぜグロービスの学び方が、”仕事で成果を出す力”の向上につながるのか?」を、専門の博士号を持つ教員にお話を聞きながら深掘りしていきます。
「手っ取り早く、答えだけ知りたい」 そんなタイパ(タイムパフォーマンス)至上主義とも言える空気が、今のビジネス現場には流れているように思うことはありませんか。AIに問いかければ数秒で回答が返り、動画一本見ればビジネススキルを「知る」ことができる時代。そんな中で、あえて数年という時間を費やしてビジネススクールで学ぶことに、どんな意味があるのか、疑問に思う人は多いのではないでしょうか。
「変化の激しい時代に、数年もかけて学ぶのはリスクがあるのでは?」
「もっと効率的な方法があるのでは?」
日々、入学を検討されている方々と接する中で、こうした迷いを抱いている方が増えているように思います。一方で、グロービスのキャンパスに目を向けてみると、そこには「効率」という言葉とは真逆の、泥臭くも熱い光景が広がっています。授業が終わった後、懇親会に行って議論を続ける皆さんや、授業の延長戦として勉強会に参加する皆さん、損得抜きでお互いの志を磨き合う授業外でのさまざまな活動。
なぜ、多忙を極めるビジネスパーソンの皆さんが、敢えて貴重な時間とエネルギーをここに投じ続けているのか。この連載コラムでは、その答えを科学の視点から紐解きます。今回は、コミュニケーション学の専門家でもある教員の松永さんとともに、時間をかけるからこそ、脳に起きる本質的な成長のメカニズムに迫ります。
「学び」を「一生モノの武器」へと変えるための、投資対効果(ROI)の極意を覗いてみましょう。
効率を求めるほど、成長は遠のく?――「使える力」を定着させるために、時間が必要な理由
松永正樹
グロービス経営大学院教員兼グロービス教育科学研究所副所長。Ph.D. in Communication Arts & Sciences (Pennsylvania State University)。九州大学ビジネススクール准教授、株式会社Relicプロジェクトリーダー等を経て、グロービスに着任。2021年Academy of Management Best Papers Award(Organizational Behavior Division)をはじめ、学会賞・論文賞受賞多数。『Employee Uncertainty over Digital Transformation』(Springer Nature)著者。個人事業主としてコンサルティング活動も行っており、アントレプレナーシップ教育スタートアップのタクトピア株式会社アドバイザリーを務める。
松永:こんにちは。グロービス経営大学院の専任教員の松永正樹と申します。ここでは、認知科学や脳神経科学の知見を援用しながら、ビジネススクールで時間をかけて学ぶ本質的な意義について掘り下げていきたいと思います。
結論から言うと、単に何かを学んだ気分になりたいのではなく”本質的な成長”を求めているのであれば、ビジネススクールに通うことは非常に有効な手段となりえます。なぜなら、人間が意味ある成長を遂げるためには、一定期間多彩で濃密な経験を通して学びを深めること、そして、さらにそれらの経験が自分にとってどんな意味があるのかを何度も心の中で反芻することが不可欠だからです。
順番にご説明しますね。まず、本質的な成長とは何でしょうか。
脳のメカニズムから考える、思考や行動の変化
さまざまな考え方があると思いますが、ここではひとつの観点として「脳内の変化」に着目してみます。私たちの思考や心理、行動は、大元をたどれば脳内で無数の神経細胞(ニューロン)が形づくる膨大かつ複雑な回路を通して行われる情報処理に起因します。約1千億ともいわれるニューロンがどのように結びつき、影響し合うかによって、人が物事をどのように感じ、考え、行動するかが決定づけられているのです。別の表現をするならば、ニューロン結合が変化するということは、その人の思考や行動が本質的に変化することにほかなりません。
では、ニューロン結合は、どうすれば変化するのでしょう。答えは、「刺激を受けること」です。本を読んだり、動画を観たり、他者と議論を交わしたり、あるいは手や身体を動かして行動してみたり…、なにかしらの情報を取り入れたり活動をしたりすることで刺激がもたらされ、脳が反応します。とりわけ、それまでに経験したことのない未知のアイデアや未経験のアクションに意識的に挑戦すると、従来はつながっていなかったニューロンが一気に活性化し、新たな神経結合が形成されやすくなります(この現象のことを、英語では“neurons that fire together wire together”と表現したりします)。
深い学びを得たときに「まるで、生まれ変わったようだ」と言ったりしますが、あれはじつは完全な比喩というわけではなく、学びを通して得られた刺激によって実際に新たなニューロン結合が生じている、つまり、部分的に脳が生まれ変わっている感覚を表現しているものなのです。
ただし、人間の脳には「適応」という、本来的には非常にすぐれた――しかし、学びを得て成長するという目的に照らすと、ちょっと悩ましい――能力が備わっています。当初は目新しく、刺激にあふれたアイデアや体験であっても、ヒトの脳はすぐそれに慣れてしまうんですね。味や香りであれば想像しやすいかと思いますが、はじめの一匙を口にしたときや最初に匂いを嗅いだときは鮮烈に思われた料理であっても、毎日繰り返していれば人は飽きてしまいます。
これは、知的刺激に関しても同様です。本来刺激的なはずの内容であっても、同じようなフォーマットやトーン、パターンで繰り返し触れていると、脳が「あぁ、またコレね」という解釈をしてしまい、刺激が薄まってニューロン結合の形成が阻害されてしまうのです。
この「慣れ」は、情報処理の負荷を小さくして脳にかかるストレスを抑えるという意味では非常に効果的なメカニズムなのですが、本質的な成長という目的からすると大変厄介なものです。なぜなら、脳内で新たなニューロン結合が形成され、それが持続的な形で安定するためには――対象となるアイデアや行動の複雑さにもよりますが――少なくとも数日、一般的には数週間以上、刺激が持続する必要があるからです。
もう少し補足すると、なんらかの刺激を受けたとき、脳の反応自体はきわめて短い時間で生じます。ただし、この初期反応は既存のニューロン結合にもとづくもので、単に刺激を受けただけではニューロン結合そのものは変化しません。数分の面白い動画を観終わったときには何か非常に興味深い知見を得られたように感じたのに、ちょっと時間をおいてみると動画の内容すら詳細には思い出せなかったりするのは、これが原因です。新しい結合が形づくられたり、既存の結合がさらに強くなったりするような構造的変化を生じさせるには、数十分から数時間以上の刺激が必要です。ただし、これも(何度も思い返すほどの強烈な刺激がない限り)一時的なものです。しばらくすると、一旦形成されたニューロンの結合はほどけ、最終的にはほぼ元の状態に戻ってしまいます。脳を本質的に変化させるには、数秒~数分はおろか数時間程度の刺激でも十分ではありません。
ここに、人が成長するうえでの大きなジレンマがあります。じゅうぶん長い期間にわたって刺激を得られなければ、新たなニューロン結合の形成を通して思考や行動を本質的に変化、すなわち成長させることは難しい。しかし、ただ新しい情報や活動に触れるだけでは脳がすぐそれに慣れてしまうため、刺激が持続しないのです。では、ニューロン結合を変化させ、新たに生じた結合を安定させるために必要とされる数日から数週間以上の期間にわたって刺激を感じ続けるには、一体どうしたらいいでしょうか?
ビジネススクールに挑戦することは、この問題に対してのひとつの解になり得ます。たとえばグロービスであれば、1回あたり3時間の授業が設定されており、そこでのケースディスカッションを通して学生の方々は大量かつ多彩な知的シャワーを浴びることになります。毎回新しい教材やテーマに取り組み、クラスでは自分と業種や経験、ときには母語も異なるクラスメートや教員と議論を交わす濃密な時間は、刺激に満ちあふれています。したがって、授業を受けるたびに、学生の脳内では新しいニューロン結合が形成され、思考と行動の枠組みが拡張されていきます。さらに、その場限りの動画や単発セミナーと違って、ビジネススクールにコミットすれば、入念にデザインされた予習復習のプロセスや他の学生との勉強会における議論を通して、つねに新鮮な刺激が得られる環境を確保することができます。(※1、※2)
※1 グロービス経営大学院における予習復習、及び、学生同士の勉強会に関しては、『限られた時間で、最大のリターンを実現する。~グロービスが重視する「授業前後の時間」とは?~も合わせてご参照ください。
※2 言わずもがなのことではありますが、これは動画やセミナーが悪いという意味ではありません。(事実、グロービスでは、多くのビジネススクール以上に豊富な動画教材やセミナーの機会をご提供しています。)ここでの要点は、定式化されたフォーマットやトーンで短時間情報に触れる「だけ」なのと、ビジネススクールで複合的かつ継続的な形で学びに取り組むことには、成長という点において決定的な違いがあるということです。
学びの効果を最大化する「複利」のメカニズム
2年から3年という、まとまった期間を通して多彩なプログラムに身を投じることにも重要な意味があります。なぜなら、学びというものは「複利」で効果が指数関数的に高まる性質があるからです。
本質的な成長とは、脳内のニューロン結合の増加にほかならないという点を思い出してください。あるテーマ(たとえば、論理思考)を学ぶと、それに対応する新たなニューロン結合が脳内に形成されます。そこでさらに、リーダーシップや戦略論など別のテーマについて学ぶと、それぞれのテーマに関する学びだけでなく、テーマ間のつながり――たとえば、「論理思考の授業で学んだあの考え方が、戦略を検討するときのこういうところで利いてくるのか!」など――も発見することができます(スティーブ・ジョブズの有名な「点と点をつなぐ」という言葉は、まさにこの現象を言い表したものだと言えます)。このように複数のテーマをまたいだ形での発見は、自分の中に蓄積された学びが増えれば増えるほど、そして、新たに得た学びがそれ以前のものと関連しつつも新鮮な驚きと洞察を伴うものであればあるほど豊かな刺激をもたらしてくれます。
学んだテーマがひとつだけであればテーマ「間」のつながりは当然ゼロですが、テーマがふたつになればつながりがひとつでき、テーマが3つに増えるとつながりは3つに増える。たとえば、ファイナンスに関する知識がマーケティングの授業で学んだ理論によって肉づけされ、それが人材マネジメントに関する課題にひらめきをもたらしてくれるようなイメージです。さらに、テーマが4つになればつながりは6つ、テーマが5つに増えればつながりは10…と、多彩な学びが積み重なるにつれて、そこから得られる発見、すなわち成長のための気づきは飛躍的に増えていくため、学びに投資する期間を長くとれば、そのぶんだけ新たな学びから得られる成長が加速していくことになります。(MBAを取得した人の多くが、ビジネススクールにおける学びは初年次よりも2年めのほうがはるかに大きかったと口にする要因のひとつは、ここにあります。)
ただし、まとまりや整合性を欠く散発的なつまみ食いと、刺激に満ちた多彩な学びの差は紙一重です。多種多様なコンテンツの狭間で迷走しないようにしながら目の前のテーマに集中するためには、確かな「地図」、すなわち体系的なカリキュラムが整備されたビジネススクールという場は、非常に充実した環境であると言えるでしょう。
自律的な成長を可能にする「振り返り」の習慣
最後に、振り返りも重要な「刺激」の源泉となります。というのも、人の脳にとっての知的刺激というのは、必ずしも外的なものだけに限らないからです。それまでに得た情報や経験を頭の中で整理・分析して、そこに秘められた示唆を探索し、自分にとってどんな意味があるのかを省察することは、活発なディスカッションや綿密な授業に勝るとも劣らぬ刺激に満ちた体験となりえます。この点において、グロービス経営大学院はどの科目においても「振り返り」を重視した学習体験を設計しています。学生はあらゆる場面を通じて自身の体験と学びを反芻し、成長の糧とすることが求められます。最終的には、そうやって振り返りを習慣化することによって、外発的な刺激に頼ることなく、MBAを取得してビジネススクールを修了した後でも日常的な内省と思考のプロセスを通じて自ら刺激を生み出し、自分自身を持続的に成長させる力を身につけることができるのです。
次から次に目新しい動画やセミナーを消費しても、その瞬間は何か新しい知識を得たように感じただけで、あとになってみると何も定着していないことは珍しくありません。そうではなく、濃密な時間を着実に積み重ねて本質的な成長を目指すのであれば、ビジネススクールという場でしっかりと自分自身を鍛えることこそ、真の意味で「タイパ」の高い、投資対効果にすぐれたチャレンジだと言えるでしょう。
- Abbott, L. F., & Nelson, S. B. (2000). Synaptic plasticity: Taming the beast. Nature: Neuroscience, 3(11), 1178-1183.
- Holtmaat, A., & Svoboda, K. (2009). Experience-dependent structural synaptic plasticity in the mammalian brain. Nature Reviews Neuroscience, 10(9), 647-658.
- Kandel, E. R., Schwartz, J. H., Jessell, T. M., Siegelbaum, S. A., & Hudspeth, A. J. (Eds.). (2021). Principles of neural science (6th ed.). McGraw-Hill.
- Meyer, D., Bonhoeffer, T., & Scheuss, V. (2014). Balance and stability of synaptic structures during synaptic plasticity. Neuron, 82(2), 430-443.
- Yoshihara, Y., De Roo, M., & Muller, D. (2009). Dendritic spine formation and stabilization. Current Opinion in Neurobiology, 19(2), 146-153.
まとめ
鈴木:今回のコラムでは、脳が本質的に変化するために不可欠な「時間の投資」と「継続的な刺激」という観点から、ビジネススクールで時間をかけて学ぶ意義について解説いただきました。
グロービスでは、在学期間を通して刺激の持続や学びの複利効果を最大化するために、授業外でもさまざまな場を設計しています。例えば、毎年7月の大規模ビジネスカンファレンス「あすか会議」は、立場や世代を超えた「知的刺激のシャワー」を浴びる機会です。ここではグロービスの学生・卒業生・教員、さらに政界・経済界・学術界・メディアを代表するリーダーたちが集い、立場や世代を超えた対話や議論を繰り広げます。また、1年次終了時の「ブリッジングセッション」や、2年次終了時の「コミットメントセッション」(※3、※4)は、学びを内省し、生涯の財産へと定着させる重要な節目となっています。
これらの営みは、深い内省を通じて、得た知識をニューロンレベルで「一生モノの武器」へと定着させる、戦略的な設計の一部なのです。
手軽な学びが溢れている今だからこそ、自分自身を根本から作り変える数年間の投資は、人生で最も「投資対効果」の高い選択になると私たちは確信しています。
「ただ知っている人」で終わるか、脳から変化し「真にできる人」へ脱皮するか。 この数年間という貴重な時間を、「知識を仕事で活かす力」を得るために投資してみませんか。
※3 ブリッジングセッション:本科生1年次終了時に、これまでの学びや経験を振り返り、自身の志を見つめ直すためのセッション。
※4 コミットメントセッション:卒業直前に、これまでの学びや経験、志の実現を仲間と振り返る集大成となるセッション。最後は自身の志を発表します。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
ヒントを得る
大学院への入学をご検討中の方向けにグロービスMBAの特徴や他校との違い、入試概要・出願準備について詳しくご案内します。
※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
松永正樹
グロービス経営大学院 教員
グロービス経営大学院教員兼グロービス教育科学研究所副所長。Ph.D. in Communication Arts & Sciences (Pennsylvania State University)。九州大学ビジネススクール准教授、株式会社Relicプロジェクトリーダー等を経て、グロービスに着任。2021年Academy of Management Best Papers Award(Organizational Behavior Division)をはじめ、学会賞・論文賞受賞多数。『Employee Uncertainty over Digital Transformation』(Springer Nature)著者。個人事業主としてコンサルティング活動も行っており、アントレプレナーシップ教育スタートアップのタクトピア株式会社アドバイザリーを務める。
鈴木由理
グロービス経営大学院 事務局スタッフ
グロービス経営大学院事務局スタッフ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、大手広告代理店にてメディアプランナーや営業として勤務。その後、一次産業に関わるスタートアップに転職し農産地のマーケティング支援などを行う。教育を通じた社会貢献に関心を持ち、2024年からグロービス経営大学院にて事業企画を担当。

