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投稿日:2026年02月24日
投稿日:2026年02月24日
【卒業生インタビュー】藤田医科大学医学部総合診療科教授 大杉 泰弘氏「教育の力で医療に変革を」
- 大杉 泰弘
- 藤田医科大学医学部総合診療科教授
グロービス経営大学院 2020年卒業
MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞者の一覧はこちら)。
今回は2024年「創造部門」の受賞者、藤田医科大学医学部総合診療科教授 大杉 泰弘氏にインタビュー。「教育の力で医師を育て、地域そして世界を変革する」という理念のもと、多くの専門医を育成され、総合医療業界をけん引してこられた大杉氏に、現在の取り組みに至る歩みと今後の展望を聞いた(インタビュアー:西村 美也子)。
※記事の内容や肩書はインタビュー当時(2024年11月時点)のものです
医療という分野で「創造部門」を受賞
西村:アルムナイ・アワードのご受賞おめでとうございます。あらためて受賞された時のお気持ちを教えてください。
大杉:数多くの業界からビジネスパーソンが集まる中、医療という業界での「創造」に評価をいただけたことは、非常に光栄です。これから医療分野の創造・変革に挑もうとする方々へ、少しでも刺激になれば、これほど嬉しいことはありません。
また、想像以上に多くの方から祝福のメッセージをいただき、あらためて今後の活動への責任を強く感じました。
西村:現在の取り組みに至るまでに、大きな転機となった出来事があれば教えてください。
大杉:キャリアにおける最大の転機は、初期研修期間を終えて着任した福岡の麻生飯塚病院での勤務経験です。
それまでの私は、正直に言えば学歴や肩書などに囚われていました。他の医師が海外で活躍するなど華々しいチャレンジをしていると聞いても、私には縁の無い別世界のことだと思っていました。しかし、その病院で多様なバックグラウンドを持つ医師たちと働く中で、医師としてのあり方を考えるとき、別に学歴で評価が決まるわけではない、多様な価値観があるのだということに気づかされたのです。そして、「自分がどんな医師になるかを決めるのは、自分自身でしかないんだ。自分で勝手に限界を決めるのはやめよう」と決意しました。
また、当時の上司との出会いも大きな転機でした。当時の私の目標は、開業医である父を継ぐべく「最強の開業医になる能力を身につける」ことでした。しかし、ある時上司が「開業医になるのは手段に過ぎない。それによって何を成すかが大事だ」と、話してくれたのです。その言葉に志を持つことの重要性を教えられ、自分の志とは何かを考え続けるようになりました。そして、同僚と「総合診療をインフラにしよう」と約束を交わすに至ったのです。
総合診療専門医とは、単一の臓器や疾患にとらわれず、幅広い視点から患者を診断し、治療方針を組み立てる能力を持つ医師です。大学病院等に在籍して脳外科、外科、消化器内科、産婦人科などで専門性を磨く医師というよりも、地域の病院で幅広く診ることができる医師を指しています。
図1:総合診療専門医とは?
私がこの総合診療への関心を高めたのは、先ほどお話しした麻生飯塚病院で、「最強の開業医になる」ため幅広いスキルを身に付ける道を模索していたときのことでした。お世話になった上司が、総合医療の中でもより地域の医療ニーズに寄り添った活動を行う、「家庭医療」を学ぶことのできるプログラムの立ち上げを進めており、直感的に「これかもしれない」と思ったのです。
その後、頴田病院でも家庭医療センター長としてプログラムの運営に関わりました。ここでは総合診療医が中心となった病院に変わることで、経営危機から脱しただけでなく、住民の幸福度上昇、地域全体の活性化にまでつながったのを目の当たりにしました。
総合診療は、中規模病院にとって生き残りのための新たな道をつくるだけでなく、地域住民に安心を提供することができる。そう確信した経験から、「総合医療をインフラに」という志が生まれ、現在も私の活動の揺るぎない原動力になっています。
総合診療医の育成と新たな挑戦:『コミュニティホスピタル』構想
西村:そのご経験から現在までの歩みについて、具体的に教えてください。
大杉:2015年に、38歳の時に地元の愛知に戻り、藤田医科大学からの出向で豊田地域医療センターにて勤務しました。「総合診療をインフラにする」ために、新たな地でも総合診療を広げていきたいと考えたからです。
そこでは、在宅診療や病院の経営改革を進めると同時に、総合診療プログラムを立ち上げ、若い総合診療専門医の育成に力を注ぎました。
3名の専攻医と共にスタートしたプログラムは、2023年には31名の専門医を輩出するまでに成長しました。現時点では日本で最も多くの専攻医を集めるプログラムになっています。
ほとんどの医師は、例えば脳外科、外科、消化器内科、産婦人科といった専門科を持ちます。そのため、専門性が高く、患者さんも集まり、良い指導医がいる大学病院などの大病院に比べると、地域の病院には若い医師がなかなか集まりにくい傾向があります。一方で、総合診療は最初に診察を行う地域の病院こそが最先端ですので、ここから総合診療医を育成していく仕組みを作りたいのです。
さらに、200床未満の中規模病院が価値を発揮し続ける道として、総合診療を軸に、地域全体で病気や生活を支え合うシステム(地域包括ケア)のハブとなる、「コミュニティホスピタル」という形があるのではないかと思うようになりました。病気やケガをしたとき、皆さんが最初にかかるのは都会の大病院よりも、地域の病院でしょう。だからこそ地域の病院は「ミニチュア大病院」を目指すのではなく、本来必要とされている総合的な医療と介護などのケアを、1か所でまとめて提供できる場所を目指すのはどうか。豊田地域医療センターや頴田病院での経験を活かし、そんなコミュニティホスピタルを実現・複製していきたいと考えたのです。
医療の価値を複製する仕組み作りの学びと実践
西村:そうした取り組みを進める中で、グロービス経営大学院に入学されたわけですね。グロービスでの学びがどのように活かされたのか教えてください。
大杉:病院改革もある程度軌道に乗りつつある一方で、今まで磨いてきた医療の専門性や臨床、研究の延長線上だけでは、「総合診療をインフラにする」には至らないのではないかと感じ、経営面の能力も身につけたいとグロービスに入学しました。
特に大きな影響を受けた科目は、「サービスマネジメント」です。医療はサービス業の特徴(無形性、同時性、変動性、消滅性)を持っており、サービス業の最たるものだとも言えます。目の前の患者さんと向き合うことで医療という価値が生まれますが、その価値は、特定の医師個人に依存するのでは不十分です。価値を誰もが「複製して再現できる仕組み」として確立し、より多くの患者さんに同じように届けられるようにすることが非常に重要だと気づかされたのです。
この科目で価値を複製する仕組みづくりについて学んですぐに、コミュニティホスピタルを広げるために動き始めました。概念を具体化し、3つの「重点領域(総合診療、地域リハビリ、アレルギー)」と3つの「⾏動指針(健康づくり、まちづくり、⼈づくり)」を定めました。
この取り組みをさらにブレイクスルーさせて、日本全国で100の病院を目指すような活動を進めています。医療系の仕事に従事されている方には必修にするべき科目だと思いますね。
西村:グロービスのネットワークについても、お感じのことがあれば教えてください。
大杉:グロービスで出会った仲間のネットワークは、志を同じくして互いに刺激を受けながら共に挑戦する、大切な友人をつくることにつながりました。医師というのは職人気質になりがちで、システムや価値の複製を考えることが苦手な傾向があります。しかし、医療業界にマネジメントをインストールしていくことは必要なことです。そこで、田久保さん(グロービス経営大学院教員/特任副学長)や他の医師の卒業生の方々と一緒に、「医師のためのマネジメント基礎」という医師向けプログラムを立ち上げ、開催しています。業界構造的な課題もまだ多いですが、グロービスで出会った仲間と一緒に医療の仕組みづくりに挑戦してみたいという想いもあります。
総合診療を「インフラ」へ:1000の病院に広がる志
西村:大杉さんの今後のチャレンジを教えてください。
大杉:変わらず「総合診療をインフラにする」ことを目指します。以前は壮大な夢でしたが、今は何をすれば達成できたと言えるのか、具体的に目標が見えてきています。各地の病院に総合診療が当たり前に存在する状況を目指し、自前のコミュニティホスピタルを100施設にできたらと思っています。
同時に、アカデミアでの評価も重要であり、論文執筆やアカデミックポジション獲得にも注力し、医療業界全体で総合診療が確立されるよう、自ら責任を持って活動していきます。
「今いる場所」で価値を創造することの尊さがある
西村:最後に、これからMBAを目指す方やグロービスの在校生・卒業生に向けて、ぜひメッセージをお願いします。
大杉:ベンチャーなど自分自身で大きな意思決定をできる立場で成功を収めることはもちろん素晴らしいです。一方、私は伝統的な組織のなかで、しがらみと闘いながら奮闘する人たちも尊いと感じています。なぜなら、そうした組織の中でのイノベーションがあることで世の中の大きなイノベーションも起こるのだと思うからです。
大企業や公的機関に勤める皆様、今いるその場所で、自分にしかできない道を切り開くことには大きな価値があります。だからこそ、そこで奮闘し続けてほしいと心から願っています。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
ヒントを得る
大学院への入学をご検討中の方向けにグロービスMBAの特徴や他校との違い、入試概要・出願準備について詳しくご案内します。
※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
大杉 泰弘
藤田医科大学医学部総合診療科教授
グロービス経営大学院 2020年卒業

