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投稿日:2025年12月12日

投稿日:2025年12月12日

【公認クラブ幹事インタビュー】
~仲間と一緒に挑戦~
子育て・仕事・学び、「全部やる」をあきらめない

子育てと仕事だけでも手いっぱい。そこに「学び」を加えるなんて、自分には無理かもしれない。
でも、同じような思いを持つ仲間とつながれる場があれば、学びの一歩を踏み出す勇気が湧いてくるかもしれません。

今回お話をうかがったのは、グロービス経営大学院(以下、グロービス)の公認クラブ「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」※で、かつて幹事を務めた原田妙子さんと、現在幹事を務める土屋紀子さんです。

お二人は、育児中にグロービスで学び、卒業後は、同じ立場で学ぶ仲間を支える活動を担ってらっしゃいます。子育て中の方が、特別な環境や状況に左右されず、仕事も学びもあきらめず挑戦できるように―そんな想いを込めたクラブ活動について、お話をうかがいました。

※公認クラブ:グロービスで共通の目的や関心を持つ学生・卒業生が、自主的に学びや経験を深めながら交流するクラブ活動。「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」もクラブの一つ。

(左)土屋 紀子さん(東京校 2025年卒業 )「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」2024-2025年 代表幹事
(右)原田 妙子さん(オンライン校 2022年卒業)「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」2022-2023年 代表幹事

多様な仲間と子育てやキャリアの経験を分かち合いたい

まずお二人が幹事を務めた 「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

土屋:「グロービス・ワーキング・ペアレンツクラブ」は、「全ての人がより輝ける未来に向けて、子育てにかかわる人々が、イキイキと働ける社会をつくる」ことをミッションに活動する、グロービスの在校生・卒業生が集まるクラブです。ビジョンとして、DEI※を実現する場、キャリア・家庭・子育てを充実させるためのノウハウを共有する場、個人と家族のキャリアを考える場をつくることを掲げています

原田メンバーの幅は広く、子育て中の20代〜40代が中心です。会社員の方だけでなく、自営業や専門職の方もいたりと、バックグラウンドはさまざまですね。男女も構成も比較的バランスが取れていて、男性の参加者も多いのが特徴です。お子さんがいない方でも、部下・チームメンバーが子育て中で「子育てのリアルな状況を理解したい」と思う方などが参加することもあります。

土屋活動内容は、ビジョンに沿ったセミナーや座談会、交流会などのイベントを企画しています。例えば、「子育て中のタイムマネジメント」や「ファミリーキャリア」、「中学受験」などをテーマにしたイベントを定期的に開催し、登壇者や参加者による実践的なアイデアを共有することで、日常ですぐ役立つ知見を得られる場になっています。

原田クラブでは、子育て中の男女を問わず、悩みや成功体験を気軽に共有できる場づくりを意識していて、育児や仕事で忙しい方々が、子育ての当事者として気になることや聞きたいことを、気軽に相談できる場であることを大切にしています。

例えば、「学びと仕事を両立するための工夫」(外注サービスの活用や時短家電の紹介など)から「子どもとの向き合い方」に関する悩み(学童保育や習い事の選び方など)まで、テーマはさまざまです。気軽に話せるからこそ、参加者同士の交流も自然に生まれています。

またオンラインイベントでは、「限られた空間」だからこそ、日常の環境や立場を気にせず率直に話しやすいという利点があります。住まいのエリアや家庭環境が近い方とつながりやすいのも、オンラインならではの特徴です。

※Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)略称です。多様な背景や個性を持つ人々が、組織や社会の中でそれぞれの能力を最大限に発揮し、公平に扱われ、尊重され、価値を感じられる状態を目指す概念のこと

迷いを語り合える仲間に刺激を受け、自分も周りの人たちを支えたいと思った

お二人が、「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」に関わろうと思われたのは、どんな思いやきっかけからだったのでしょうか。

原田結婚や出産などのライフイベントを経験する中で、「思っていたより、社会は平等ではないのかも」と感じることが増えました。例えば、結婚にあたって姓を変えるのも、配偶者の転勤で自身の仕事をセーブするのも、現在は女性に負担が偏りがちですし、女性は「その負担を負って当たり前」とすら思われる。そういった状況の当事者になったことで、DEIに強く関心を持つようになりました。

ちょうどその頃、当時のクラブの幹事の方から「こうした課題に関心があるなら、一緒にイベントを企画してみない?」と声をかけてもらいました。無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)をテーマとするイベントを運営したのですが、参加者同士で対話を重ねる中でとても刺激を受けた機会になり、「こういう場が社会を少しずつ変えていくきっかけになるかもしれない」と実感することができました。

グロービスには、組織の中でリーダーシップを発揮する方や、これからその役割を担う方も多く学んでいます。そうした場でDEIをテーマに対話を重ねることは、社会を変えるドライバーになるのではと思い、幹事として活動を続けたいと思ったことがきっかけです。

土屋私は学び始めた当初は子供が乳幼児だったので、「子育てと学びをどう両立できるのか」がとても不安でした。そんなとき、クラブの存在を知り、同じような立場の人と悩みを共有できる場所があるとわかり、参加してみました。

実際にイベントに出てみると、子育てしながら学んでいる先輩たちの工夫や体験談を聞けて、「なるほど、こうすればできるんだ」と具体的なイメージが湧きました。私自身すごく救われましたし、「この場があるから頑張れる」と思えたんです。 気づいたら、「今度は自分が運営する側に回って、誰かの背中を押せたらいいな」と考えるようになり、そこからクラブに関わるようになりました。


子育てと学びの両立は小さな工夫の積み重ね

お二人が感じられたのと同様に子育てをしながら学びたいと思っても、両立の点で悩まれる方はとても多いと思います。お二人は、子育てや仕事などと向き合いながらグロービスでの学びを続け、卒業までやりきられたご経験をお持ちです。日々の中で、どんな工夫をされていましたか。

原田私は入学と同時に配偶者の海外赴任に同行することになり、休職に入りました。その後、産休・育休も経験しています。仕事・育児・学業の3つが重なる時期はなかったものの、学ぶ上で少し不安はありました。特に心配だったのは、「オンライン授業の雰囲気」でした。

もともとは単科生として東京校に通っていたのですが、オンラインでも同じように学べるのかを確かめたくて、単科生最後の科目はオンラインで受講してみることにしました。実際に受けてみると、通学と変わらない臨場感や熱気があり、海外から受講している方や育休中の方もいて、とても刺激を受けました。「これなら自分も続けられそうだ」と安心できたことが、学びを続ける大きなきっかけになりました。

ただ、海外で受けるにあたって時差があることは大変でした。授業は深夜2時開始の時期もあれば、サマータイムの関係で3時開始になることもあり、終わるのは朝5時や6時に及びました。頼れるのは夫だけだったので、各学期の受講スケジュールをしっかり相談の上、授業が終わった後に私が仮眠を取れるように、朝の予定を調整してもらっていました。

土屋私も、学び始めた時は子どもが小さく、夫と仕事の休みも合わなかったため、受講スケジュールの調整には苦労しました。子どもに向き合う時間も大切にしたかったので、勉強するのは自分の自由時間である「寝かしつけた後の夜の時間」「出勤する電車での移動時間」「昼休み」など、「隙間時間」を活かすことを意識していました。それでも足りない時間を作るために、ファミリーサポートや食事の作り置きサービスなども積極的に活用しました

今思うと、両立は完璧を目指すのではなく、日々の小さな工夫の積み重ねでした。最初から完璧にできることなんて何ひとつなく、工夫を重ねる中で、優先順位をつける力や時間の使い方を考える習慣が自然と身に付き、子育ても学びも充実したものにできたと思います。

仲間と支え合えたから、学び続けられた

お二人も、学ばれていく中で、ご自身やご家族に合った方法や環境を少しずつ見つけて挑戦されてきたのですね。学びを進める中で、グロービスの仲間との関わりが助けになったことはありましたか。

土屋私にとってグロービスで仲間とつながり、同じ子育てをしながら学ぶ方々と定期的に話せたことは大きな支えでした。例えば、在学中に出産してまた学びに戻ってくる方や、男性で育休中に子育てと学びを両立されている方もいました。みんな状況は違うのに、それぞれが「子育てと学びを両立したい」という強い想いを持って頑張っている姿に触れると、「自分も頑張らないと」と勇気をもらえました。一人だけで勉強していると「今日は無理かも」と思ってしまう時もありますが、仲間の存在が「自分でも工夫すればできる」と考えるきっかけをくれたと思います。

原田私の場合は、授業を受けるにあたって時差をどう乗り越えるかが大きな課題でしたが、同じように海外で受講している仲間たちと励まし合えたことが本当に心強かったです。海外で学び続けるための工夫を共有できたり、相談できる仲間がいるというネットワークは大きな支えになりました。

クラブ運営を通して、グロービスで学んだ知識を実践でき、自信がついた

クラブの幹事として活動される中で、特に印象に残っている出来事や取り組みはありますか。また、その経験を通じて、学びや気付きを得られたこととはどんなことでしょうか。

原田幹事を務める中で特に印象に残っているのは、男性幹事メンバーの発案で、育児中の男性に向けたイベントを企画・運営したことです。男性ならではの視点で、家庭や家族への関わり方や貢献度を高めることをテーマにした企画だったので、新鮮でとても興味深いと感じました。

この例に限らずですが、運営側としては、取り上げるテーマに対して、「どうすれば届けたい層に関心を持ってもらえるか」を考える必要があり、マーケティングやオペレーションの観点でグロービスの学びを活かす場面が多くありました。イベント運営は普段の仕事ではあまりやらないので、普段経験できない領域にチャレンジできたのも、貴重な学びの機会でした。振り返ると、クラブ活動は学びを実践する格好のフィールドだったと思います。

土屋私は、「育児×仕事×MBA全部やる!仲間と乗り越えるリアル戦略会議」をテーマにしたオフラインイベントが、とても印象に残っています。夜に外出する時間を取りにくいメンバーが多かったことや、コロナ禍の影響もあり、これまではオンライン開催が中心でした。
本科入学後の「学び始め」の時期は、悩みや不安も多くなるタイミングです。だからこそ、参加者同士が直接顔を合わせ、それぞれの葛藤や工夫を率直に共有できる場が必要だと感じていました。イベントの最後に、「ここに来て安心した」「自分だけじゃないと分かった」と言ってもらえたことが、何より嬉しかったです。運営側としては準備や進行に苦労もありましたが、参加者の表情を直接見ることができ、このクラブの存在意義を改めて実感しました。

また、企画を進める過程では役割分担やスケジュール調整など、まさにグロービスで学んだリーダーシップやチームマネジメントの知識が役立ちました。オフラインイベントとしてのマーケティングなども含め、仕事とはまた別の学びと実践の場になったと思います。

子育ても、学びも、キャリアも。これからも支え合える場を作りたい

最後に、クラブにおいて今後どのような活動をしていきたいか、子育てをしながら学びたいと思っている方にどんな一歩を踏み出してほしいか、についてお二人の想いをお聞かせください。

土屋:「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」は、これからも子育てをしながら学ぶ方々が安心してつながれる場所であり続けたいと考えています。今後も、オンライン、オフライン問わず、さまざまなバックグラウンドの方が参加しやすいイベントや交流の場を企画していきたいです。クラブには1500人を超えるメンバーが在籍しており、子育てやキャリアのリアルな知見や実体験がたくさん蓄積されています。これから子育てをしながら学びに挑戦する方にも、そうした知見をぜひ活用してもらえたらと思います。

また、学びを始める一歩は小さくても大丈夫です。少しずつ試してみることで、自分なりの学び方やリズムが見つかります。仲間と励まし合いながら、自分のペースで進めてほしいと思います。

原田私も同じく、「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」が多様な立場の方が集い、互いに刺激し合える場であり続けることを願っています。普段の生活や仕事の中では出会えない方々とつながることで、新しい視点や学びのヒントが得られます、そんな場を仲間たちと作っていきたいと思います。

学びを始めるのに「完璧なタイミング」を待つ必要はなく、グロービスでは1科目からでも学び始められるので、まずは一歩だけ踏み出すことが大切だと思います。その小さな一歩が、自分自身の成長や選択肢の広がりにつながると思います。

※「グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ」の活動の詳細はこちらをご覧ください。

(左)原田 妙子さん

旭化成ライフサイエンス株式会社 事業開発室
大学卒業後、旭化成株式会社入社。ヘルスケア領域で営業、マーケティング、経営企画に携わる。2019年にグロービス経営大学院入学。同年、家族の海外転勤をきっかけに米国に転居し、現地で出産。現在は帰国・復職し、事業開発を担当。

(右)土屋 紀子さん

IT企業 品質管理部 DX推進グループ/グループリーダー
大学卒業後、新卒でIT企業に入社。情報システム部門にて、エンジニアを支えるバックオフィス業務に長らく従事。育休取得後は、自社のDX推進担当として、基幹システムの導入プロジェクトや運用管理を通じた業務効率化に取り組んでいる。

インタビュアー:田淵 (グロービス経営大学院 事務局スタッフ)