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投稿日:2023年08月10日
投稿日:2023年08月10日
夏休みに読みたいおすすめ書籍3選――2023
- 森 暁郎
- グロービス経営大学院 教員
- 嶋田 毅
- グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
- 林 恭子
- グロービス経営大学院 教員
長期休みは、改めて知りたいビジネスワードについて調べたり、今後のキャリアを考える時間を取ったりする絶好のチャンス。グロービス経営大学院の教員がオススメする、この夏休みに読みたい書籍を3冊ご紹介します。前回のゴールデンウィーク版はこちら。
推薦者:森 暁郎(グロービス経営大学院 教員)
「人生においてただ一つ、本当に重要なものは他者との関係である」といきなり言い切って、本書はスタートする。慌ただしい中でAIやテクノロジーをいかに活用するかに気を取られ、希薄にもなりがちなオンラインでのコミュニケーションや出会いが当たり前になったこの頃、ハッとする人も多そうだ。
では、人間はどうすれば他者とうまくやっていけるのだろうか?
「人の心は読み取れるのか?」「頼れる友達とは誰なのか?」「愛と結婚の関係性は?」「孤独は悪なのか?」本書はそんな誰もが興味を抱くであろうテーマにつき、著者の主観に依存せず、数多くの科学的根拠や実例を駆使しながら、多くの示唆を与えてくれる本である。
例えば現代人の多くが直面していると言われる「孤独」につき、孤独とは実際に一人でいるかどうかとは関係なく、意味のあるつながりを感じられないことだと定義づけるとともに、孤独がいかに幸福度を下げるかを明確に指摘し、コミュニティに属すことの重要性を説く。
また長い歴史の中で結婚の意味合いが劇的に変わってきた経緯を論じながら、「夫婦愛は自らの選択であり、長年にわたって真摯でたゆまぬ努力が求められるのだ」など、こうして現代の人間社会が自由と自律の尊重を重視して社会を形成してきた代償としてふと忘れかけていることを、時にドキッとさせながら思い出させてくれるのも、本書の魅力である。
今やAIに関わる議論や記事に触れない日はない。だからこそ「人間」に目を向け、良好な人間関係構築へのヒントを探しに行ってみてはいかがだろうか。
『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』
著:エリック・バーカー 訳:竹中てる実 発行日:2023/3/24 価格:1,760円 発行元:飛鳥新社
推薦者:嶋田 毅(グロービス経営大学院 教員)
本書は10〜20代の若者の嗜好・行動を研究・情報発信する「電通若者研究部 ワカモン」による1冊である。いうまでもなく最近の若者はZ世代といわれる、それまで当然とされてきたマネジメントの手法が必ずしも通用するとは言えない世代である。かれらを念頭に置きつつ、これからの「フラットな組織」、つまり縦長の階層構造ではなく、横長かつ同じ視座や視点が重要となる横長の組織の在り方のヒントを提示した1冊だ。
本書は、「7つの思考」「16のスタンス」「今日から実践できる35のアクション」の3層構造となっている。
冒頭から順に読み進めてもいいが、40代以上のミドルであれば、その中で自分の常識に反する箇所を特に注視しながら読むのがいいだろう。ほとんどの項目は「まあそうだよな」と思うものが多いが、ときどき「なるほど、そうか」と思わせられる個所も多い。
グロービスはフラットで横長の組織であるが、そこに長年所属している自分にとっても参考となる点は少なくない。たとえばアクション14「石のうえ上に3年待てない前提で育成を考える」、アクション24「恥をかくことを恐れない」、アクション29「配慮は必要だが遠慮は不要だと心得る」などは、言われてみればそうかと思う一方なかなか実践できないアクションであろう。一般の大企業の管理職にとっては、さらに意外性が大きい個所も多いのではないだろうか。
本書の提言を四角四面に実行することが正しいわけではないだろうが、これからの組織運営を考えるうえでヒントになる1冊である。
『フラット・マネジメント「心地いいチーム」をつくるリーダーの7つの思考』
著:電通若者研究部 ワカモン 発行日:2023/7/21 価格:1,760円 発行元:エムディエヌコーポレーション
推薦者:林 恭子(グロービス経営大学院 教員)
今、私達が生きている社会では、SDGsやESG経営という言葉が普通に使われている。皆がサステナブルな発展を目指し、環境保護に真剣に取り組み、あらゆる差別が撤廃され誰もが幸せに生きることが是とされている……。と思いたいところだが、果たして本当にそうだろうか?
皆さんは「WOKE」という言葉をご存じだろうか。WAKEの過去形だから、当然「目覚めた」「覚醒した」という意味だ。しかし、この言葉の現代の意味は少し違う。2013年に始まった、人種差別への猛烈な抗議、ブラック・ライヴズ・マター運動でスローガンとして使われて以来、「おかしいと思うことに、見て見ぬふりをしない。ちゃんと声を上げ行動し、正しい社会にしていこう」という意味で使われてきた。
ここまでは真っ当な話なのだが、やがてその姿勢を揶揄する声も上がり始める。「そういう『意識高い系』な発信で自分の美しい人格をアピールするが、それは単なるポーズで、本当は自分の得しか考えない、えせ進歩主義者」のことを「WOKE」と呼ぶようにもなってきたのだ。しかもそれは、個人の域にとどまらない。私達が良く知る、世界的企業や、著名な経営者までもが好ましくない意味での「WOKE」だったら……?
この本は、そうした「えせ進歩主義者」達が、実は莫大な富を握り、美しい活動の裏で貧富の差の拡大を促進させているのではないか、との鋭い問題提起をしている。
私個人は、全ての企業が悪い意味での「WOKE」だとは思いたくはない。しかし、私達が関わる企業や組織が「美しきパーパスや社会活動」の裏でWOKE CAPITALISMに陥っていないか、しっかりと「WOKE(ぼんやりせず、覚醒して見る)」していく必要はあるだろう。
『WOKE CAPITALISM「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』
著:カール・ローズ 訳:庭田よう子 発行日:2023/4/14 価格:2,640円 発行元:東洋経済新報社
今回書籍を紹介した講師陣が登壇する、グロービス経営大学院の講座の例
森 暁郎
グロービス経営大学院 教員
嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
林 恭子
グロービス経営大学院 教員