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投稿日:2023年04月27日

投稿日:2023年04月27日

ゴールデンウィークに読みたいおすすめ書籍5選――2023

嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長院
小野 学
グロービス経営大学院 教員(グロービス経営大学院2007期生/東京校)、有限会社アンシャンテ 代表取締役、一燈館合氣道場 道場主 兼 館長
鷲巣 大輔
グロービス経営大学院 教員
許勢 仁美
グロービス経営大学院 教員
難波 美帆
グロービス経営大学院 教員

長期休みは、改めて知りたいビジネスワードについて調べたり、今後のキャリアを考える時間を取ったりする絶好のチャンス。グロービス経営大学院の教員がオススメする、ゴールデンウィークに読みたい書籍を5冊ご紹介します。前回の冬休み版はこちら

AI・ビッグデータ時代に必須の半導体にまつわる基礎知識を1冊で

推薦者:嶋田 毅(グロービス経営大学院 教員)

本書は長年半導体ビジネスで活躍している著者が、半導体の物理的特性やその種類、そしてビジネスにおける位置づけや半導体関連企業、半導体関連産業の特性やその発展の歴史などについてコンパクトにまとめたものである。

さて、先日亡くなったゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」によれば、IC(集積回路上)あたりの部品数は18か月で2倍に増えていくという。
この法則に従い半導体は数十年にわたって機能を指数関数的に向上させた。電気に関係するあらゆるツールや機材には半導体が数万個から数百億個は用いられている。
テクノロジーの進化に伴い、全世界で用いられる半導体数はこれから先も右肩上がりだ。いまや人類は半導体なしでは文明的な生活は全く送れない。それゆえ、半導体のサプライチェーンにトラブルが生じ供給が滞ると、派生的に世界のあらゆる産業に影響が及んでしまうのである。

各国の安全保障の面でも半導体は大きな影響を持つ。では、半導体やその製造装置、関連素材などはどういった企業が供給しているのだろうか? 詳細は本書を読んでいただきたいが、落ち目といわれている日本の半導体産業の中にも重要な地位を占める企業が多いことは知っておいてよいだろう。
テクノベート時代を支える半導体ビジネスの入門書として読んでおきたい1冊である。

ビジネス教養としての半導体
著:高乗 正行 発行日:2022/9/26 価格:1,650円 発行元:幻冬舎

意志決定に迷ったあなたが辿り着く、「人間学」の入門書

推薦者:小野 学(グロービス経営大学院 教員)

経営や戦略を学ぶと「唯一絶対の答え」が湧いて出てくるかというと、決してそんなことはない。選択肢はある程度漏れがなく出せるようにはなり評価基準をもとに優先順位の低い選択肢は落としていくものの、最後に残った二つ三つを決めかねて、経営者は悩む。万巻の書を読んでも「答え」は無い。最後は自分で肚をくくり決めるしかない。

そこでの拠り所になるのは企業理念であり、いかなる経営者や人物であるべきかという経営者自らの信念である。その信念を磨き上げるためには実務の荒海で揉まれつつ人間学を学ぶしかない。

人間学といえば、死後四半世紀を経過し今なお絶大な影響力を持つ安岡正篤師を抜いては語れない。師の本は難しいものが多いが、本書は各種講演をまとめた比較的読み易い類となる。入門書としても良い。

グロービスではまず「思考」を徹底的に学ぶが、安岡師にも以下「思考の三原則」というものがある。

  • 一、目先にとらわれないで、出来るだけ長い目で見ること
  • 二、物事の一面にとらわれないで、出来るだけ多面的に、出来得れば全面的に見ること
  • 三、何事によらず枝葉末節にとらわれず、根本的に考えること

クリティカルシンキング、いや経営学のエッセンスを抽出すれば、この三原則に収斂するのではないだろうか。約半世紀の時は経ても真実は変わらない。

また本書では「知識」に留まらず、事に当たってこれこそが本当である、こうなすべきという実行力を伴った「見識」「胆識」を修養の積み重ねで練り上げるべきとも説く。今目の前の壁の高さに途方に暮れているような方にこそ、是非じっくりと先達の声に耳を傾けて欲しい。

[新装版]運命を創る―人間学講話
著:安岡 正篤 発行日:2015/3/31 価格:1,870円 発行元:プレジデント社

人類が挑みつづけてきた「リスクテイク」に向き合う

推薦者:鷲巣 大輔(グロービス経営大学院 教員)

『リスク:神々への反逆』というタイトルを聞いて、一体何を連想するだろうか。多くの人は、リスクを取りたがる人たちを想像するかもしれない。そのような人たちは、覚悟を決め、胆力を持ち、常に積極的な姿勢を取っているというイメージだろう。

しかしながら、リスクテイクに必要なのは、単なる気持ちやメンタリティの問題ではなく、スキルなのだ。これを教えてくれるのが本書である。
本書の「はじめに」でも述べられているように、「将来に何が生起しうるかを定義し、代替案の中からある行為を選択しうる」力がリスクマネジメントの真髄である。そのため、リスクに恐怖を感じて、新しいことにチャレンジできない人たちでも、スキルを身につけることができれば、前進できる可能性がある。

リスクに立ち向かうことは、古代から人々の興味の対象であった。
かつては、「未来は神の思し召しであり、それには抗えない」と考えられていたのだ。しかし人々は、本書の原題である『AGAINST THE GODS』(神々に逆らう)通り、不確実な未来に立ち向かい、自分の味方にするために、多くの挑戦を繰り返してきた。ルネッサンス期から確率統計の発展、行動ファイナンス、そして現代に至るまで、人類は常にリスクに対する挑戦を続けてきた。そして本書は、その壮大な挑戦の歴史書でもある。

本書は、リスクマネジメントのHOW TO本ではない。しかし、ゴールデンウィークのように、ゆっくりとした時間を利用して、リスクとは何か、その本質に向き合ってみることをお勧めする。リスクに対する理解を深めることができ、将来の可能性に対する洞察力を高めることにつながるからである。

リスク 上: 神々への反逆』『リスク 下: 神々への反逆
著:ピーター バーンスタイン 訳:青山 護 発行日:2001/8/1 価格:785円 発行元:日本経済新聞出版(上下巻共に)

体験設計の引き出しを増やそう!

推薦者:許勢 仁美(グロービス経営大学院 教員)

この本の特徴は、題名の通り「図鑑」であること。
人間中心設計専門家である著者が、これまでの「UXデザイン=体験設計」の伴走支援をもとに、体験を成功に導く22のエッセンスを、4つの系統「居心地系」「後押し系」「納得系」「参加系」に分類して、60の事例と共に解説している。

では、体験設計を謳う本書の体験はどうか?
さすが、4つの系統をカバーしながら、体験が設計されている。一部を紹介すると、

  1. 居心地系:ハードル下げ(体験エッセンス03)
    表紙にはイラストが多用され、手に取るハードル、読み始めるハードルが下げられている。 本文はイラストに加え、色使いも系統だっており、理解のハードルが下げられている。
  2. 後押し系:使う分だけ(体験エッセンス11)
    「導入編」「図鑑編」「活用編」の3部構成で、どこから読んでも、コンパクトに必要な分だけの情報を得ることができる。 もうちょっと深めたいという方向けには、巻末にブックガイドも備えている。
  3. 納得系:診断(体験エッセンス15)
    読み手の知識・理解度に合わせて、読み進め方を提案している。
  4. 参加系:ナラティブ(体験エッセンス21)
    一見すると体験エッセンスの数が22と多い印象だが、何かしら読み手の経験とつながるところがあり、つい自分の言葉で語り紹介したくなる。

「UXって何?」という方から「UX改善の繰り返しに疲れたー」という方にまでお勧めしたい、デザイン思考の実践にも役立つ一冊。ぜひ本書を手に取って、自分の言葉でUXデザインを語ってみてほしい

はじめてのUXデザイン図鑑
著:荻原 昂彦 発行日:2023/3/27 価格:2,640円 発行元:BOW&PARTNERS 発売元:中央経済グループパブリッシング

気候危機に対し、自分にもできることを発見する

推薦者:難波 美帆(グロービス経営大学院 教員)

気候危機に関して最もよく聞かれる質問は、「何をすべきか、どこから始めるべきか、そしてどうすれば変化を生み出せるか」だと本書に書かれている。その通りだ。巷では気候変動やSDGsについて最も意識が高いのはZ世代だと言われるが、子育て真っ最中の30代、40代、そして企業勤めを終える世代からも、「なにかしたいが、どうすればいいか」という相談を、経営大学院の教員として、よく受ける。あなたもひょっとしたら、「なにか自分にもできることをしなければ」と頭の片隅にあるのではないだろうか。

本書では、気候危機を一世代のうちに終わらせる、つまり、2050年までに温室効果ガスの排出量を二酸化過炭素換算で1600ギガトン以上も減らすための人類の行動が示されている。海、森、都市、人々、エネルギーなど、10のテーマのそれぞれにさらに具体的な観点があり、企業であれ個人であれ社会人であれば、これら観点の少なくとも一つには、なんらかの関わりが持てるだろう。

最終章「行動+つながり」には、個人から企業、コミュニティから国家まであらゆるレベルの活動に適用できる12のチェックリストが示されている。この中には、「3. 人間のウェルビーイングを高めるのか、それとも損なうものなのか?」、「4. 病気を防ぐのか、それとも病気から利益を得るのか?」「5. 生計手段を生み出すのか、それともなくすのか?」など、気候変動に直接は関係がなさそうな項目もある。
これは「人間のウェルビーイングを支えるために作られた経済構造が、・・・中略・・・地球温暖化をもたらしているとの著者の考えに基づいているからだ。「あらゆる行動や決定の中心に生命を据え」、人間だけでなく、生態系の全ての生命に対しても公平にケア、注意、優しさを向けること。これらに幅広い参加が得られれば、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の設定した目標は達成できるという。

全部を知らなくても取り組まなくてもいい、見出しの中のどこか、関心が持てる項目を見つけ、気候変動から地球と我々を救うだろう「再生(リジェネレーション)」について考えてみよう。

Regeneration リジェネレーション 再生 気候危機を今の世代で終わらせる
著:ポール・ホーケン 訳:江守 正多、五頭 美知 発行日:2022/3/19 価格:3,080円 発行元:山と渓谷社

嶋田 毅

グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長院

小野 学

グロービス経営大学院 教員(グロービス経営大学院2007期生/東京校)、有限会社アンシャンテ 代表取締役、一燈館合氣道場 道場主 兼 館長

鷲巣 大輔

グロービス経営大学院 教員

許勢 仁美

グロービス経営大学院 教員

難波 美帆

グロービス経営大学院 教員