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投稿日:2023年03月06日

投稿日:2023年03月06日

メンバーの意欲と能力をどう高めるか――矛盾に向き合うリーダーシップ 第2回:前編

池田 章人
グロービス コーポレート エデュケーション マネージャー

みなさんは自身の組織メンバーの意欲と能力を高めることができていますか?

矛盾に向き合うリーダーシップ第1回でも述べたように、多くの企業へのコンサルティングに携わってきた経験から、成長する組織の重要要素は次の5つのポイントであると実感しています。

  1. 競争優位性のある戦略があり組織に浸透している
  2. 組織メンバー個々の能力と意欲が高い
  3. 組織内相互の関係性が良好である
  4. 素早く環境変化をとらえ対応できている(定期的な改善行動がとれている)
  5. 今の成長の柱だけでなく、次の成長の柱を仕込み続けている

第2回では要素2である、育成において「組織メンバー個々の能力と意欲が高い状態」をミドルがどうつくり上げていくか、そこに潜む矛盾とは何で、どう乗り越えていくのかを考えていきたいと思います。

能力と意欲を高めるには上司の支援が重要

有名な「ロミンガーの調査」では、人が育つ要素の7割は仕事の経験2割が上司などの薫陶1割がOFFJTなどの研修と言われています。つまり、育成には仕事の機会を多く与える事が最も重要なのです。

一方で、日本の多くの企業では(一部の成長産業を除いて)部下に多くの機会を与えることは容易ではありません。そんな貴重な機会を最大限活用するには、やはり適切な支援が必要です。ロミンガーの法則からは、一見上司による関わりの効果は薄いようにも思えますが、上司による支援はメンバーの成長に強い影響を与えるのです。

では、ここからはリーダーの役割として、具体的に機会を活かし人を育てる方法、すなわちメンバーの能力と意欲をそれぞれどう高めていくかを考えていきたいと思います。

能力を高めるために必要なこと

メンバーの能力を高めるには、メンバー本人が自分の現状の能力を超えた仕事に取り組み、成果を出すことが必要です。では、このような場面における上司の適切な支援とは、どのような行動なのでしょうか。

目標設定

まず能力を高める支援で一番大切なことは「目標設定」です。なぜならば人が仕事を行う上では、その仕事へ取り組む意義がわかること、そしてやるべきことの大きな方向性が理解できていることが大切だからです。例えば、本人の3年先のキャリアイメージを聴きつつ、会社の求める方向性を踏まえて目標設定を行うなどすると、意義ややるべきことが腹落ちしやすいでしょう。
裏を返すと、意義がわからず、方向性も見えない中で仕事へ取り組み始めると、失敗確率が高まり成果が出ません。

計画立案

次に大切な支援は「計画立案」です。自身の能力を超えた仕事であればこそ、メンバー本人は何をどのように進めるべきか、また誰を巻き込むべきかがわかりません。メンバーに任せる際に「目標設定」で大きな方向性を示すだけではなく、実際に進んでいくための支援を行うことが大切になります。

上司として中でも重要になるのは、メンバー本人が見えていないリスクの想定対処法へのアドバイス、さらにネットワークを広げて巻き込む相手を紹介することなどが挙げられるでしょう。

実行フォロー

続いて大切な支援は「実行段階でのフォローアップ」です。一般的には「計画立案」の後、成果が出るまでには長い期間が必要ですが、この期間にフォローアップを行うことで、成果創出の確率を高めることができるようになります。

ただし、「計画立案」や「実行段階でのフォローアップ」においては上司がすべて教えるのではなく、本人の能力を見極め、ヒントを出しつつ支援することが重要となります。自分で考え、自分で動くこと、その上で成果にたどり着く経験を支援していくことが望ましいのです。

メンバーの意欲を高めるために必要なこと

次に、メンバーの意欲を高めるポイントに移りたいと思います。意欲をモチベーションと言い換えると、そのヒントが見えてきます。

モチベーションを高めるためには大きく2つのポイントがあります。1つは対象のモチベーションの「内容・性質」に留意し働きかけること。もう1つは「順番・プロセス」に留意し働きかけることです。

モチベーションの内容・性質を考える

まず「内容・性質」について考えていきましょう。

モチベーションの「内容・性質」に関する理論は様々ありますが代表的な例としてハーズバーグの動機付け・衛生理論があります。

この理論によれば、モチベーションへの働きかけはマイナスを0に戻すものと、0をプラスにするものがあり、それぞれ異なります。

前者の「マイナスを0に戻す」ためには、厳しすぎる指導をやめることや悪条件の労働環境を改善することが挙げられ、後者の「0をプラスにするもの」としては承認することや本人が望む仕事を付与すること、責任範囲を拡大させることが挙げられます。

はたらきかけの順番・プロセスを考える

次に「順番・プロセス」について考えていきます。

モチベーションの「順番・プロセス」について考えるための参考として期待理論があります。

人間のモチベーションは、「努力が成果に結びつく期待」×「成果が報酬に結びつく期待」×「報酬が魅力的である期待」によって上がるという内容です。

ここから、モチベーション向上のためにどう働きかけるかというと、①まずは努力の結果、成果に結びつくであろう適切な支援を示しつつ、②成果が出た結果を報酬(評価)に結び付ける、そして③評価の結果、本人の望む魅力的な報酬を与えるという順番になります。

ここで「うちの会社はそんなに金銭的な報酬は与えられない」と考えるマネージャーも多いと思いますが、報酬は金銭的なものだけではありません。本人の望むこと、例えばやりたい仕事の付与であったり、一緒に働きたい人との協働の機会であったりと様々です。本人を理解し、望む報酬と紐づけてあげることが重要となります。


ここまで、メンバーの能力や意欲を高めるためには、上司による支援が重要であることを解説してきました。しかし実際にメンバー育成に取り組んでみると、様々な「矛盾」によって達成が阻まれることが大いにあります。どのような「矛盾」があり、それはどのように乗り越えればよいのでしょうか。

次回に続く

池田 章人

グロービス コーポレート エデュケーション マネージャー