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投稿日:2022年10月05日
投稿日:2022年10月05日
IFRS、統合報告書、ESG等をアップデートした「会計本」のロングセラー―『改訂4版グロービスMBAアカウンティング』
- 大島 一樹
- 書籍・GLOBIS知見録編集部 研究員
大企業からスタートアップに至るまで、マネジメントに携わるビジネスパーソンにとって、アカウンティングは切っても切れない関係にあります。部門の目標数値はどうやって決めるのか、経費をどれだけかけてよいか、そもそもウチの会社の業績は好調なのか不調なのか――こうした日々降りかかってくるイシューを理解し自分なりの判断を下すのに、会計方針や管理会計についての理解は欠かせません。
本書は初版1996年と、「グロービスMBAシリーズ」の中でもごく早いタイミングで刊行され、現在まで続くロングセラーとなっています。そして今般、改訂4版が発売となりました。
初版の制作に当たっては、「経営の視点から書かれた、財務会計と管理会計を網羅しているわかりやすいアカウンティングの教科書」を求める声に応えて企画が始まりました。初版から四半世紀が経ちましたが、この
- 経営の視点から
- 財務会計と管理会計を(バランスよく)網羅
- (会計の専門家以外の読者にとっても)わかりやすい
という本書の原点は、今でもユニークな差別化要因として生き続けていると感じます。
今回の改訂では、IFRS(国際財務報告基準)へのコンバージェンス(収斂)をはじめとする、近年の会計基準の改正点が反映されています。また、統合報告書、ESG、グローバル税務といった近年重視されてきている経営課題に関する解説も新たに書き下ろされました。前回版と比べると、管理会計よりは財務会計パートの方に改訂点が比較的多く見られます。やはりそれだけ、グローバル化が進展し財務報告の国際比較が当たり前になってきている、また投資家の視点がより重要度を増し、企業側がそれに応えるべく積極的な情報開示を求められるようになっているという、時代の潮流を痛感します。
一方で本書は、こうした環境変化に合わせてアカウンティングの新知識を単に「理解しましょう」というだけのスタンスではありません。あくまでも現実のビジネスシーンで遭遇しそうな状況の中で、どのようにして知識を「使っていけばよいか」を考えさせる仕掛けになっています。
グロービスMBAシリーズに共通する形式ですが、各章の頭に置かれたCASEの主人公を見てみましょう。
- スタートアップの創業メンバーとして会計業務未経験ながらCFOを務めることになった元IT企業の管理部員
- 個人的に中古車を買ったことをきっかけに、「適正な」資産価値の求め方を考えるようになった若手経理部員
- コロナ禍の大幅減収に何とか対処すべく各店舗の損益分岐点を見直すことになった外食チェーン企画マネジャー
- 中途入社した先が、毎期末に駆け込みで売上予算達成のためのテコ入れ策に忙しいことに、非効率を感じる営業担当者 等々
こうした立場の人たちに重ね合わせて、アカウンティングの知識を自分ごととしていかに活用していくか、考えながら読み進めて欲しいというメッセージが強く表れています。明日の経営を担うビジネスリーダーを志す方々に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
書籍:『[改訂4版]グロービスMBAアカウンティング』
著者:グロービス経営大学院 発行日:2022/9/27 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社
大島 一樹
書籍・GLOBIS知見録編集部 研究員