「X-tech同士が融合する社会へ ～FinTechとECが生み出す、新しい時代のモノとお金の流れ方～」 特別セミナーレポート

2020年5月、グロービス経営大学院は、参加者約1,650名にも及ぶ大規模な特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、ヤフー株式会社最高執行責任者（COO）の小澤隆生氏と、株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏。

ビジネスの世界は今、オフラインにテクノロジーを掛け合わせたX-techから、X-tech同士を掛け合わせた『X-techの融合』へと向かっている。この新しい潮流に、企業はどう対応し、新しい価値を生み出していけばいいのだろうか。

辻氏　「ビジネスのオンライン化が進めば、決済やファイナンスにも当然、FinTechサービスが入ってきます。このFinTechは、「安い」「早い」「うまい」が揃う牛丼店のようなもの。コストは圧倒的に安くなり、情報は瞬時に反映される。「うまい」は使いやすいと言い換えられます。全てがオンライン化されるわけではありませんが、オフラインとどう組み合わせ、活用するのか。ここは、これから面白くなる部分ですね」

小澤氏　「小売店や飲食店などリアルの店舗では、オンライン決済に留まらず、今後さらにデジタルツールの導入が加速していくと予想されます。たとえば、店舗にセンサーを設置し、混雑具合をデータとして可視化することができれば、「満席で入れなかった」という事態も解消されます。これまで当然のようにあった「不便」が、デジタルの力で解決できるようになっていく。このメリットを正しく理解し、デジタライゼーションに踏み切る覚悟をもてるかどうかが企業や飲食店にとって、今後を左右する大きなポイントとなってきます。」

コロナにより、マネジメントの在り方も急激に変化しつつある。両氏は、組織のミドル層に必要な心得について、実体験を交えながら以下のように語る。

辻氏　「外部環境変化に合わせて、プロダクトを素早く柔軟に変えられる人が結果を出しています。また、コロナは各企業の経営スピードを浮き彫りにしました。これだけ世の中が変わっているのに手を打たない会社は、今後どんな危機が訪れても変われないでしょう。そういう意味では、どういう会社と提携すれば良いのか、自分はこの会社にいて良いのかを図る指標を、コロナによって得られたのではないでしょうか」

小澤氏　「この状況下では、正常性バイアス（自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまうこと）を取り払い、強制的にでも変革を促すようなマネジメントをすべきです。ユーザーの新しいニーズを真正面から受け止め、中長期的な目線をもつ。その上で大胆な決断をできる人が、5年後10年後の企業や日本を大きく変えることでしょう」

「コロナ禍の今だからこそ、いろいろな気づきがある」と話す辻氏。「グロービスの学びをアウトプットしながらデジタライゼーションを推し進め、日本をもっと良い国にしましょう」と最後にメッセージを送った。

小澤氏も、参加者に熱く語りかける。

小澤氏「強烈な変化が起きていますが、行動することは誰からも強要されていません。すべて自分次第です。日本・社会・企業そして自分の人生。これらをより良くするために、後悔なく動ける人が一人でも増えることを願っています」

業界のトップをひた走る両氏から送られた数々のメッセージ。これらを受け止め、創造と変革を成し遂げようと行動を起こす人が増えることを期待したい。