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投稿日:2020年08月03日
投稿日:2020年08月03日
「社会を変えるビジネスを実装する志とスキルセット ~社会変革を進める新潮流の生み出しかた~」 特別セミナーレポート
- 米良 はるか氏
- READYFOR株式会社 代表取締役CEO
2020年6月、グロービス経営大学院は、参加者約1,600名の特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。
スピーカーは、READYFOR株式会社 代表取締役CEOの米良はるか氏。日本でいち早くクラウドファンディングサービスを開始した、今もっとも勢いに乗る起業家の一人だ。
必要とする人にお金が正しく届く社会へ
大学時代に「投げ銭」システムで約100万円を集め、資金不足だったパラリンピックのスキーチーム日本代表に寄付した経験をもつ米良氏。その後、アメリカ留学中にクラウドファンディングと出会い、帰国後の2011年にクラウドファンディングサービス『READYFOR』をスタートした。
「弊社のVisionは『誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる』、Missionは『想いの乗ったお金の流れを増やす』。資本主義の仕組みだけでは届かないところにお金を正しく届ける事業を展開しています」
(出所:READYFOR )
実現したいアイデアを持つ人が『READYFOR』にプロジェクトを掲載し、それに賛同した人が「購入型」(品物や権利を得られる)や「寄付型」(寄付控除を受けられる)でお金を提供する。これまでの支援総額は約120億円、掲載件数1.3万件。プロジェクトの目標金額達成率は世界平均30%に対し、75%という高さを誇る。
同社の特徴は、社会問題に挑む案件に強みを持つ点だ。認知症の方と実施した「注文をまちがえる料理店」プロジェクトをはじめ、最近のコロナ禍では「中止イベント支援プログラム」「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」などにも精力的に取り組んでいる。
想いを言語化し、共感の輪を広げる
「クラウドファンディングの中にもEコマース寄りのものと、自分たちの事業や活動のために資金調達いわゆるファンドレイジング寄りのものがあります。私たちは後者。活動への共感や応援を通じてお金を集めます。共感の輪を広げるには、活動の真ん中にいる人がその想いを言語化し、多くの人にお金をいただく重みを感じながらも、やり抜くパッションをもつことが重要。『READYFOR』は、お金を出した人だけが応援コメントを書き込める仕組みなので、ポジティブなコメントが集まり、一歩踏み出した人たちの挑戦を応援する場になっています」と米良氏。
米良氏はいわゆる学生起業家だった。肩書きも実績もない代わりに、過信もプライドもなかった。実現したいビジョンに向かってとにかく行動を続け、先輩起業家たちにも臆せず協力を仰いだ結果、多くの応援者と互いを補い合える多様性あるチームを得たという。
共感を集め、応援の声を糧にひた走る。
「クラウドファンディングを成功させる秘訣は、起業のそれと同じかもしれません」
29歳で癌が見つかり、7ヶ月間療養していた米良氏。その経験は、彼女の死生観を大きく変えた。
「自分の人生を評価できるのは自分だけ。私は社会課題をダイナミックに解決することに人生を懸けたい。そう考えるようになって、人に何を言われても気にならなくなった。前よりも素直になれました」
コロナ禍で価値が再認識されつつあるクラウドファンディング。同社も追い風に乗ってはいるが、先の見えない状況にストレスを感じる人も多いのではないかと米良氏は言う。
「世の中は『コロナと向き合え』と言いすぎる傾向にある。変わらなくては、と焦るほどに人は良い動きができなくなってしまうので、今はまずこの苦しい状況を『苦しい』と素直に受け止めるだけでいい。その上で、長期的に少しずつ向き合っていくことが大切だと思います」と、すべてのビジネスパーソンへメッセージを寄せた。
グロービス経営大学院では、READYFOR株式会社と業務提携し、在校生・卒業生を対象に、事業の資金調達とサポーター作りを支援する「グロービス経営大学院 クラウドファンディング Supported by READYFOR」を提供しています。
米良 はるか氏
READYFOR株式会社 代表取締役CEO
1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業居・大学院メディアデザイン研究科修士課程修了。大学院在学中にスタンフォード大学へ留学。帰国後、2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役CEOに就任。WorldEconomic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人史上最年少でスイスで行われたダボス会議に参加。2016年にはテレビ東京カンブリア宮殿に女性最年少経営者として出演。Forbes 30 Under 30、St.Gallen Symposium Leaders of Tomorrowなど国内外の数々の受賞経歴を持ち、現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。