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投稿日:2020年08月06日

投稿日:2020年08月06日

「テクノロジーが導く『世界の変革』~ビジネスとキャリアの新潮流と、国際情勢の変化とは~」 特別セミナーレポート

塩野 誠
経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター
JBIC IG Partners (国際協力銀行とIGPIの合弁会社)代表取締役 最高投資責任者
JB Nordic Ventures(フィンランド)取締役、NewsPicks取締役

2020年6月、グロービス経営大学院は、参加者約1,500名の特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクターの塩野誠氏。

危機的状況下における権威主義と民主主義

世界が新型コロナウイルスというグローバルリスクに直面する中、民主主義と権威主義との分断が起こりやすいと塩野氏。

「迅速な対応が求められる危機的状況下では、合議により物事を決定するのか、あるいは権威・権限をもつ個人や集団が独裁的に決断を下すのか、選択を迫られる場面が多くなります。独裁的なほうが素早く決断できるため機動力が高く、優位性が増す傾向があり魅力的にも見えます。国家や企業において、高い影響力をもつリーダーが独裁的に物事を推し進めるほうが機動力は高まり、危機対応ができますが、民主的な意思決定とのバランスが今後も論点になるでしょう」

リーダーに必要な2つの資質

コロナショックにより景気が後退している今、リーダーに必要な資質は「経済的弱者に対する眼差し」と「『明日は我が身』という想像力」の2つだと塩野氏は言う。

「景気後退時に真っ先にダメージを受けるのは経済的弱者。弱い人への配慮を怠ると、企業倫理から外れたり『ハラスメントだ』と言われたりする可能性が高くなります。また、世界的に人種やジェンダーの差別問題が取りざたされていますが、これらは想像力の問題。『明日は我が身』という想像力が欠けていると、炎上を引き起こしかねません」

オフラインとオンラインの融合

コロナ禍によるテクノロジーの進化は、住む場所や働き方、小売りや外食産業のビジネススタイルをも変え、オフラインとオンラインの垣根はなくなりつつある。しかし、オフラインで受け取る非言語の情報すべてを、オンラインで感じ取ることはむずかしい。オンラインコミュニケーションが主流となった組織やコミュニティにおいて、「帰属意識をどのように高めていくか考える必要がある」と塩野氏。

「とくに今年4月に新卒入社した社員の中には、まだほかの社員に直接会ったことがない人もたくさんいます。オフラインでの交流がないまま、オンライン環境に入ってしまった人たちを、どうケアしていくのかも今後大きな問題になってくるでしょう」

(出所:塩野誠氏)


終盤、塩野氏は参加者に向けて、以下2つのメッセージを送った。

「この状況(コロナ禍)を考え方や行動を変えるための理由にしましょう」

 「変わるときは軋轢を生み、経験したことのないストレスがかかっています。言葉はいつもより丁寧に使いましょう」

変化の激しい時代を生き抜くヒントが大いに詰まった本講演。参加者は、自らのキャリアやビジネスを考える上で多くの気づきを得られたことだろう。

塩野 誠

経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター
JBIC IG Partners (国際協力銀行とIGPIの合弁会社)代表取締役 最高投資責任者
JB Nordic Ventures(フィンランド)取締役、NewsPicks取締役

慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、ライブドア等を経て現職。国内外における企業や政府機関の戦略立案・実行やM&A、企業再生のアドバイザリーに従事。近年はDX戦略や事業開発のプロジェクトを多く手掛け、企業投資についても10年以上の経験を有す。内閣府デジタル市場競争会議WG委員。著書に『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか? 』『ポスト平成のキャリア戦略(共著)』等がある。フィンランド在住。