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投稿日:2020年07月10日
投稿日:2020年07月10日
「『感性思考』~デザイン×ビジネスを実践する新しい思考法とは~」 特別セミナーレポート
- 佐々木 康裕氏
- Takramディレクター&ビジネスデザイナー
2020年5月、グロービス経営大学院は、参加者約2,300名の特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。
スピーカーは、株式会社Takramのディレクター兼ビジネスデザイナーであり、今年4月に『感性思考 デザインスクールで学ぶMBAより論理思考より大切なスキル』を出版した佐々木康裕氏。
ビジネス創出に必要なのは、創造性より「感性思考」
商社マンだった佐々木氏が飛び込んだ世界的デザインスクール、イリノイ工科大学デザイン大学院では、「今は劇的な環境変化の時代にある」と度々教え込まれたという。
ニーズが多様化する現代を生きるビジネスパーソンに求められるのは、新規事業の創出。それは限られたエリートたちがもつような「センス」ではなく、「感性思考」を身につけることで誰もが実践可能だと佐々木氏は言う。
「これからの時代は、ほとんどのビジネスパーソンが新規事業をつくる体験をすることになるかもしれません。その際に重要なのが感性思考。たとえ創造性をもっていなくても、フレームワークや方法論を具備することで、創造性のある人と同じアウトプットができるようになります」
VUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)の時代に新規事業を創出するために必要な2つのアプローチを、大学院で学んだという佐々木氏。1つ目は「超・多様性によるアプローチ」、2つ目は「創造性非依存の再現性あるアプローチ」である。
「1つ目の『多様性』は、人材やスキルの多様性。1つの思考法に偏らず、デザイン思考や論理思考、その他の手法を組み合わせながら新しい思考法を確立していく必要があるということ。2つ目は、創造性やインスピレーションに依存せず、高い再現可能性をもった規律的なプロセスで新規事業を創出することの重要性を意味しています」
ビジネスの現場からデザインの世界へと飛び込んだ佐々木氏は、大学院入学当初の感覚を「足場がないまま水深5mの海に放り投げられた感じ」と表現した。それでも沈まずに済んだのは、多数のフレームワークや方法論が存在したからだという。
「フレームワークがあると、算数や英単語を学ぶのと同じような学び方で、デザイナーと比べて遜色ないアウトプットができるようになります。失敗の確率を下げ、再現性を高めるためにも、既存の優れたフレームワークは使うべき。また留学して知ったのが、フレームワークは自分でもつくれるということ。自分の思考プロセスを客観視してフレームワーク化するのもおすすめです」
ビジネスにデザイン思考を取り入れる際には、対象の物事や人物をよく「観察」することが重要と言われるが、そのコツについては「対象物がどんなウェブ(網)に組み込まれているか。それを取り囲む環境、文化的背景、社会的常識などを含めて観察することが大切」と解説した。
今や自動車メーカーの競合は、グーグルやアップル。そんな令和のビジネスを「異種混合格闘技」になぞらえる佐々木氏は、「多様な思考体系を駆使し、多様な人をチームに加えながらアプローチしていく必要がある」と強調した。
VUCA時代を揺り動かす革新的な事業は、創造性に頼らない「感性思考」により生まれる。ビジネス出身の佐々木氏だからこそ語れる新しい思考法の詳細は、著書『感性思考 デザインスクールで学ぶMBAより論理思考より大切なスキル』で確認してほしい。
佐々木 康裕氏
Takramディレクター&ビジネスデザイナー
早稲田大学政治経済学部卒業。イリノイ工科大学Institute of Design修士課程(Master of Design Method)修了。グロービス経営大学院客員講師(デザイン経営)。クリエイティブとビジネスを越境するビジネスデザイナー。デザインリサーチから、プロダクト・事業コンセプト立案、エクスペリエンス設計、ビジネスモデル設計、ローンチ・グロース戦略立案等を得意とする。複数の事業立ち上げ経験を持ち、ファイナンスにも精通。Takramでは、家電、自動車、運輸、通信、食品、医療、素材など幅広い業界で企業のイノベーション支援を手がける。講演やワークショップ、Webメディアへの執筆なども多数。ダイヤモンド社と共同で、ビジネスリサーチとデザインリサーチを統合した”Creative Knowing”を研修プログラムとして実施。大手家電メーカーやシンクタンクの戦略アドバイザー,、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンターも務める。 Takram参画以前は、総合商社でベンチャー企業との事業立ち上げ等を担当。経済産業省では、Big DateやIoT等に関するイノベーション政策の立案を担当。著書に『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(NewsPicksパブリッシング)がある。