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投稿日:2018年11月16日
投稿日:2018年11月16日
テクノベート時代のメディア・コンテンツ
モデレーター
- 瀬尾傑氏
- 株式会社講談社 コミュニケーション事業第一部部長
パネリスト
- 樹林伸氏
- 作家
- 久志尚太郎氏
- 株式会社TABI LABO 代表取締役
- 末松(神原)弥奈子
- 株式会社ジャパンタイムズ 代表取締役会長
※あすか会議とは
経営者、政治家、学者、メディアなどのトップリーダーと、グロービスのMBAプログラムの学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い開催する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第14回目となる2018年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,400名が京都に集い開催しました。
テクノベートによるメディア業界の変革
電子書籍やモバイル動画、ネットメディアなどメディアやコンテンツ環境が大きく変化している近年。テクノベートによるメディア業界の変革に取り組むには、どのような視点と工夫が必要なのだろうか。
作家の樹林伸氏は、原作者としてマンガや出版、テレビなど幅広い業界に関わる経験から、出版とテクノロジーの現状と未来を語った。
「マンガや小説では旧作の再版、続編の販売が増えている。それは年配層にも電子コンテンツが定着し、アプローチできる可能性が広がっているということだ。今、中国のテレビ局で私の作品を扱った番組企画が進行中だが、こうした中国やアジア圏の文化度やコンテンツ制作力の向上は技術の進歩と融合し、マンガのグローバル化を実現させるだろう。近いうちに定着するAI翻訳も需要と読者層の拡大を後押しするはずだ」
一方、老舗メディア「ジャパンタイムズ」紙の変革を進めるジャパンタイムズ会長の末松(神原)弥奈子氏は、
「これまではクオリティ・ペーパー(高級紙)として読者との関係を第一に考えて来たが、今後は国内での認知向上も進めたい。SNSを活用した情報発信を積極的に行っている」
「紙とオンラインではできることが違う。オンラインはアーカイブなので、広告も純粋な広告ではなくECやコンテンツに結びつける形にしていきたい。また、国内の優良コンテンツで英語ページがない場合、プロ翻訳チームとWebサイト制作チームで記事化し、ジャパンタイムズ上に掲載するサービスも始めている」と今後の紙面とデジタルの有り方を語った。
5G未来のメディアと未来のビジネス動向
一方、4G時代のスマホ向けメディアの代表者として、通信環境やデバイスなどの変化とコンテンツの関係を予測したのがTABILABO代表の久志尚太郎氏だ。
「3Gから4Gに変わって通信の幅が広がり、扱えるコンテンツが通話やメールから映画見放題のNetflixや音楽聴き放題のSpotifyへと変わったように、2020年に5Gが始まればまったく違う内容になるだろう。わかりやすく言えば、ドローンや自動運転、ロボットの遠隔操作や8K映像のようなものだ。コンテンツ品質やデータ量のリッチ化はもちろんだが、IoTに見られるように、あらゆるものがインターネットと繋がり、境界線がなくなってくることが大きい。未来のメディアビジネスは、この点を意識することが必須となるだろう。そこで我々は、『ムーブメントを起こす』存在になるべく、スマホコンテンツ制作会社とスマホ向けPR企画制作会社の運営を始めた。広告業界にも進出している」
TABILABOはスマホにおける新たなインターネット広告モデル創出にも成功している。
「Webメディアはデータを元に記事や広告を制作できる点が強み。データを活かしたユーザーコミュニケーションによって、例えば、イベントや店頭のポップと連動したキャンペーンなど、新たなビジネスモデルが可能になった。アメリカでも同じようなビジネスモデルの再発明が起こっている。ニューヨークタイムズやワシントンポストのデジタル版など、スマホによるユーザーとのコミュニケーションによって、今までは大手代理店だけが担っていた数億、数千万円規模のキャンペーンを、自分達で企画や制作、流通まで行うようになってきている。
このような大きな変化をもたらしたのがテクノベート。テクノベートの本質は“境界線を越える”ことだと僕は捉えている」
可能性を秘めたメディア・コンテンツ
小さなスタートアップが、業界の常識を変えていく現代。久志氏の言葉はまさにテクノベートの可能性を感じさせてくれる。その他、「マンガを用いた表現」や「AIスピーカー」と「音声コンテンツ」の展開など、ビジネスの可能性を秘めた身近なキーワードや話題も飛び出した。時代のニーズをどう捉え、最新技術をどう応用すればビジネスは輝くのか?新たな時代を創るリーダーになるためには、常にテクノロジーの動向に高い感度を持ち、受け入れられるような心づもりを持っているべきだろう。
編集後記
登壇者による講演またはパネルティスカッション形式でのセッションが終了後、夕食会で参加者同士での交流を楽しんだ後、「ナイトセッション」が開催されました。
ナイトセッションとは、各界のリーダーや著名人、講師たちとインフォーマルな雰囲気の中、少人数でテーブルを囲み、議論し語り合える時間です。普段の講演会やクラス等では知ることができない、登壇者の今の関心や熱い想い、これから成し遂げようとしている事など、この場でしか聞くことができない話をしていただきました。
当日の様子を写真で紹介いたしますので、ぜひご覧ください!
「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。
モデレーター
瀬尾傑氏
株式会社講談社 コミュニケーション事業第一部部長
パネリスト
樹林伸氏
作家
久志尚太郎氏
株式会社TABI LABO 代表取締役
末松(神原)弥奈子
株式会社ジャパンタイムズ 代表取締役会長
(※肩書は登壇時のものになります。)