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クラブメンバー6名の変革リアルケースに触れる! 変革チャレンジ2019 ――グロービス公認クラブ「変革クラブ」 イベントレポート(2)

2020年04月14日

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クラブ活動 グロービス変革クラブ 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識をもつ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。


前回に続き、先日行われたグロービス公認クラブ活動「変革クラブ」が主催するイベント「変革チャレンジ2019」の内容をお届けします。

事例3. ショートステイで虐待の連鎖を切る「つながろプロジェクト」

■竹歳彩氏(2016期)

在学中に仲間とともに一般社団法人RAC(ラック)を立ち上げ、代表理事を務めている竹歳氏。RACは、家族を頼れない子どもたちを地域で預かる「短期地域里親」の普及活動を行っている団体。2018年に日経ソーシャルビジネスコンテストで優秀賞も受賞している。


東京大学大学院 公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野の客員研究員であり、歯科医師であり、2児の母でもある竹歳氏がこの事業に取り組んでいるのはなぜか。きっかけは20歳のときに「親を頼れない子どもの存在」を知ったことだったという。

「その頃、私は歯学部にいて、周囲も恵まれた環境で育った人ばかり。困ったことがあれば親やお金が解決してくれました。でもそうではない子どもたちがたくさんいることを知りショックを受け、医療の道でやりたい仕事をしながら、そうした子どもたちを支援する方法がないか考えるようになりました。そこで着目したのが『里親制度』です。里親制度は今後、ソーシャルビジネスにも発展する可能性があると考え、私もいつか里親関連事業を通じて社会起業家になりたいと考えていました」


家庭の事情から保護的支援を必要とする要保護児童数は、4万5,000人もいると言われている。こうした子どもたちを家庭に代わって公的に養育する仕組みを「社会的養護」と呼び、いわゆる里親制度もその一種だが、根本的に必要なのは、こうした支援を必要となる子どもたちを生まない仕組みづくりやアフターケアまで行う「社会的養育」。2017年に厚生労働省から「新しい社会的養育ビジョン」が発表されたことが後押しとなり、竹歳氏らは本格的に活動をスタートした。


現在、子どもの保護理由の約4割は親からの虐待。次いで親の精神疾患となっている。「これは短期間の保護だけでは解決しません。地域で親子に関わっていく仕組みが必要です」と竹歳氏は声高に語る。地域に里親がいれば、子どもたちは施設に行くことなく、同じ地域で育ち同じ学校に通い続けることができる。


戸籍上も親子関係になる「特別養子縁組」という制度もあるが、これには不妊治療後の人たちが多く登録しており、生後間もない赤ちゃんの場合は、子ども1人に対して500人以上が手を挙げるような状況だ。一方で「養育里親」は月13万円のサポートが受け取れ、短期預りも可能であるにもかかわらず、手を上げて受け入れる家庭は少ない。里親登録をしている家庭は1万世帯しかおらず、実際に制度を利用しているのは3,000世帯にとどまっている。

「子どもの虐待による『社会的コスト』のお話をします。児童虐待にかかる直接費用(児童相談所や市町村の予算、児童養護施設などの社会的養護の費用)は0.1兆円ですが、虐待が長期化した場合は間接費用(死亡、障害、医療、生産性損失、離婚、犯罪、生活保護)として1.5兆円(平成24年調査)かかります。子ども時代から早期に支援することで、私たちの税金もより効果的に使われるのです。この問題はみなさんも深く関係していることを知っていただけたらと思っています」


RACが取り組んでいる「近所deすごし隊」は、RAC登録者が子どもを週末に30分から預かるホームステイ事業。登録者は最低限の研修を受けたあと、子どもとともに経験値を積んでいく。登録者は、里親になるのは難しいが実子と一緒に預かることならできると考える、子どもをもつ時短勤務中の30代が多い。そうした人たちと子どもをマッチングさせる仕組みを独自に構築することで、「子どもの公的な家出場所」「親が息抜きのできる預け先」をつくり、問題が大きくなる前に地域で支え合う関係をつくることが目的だ。


夫の転勤でLA移住が決まっており、日本での直接的な活動が難しくなるという竹歳氏。「マッチングを増やすには、同じ地域で預かる側・預ける側の登録を増やすことが不可欠です。活動のサポートやシェアなど、RACを応援してくださる方をお待ちしています」

■コメンテーターによるコメント

<唐澤>

事業の背景や課題の捉え方が素晴らしい。こうした事業は、自ら社会に働きかけていくしかないが、スピード感も重要になる。オピニオンリーダーなどを巻き込みながら、大きな動きにしていったほうがスケールするのではないか。


<中川>

社会の抱える課題に立ち向かっている様子に胸が熱くなった。こうした取り組みは全国一斉に進めるより、関心をもつ行政区のトップが必ずいると思うので、あたりをつけながら広げていくのもいいと思う。


<廣瀬>

LAに行ってもぜひ長期的に続けてほしい。持続性のないものにお金は集まらない。また、世の中を説得するための技法として、社会的コストがかかる=ホラーストーリーを使っているが、夢のあるサクセスストリーを語ってそこに共感を得てもらいたい。

事例4. 創業110周年企業の組織変革と、メディアの総合格闘技化

■碓氷早矢手氏(2010期)

創業110周年を迎えた講談社に勤める碓氷氏。『FRaU』『ミモレ』『ViVi』『with』など女性メディアのブランドマネジメントを手がけており、グロービス公認クラブである「グロービス・メディア・アンド・コンテンツビジネス・クラブ(GMCC)」の代表幹事も務める。


碓氷氏が挑む変革は、「デジタル化」「海外展開」による変革を通じて、女性メディアビジネスのROIを高めること。そのためには、アナログからデジタルへの総合格闘技化(Web、アプリ、SNS、イベント、ユーザー課金など)をはじめ、縦割り組織から意思決定と行動の早い組織へ、サラリーマン意識から経営者意識へと組織変革を図っていく必要がある。

その上で気をつけていることとして3点を挙げた碓氷氏。「1つ目は、多くの人を巻き込むこと。2つ目は、『変革』『改革』といった言葉を使わないこと。そうした言葉にアレルギーをもつ人もいる。以前、経営企画にいた頃に反感を持たれた経験もあり、社内がそういう状態になってしまうと変革は進まないからです。そして3つ目は、大きな声を出すこと。たとえ正しい道筋をつくれたとしても、小さな声で発信するだけではダメ。大きな声で繰り返し言うことで周囲に伝わり、フィードバックももらえるので改善にもつなげられます。」


碓氷氏がグロービスに入学したのは、実務だけでは学べないアカウンティングやファイナンスなど、変革に必要な要素を習得したいという想いから。また、その頃に病気を患って半年休職し、退院後に時間が空いたこともきっかけのひとつだったという。自身が楽しいからという動機のほかに、会社に恩返ししたい気持ちや、世の中に貢献したい気持ちが芽生えたのは、病気という試練を乗り越えたからこそ、と振り返る。


「今、大切にしたいのは『ONE TEAM』というキーワード。会社のメンバーはもちろん、社外の人たちも含めて変革を成し遂げていきたい。今日ここに集まっているグロービスの学生のみなさんも同志であり戦友。このあとの懇親会でもみなさんと交流して『ONE TEAM』を大きくしていけたらと思っています」

■コメンテーターによるコメント

<唐澤>

卒業生が、卒業から数年経った今、感じていることを話してくれるのはありがたい。また、「『変革』という言葉を使わない」という話は肝だと感じた。トップに近い立場の人が変革を言い出すと社内に怖がられがち。物事を大きく動かすときには、「私はみんなの仲間」「みんなの声を届けるために私がいる」ということをきちんと伝えていくことが大事。


<中川>

出版社は厳しい業界だと思う。私も百貨店なので近しいものがある。その中でもワクワクする、ポジティブに感じられるようなメッセージを社内に発信しているのだろうと感じた。


<廣瀬>

アプローチは素晴らしいが、具体的にどんな変革に取り組んでいるのかを聞きたかった。同業の経営者から相談を受けているが、ものすごく悩んでいて現状に危機感をもっている。応援しているので、さらに積極的に取り組んでほしい。

事例5. ヨソモノ×実行力で戦った、チェンジエージェント100日プラン

■三嶋春菜氏(2015期)

アドビシステムズのデジタル戦略コンサルタントとして、クライアント企業のチェンジマネジメントを担当する三嶋氏。Webサイトやクリエイティブをつくる上流〜下流の全ツールを所有している同社では、「Changing the World Through Digital Experiences(世界を変えるデジタル体験)」をビジョンに掲げ、クライアントのデジタル戦略をコンサルティングしている。


発表されたのは、三嶋氏がコンサルタントとして入った、クライアント企業A社での変革事例。A社が提供する顧客体験強化のための土台づくりがミッションだったが、A社の第一印象は「社内のコミュニケーションができていない」だった。フロアは静かで(=コミュニケーションがない?)、全体ミーティングがなく(=部署間・社員間の相互理解がない?)、データで語れる人間がわずかしかいなかった(=企画の適切な評価ができないため組織が疲弊している?)という。


「統一された顧客体験を妨げている最大の原因は、企業のサイロ化です。重要なのは、『個別最適』から『全体最適』へ、『コラボレーション不足』から『統合マーケティング』へ、『サイロ化』から『部署を超えた共創』へと変革すること」と三嶋氏。


仮定した課題を解決するために、「同じ想いをもつ仲間をつくる」「成功できると信じ合う」「成功を目指して協業する」の3ステップを掲げ、「Small start & Quick winをクライアントとのチームで100日以内に取りに行く」という変革プランを立案した。

企業内でどのような立ち位置をとるかは、外部コンサルタントが頭を悩ませる問題のひとつ。三嶋氏が選んだのは、「その会社の社員であるという想いをもって全力で取り組む」という道。元気にあいさつする、社員を必ず名前で呼ぶ、小さなことでも褒める、などのアクションを毎日徹底したという。


最初の1ヶ月で実践したのは、「観察/仮説出し」。情報を豊富にもつ女子社員たちと飲みにいき、情報を引き出した。2ヶ月目は「信頼を得る/仲間になる」。経営陣のお祝い事に際し贈るメッセージ映像を、社内の人たちを巻き込んで制作した。3ヶ月目は「協業を提案する/巻き込む」。映像制作に協力してもらったことで生まれた社員たちの一体感を活かし、顧客体験を強化する企画のブレストを実施。そして、マーケティング・商品開発・店舗開発を巻き込んだ部内初のボトムアップ企画の誕生を支援し、世の中に発信した。


企画は見事成功し、その成果が認められてマネジメント職へ昇格した社員や、自分のチームをもつことになった社員もいる。社内のコミュニケーション量は増え、社員満足度もアップしたという。


3ヶ月でこのプランを実行できたKSF(キー・サクセス・ファクター)として、三嶋氏は3点を挙げた。「権力ややる気の大小で社員をマッピングし、実行に必要なキーパーソンをおさえたこと。その人と念入りにコミュニケーションをとったこと。そして、ポジティブな姿勢でワクワク感を演出し、巻き込んでいったこと。この3点を徹底することでキーパーソンが成長し、自ら動くようになります」


三嶋氏の今後の目標は、「クライアントの統合マーケティングを実現することで、エンドユーザーの利便性を高めること」。近年はカスタマーファーストが叫ばれているものの、結局は自社ファーストの戦略になりがちなため、顧客の行動を定性・定量で分析し、顧客が笑顔になるような消費活動を実現したいと語った。

■コメンテーターによるコメント

<唐澤>

三嶋さんはもともと変革クラブの代表。「がんばっているな」と嬉しい思いで聞いていた。5つあったプレゼンの中で、もっとも具体的なアウトプットと成果を知れたプレゼンだったと思う。3ヶ月というスピード感をみなさんも目指して実践してほしい。


<中川>

裏にはロジカルで優れた戦略ストーリーがありつつ、表では汗をかいて一生懸命取り組んでいる。コンサルタントがこういう姿勢で来てくれたら、社内の人たちも変わってくれるのではないかと感じた。


<廣瀬>

三嶋さんの笑顔は、本気で取り組んでいるからこそ。明るくてつねに笑顔、その裏にずる賢さをもつ。リーダーシップとはこういうものだとあらためて感じた。アドビシステムズは、理念からスタートしてかっ飛ばしていくおもしろい会社。今後も研鑽を続けてがんばってほしい。

コメンテーターによる総評

最後に本日の総評として、コメンテーター3名からメッセージが贈られた。


廣瀬は、変革にあたってのアドバイスを3点寄せた。「1つ目は『慌てるのはやめよう』。経営はマラソン。私もMBAを取得してから3年くらいは、学んだことをどう使えばいいかわかりませんでしたが、徐々に進化していく。焦らずに粘り強くいこう。2つ目は『本質を大事にしよう』。自分の会社をどうしたいか、心から語れるものがあるかが重要です。3つ目は『現場を大事にしよう』。これはグロービスでもよく言っていますが、現場の理解で会社は変わります。今日は全員がその点を大切にしていてとても心強かった」

中川氏は、プレゼンを通じて感じたことを3点挙げた。「1つ目は、圧倒的な覚悟と自分ごとにする大切さ。2つ目は、挫折をしても諦めず、学びを得て行動することの大切さ。3つ目は、綿密なシナリオを立てつつ、並行して一歩を踏み出すというスピード感。それが変革の原動力になると感じました。今後環境の変化や挫折がもしあったとしても、しなやかな強さやレジリエンスを持ち、立ち直ってほしいと思います」

そして唐澤氏は、変革クラブの創設者という立場からアドバイスを3点寄せた。「1つ目は、在校生や卒業生のリアルストーリーから刺激を得て、早期に変革を実践してほしいということ。2つ目は、この場でなら話せることも多いと思うので、悩んだときは相談してほしいということ。3つ目は、もっと発信すべきだということ。みなさん素晴らしい活動をされていますが、今日はじめて聴いた話も多かったので、もっと自信を持って周囲に発信してほしいと思います」

グロービスの学生は7〜8割が「変革」系人材にもかかわらず、目立つのは「創造」系人材。なぜなら、変革の話をするには自社の弱みや自分自身の苦しみを開示しなければならず、外では大々的に話しづらい傾向にあるからだ。「でもそれでは変革は進まない。つらいときこそ、変革クラブというコミュニティをぜひ活かしてほしい」と、唐澤氏は総評を締めくくった。

グロービス変革クラブとは

組織や企業、業界、社会の「変革」を成し遂げる人材の輩出を目指すクラブ。在校生・卒業生約2,100名(2020年3月時点)が在籍し、変革コミットメントシートの作成やワークショップ、分科会などの活動を通して「一人ひとりが変革に強いコミットメントを持ち、自身の変革プランを磨き上げる」場を提供しています。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。


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