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AIとデータが変えるビジネスと仕事~AI・データビジネスの最前線~

2020年01月29日

  • あすか会議
  • テクノベート
  • 創造
  • 変革
  • 最先端

モデレーター

鈴木健一 グロービスAI経営教育研究所所長 / グロービス経営大学院教員

パネリスト

草野隆史氏 株式会社ブレインパッド 代表取締役社長
嶋田光敏氏 BizteX株式会社代表取締役 Founder / CEO
武永修一氏 株式会社オークファン 代表取締役社長

※あすか会議とは

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第15回目となる2019年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,500名が浜松に集い開催しました。

進化するAIの可能性

「ディープラーニング」や「機械学習」を起爆剤としAIが急速に発達し、社会に大きな影響を与えている今日――遡ること2000年代、コンピューターの小型化・性能向上に加えインターネットが一気に普及。その後、クラウドサービスの拡大により膨大なデータ管理が容易となった頃から第三次AIブームが沸き起こった。


今後日本は、少子高齢化によって労働人口が減少に対し生産性向上のための手段としてAIがより注目されるようになっている。一方で 、AI によって仕事が奪われてしまうのではないかという議論も多い。そんな中、AI最前線をいくトップランナーたちは、どんな未来を予測しているのだろうか。

モデレーターのグロービスAI経営教育研究所の所長である鈴木健一はパネリストらにどのように時代の変化を捉えているかを問いかけた。


データ活用により企業の経営改善につながるコンサルティングや分析を行う株式会社ブレインパッド代表取締役社長の草野隆史氏が、コンピューターの役割の変化をこう語る。


「コンピューターが物を認識するだけだった時代から、例えば、大量の人間の顔を学習し、実際は存在しない顔写真を作ったりするような、コンピューターが物を作る“生成”の時代になった。最近は広告を自動生成するサービスもあるが、まだ実験レベル。実際に使えるようになるのがいつなのかを見極めようとしている」

グロービス経営大学院の卒業生であり、RPAクラウド事業を展開しているBizteX株式会社代表取締役Founder兼CEOの嶋田光敏氏は、前社での経験を踏まえてこう述べた。


「前に勤めていたソフトバンクでは、『時代の波を待つのではなく、先を読んで仕掛けろ』と教えられた。自分たちの事業領域もこれからどこが伸びていくのかを見極めて展開している。日本で先端的な事業や時代の潮流がサマリーで見られるのはどこかと聞かれれば、私の中ではソフトバンクのIRだと思っている。やはり孫さんが世の中の一歩先を読んで投資して事業を作ってきているので、IRを見て参考にしています」

膨大な取引データから価格を比較できるサービスを展開し、2013年に上場した株式会社オークファン代表取締役社長の武永修一氏は、情報過多の社会においてデータそのものの価値を見出しにくくなったと自社の変化を交えて語った。


「昔はデータを持っていること自体に価値があった。今は誰でもデータを取得することが可能になったので、それをどのような業界に活用して課題解決できるかに各社の関心が向いて実用化フェーズに入っている。我々も小売り・流通に特化し、企業の財務に対して、さまざまなデータを加工し、仕入・販路などを最適化する支援をしている」

トップランナーが注目する中国の最新事例

鈴木はAI×データの文脈で注目している先進事例を共有してほしいとパネリストらに投げかけた。


嶋田氏は、ここ30年でGAFAを初めとするテクノロジー×データを保持する会社の時価総額が圧倒的に上がったと述べた。そのような潮流に触れながら、中国でのAIを活用した交通違反取締りの事例を紹介した。


「中国・広州で信号機に設置してあるカメラが、交通網を監視し自動車に関するあらゆる情報を集めAIで解析している。ときにはデータから自動的に警察に通報し交通違反取締りが行われている。交通マナーが荒れているイメージがあった中国だが、そのお陰で街のイメージアップに役立っていて、AIがもたらす新たな可能性を見出した」


武永氏もまた中国に注目しているという。市場の需要に応じて価格を変動させるダイナミックプライシングや、自分の信用スコアによって借入金額が変動するというスコアリング機能を持つアプリなどが中国で勢いを増している。


 「ホテルや航空券などは昔から価格が繁忙期と閑散期で変動しやすいが、最近ではスポーツ観戦やコンサートチケットなども需給を踏まえた価格最適化が進んでいる。またスコアリングによって中国人のモラルが良くなっているという話もある。いいスコアを得たいがために犯罪をしないなど、社会にとって良いことをしようと人々のモラルすらもAIが影響している点に興味がある」

AI時代を生き抜くために、人間が磨くべきこととは

日常生活にも浸透し始めているAI技術だが、パネリストたちはどのような未来を描いているのだろうか。


まずは、草野氏が自社の事業を引き合いに出し「データの活用方法や分析に関するサービスは巨大ビジネス市場として引き続き伸びていくと考えているが、今後取り組まなければならないのは、データ活用により新しい価値を作っていくこと」だと力を込めた。

「テクノロジーで新しいワークスタイルをつくる」をミッションに掲げる嶋田氏は、自社のRPA事業が社会に浸透すれば、価値の低い定型業務の大半をRPAに任せられ、多くの人がコミュニケーションや創造的な仕事に時間を使えるようになると明るい未来を想像している。


「働く時間の比率が『定型業務』から『コミュニケーションや創造』に比重が変わっていくことをワークスタイル変革と定義している。変革に向けてデータを溜めて、RPAを賢くしシステムの構造変化にも適応させ、お客様の業務コスト削減に繋げている。我々のサービスを進化させることは必須だが、お客様の組織をどう変えていくかも真剣に考えている。組織の階層構造は、経営者、続いてデータを扱える人材、その次にプログラミングができる人材が望ましい。今、会社にいる情報システム系の人材の半分はAIエンジニアになっていくと考えている。業務遂行していく人材はRPAやAIを手足のように自由に使いながらビジネスを変えていける構造になれば理想的」


加えて、経営層は必ずしもテクノロジーを使える必要はないが、概念は把握しておくべき。エンジニアの話が分かるレベルの知見は、必要だと説いた。

また、武永氏は自社事業に照らし合わせ、「小売も流通もリサイクルも商品を仕入れて売っているが、仕入れ担当者の感覚と世の中の売れ行きの乖離を防ぐために、仕入れと販売の価格改定のタイミングを人手に頼らず自動化できないかと考えている」と述べ、そのためのツール開発に着手していると語った。


各々が予測する未来において、やはり気になるのは業務のオートメーション化による人間の役割だろう。オートメーション化によって、経営者としての業務がどこまでAIに置換されるのかという論点を踏まえつつ人間にしか生み出せない価値について語った。


草野氏は「ビジネスでの交渉や、1on1で社員のモチベーションを上げたり社員が置かれている現状を理解したりすることは、AIに置換ができない」と語った。


嶋田氏は「過去の意思決定時の判断データがあれば、意思決定もAIに置き換えられるかもしれない。一方で、人間の意思決定は外部環境や感情が作用する流動的なものなので、未来への意思決定の置換が可能になるまでにはまだ時間がかかる」と持論を展開。


武永氏は二人に同意を示しながら、「今のところ、コミュニケーションやクリエイティブ、投資判断などは自分にしかできないと思っている。しかし10年後とか、社長を引退してコンピューターに権限委譲をすることもあり得るのではないか」と大胆な考えも同時に抱いている、と無限に広がるAIの可能性を示唆した。

未来を担う子供たちが身につけるべき能力についても語られた。実際に子供をもつ親としてのパネリストらの共通意見は、「AIに何ができるのかを理解し、どこにどう使うべきなのか?という問いを立てる力」と「感性を磨くこと」だった。


幼少期を田舎の大自然の中で育った嶋田氏は、そのお陰で創造性が身についたという。「長期休みには子供を実家に連れてって田植えをやらせたいと考えている。感性を磨くことで将来テクノロジーが進化していっても、自ら思考して新たなアイディアを創出していけるのでは」と語った。


武永も共感しつつも、語学については悩んでいると明かした。「中国のテンセントの方に会ったら、今から語学を学ぶ必要なんないと言われた。3年5年後には世界中の言語が自動的に翻訳されるような時代になると。そういった意味でも何をやって何をやらないかの選択は日々模索している」


テクノロジー革命を生き抜くために必要なことについて、三者とも「時代を先読みし、自ら思考し、未来を創造していく力」だという。激動の時代時代だからこそ本質に帰結するような示唆を改めて感じるようなセッションとなった。

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

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