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ライフスタイルビジネス~暮らしをビジネスする起業家たち~

2019年12月27日

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  • あすか会議
  • 創造
  • 先進事例
  • キャリア

モデレーター

久志 尚太郎氏 株式会社TABI LABO 代表取締役

パネリスト

天沼 聰氏 株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO
石坂 茂氏 株式会社IBJ 代表取締役社長
山下 智弘氏 リノべる株式会社 代表取締役
山野 智久氏 アソビュー株式会社 代表取締役社長

※あすか会議とは

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第15回目となる2019年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,500名が浜松に集い開催しました。

人々の暮らしに「わくわく」を提供するライフスタイルビジネス

第四次産業革命によってさまざまな仕事がITやAIに代替され、人々は今までの労働から解放されていく未来が近づいている。そうなればより娯楽などの余暇時間が増え、ライフスタイルはますます多様化していくだろう。


株式会社TABI LABO 代表取締役の久志尚太郎氏は、ミレニアル世代を中心に「旅するように」世界の選りすぐりの情報に触れることができるライフスタイルメディア『TABI LABO』を創設した。久志氏はまず、時代の変化を先読みしライフスタイルビジネスを展開するトップランナーたちに、創業の経緯やミッションを問いかけた。

最初は、日本最大級の遊びの予約サイト「アソビューを運営し、アウトドアから陶芸などのモノづくりまで2万にも上る遊びのレジャープランを紹介している、アソビュー株式会社代表取締役社長の山野智久氏が語った。

「宿の予約サイトは沢山あるが、遊びの予約サイトがないことに着目した。今の時代の人の幸せは何かと考えたら2つあると思っていて、1つは必要な物・欲しい物が手に入る物の充実。もう1つは、好きな人と素敵な時間を過ごす心の充実。私はこの後者を実現すべく『ワクワクを、すべての人に。』をミッションに掲げています」


 リノべる株式会社代表取締役の山下智弘氏は「中古住宅の価値を見直すことによって日本人の暮らしを世界一賢く素敵にしたい」と、2010年に中古住宅のワンストップリノベーションサービスをスタートさせた。欧米では約8割の人が中古マンションを購入し、自分好みにリノベーションをして暮らしを楽しんでいることを知り、今のビジネスモデルを考え出した。

「日本では約8割の人が新築住宅を購入しているが、築20~30年後には建物の価値はゼロになり、新築マンションの価値は半額になる。中古住宅を買ってリノベーションすれば、価値が落ちにくく、しかも自分らしく『賢く素敵』の両方が可能になる。リノベーションの面倒を、ワンストップで解消できる事業と共に、不動産会社や職人などのパートナーに仕事がしやすくなるアプリケーションも提供している」


 結婚カップルを生み出すことに焦点をあてた婚活サービスを展開する株式会社IBJ代表取締役社長の石坂茂氏は、マッチングだけではなく、出会いから恋愛、婚約、プロポーズまでをサポートしたのは業界で初めてで、高い成婚率を達成しているという。

「手間のかかる部分のサポートを実現したことによって、日本の婚姻カップル約6000組がIBJと関連会社によって生み出された。2022年には日本の婚姻数の3%を実現しようと思っている。単に引き合わせるだけではなく、婚約までサポートするのでこの後の将来のライフデザインに繋げやすい。エアークローゼットの洋服を着て、アソビュ-でデートプラン考え、リノべるで家決めるといったことができる。なぜこうしたビジネスをやっているかというと、生活主軸のビジネスは周囲の人に理解されやすく、やりがいや社会貢献を社員が直接感じることができるから」


 女性の普段着に特化したファッションレンタルサービスを展開して5年程になるエアークローゼットの代表取締役会長 兼 CEOの天沼聰氏は、「ライフスタイルをよりよくしたい」が創業メンバー3人の共通点だったという。

「気に入ったお洋服を着ることでワクワクする毎日を過ごせたら、人々はより幸せになれるのではないかと考えたこと。これが創業当初から変わらない想い。女性は結婚や子育てなどによって生活リズムが変化し、ファッションに触れる時間が減ってくる。ファッションレンタルサービスがあれば、時間の使い方を変えずに新しいお洋服に出会うことができると思った。ビジョンは『“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ』。鏡に映る自分の姿を見て、ワクワクする体験を提供している」


当初、IT戦略コンサル出身の創業メンバーたちは、口を揃えて「在庫を抱えるビジネスはしない」と言っていたそう。


「不思議なもので、今は数十万着のお洋服を抱えている。人生って面白いなって思っていて、情熱を注げられるものが見つかれば価値観が変わる。今は倉庫会社様にも社員にも、お洋服を『在庫』だと思わずに、お客様のお洋服が集まる『クローゼット』と考えるように伝えています。お客様全員でシェアする『エアーなクローゼット』というのが、最初のコンセプトだった」

競争優位性をいかに確立するか

モデレーターの久志氏は、聴衆者からの質問を踏まえて、「競争優位性や成長戦略をどのように描いているか」また「ビジネスの発想の原点となった原体験はなにか」をパネリストに投げかけた。


「コネクティビティ」というみんなと仲良くする戦略を掲げていると明かしたのはアソビューの山野氏。


「前にいた会社は自前主義で、自分たちで全部やるという方針だった。ただ、ベンチャー企業にはそれは難しく、とにかくさまざまなステークホルダーと仲良くすることに専念するべきだと思っている。我々はJTB、LINEトラベルjp(LINE版)から展開する「おでかけNOW」などと組んでいて、持っている在庫情報をアソビューだけで独占するのではなく、他の多くの関連会社と共有しながら一緒に戦うという戦略。これが競争優位性になっている。発想の原点は『不便』にある。自分が消費者として感じていた不便を解消すれば『ありがとう』と言ってもらえる。これが今のビジネスを考えついた原体験だと思う」


エアークローゼットの天沼氏は、戦略の差別化ポイントに加えて、創業の想いを伝え続けることの大切さを語った。

「発想の原点は、女性の時間の使い方ともう1つは固定概念を変えたくて。どうしても『自分の似合うブランドや洋服はこうだ』と固まってしまいがちで、それを広げる機会を作りたいと思った。差別化のポイントは、徹底的にスピードを重視したこと。さまざまなファッションブランドの一社一社に直接お話をして、ファッションレンタルのつくる未来について語った。何とか納得してもらい、委託の形で在庫を出してもらえるようになった」


加えて、「組織のメンバーがサービスの細部に想いを宿せることが、究極の差別化のポイントだと考えていて、創業者の一人として、その想いを徹底的に社員に伝えている。私が自分の組織に自信を持っている点は、メンバーが365日24時間、会社の未来を信じて、どうしたらもっとお客様にワクワク感を提供することができるのかを世界で一番考えているチームだということ」と力を込めた。

IBJの石坂氏は、リリースしたサービスは真似されるが、それによって市場が広がるとポジティブに捉えているという。


「自分たちがリリースしたサービスは、次の日には陳腐化すると思った方がよい。特にマーケティングの部分は真似されやすい。ただ、大切なのは、自分の携わっているビジネスを天職にしているスタッフがそろっていること。自分たちのこだわりが差別化につながると考えているので、真似されたり大資本が参入してきても怖くない」


顧客とさまざまな関連部門をマッチングしてオーダーメイドの中古住宅を提供している山下氏は、創業する前に「私たちのビジネスモデルは、手間がかかり面倒で儲からないので、大手に真似されても継続できないと読んでいた。一方で、中古住宅のリノベーションは『賢く素敵』な生活を送りたいという人は多いと考え、自分たちがやるべきだと考え創業した」

時代の変化、顧客のインサイトを捉える組織作り

山野氏は「経済的報酬よりも意味報酬を重視して、すべてのコミュニケーションを設計している」と時代の変化に合わせた組織の作り方について触れた。


「世の中は大きく変化していて、ネームバリューのある企業や役職、年収などで仕事を語ることはかっこいいとは思わなくなってきている。そこで重要なのが、なぜ働くのか?という『意味』になってくる。我々はミッション・ビジョン・バリュー・ガードレール(行動指針)を定義している。全員スタッフがお互いリスペクトしつつ、せっかく同じチームに集まっているのだから、これだけは大事にしていこうという軸を決めて共有している。そういうカルチャーがあってこそ、人は働く意味を自分で見出し、意味報酬が上がっていくのだと考えている」

久志氏は、創業から13年も経て上場もし、すでに多くの実績を積んでいる石坂氏にベンチャーとは違う戦い方や組織作りがあるのかを尋ねた。


「そんなに違いはないと思っている。よく「どんな会社なのか?」と聞かれるので、いつも“上場ベンチャーだ”と言っている。社員にも入社するときに、まだオーナーが意思決定しているベンチャー企業だと伝えた上で、入ってもらっている。社員の顔と名前や個性もある程度は把握していて、私が経営方針を変えたとしても、社員たちがその意味を理解し受け止められる組織にしている。半期に1度は社長からの方針を直接伝える機会を設けたり、研修を大事にしていて、社長塾を開催している。またロープレにも今も顔を出すようにしていて、現場から完全に離れず、上にあがりすぎないように気を付けている」

天沼氏は、顧客インサイトを社員全員で捉える活動を行っていると語った。


「お客様にインタビューをして、さまざまな課題を徹底的に伺っています。期待を超える感動や驚きを体験してもらうために、社員全員が真剣にお客様のことを考えている。サブスクリプションモデルをとっているが、退会した方にも『改善点を教えてください』とさまざまな手段を使ってヒアリングしている。もしまたエアークローゼットを利用してもらえたときに、改善したなって思ってもらえるように心掛けている」


また、データサイエンティストチームの体制についても述べた。


「私はIT戦略コンサル出身でデータ好きだが、ファッション業界はデータ活用がなかなか進んでいない。弊社のサービスは一人のお客様に、繰り返しお洋服を貸出していて、デザインやサイズ、着心地などのフィードバックをデータとして集めている。社長室直下にデータサイエンティストチームを抱えていて、今後はよりデータを活用してサービスを拡充する方針だ」


今の日本における大きな課題は「何となく楽しくない、ワクワクしない、つまらない、希望が持てない、といった空気が流れていることだ」と久志氏。人々の生活をより良くするために、今すぐに分かりやすく何かを変えられることが、ライフスタイルビジネスの魅力だと言う。時代の変化とともにダイレクトに人々の生活に影響を及ぼす彼らのビジネスの今後の発展が注目される。

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

モデレーター

久志 尚太郎氏株式会社TABI LABO 代表取締役

パネリスト

天沼 聰氏株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO

石坂 茂氏株式会社IBJ 代表取締役社長

山下 智弘氏リノべる株式会社 代表取締役

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