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なぜ「管理職≒管理のできない人」になってしまうのか?

2019年11月23日

  • リーダーシップ
  • 実践的
  • キャリア
嶋田 毅 グロービス電子出版発行人 兼 編集長、出版局 編集長

新刊『ダークサイドオブMBAコンセプト』の4章「組織・リーダーシップ」から、「管理(マネジメント)」を紹介します。


「管理職」という言葉ほど内容が伴っていない言葉は稀かもしれません。なぜなら、ほとんどの管理職は管理(マネジメント)という本来なすべき仕事を適切にできていないのですから。その理由は多岐にわたりますが、筆者が見たところ、実施の難しさ以前に、マネジメントとは何をすることなのかを正しく理解できていない管理職が多いように思われます。


知らないことを自然に実行できることは稀です。まずはマネジメントの意味を正しく理解し、その上で実践や座学などからの学びを通じて上達することが求められているのです。それは自分自身のみではなく、あらゆる関係者――特に部下――をハッピーにすることにもつながるのです。


(このシリーズは、グロービスの書籍から、東洋経済新報社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

定義

組織の目標を設定し、その実現のために経営資源を効率的に活用したり、人の力を引き出したり、リスク管理などを実施したりすること。管理職の一番大事な仕事。多くの管理職がなにかしら「実践」はしている。

失敗例

社長から、最近、多少風紀が緩んでいる感じがすると言われ、部下を厳しく管理するようにと指示された。そこで、部下が外れた行動をとらないよう、厳しくルールを決めて管理するようにしたのだが、職場の生産性自体は上がっていないようだ……

解説

マネジメント(管理)は組織が高い生産性を上げるうえで非常に大切な仕事(タスク)であり、本来、管理職の腕の見せ所ともいえるものです。しかし多くの組織の管理職はこの仕事をうまくこなせていません。それ以前に、管理とは何をすべきかが理解されていない状況が非常に目立ちます。


管理とは、冒頭の定義でも述べたように、本来は、正しく目標を設定し、経営資源(特に人材)の力を最大限引き出して高いアウトプットを出すべく働きかけていくものです。しかし、多くの管理職はそのことを理解していません。その結果、以下に示したような好ましくない例が生じてしまいます。ここでは典型的なもの4つを紹介します。


1つ目の失敗例は目標設定を適切に行わないというものです。ここでいう目標とは、管理職が自分の上司から与えられた数字そのものではありません。もちろん数字を達成することも大事ですが、会社の戦略を踏まえたうえで、職場がどのような状況になるのかを定性面も含めて部下がイメージできるようにすることが必要です。また、時には管理職が上司と掛け合って、そもそもの数字の妥当性を精査し、場合によってはより好ましい方向に変更する必要もあります。


しかし、多くの管理職はそこまで戦略に関するリテラシーが高くありませんし、彼/彼女自身の人事考課上、数字の達成のみに意識が行きがちです。


本来、人々を大きく駆り立てるのは妥当性が高く人々をワクワクさせるような目標です。そのことを忘れてしまっている管理職が少なくないのです。


第二の失敗例は、管理イコール画一化と勘違いしているというものです。冒頭のケースもこれに該当しそうです。


筆者が若い頃「管理教育」という言葉がはやりました。当時は「荒れる学校」が多かったこともあり、ルールを厳しく定め、守らせることで生徒の逸脱を阻止しようという発想が強くなったものと思われます。ちなみに、厳しい校則などはそれ以前からもあり、日本人は元々良くも悪くも異常値の存在を嫌う民族といえるのかもしれません。


管理イコール画一化と勘違いしている管理職は、「べからず集」を強調することがあります。これはメリットもありますが、往々にして部下の萎縮を招きますし、自由な発想を妨げることになります。これでは劇的に生産性を高めるようなブレークスルーは生まれません。また、管理職自身がそのチェックに時間を取られてしまうため、生産的な仕事に使う時間が減るというデメリットもあります。しかしそれでも、多くの管理職は画一化を推進することで管理業務を果たしていることのアリバイにしてしまうのです。


失敗例の3つ目は、部下の数字さえ出ていれば良しとしてしまうというものです。通常、部下には何かしらの目標が与えられるものです。その目標の達成を通じて組織の目標が達成されると同時に、部下のスキルや組織へのロイヤルティが上がっていくことが本来は理想です。しかし下手な管理職は数字にばかり目が行ってしまいます。そうなると、部下に数字を達成させることが自分の仕事と考えがちになり、それは往々にして「数字さえ達成させればいい」というマインドセットにつながっていきます。


それがどのようなことを招くかと言えば、精神論で「とにかく数字だけは達成しろ」という無茶ぶりです。本来のマネジメントの発想では、共に考え、場合によってはコーチングで方法論に気づかせるように誘導し、部下の実力を上げていくべきものですが、精神論で「とにかく数字を……」とやっても部下のスキルは上がりませんし、数字を達成しても達成感よりも疲労感の方が強く出てしまいます。また、組織へのロイヤルティが上がるどころか、むしろ組織を嫌う人間が多数生じてしまいます。


失敗例の4つ目は、人の管理にばかり目が行くというケースです。管理を「人の管理」と勘違いしているのです。スキルやモチベーションなどに配慮を払うのはよいのですが、どれだけ部下がイキイキと仕事をしていようが、本来不要な仕事を割り振っていては、単なる経営資源の無駄遣いであり、組織の生産性は上がりません。人ばかりを見るのではなく、仕事そのものを見ることも管理の重要な一部です。無駄やダブりがないか、そもそもその仕事はやる必要があるのか、プロセスは改善できないかなど、部署の業務全体に目配せすることが必要です。


これらの他にも「管理」にまつわる落とし穴は掃いて捨てるほど存在します。自己流を否定するものではありませんが、ある程度「マネジメントとは何か」を組織全体でしっかり共有し、実践できるようにはしたいものです。

ダークサイドに落ちないためのヒント

①そもそもマネジメントとは何をすることなのかを確認する。古典ではあるがドラッカーの書籍などを読むことも有効
②上司を思い出し、管理がうまい上司と下手な上司で何が違っていたかを自分なりに整理し言語化する。自分が直接仕えなかった上司に話を聞くのも効果的


(本項担当執筆者:嶋田毅 グロービス出版局長)

嶋田 毅グロービス電子出版発行人 兼 編集長、出版局 編集長

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。


グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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