グロービス経営大学院
お知らせ
2026年10月30日
2026年10月30日
グロービス経営大学院、「AI時代の思考力」「経営人材」「リーダーシップ」など8本の研究成果を収録した紀要第5巻を公開 AI・テクノベート・教育科学の3研究所による活動報告も初掲載
グロービス経営大学院大学(以下 グロービス経営大学院)は、2026年10月30日、8本の研究成果をまとめた「グロービス経営大学院紀要 第5巻」を公開しました。
本紀要は、グロービス経営大学院における研究活動の成果を広く発表し、学術界(アカデミア)及び社会へ知的貢献を行うことを目的としており、研究活動などを行っているファカルティグループの教員及び、教員らの元で在学中に研究プロジェクト*1に取り組んだ学生らによって執筆されました。第5巻には、論文3本、研究ノート2本、調査3本の計8本を掲載しています。
本号(第5巻)より、グロービス経営大学院の研究機関である「グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)*2」、「テクノベート経営研究所(TechMaRI)*3」、「グロービス教育科学研究所(GESRI)*4」の年次活動報告を新たに掲載し、各研究所の2025年度の活動と研究成果を紹介しています。
グロービス経営大学院は、今後も実践的な教育活動とともに、研究活動にも注力していきます。先端の経営手法やテクノベート*5に関する研究、教育手法に関する研究、実務知見を活かした研究などを進め、実務に直結した課題設定と実証的な分析を通じて、教育・研究・企業実務の橋渡しを目指してまいります。
*1 研究プロジェクト講座詳細:https://mba.globis.ac.jp/curriculum/detail/rep/
*2 グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi):2017年2月設立。教育現場から得られる知見と、AIをはじめとするデジタルテクノロジーや認知科学の発展がもたらすイノベーションを統合し、次世代の経営教育モデルの研究開発を推進。
*3 テクノベート経営研究所(TechMaRI):2022年4月開設。グロービス・キャピタル・パートナーズと連携し、スタートアップを中心としたテクノベートの研究を推進し、その知見をさまざまな発信手段を通じて実務家へと還元。
*4 グロービス教育科学研究所(GESRI):2026年3月設立。能力開発と認識・行動変容の仕組みを科学的に解明し、エビデンス(科学的根拠)に基づく効果的な教育の確立を目指す。
*5 テクノベート:テクノロジーとイノベーションを組み合わせたグロービスの造語。
グロービス経営大学院紀要 第5巻テーマと概要
2023年3月第1巻、2023年11月第2巻、2024年10月第3巻、2025年10月第4巻に続き、2026年10月30日に第5巻を発行しました。
紀要のダウンロードはこちら:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/globis/-char/ja
第5巻 テーマ
外部登用された経営人材の組織適応プロセス~中途入社者23名の探索的比較事例からみる役割形成と組織内正当性に着目した質的研究~
近年、日本企業では中途採用が主要な人材獲得手段となりつつある。中途採用者は即戦力として期待される一方、新しい組織の暗黙ルール、評価基準、人間関係を学習し、前職で形成された行動様式を再構成する必要がある。本研究は、事業、組織、機能部門、またはプロジェクトの変革を期待され、外部から登用された経営人材に焦点を当てる。中途入社経験者23名(経営人材ケース11名、境界ケース7名、通常中途ケース5名)への半構造化インタビューをもとに、通常中途ケースを比較の基準線として探索的な比較事例研究を行った。適応帰結は、組織社会化研究における近位アウトカムである役割明確性、社会的受容、自己効力感の3指標にもとづいて整理した。分析の結果、第一に、外部登用された経営人材は、役割曖昧性、役割葛藤、役割遂行資源・権限の不足という三層の困難に直面していたことが示唆された。第二に、これらの困難を組織内に翻訳し正当化するスポンサー機能が、適応と適応困難の分岐に関与している可能性が示された。第三に、組織内正当性は、上位者からの付与と既存メンバーからの獲得という二経路の接続によって形成される過程として理解できる可能性が示された。また、限られたケースではあるが、課題遂行による成果を上げた場合でも、上位者の振る舞いによって形成されかけた正当性が事後的に損なわれうる可能性も観察された。以上から、外部登用された経営人材の組織適応は、本人の能力・経験のみでは説明されにくく、役割設計、期待調整、正当性付与、支援構造という組織的・関係的条件に左右される可能性があることが、質的データにもとづく暫定的示唆として導かれた。
(執筆者:太田 昂志)
企業で働く女性のリーダーシップ再定義プロセス~認識と実践の関係に着目して~
本研究は、組織内マイノリティである女性が、主流派のリーダーシップ規範をいかに相対化し、独自のリーダーシップを再定義していくのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とする。先行研究では女性のリーダーシップ発揮を阻害する要因の解明に焦点が当てられてきたが、規範そのものの再構成に関する検討は十分ではない。本研究では、女性リーダー6名へのインタビュー調査を実施し、質的分析を行った。その結果、アウトサイダー性の自覚や多様な認識論的資源を基盤として、主流規範の相対化と再定義が進むプロセスが確認された。これにより、女性リーダー育成および組織におけるリーダーシップの再定義に対する示唆を得た。
(執筆者:澤田 茉莉)
公営競技における罰則強化の効果~ボートレース選手のスタートタイミングに関する実証分析~
本研究は、Thalerのメンタル・アカウンティングの観点から、2025年5月に施行されたボートレースのフライング罰則強化の抑止効果を分析する。ボートレース振興会の公式データにより、改正前後各6ヶ月間の同一選手1,544名を比較した結果、全体ではフライング発生率の低下傾向が見られた一方(p=0.058)、重賞と一般の両方に出走した上位選手292名の個人内比較では、罰則が最も重い重賞レースにおいてスタートタイミングが一般レースより有意に早かった(差-5.25ms、p=0.002)。この逆転はBecker型の合理的抑止理論では説明できず、選手が重賞と一般を別の心理的勘定で処理していることを示唆した。
(執筆者:倉浪 孝明、橋井 国明)
コミュニケーションロボットのデザインにおける、構成要素の決定順序と判断根拠に関する実態調査
本研究では、コミュニケーションロボットのデザインにおける構成要素の決定順序と意思決定の判断根拠、ならびに受容性向上および継続利用促進の工夫を明らかにした。日本国内で発売された6製品の開発者7名に対し半構造化インタビューを実施した結果、ユーザーニーズと製品コンセプトを軸に、先行研究や理論を参照しながら、初めに外観の最重要要素、その後に他の要素を決定していたことが明らかになった。また、受容性向上には外観が重要であり、「不気味の谷」回避にはユーザーに違和感を持たせない外観と振る舞いの組合せが必要であることが示唆された。さらに、継続利用促進には、ユーザー反応に応じた学習や新たな振る舞いの追加が確認された。
(執筆者:陣内 弘喜、南出 由希、川口 愛依、荒井 保洋、小川 智子)
思考の主導権を取り戻す~AI時代に「自分の頭で考える」ためのフレームワーク~
本稿は、AIの普及を背景に職場で課題として語られることが多くなった、「自分の頭で考える」という言葉の意味を再定義する。それは外部の情報に全く頼らないということではなく、当事者が自分なりの問題意識にもとづいて理想と現状のギャップを見極め、枠組みを構築してロジックを精緻化し、批判的検証とメタ思考を通して導き出した結論を、自らの責任のもとに示すこととして位置づけられる。本稿では、これらのプロセスを掘り下げるとともに、それぞれにおけるAIの活用可能性と留意点を明らかにし、統合的なフレームワークとして整理した。
(執筆者:松永 正樹、熊谷 翔大)
英語学習法の違いが主観的幸福度と英語の自信に及ぼす影響~対人学習とAI学習の違いに着目して~
グローバル化に伴い社会人の英語学習は「生存戦略」としての重要性を増している。本研究では、近年急速に普及しているAI学習と、従来の対人学習が、英語学習者の「主観的幸福度」および「英語に対する自信」にどのような影響を及ぼすかを検証することを目的とした。日本の20代〜60代の働く社会人9,691名を対象にアンケート調査を実施し、学習手法の違いが「主観的幸福度」および「英語に対する自信」に与える影響を評価した。英語学習をする社会人群は、非学習群と比較して幸福度および英語の自信ともに有意に高かった。学習法別の比較では、主観的幸福度において有意な差は認められなかったが、英語に対する自信については、AI単独学習群よりも対人学習群の方が自信の醸成において高い効果を示した。AI学習は心理的障壁の低減や発話量の確保に寄与する一方、対人学習は感情的なサポートや社会的実在感を通じて学習者の自信をより強く支えることが示唆された。社会人の英語学習においては、AIの利便性と人間のメンタリングを組み合わせたハイブリッドモデルが、心理的成果を最大化する上で有効である可能性が考えられた。
(執筆者:米良 克美)
地域新電力の事業目的に対する評価・報告の実態
地域新電力は脱炭素や地域活性化等の公共的目的を掲げる社会的企業としての性格を持つが、その達成状況をステークホルダーに示す評価・報告体制の実態は明らかでなかった。本研究では、地域新電力98社の公開情報から事業目的を電力の地産地消・地域活性化・域内経済循環・脱炭素の4分類に整理し、全てを掲げる46社を対象に質問票調査を実施、14社から回答を得た。その結果、評価を行う企業は報告も行う傾向があるものの、測定項目や目標値まで整備された例は限定的で、特に域内経済循環の整備状況は低かった。また報告先は自治体・議会・株主等が中心であり、顧客である地域住民を対象とした報告は確認されなかった。地域新電力は公共的目的を掲げながらも、その評価・報告の仕組みが十分に整備されていないことが示唆された。
(執筆者:新家 愛、折原 健治、桐本 喬晴、鶴見 彩子、小林 悦子、難波 美帆)
妊婦の栄養状態の改善に向けた行動変容への働き掛けにおける助産師の役割と可能性~出産前の女性へのたんぱく質の摂取の認知向上を例に~
若年女性の「やせ」および妊娠期の栄養不良が喫緊の課題となる中、妊婦に対する適切なたんぱく質などの摂取の推奨と行動変容の促進が求められている。しかし、周産期医療において継続的かつ実践的な栄養指導の担い手が不足している。そこで本研究では、妊婦の栄養状態改善に向けた働き掛けにおいて助産師がどのような役割を担っているのかを明らかにするため、アンケート調査及びインタビューを実施した。その結果、助産師は妊婦との接触頻度が高く、たんぱく質摂取の推奨を通じて自発的な行動変容を促す伴走者として重要な役割を担い得ることが示された。
(執筆者:山崎 俊介、矢島 奈津子、渋谷 幸絵、保木 悠、原田 大亮)
グロービス経営大学院 体験クラス&説明会
グロービス経営大学院は、本科(MBA)への進学を検討している方、進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向けに、体験クラス&説明会を全国の拠点、およびオンラインで開催しています。
詳細はこちら:https://mba.globis.ac.jp/trial-class/
日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

