GLOBIS Articles
- 思考
投稿日:2026年03月26日
投稿日:2026年03月26日
【学生アンケート結果公開】グロービスのMBA「クリティカル・シンキング」を受講すると何ができるようになる?
インタビュイー
- 岡 重文
- グロービス経営大学院 教員
論理的に考えているはずなのに、議論が噛み合わない。
決まった「正解」のない問題に直面すると、何から考えればいいのかわからなくなる——。
こうした「思考のつまずき」を感じたことはないでしょうか。
グロービス経営大学院の基本科目「クリティカル・シンキング」は、単なる論理的思考スキルの習得にとどまらず、自分の思考とどう向き合うかという“態度”そのものに変化をもたらす科目です。
本記事では、岡重文教員が実施している、受講前と受講後に実施しているアンケートの結果をもとに、クリティカル・シンキングが学生にもたらす変化について聞きました。
【アンケート概要】
アンケートは、3ヶ月間・全6日で構成される授業の初回(Day1)の冒頭と最終回(Day6)の最後に、学生が自身の「思考」に対して、自己評価をする形で実施されています。
評価項目は、クリティカル・シンキングを通して、身につけてもらいたいと考えている6つの要素から構成されます。
- 技術的な要素(スキル)…「根拠づけ」「構造化」「手順化」
- 意識面の要素(思考態度)…「前向きな思考」「健全な自己批判」「他者の意見の受容」
6つの要素それぞれに4つの質問を設け、5段階(5:あてはまる 3 どちらでもない 1 あてはまらない)で自己評価をしています。
この自己評価の目的は、3ヶ月間の学びを通じて、自分の考え方や物事を見る態度がどう変化したかを内省し、自分なりに解釈をすることです。初回と最終回を比べてスコアを上げていこうという目的のものではありません。
自己理解が進むと、それまで気づかなかった自身の課題に気づくことで、スコアが下がることもよくありますが、そうだとしても「最初の頃はわかっていなかった(から点を甘く付けていた)」と認識できることに意味があるのです。
そうした目的で取っているデータではありますが、集計することで学生の認識の変化を大まかにつかむこともできます。もちろんこの変化の傾向だけでこれから言うことをすべて説明しきれるわけではないですが、ここでは2023年、2024年に実施した3クラス計66名の結果を集計したものを紹介します。
自分の思考を「コントロール」できる、もう一人の自分を育てる
ーー まず、授業を通じて、学生にどのような変化をもたらすことを目指しているのでしょうか?
岡:私はいつも、初回授業の冒頭で、クリティカル・シンキングとは「自分の思考をコントロールできる、もう一人の自分を育てること」だということを学生に伝えています。
もちろん論理的な思考技術も学ぶ内容の一つですが、より重要なのは、自分の思考そのものに自覚的に関与できる力と姿勢の方だと感じているからです。
人は、ついつい今までの習慣にしたがって物事を考えてしまいがちです。また、自分で自分の思考に枠をはめてしまい、自由に発想できる場合であっても勝手に制約をおいて可能性を狭めることも起こりがちです。これを避けるためには、何らかのきっかけを敢えて作って、自分自身の思考に向き合う必要があります。つまり、「自分は今、何をどう考えているのか。そしてそれは適切なのか」をしっかりと意識しようとする姿勢が重要なのです。
クリティカル・シンキングの「クリティカル」は日本語に訳すと「批判的な」という意味ですが、クリティカルである対象は、他人ではなく、自分の思考なのです。
クリティカル・シンキング=ロジカル・シンキング+批判的に自分の思考に向き合おうとする力
ロジカル・シンキングだけでなく、後者の力をしっかりと身につけてもらいたいと考えています。
技術面での受講後の変化:構造化と手順化
ーーそのうえで、3ヶ月間の受講を通じて、具体的にどのような思考のスキルが伸びたのでしょうか。アンケートデータから見える傾向を教えてください。
岡: 技術的な要素「根拠づけ」「構造化」「手順化」のうち、受講後の評価が最も高かったのは、論理的思考の基本である「根拠づけ」です。これは、3ヶ月の授業を通じて練習を重ねていきますので、その成果が表れたものということもできそうです。
一方で、受講前後のスコアの差に注目すると、一番大きく上昇したのは「構造化」、次いで「手順化」です。
構造化とは、一見バラバラな事象の間の関係を把握したり、論理の関係を分かりやすく視覚化したりする力です。これは授業の中では、具体と抽象、全体と部分、原因と結果など様々な視点から思考していくことで鍛えられます。
手順化とは、前提をおいて思考を進め、そこで得た仮の結論に基づいて次の思考を進める、違っていたら前提を変えてまた進む、といった思考のプロセスを指します。これも、順を追って丁寧に思考を積み重ねる練習によって鍛えられていきます。
構造化や手順化は、日常の仕事の中で必要だと意識する機会が、意外に少ないものです。そのため、授業を通じて自覚的に鍛えた結果、変化をより大きく実感するのかもしれません。
意識面での受講後の変化:健全な自己批判と他者の意見の受容
ーー意識面では注目すべき点はどこでしょうか。グロービスのクリティカル・シンキングの特徴は思考の態度にまで変容が見られることだとよく聞かれます。
岡:受講前後の変化に着目すると、「健全な自己批判」が、他の2項目と比べて顕著に変化しています。これは、受講前のスコアが低かったことの裏返しでもあり、グロービスに来るまで、自分の思考を批判的に見つめ直す習慣があまりなかったことの表れかもしれません。
授業では、自分の考えの前提は何なのか、その前提は果たして適切なのか、といった問いかけが繰り返し行われます。その過程で、自分の考えが正しいことを頑張って理論武装するのではなく、不十分な箇所があるとしたらどこかを健全に批判してみる姿勢が身につき、意識の変化につながっていると考えられます。
実はこの姿勢は、「他者の意見の受容」にもつながります。他者の意見の受容は、変化量こそ大きくないものの、受講後のスコアは最も高いものになりました。自分の思考を批判的に見る姿勢が身につくと、他者の意見を「自分の考えと違う」からといって排除するのではなく、「自分とは違う何らかの理由があるはずだ」と前向きに受け入れるようになってくるということです。
少し余談になりますが、最終的なスコアが一番高く、それでいて変化量は大きくないということは、もともと高かったということでもあります。クリティカル・シンキングを受講する人には、「しっかりと他者の意見を聞きいれよう」というスタンスの人が多いということかもしれません。
健全な自己批判と他者意見の受容が、より重要になる世界
岡:健全な自己批判ができること、そして、他者の意見の受容ができることは、不確実性の高まるこれからのビジネス環境においては、ますます重要になってきています。
決まった正解の存在する世界ではなく、そもそも何が正解かがわからない世界においては、様々な可能性を考慮できることが必要です。
しっかりと分析をして、因果関係を特定して、原因に対して、策を打っていく。あるいは、いわゆるPDCA、計画を立て実行し確認をし、また次のアクションにつなげていく。こういった思考は依然重要ですが、ある程度の期間は同じ環境が続く、いわば環境変化が「こちらの対応を待ってくれる」状況でこそ有効でした。
ところが今は、そうした段取りを踏んでいる間にも環境がどんどん変化していってしまうようなスピード感の時代です。そこでは、いわゆる「アジャイル型」と呼ばれる、すばやく仮説を立てて実行し、その結果からすぐに新しいデータを取って学習して次の仮説を立てるといった動き方が求められています。そうした状況下では、自分の考えもひとつの仮説であると同時に、他者の考えも仮説のひとつと捉えて、すばやく検証していかないといけません。多様な考えに対する受容度が高いことは、環境への適応という意味でも必要なことだと考えています。
また、別の角度から見ると、環境変化が大きくない時代では、過去の経験が将来の選択にも当てはまりやすいので、長く働いている人のアイディアや意見に従うことは、合理性があったとも言えます。一方で、環境が激しく変わっていく時代では、過去の経験は逆に作用する可能性も高まります。そうなると、年長者も若者も平等で、新入社員の何気ない一言を可能性として拾い上げることができる、つまり偏見にとらわれずに他者の意見を受容する姿勢が重要になってくるのです。
なぜ、態度まで変わるのか?グロービスの「学びの場」の設計
ーー スキルだけでなく、初期値が低かった「健全な自己批判」や、さらに伸びた「他者の意見の受容」といった意識面の思考態度までが、3ヶ月という短い期間で変化するのはなぜでしょうか。
岡: グロービスの授業設計と学習の「場」の力が大きいのではと思います。変化を後押しする要素は大きく3つあります。
1つめは、アウトプット中心の設計です。教員が解説的に何かを語る時間よりも、学生同士がグループでディスカッションする時間が長くなるようにしています。グループディスカッションだけでなく、たとえば2〜3分時間をとって「ちょっと隣の人と話してみて」という機会を作ることも。
自分の考えを言葉にすることが常に求められるので、実は大変かもしれません。さらに大事なことは、自分以外の考えに多く触れられる、言い換えると、自分以外の意見を聞く時間が多いということです。他者の考えを聞いて「自分とは違うな」と感じて初めて、自分の考えに特徴があることに気づく。
逆に自分が意見を言うことによって、それを聞いた周囲の学生にとって思考の特徴に気づく機会になっている。そんな場にするために、「考えたことは、遠慮なく発言していいのだ」という空気を作ることも、教員が意識する重要なポイントです。
2つめは、学生が主役であるということです。各回の授業では、当然、その日に学んで欲しいポイントがありますが、それを必ずしも私が言う必要はないのです。予習なり授業中の発言なりで学生が示した分析や意見の中の、良い学びのポイントを全体に共有する。これを中心に授業を進行しています。
ーークラスメートが「生きた教材」となり、周囲の意欲を刺激するわけですね。
岡: はい。その回の学びのポイントを学生が掴んだのであれば、その人自身に語ってもらった方が説得力があるんですよね。周囲にとっては、「同じ立場の人でもできる人がいる」ことが強いメッセージになりますので。
多様な人が持つ様々な「できる部分」にスポットライトを当てていくことで、クラスメートの皆で学びを創っていけるといいなと考えています。
私自身はなるべく、そのとき何か補足すべきポイントがあれば付け加える、といった役割でいたいですね。
3つ目は、授業とは別に、「勉強会」を積極的に推奨している点です。グロービスでは、授業の前後に学生が自主的に集まって議論を重ねる文化が定着しています。
勉強会には、教員は基本介入しません。参加する学生は、授業ハンドアウト(資料)を読み込み、分からないことは議論し、彼らなりに受け止め言語化して吸収しようとします。
そのときは少し消化不良なところ、もやもやするところもあるのですが、即時に理解できるのが良くてもやもやするのが悪いということはありません。今までの考えとはちょっと違った「異質なもの」を自分の中で咀嚼しようとするからこそ「もやもや」が起こるのですから、むしろ、時間をかけて吸収していくことにに意味があります。
勉強会があることで、予習の段階では自分一人でもがいて取り組んで、授業の中で多様な考えに触れ、そこでの気づきを勉強会を通じてみんなで語り合うという一連のサイクルが回っているとも言えます。こうした自律的な学びの場が、態度変容を後押ししている面はあるでしょう。
思考力は「筋トレ」である。成果は「投入時間」に比例する
ーー 最後に、クリティカル・シンキングを受講した後、日常でどのように実践し続ければ良いか、アドバイスをお願いします。
岡: 思考を鍛えるのは「筋トレ」と同じだと、授業でも言っています。要は投入時間に比例して、思考力は伸びていく。
クリティカル・シンキングを実務に使ううえで大事なことは、日常の中で考える瞬間瞬間にいつもと違う視点を少しでも入れることです。「この結論が出てきた前提は何だろう」「そこまで本当に言えるのか」「他に考慮する論点を見落としてはいないか」。こういった問いを立てて思考することができれば、それで十分にクリティカル・シンキングの訓練になります。
普段の思考領域をたとえばほんの10%くらいでも広げたり深めたりしてみる。この「一瞬、頭を回していく」ことを日々続ければ、間違いなく力がついていきます。
もう少し具体的な習慣化の例としては、週に1回、400字でも800字でもいいから、業務の振り返りや世相を踏まえたテーマでも何でも、自分なりのメッセージを書いてみることをお勧めします。メインのメッセージを何にするか、それを支えるためにはどんなことを言えばよいか、全体の構成はどうすればよいか、ちゃんと書こうとすると結構大変です。ただ、これを愚直に続けていければ、それだけでも力がついてくることは間違いありません。
優しく、そして前に動かすための思考力
授業では最後の回の締めくくりとして、クリティカル・シンキングを「優しく使う」ことと、「前に物事を動かすために使う」ことを話しています。「優しく使う」は、他者を攻めるためではなく、その人の言いたいこと考えていることを理解するために使う。また、こちらが何かを伝えるときにも相手に合わせてわかりやすい伝え方を選ぶということも「優しく」につながります。
そして、「前に物事を動かすために使う」は、単に評論家的に指摘をしているだけではダメで、どんなやり方であれば前に進むことができるのかを優先しようということです。何か上手くいかないことがあるとしたら、何が原因でどう克服できるのか、まず走り出すにはどうしたらよいか、軌道修正をするならどこをどう修正すればよいのか。こうした姿勢を絶えず保つことが重要です。
しっかり考える思考力、そして健全な自己批判と他者の意見の受容。これらを「優しく」「前に進めるために」使っていってもらいたいと考えています。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
ヒントを得る
大学院への入学をご検討中の方向けにグロービスMBAの特徴や他校との違い、入試概要・出願準備について詳しくご案内します。
※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
インタビュイー
岡 重文
グロービス経営大学院 教員
担当科目は「テクノベート基礎」「テクノベート・シンキング」「ファシリテーション&ネゴシエーション」、「クリティカル・シンキング」、「ビジネス・アナリティクス」など。京都大学工学部応用システム科学専攻 修士課程卒業。NTTデータに入社し、SEとして複数のシステム開発に従事した後、ネットワーク機器の製品開発に携わる。その後、プライスウォーターハウスクーパースに入社。プロジェクトマネジャーとして複数のプロジェクトを担当。 2000年、グロービスに入社。企業研修担当、eLearning事業の立ち上げに関与したのち、グロービス・グループの情報システム部門を統括。2007年より経営管理本部にて人事・総務を兼務。2013年よりファカルティ部門。

