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投稿日:2025年07月28日

投稿日:2025年07月28日

「自分はどんなリーダーか?」を問う授業──グロービスMBA『リーダーシップ開発と倫理・価値観』とは

本橋敦子
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム

価値観と向き合い、リーダーとしての「軸」を確立する

グロービス経営大学院の「リーダーシップ開発と倫理・価値観」は、グロービスのMBA課程において中心的な役割を担う「志系」必修科目です。
この科目では、ビジネスの現場で創造と変革を牽引する真のリーダーを目指し、自分自身の価値観・倫理観・あるべき姿といった内面的要素に深く向き合います。

受講者は360度評価やケーススタディ、対話型ワークショップを通して、自己理解を深めながら、今後のリーダーシップ能力開発の方針を明文化していきます。
単なる理論学習にとどまらず、「自分は何者か」「どのようなリーダーになりたいか」を明確化する体験型の授業です。

全6回の流れ:変化を導く構成とテーマ

この授業は全6回の構成で、各回にテーマとケースが割り当てられています。主な流れは次の通りです。

Day1〜2:理想のリーダー像を描く

  • テーマ:「創造と変革の場で求められるリーダーシップ」
  • ケース:「スタディコーポレーション 岸田悟など」

Day3:360度評価で自分を診断する

  • テーマ:「自己観照とリーダーシップ行動」
  • ケース:「リーダーシップ行動調査 フィードバックレポート

Day4〜5:価値観・倫理観と対峙する

  • テーマ: 「自己観照による価値観・倫理観の認識」
  • ケース:「大洋広告社」 「SANYO-CYPの労災対応」など

Day6:自分の変化を形にする

  • テーマ:「リーダーシップ開発プランの策定」
  • 実施内容:ワークショップ形式での自己開発プラン発表・相互フィードバック

このように、学習内容は「自分の変化に必要なことは何か」を探り、実行可能なプランへと落とし込む設計になっています。

360度評価×ケースメソッド:内省と気づきを引き出す仕組み

自己を客観視する360度評価

この科目の最大の特徴は、日常の実務では極めて得難い「客観的な自己理解の機会」を意図的に提供する点にあります。なぜなら、普段、自分の行動や価値観について、多角的なフィードバックを通じて客観視する機会を得ることは難しいためです。

その中心となるのが、受講前に行われる「360度評価」です。これは、職場の上司・部下・同僚といった多角的な立場から、受講生のリーダーシップ行動について匿名で率直なフィードバックを受け取り、他者の視点を把握する仕組みです。

この多面的な評価により、普段気づきにくい自分の強みや、他者との認識のギャップが鮮明に浮かび上がります。本評価は、自身の価値観や行動様式を見直すための、内省の強力な出発点となります。

他者との対話が深める自己理解

授業内では、価値観や倫理観に関わるケースについて小グループでの対話を重ねます。
正解のない問いに対して、受講者同士が考えをぶつけ合いながら深めていくことで、他者理解と自己理解の両方が進みます。
また、最終的に自己開発プランとを設計し、実務への転用を意識した内容に落とし込みます。

受講者の声に見る「内省の力」

「最終日の振り返りの時間で、自分には“前進する力”が足りなかったと気付きました。無力感を手放し、自信を持つことの大切さを理解できたことで、自分の志が明確になったと実感しています」

「360度評価を通じて、自分の行動や価値観を客観視できました。この経験を通して、職場にもフィードバック制度を取り入れ、今も継続しています。自己理解を促す仕組みとして非常に有効だと感じています」

本科目では一人ひとりが自己変革を体感し、学びを実務に還元できる構造が用意されています。
学生の声は、内省を通じて「志が明確になる」といった内面の大きな変化(自己変革の体感)から、客観的な自己理解を基に「職場に新しい制度を導入する」といった具体的な行動の変化(実務への還元)まで、学びが自己変革の実現に直結していることを示しています。

まとめ:リーダーの「軸」は内省から始まる

「リーダーシップ開発と倫理・価値観」は、知識やスキルを学ぶだけでなく、「自分とは何者か」「何のためにリーダーシップを発揮するのか」を掘り下げる科目です。
360度評価という客観的視点と、対話による主観的な気づきの往復運動が、変化への準備を整えます。

変革を牽引するリーダーはもちろん、リーダーでなくとも、組織において仕事で成果を出す上で、必要なのはぶれない「軸」です。
この軸は、日々の仕事の中で育ちますが、その原点を見つける場として、本科目は多くの学びを提供してくれるはずです。

本橋敦子

グロービス コンテンツオウンドメディアチーム

大学卒業後、全国紙の記者として10年勤務。仙台支局で事件・事故、裁判、行政、スポーツ、東日本大震災の被災地を取材したほか、異動後の東京経済部では流通・小売り、通信、フェムテックなどをテーマに執筆した。現在はグロービスにて、オウンドメディア「GLOBIS学び放題×知見録」の編集等を担当。