GLOBIS Articles

  • テクノロジー
  • イノベーション
  • 先進事例
  • クラブ活動
  • イベント

投稿日:2019年09月02日

投稿日:2019年09月02日

日本の農業を活性化し日本の食文化を守りたい――グロービス経営大学院・公認クラブ「農業ビジネスの会」 幹事インタビュー

クラブ活動
「農業ビジネスの会」活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。

アグリテック(農業「Agriculture」と技術「Technology」を組み合わせた造語)などの新たな農業ソリューションが話題となる一方で、日本の農業は依然、課題を抱えている。2018年の農業就業人口は約175万人(農林水産省調査「農業労働力に関する統計」)と、10年前の6割を切るまでに減少。平均年齢は66.8歳で、65歳以上が占める割合は年々増加し、現在では7割近くにのぼっている。

そんな現状に危機感を持ち、農業ビジネス全般に関わる情報共有や意見交換を行っているのが、グロービス経営大学院の公認クラブ活動・農業ビジネスの会。「食べる宝石」をコンセプトにした複数品種の上質なイチゴ『ミガキイチゴ』のブランド化に成功しているGRA代表の岩佐氏(グロービス経営大学院2012年卒業)や、スマート農業(ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業)の利活用を促進するJAISA(日本農業情報システム協会)理事長の渡邊氏など、業界関係者を招いた講演会を月1回ほどのペースで開催している。人工知能研究会など他のクラブ活動との共催イベントにも積極的だ。

代表幹事の松田健一氏と、副代表幹事の平澤淳氏は、ともに実家が農家。農業が身近にあったからこそ、日本の農業が直面している課題が決して人ごとではなく、すべての人の生活に影響を及ぼすものであることを実感している。

「日本の農業を活性化させる」、ひいては「日本の食文化を守る」という命題のもとクラブを運営する両氏に、活動の目的や今後の抱負などをインタビューしたので紹介したい。また「シェア畑」などのビジネスで注目を集める株式会社アグリメディア代表の諸藤貴志氏による講演会の内容も、あわせてレポートする。

(※肩書きはインタビュー当時のものです)

農家に生まれた二人が、クラブに参加した理由

代表幹事・松田氏と副代表幹事・平澤氏はともに、グロービス経営大学院に2017年に入学。卒業生の増田憲介氏(グロービス経営大学院2018年卒業)らが2016年に立ち上げた農業ビジネスの会には、両氏とも途中から加入した。

(代表幹事:松田氏)

「僕は農家の長男として生まれましたが、当初は実家を継ごうとは思っていなかった」と語ったのは松田氏。「7年前にグロービス・マネジメント・スクール(GMS)を受講して、自分が生まれてきた意味や今後の人生を考え直したときに、自分と農業を切り離して考えることができなかったのです。農業を突き詰めながら生きていきたい、日本の農業をもっと良くしていきたい、そう考えてグロービスに入学しました。農業ビジネスの会に入ったのは、入学式で増田さんがクラブ活動を紹介していて興味を持ったのがきっかけです」

(副代表幹事:平澤氏)

以前、実家が兼業農家だったという平澤氏は、もともと「食」への関心が高かった。奥さんも食べものに強いこだわりを持っており、お子さんが生まれてからは夫婦ともにますますその意識が強くなったという。「このままだと自分自身も子どもも、日本で作られたものを食べることができなくなるのではという危機感がありました。『農業とITを絡める』という志は単科生のときから持っていたので、そこに光を当てて活動しているクラブがあると知り参加しました」

その後、二人は幹事団に加わり、増田氏の卒業のタイミングで松田氏が二代目代表幹事に就任。300名近くが在籍するクラブ活動の運営を担うこととなった。クラブ活動を通じて得られたものを、両氏は次のように語っている。

「農業に携わる人や、農業に対して志を持っている人とのつながりができたことは、やはり財産ですね。業界の第一線で活躍されている方を講演にお招きすることで、視野も広がりました」と松田氏。

平澤氏もまた、「もともと農業関連のビジネスをやりたいと思ってグロービスに入りましたが、人脈があまりなく、作らなければと思っていました。クラブ活動のメンバーや講演に来ていただいた方とつながれたことは非常に良かったです」と語った。

農業ビジネスに本気で取り組む=日本の食文化を守る

一方でクラブ活動の運営に関して課題に感じていることもあるという。これまでは講演会が主な活動だったが、メンバー間でのディスカッションや実践ベースの取り組みをもっと強化していきたいそうだ。

「農業を活性化するうえで、今はスマート農業や自動化といったソリューションがメインに語られていますが、他にもやり方があるはず。農業ビジネスに興味のある人から、農業関連のメーカーに勤めている人まで、いろいろな背景を持っている人がメンバーとして集まっているので、もっと活発に議論していきたいですね」と松田氏。

それに同意した平澤氏は、「IoTやAIの導入などコンサル的な目線でのビジネスにすぐ話が行ってしまいがちですが、根本的な解決策はそこではないということに気づきました。実家が農家だったり、農業の経験があったり、実情を知っている人たちの視点や意見を交えつつ、ビジネスの世界から農業をどう変えられるか議論していけたらと思っています」と言及した。

グロービスのカリキュラムには、実務に近い研究を行い、ビジネスプランやケース、書籍などを執筆する「研究プロジェクト」という科目があり、松田氏と平澤氏は現在同じチームで新規就農者向けのビジネスプランの立案を行っている。「ビジネスを実現させるうえでクラブ活動をうまく活用できれば」と、平澤氏は今後の展望について触れた。

「農業をうまく絡めて地方創生に向けた取り組みなど、クラブ活動内でさまざまなプロジェクトを立ち上げられるとおもしろそう」と、松田氏もまた実践に重きを置いた活動への意欲を見せた。「食文化は国を形成する重要なもの。そのベースには必ず農業があります。日本の農業を強化し活性化していくための基礎として経営を学び、農業に活かす。それができるのがグロービスであり、農業ビジネスの会はそのような方々を応援していきたいと思っています」

平澤氏も同様に「食文化」というキーワードを挙げ、日本における農業の重要性を強調した。

「今、世界はナショナリズムが高まっています。仮に今、貿易戦争が起きたら、食の多様化が進んだ日本では、今と同じ食事はできなくなるかもしれません。

そのような状況に危機感を持つべきだし、人ごとではなく日本国民全員の課題として捉えるべき。日本の食文化を守るという観点で、農業ビジネスに本気で取り組む人が増えたらと思います」

さらに農業ビジネスの会の他にも、2つのクラブ活動で幹事と立ち上げメンバーとして携わる平澤氏ならではのアドバイスも付け加えた。「グロービスに入学したら、どのクラブ活動でもいいので加入して、人脈をどんどん作ることをおすすめします。私も現在3つのクラブ活動に在籍していますが、活動を通じて得た人脈や知見は大いに役に立っています。これを活用しない手はありません」

「農業ビジネスの会」が主催する講演会のレポートはこちら

「農業ビジネスの会」とは

農業界の動向や先進テクノロジーなど、農業ビジネス全般に関わる情報の共有や意見交換を行うクラブ。講演会だけでなく、今後は実践ベースの取り組みも強化していく予定。これからの農業のありかたについて議論し、少しでも日本の農業の発展に寄与できるような場とネットワーク作りを行っています。
※現在は公認クラブとしての活動は行っていません。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。

グロービスのクラブ活動一覧はこちら

クラブ活動

「農業ビジネスの会」活動レポート