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投稿日:2018年07月19日

投稿日:2018年07月19日

有価証券報告書を見ていますか?会社の将来がわかる記載情報とは

溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員

主に上場会社が公表する有価証券報告書は、決算に関する情報が豊富に記載されています。ただ、3月決算の会社であれば有価証券報告書の提出は約3か月後の6月になるため、掲載される決算情報は提出時点では既に過去の情報です。会社の過去の業績等から将来を推測する、と言う意味では過去情報も重要な役割を果たすと言えますが、決算情報の利用者は会社の将来の業績がどうなるかがやはり気になるところでしょう。

実は、有価証券報告書には会社の決算情報以外にも多くの情報が盛り込まれています。中でも、会社の将来に関する情報が相当量も盛り込まれている点は注目に値します。今回は有価証券報告書に記載される会社の将来情報をいくつか紹介してみたいと思います。

<事業の内容のセクション>
対処すべき課題
:会社が認識している課題について説明されます。認識された課題は放置されることはまずありませんから、今後会社が重視する事業等の方向性を把握することができます。

事業等のリスク:通称「リスク情報」と呼ばれます。法規制、為替、嗜好の変化、訴訟、災害、情報管理等の会社の今後の事業運営に関する潜在的なリスク要因を把握することができます。

経営上の重要な契約等:ライセンスや特許等、事業に関する重要な契約について、その相手先、内容、対価の受取/支払、契約期間等が記載されます。契約の更新の可否によっては会社の将来の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

研究開発活動:会社の報告セグメント毎に、主な研究開発活動の内容と当期に投じられた研究開発費の情報が記載されます。どのセグメントに今後注力していくかを窺い知ることができます。

<設備の状況のセクション>
設備の新設・除却等の計画
:例えば、新設については、セグメント、会社名、所在地、設備の内容、投資予定金額(既支出額含む)、資金調達方法、時期等の情報が記載されます。今後、どのセグメントの生産を強化する方針なのか等が把握できます。

<提出会社の状況のセクション>
配当政策
:会社の配当に対する基本スタンスや目標が記載されます。1株当たり配当額を掲げる会社もあれば、最近は、連結純利益に対する割合(配当性向)を目標として掲げる会社も増えています。

また、有価証券報告書には数字よりも文字情報が多く記載されています。皆さんもぜひ、自社や同業他社の有価証券報告書を読んでみてください。いろんな気づきや発見があると思います。従業員でも知らないような情報も、意外に記載されているかもしれません。

溝口 聖規

グロービス経営大学院 教員

京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。

(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)