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新型コロナで企業活動がストップ…会社はキャッシュをいくら持つべきか?

2020年04月24日

  • 会計・財務
  • 新型コロナ
溝口 聖規 グロービス経営大学院 教員

キャッシュは言うまでもなく事業継続にとって不可欠です。キャッシュが回らなくなると倒産が待ち受けています。安定した企業活動のためには、ある程度の資金的余裕を確保するのが望ましいでしょう。特に、今回の新型コロナのように、予期せぬ経済環境の変化で企業活動が止まってしまった場合には、キャッシュを持っていることが非常に重要になります。


では、会社はどれだけキャッシュを確保しておけば良いのでしょうか。これは非常に難しい経営判断です。売上、仕入、人件費、諸経費、設備投資など様々な要因が最終的に全て現金に集約されます。キャッシュを予測するということは、換言すれば、全ての企業活動の要因を予測することに他なりません。


しかし、実際には全てが計画通りに進行することはあり得ませんので、不測の事態に備えてキャッシュに余裕を持たせることになります。

手元流動性を参考にする

キャッシュの保有量について、残念ながら一律の答えはありません。例えば、「財務安全性」だけに着目すれば、できるだけ多くキャッシュを確保するに越したことはありません。しかし、当面必要のないキャッシュまで銀行等から借り入れると金利負担が増しますし、キャッシュを寝かせると経営の効率性は悪化します。特に最近は、ROEが重視されるなど経営の効率性が問われる経営環境ですので、多すぎるキャッシュは歓迎されません。


一律の答えはありませんが、キャッシュの保有量についての目安はあります。キャッシュは、貸借対照表(B/S)では、「現金及び預金」と表示されます。また、流動資産に計上されている「有価証券」は短期運用目的で運用される証券等ですので、短期的に換金が可能です。


つまり、一般にイメージされるキャッシュは、B/Sでは「現金及び預金」と流動資産の「有価証券」の合計と考えることができます。そして、「現金及び預金」と「有価証券」の合計が売上高の何か月分に相当するかを表す財務指標を、「手元流動性」と言います。


手元流動性(月)=(現金及び預金+有価証券)÷売上高(月次)


通常の経済環境においては、一般に手元流動性は1か月が目安とされています。月中の諸経費等の支払いに備えて売上高の1か月分のキャッシュを確保しておけば、とりあえず事業継続は安全ということです。


ただし、業種等によって安全性の目安は変わります。例えば、スーパーマーケットなどのB to Cの業態で、生活必需品等で需要が安定しており、毎日の売上によるキャッシュが期待できる場合は、売上高の1ヵ月分程度のキャッシュで問題ないかもしれません。一方、B to Bの業態、例えば建設業のように売上代金の回収期間が長く、景気変動が収益へ与える影響が大きい業種では、万一に備えて2ヵ月分、3ヵ月分とキャッシュをできるだけ確保しておきたいところでしょう。


また、機動的な借り入れができるように、日頃から金融機関との関係を構築することも有効です。


しかし、現在のように新型コロナの影響がいつまで続くか見通しが立たず、経済状況の先行きに不透明感が増すと、業種を問わず、会社としては不測の事態に備えてできるだけ多くのキャッシュを確保しておきたいと思うでしょう。


先日、トヨタ(手元流動性1.5ヵ月分)、ANAHD(同2.2ヵ月分)、サイゼリヤ(同3.4ヵ月分)といった会社が、融資枠や借入金等を増加させて財務安全性の確保に努めるとの発表がありました。こうしたニュースからも現在の経済環境の厳しさが伺えます。

 


*手元流動性は、日単位で表す場合もあります。
*各社の手元流動性は、各社の直近決算発表資料から筆者が算定しました。

溝口 聖規グロービス経営大学院 教員

京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。

(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)

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