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中堅企業のCFOのあるべき姿とは――『中小・ベンチャー企業 CFOの教科書』

2020年04月27日

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嶋田 毅 グロービス電子出版 発行人 兼 編集長出版局 編集長

企業の財務面での課題責任を負うCFO

CFO(最高財務責任者:Chief Financial Officer)という言葉を聞かれた方は多いでしょう。そうした人たちはCFOという言葉にどのようなイメージを持たれるでしょうか。典型的なイメージは、CEO(最高経営責任者:Chief Executive Officer)やCOO(最高業務執行責任者:Chief Operating Officer)といった経営陣を支え、企業の財務面での課題(適切な資金調達やIR、節税など)の責任を負うというものでしょう。


事実、米国の大手企業ではCFOは通常、CEOとCOOに次ぐ企業の3番目のエグゼグティブとされ、中にはトップ並みあるいはそれ以上の給与を手にする人もいます。たとえば5年前にモルガン・スタンレーからグーグル(アルファベット)に引き抜かれたルース・ポラット氏は、2015年に合計3,065万ドル(基本給65万ドル、契約金500万ドル、制限つき株式が2,500万ドル相当)を得たと報道されました。世界でも指折りの時価総額を誇るグーグルにとっては、CFOが良い仕事をして財務面の課題を乗り越え、企業価値を高めてくれれば、3000万ドルの報酬を支払っても十分それに見合うと判断していたのです。

「パートナーCFO」――中小企業の「攻めのCFO」

一方で、もう少し身近な中小企業のCFOに期待される仕事とは何でしょうか。もちろん、財務面(資金繰り、資金調達に関する銀行などとの折衝)を統括することは同様です。それに加え、単に財務面のマネジャーとしてではなく、経理面(正確な経費処理や支払い、企業業績の素早いレポーティング、税務面でのアドバイス等々)などについても時にはプレーヤーとして行うことが求められます。


しかし、それだけでは中小企業、特にさらなる成長を志し、数年後にはIPOや大企業への売却などのエグジットを狙っている企業CFOは務まりません。そうした企業においては、CFOはさらに以下のような課題についても責任を負うべきというのが本書の著者である高森氏の主張です。


・CEOに対して経営参謀としての役割を果たす
・バックオフィス部門(コーポレイト部門)の全部門を掌握する
・成長戦略の実行を支え、企業効率(生産性)も上げていく


(より厳密には、「全体管理」「Pl/CF改善」「組織マネジメント」「事業再生・継承」「資金調達」「エグジット」「新規事業」「採用」などに携わるべきとしています)


高森氏はこうしたCFOを「攻めのCFO」あるいはプロCFOと呼び、社外取締役としてこれらの支援を行うCFOを「パートナーCFO」(プレセアコンサルティング株式会社の登録商標)としています。高森氏自身、現在5社の企業においてパートナーCFOを務めているといいます。


ちなみに我々グロービスも攻めるベンチャー企業であることを自負していますが、CFOという職種は置かずに管理本部長という職種を設けています。彼/彼女の役割は、財務、人事、総務、ITなどのコーポレイト機能を統括すること、そしてそれらの側面から戦略や企業のマネジメントに提言を行うことなどです。高森氏の言うCFO像に似ているといえるでしょう。

本書を通じて中小企業の経営を俯瞰する

さて、今回紹介する書籍『中小・ベンチャー企業 CFOの教科書』は、そうした中小・ベンチャー企業の「攻めのCFO」像を体現するうえで知っておくべき経営のエッセンスをコンパクトにまとめたものです。通常の「CFO」という言葉が入った書籍とは異なり、必然的に、人事面や戦略面にもページ数を割いている点が特徴といえます。


具体的な章立ては以下のようになっています

はじめに
中小ベンチャーの経営とCFO
全体管理
PL/CF改善
資金調達
その他の経営管理


MBAで学ぶようなフレームワークも紹介しつつ、経営者が成長の過程でぶつかるような典型的な壁についても適宜解説しています。また、冒頭にミニケースがあるので、読者は、自分だったらそこで直面する課題にいかに立ち向かうかを考えながら読むこともできます。各章末にはまとめもあるので、頭を整理しながら読むにも適しています。さらに、各章ごとに1つずつコラム(例:「経営者とのディスカッションの進め方」「コンサルティングのスキル、マインドとプロセス」など)があるのでこれも参考になります。


いきなりパートナーCFOというキャリアを志される人は稀かもしれません。しかし、そもそも正しい経営とはどのようなことなのかピンとこないというベンチャー起業家やその希望者はもちろん、そこに参画しているあるいは参画したいと考えている人々やステークホルダーにとって、中小・ベンチャー企業の経営というものを俯瞰して見てみる上でお勧めの1冊です。


中小・ベンチャー企業 CFOの教科書
著者:高森厚太郎 発行日:2020/4/25 価格:2728円 発行元:中央経済社

嶋田 毅グロービス電子出版 発行人 兼 編集長出版局 編集長

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。

グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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