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急成長する動画ビジネス~5G時代の新たなビジネスモデルとは~

2020年01月29日

  • あすか会議
  • テクノベート
  • 創造
  • 変革
  • 最先端

モデレーター

間下直晃氏 株式会社ブイキューブ 代表取締役社長CEO

パネリスト

明石ガクト氏 ワンメディア株式会社 代表取締役
伊藤博之氏 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役
柳澤大輔氏 面白法人カヤック 代表取締役CEO

※あすか会議とは

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第15回目となる2019年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,500名が浜松に集い開催しました。

動画の3つの特性と価値を理解することが、事業展開のカギ

2020年春から日本でも5Gのサービス提供が始まるということで注目を集めている動画ビジネス。5Gになると2時間の映画が数分でダウンロードできるようになる。ビジネス関係者の関心は、それにより動画ビジネスを取り巻く環境がどう動き、マーケットがどのように変化するのかということだろう。


「ひとえに『動画ビジネス』といっても領域が広すぎるので、3つのファンクションに切り分けて考えることが大切。その3つとは、インフォメーション(情報)・コミュニケーション・IP(知的財産)である」と持論を展開するのは、ミレニアル世代向けの動画制作から配信まで一括で引き受けているワンメディア株式会社代表取締役の明石ガクト氏。

「例えば、この会場にお集りの皆さんと私たちのリアルの関係は『コミュニケーション』の価値が大きい。これが事後に1時間の動画を配信しても見る人は一気に減ってしまう。おそらく書き起こし記事などの方が見る人は多いでしょう。なぜなら、『コミュニケーション』から『インフォメーション(情報)』としての価値にシフトしたからです。インフォメーションになった時点で意識すべき重要な概念があります。それは、インフォメーションパータイムといって、受け手の有する時間に対して適切な情報量を見極めること。そうして、より効率的に多くの人たちに届けること。インフォメーションの分野では、ログミーなどの書き起こし記事とイベント動画は、常に戦わなくてはならない。コミュニケーションの価値を見出している動画の代表格は、ライブ配信サービスを行うSHOWROOMや17Liveなど。これらは、配信者と視聴者間で、コメントや投げ銭などをすることで価値が生まれている。そして、初音ミクなどはまさに『IP』の価値。動画を見るフックになり、究極いえば動画の中身が面白いかは関係なく、その配信主が誰であるかが肝心で、それ自体にファンができる。その知的財産を使い、別のビジネスを展開することに儲けの柱がある。いろいろなプラットフォームがあり趣味嗜好も違うし、これらの何が儲かるかは一概には言えない」と自身もどこに軸足を置くか模索している現状を語った。


明石氏の意見に対して、国内最大級のチャット&ゲームコミュニティ「Lobi」を運営する面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏は「3つのファンクションの垣根を越え一気通貫ですべてできる、というビジネスモデルを確立しているところが、儲けられるのではないか」と述べた。

「例えば、SHOWROOMとゲームの様子を録画配信できるMirrativ(ミラティブ)を比較すると後者の方が利益構造がよい。なぜなら、SHOWROOMはもともとのIP価値はなく、外部からIP価値のあるタレントさんなどに出演料を支払ってライブ配信を行ってもらい、コミュニケーション価値として課金させその手数料が儲けとなる。ただ、それ以外は配信者の取り分となる。一方で、Mirrativは似たようなコミュニケーションで配信者が稼ぐが、アバターの存在があり稼いだお金を使ってもらえる仕組みがある。このように、構造上3つばらばらにあるファンクションの価値を、うまく組み合わせることが可能である点が優れている」


今やIPの代表格ともいえる初音ミクを世に生み出した、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役の伊藤博之氏。その爆発的ヒットの秘話を語った。

「初音ミクは今では強力なIPとなったが、初めはそうではなかった。元々は歌声を合成するソフトとして開発し、そこにビジュアルを載せた。キャラクターのオープンソースのようにライセンスを与えたことで、その作家ごとの自由な初音ミクが描かれ、パラレルな世界観が誕生した。その過程でコミュニケーションとしての価値が生まれ、みんなで初音ミクを育てたことによってIPとしての価値に昇華していった。そういった意味では、初音ミクは『人格をあえて持たせない』ところがポイントだ。制作者側が特定の人格を持たせることはよしとしていない。」


これを聞いた明石氏は、「とても腑に落ちた」と述べて、次の例をだした。


「バーチャルユーチューバーやバーチャルインスタグラマーなどが流行ってきている。彼ら彼女らは特定の人物がキャラクターを装っているから出演料がとても高い。これをビジネスにしようという発想は最近よく見受けられる。しかし、フォロワーは20万などある程度までは伸びるが、それ以降急速に飽和していく。このビジネスの限界は、先ほど伊藤さんが述べたのと逆で『特定のキャラクターを演じている』ところにある。初音ミクの場合は、色んな人がそのキャラクターになりえて構造そのものが違う。それが5Gになると更に効果を発揮するのではないか」

5Gの登場で、これからの動画の概念が変わる

「圧倒的にスピードが上がり、レイテンシー(データーの処理に伴う発音の遅延)がなくなる、という点が5Gの大きな特徴」とモデレーターの株式会社ブイキューブ代表取締役社長CEOの間下直晃氏。5Gの登場で動画業界にどのような変化が起き、何が実現できるのかをパネリストに問いかけた。

まず、5Gを語るには「ダウンロード時間が短くなった」というような話に留まらないと明石氏が指摘した。


「皆さんがなぜこの場に足を運んでリアルに参加しているかというと、映像で見たり聞いたりするよりも『解像度が高い』からだ。8Kの大画面で、5Gで通信できれば、今の現実世界との差が知覚できなくなるといわれている。」


伊藤氏は続けて、5Gによって人間が現実世界との区別がつかなくなる未来をこう予測した。

「5Gに限らず、インターネット上の情報量や通信速度、画質などが上がっていくときに、もう一度、IPが脚光を浴びてくるのではないかという期待はある。2時間の映画が3秒でダウンロードできても、価値としては新しくないし、新規ビジネスが盛り込まれる余地はあまりない。注目すべきは、映像がきれいという縦横比の解像度ではなく時間の解像度。例えば、今は1秒あたり30~60フレームで制作されている映画が1,000フレームとかになる可能性がある。そうなれば、物凄く現実と近しいものになり視聴者は錯覚するでしょう。それにVRや仮想現実の技術が加わることで、動画は見るものではなく、体験そのものになる。そこに新しい価値が出てくるのではないか」


また、コンテンツのイノベーションも期待しているという伊藤氏。


「今ここに登壇している我々の視点と皆さんの視点を、同時に体感できるようなVRが発達すれば、映像に立体感を出すことができ、鑑賞者はものすごい没入感に浸れる。5Gが下支えになって、そうしたコンテンツ制作や鑑賞するための基礎技術が、これから生まれてくるのではないか。動画という概念自体が変わるきっかけになるのが、5Gなのではないか」


3ヶ月で10万人以上の来場者が訪れる「うんこミュージアム」を手がけている柳澤氏は、うんこのIPとしての価値を語った。

「元々広告事業を手掛けており、左脳と右脳を同時に刺激することが重要と考えてきた。そこで『うんこ』という究極の右脳をなんとか左脳と掛け合わせることはできないかとずっと模索してきた。今回ミュージアムという何となく良さそうなものを組み合わせたものによって成功したんだと思う」


明石氏は、うんこ漢字ドリルなどを例に「まさにIPの取り合いをしている」と述べた上で、「うんこミュージアム」の成功要因を言及した。


「IPが作ることが一番難しく、プリミティブ(根源的)なもので、それを先取できるかが重要である。これは動画の台頭が後押ししている。1980年代は言葉が先行しており、コピーライターが流行っていた。けれど、今はインスタグラマーやインフルエンサーなどビジュアルを作れる者の方がスターとなる傾向にある。。『うんこミュージアム』という強力なビジュアルのネタもとを作った柳澤さんは素晴らしい。今後の5Gと動画の時代に生き残る秘訣がここにあると思う」

グローバルの動画マーケットでは、中国が急成長。

モデレーターの間下氏は最後に、動画やキャッシュレスなどのテクノロジーが中国に圧倒されている中、「グローバルマーケットで今後日本はどうなっていくのか」について問いかけた。


明石氏は日本の映画について言及した。


「今、となりのトトロが中国で新作として大ヒット中。これは完全にIPの価値である。世界の映画市場は7兆円で、日本はそのうちのたった2,000億円で4位となっている。それほど、日本の映画市場はグローバルニッチで且つIPの価値を生むのがうまいと思っている。日本にしかない価値や柳澤さんの『うんこミュージアム』なども世界進出を目指してほしい」


柳澤氏は「うんこ」は日本独自のIPであり、世界中のメディアが「日本はクレイジーだ」と取り上げてくれたと会場の笑いを誘った。

 

昨今の動画関連のイベントや中国製アニメ作品の内容やクオリティからも、動画マーケットにおける中国の勢いを肌で感じているという伊藤氏は、以下の見解を述べた。

「日本では昔、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーションの略)のDVDを作り、マネタイズポイントとしていたが、最近は配信権というジャンルに中国が続々と進出してきている。中国の配信プラットフォームを抱える企業が相当な額の出資をして制作にも入り、IPを買い占めている。また、中国で制作した独自アニメをあたかも日本で制作したアニメのように見せて提供するスタイルが現地では人気。また、アニソン歌手やVチューバーが参加する中国の一大イベントでは、日本人スタッフが現地へ乗り込み、制作をしている。中国では日本的なものを取り入れてビジネスにする動きがあるが、そんな中国の巨大マーケットの動きに乗ってビジネスチャンスを得ようとする日本の動きが見受けられる」


5Gサービスの開始を目前に控え、ますます盛り上がる動画業界。まだビジネスチャンスがどこにあるか分からない段階なだけに、今後の動きを注視していくべき分野と言えるだろう。

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

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