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宇宙ベンチャー新時代~新たなフロンティアの開拓者たち~

2020年01月10日

  • イベント
  • あすか会議
  • テクノベート
  • 創造
  • 変革
  • 最先端

モデレーター

石田 真康氏 A.T.カーニー株式会社プリンシパル、一般社団法人SPACETIDE代表理事兼CEO

パネリスト

岡島 礼奈氏 株式会社ALE代表取締役社長/CEO
白坂 成功氏 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
中村 友哉氏 株式会社アクセルスペース代表取締役CEO

※あすか会議とは

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第15回目となる2019年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,500名が浜松に集い開催しました。

宇宙ビジネスを切り開く「新結合」

2019年3月バージニア州にある宇宙ベンチャーOneWebが、衛星の打ち上げ成功を受けて約1400億円の資金調達を実現したのは記憶に新しい。数百億円以上することが当たり前だった衛星開発のコストも、今や数十万~数百万円台から開発が可能となり、宇宙ビジネスのマネタイズも現実的になった。宇宙関連ビジネスは、あらゆる産業を巻き込んで私たちの社会と生活を激変させる可能性を秘める。次なるブレイクスルーはいつ起こるのか、宇宙ビジネスの最前線では何が起きているのか。トップランナーたちの議論から紐解く。

モデレーターのA.T.カーニー株式会社プリンシパル石田真康氏が、「これまでJAXAやNASAなどの専門機関や大手重工メーカーの独壇場だった宇宙ビジネス。みなさんはその第一線でどのような技術的な強みをもって戦ってきたのか」と問いかけた。


「人工流れ星」を開発しエンターテインメントとデータビジネスを展開する株式会社ALE代表取締役社長/CEOの岡島礼奈氏。特殊な素材の粒を軌道上の人工衛星から宇宙空間に放出し、粒を大気圏で燃焼させることで地上からは流れ星のように見せる技術を持っている。その輝きは、最大で200km圏内で同時に楽しむことができるという。

「人工衛星から粒を放出する際の角度や速度の制御技術が自社の強みである。例えば2,000回連続放出したとしても、その速度の誤差は標準偏差で0.31%以内に納まる精巧さだ。方向においても同様で、1メートル以上離れた5センチほどの正方形の紙の的に直径1センチの粒を400回連続放出しても紙はボロボロになることはなく1つの穴に留まっている。この技術は、弊社のエンジニアがゼロから創り上げた。これらは宇宙技術というよりは、長年日本が精密加工産業で培ってきたものづくりの精神性が脈々と息づいている。100個生産するなら100個すべてに不備があってはならないという“絶対失敗できない”宇宙ビジネスに合っていた」

観測衛星によるレーダー撮影画像データ提供サービスを行う企業シンスペクティブの立ち上げメンバーであり、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の白坂成功氏も自身のビジネスについて説明した。

「通常のカメラは太陽の反射光をみてデータを取得している。それだと夜は見られないし、地球は50%以上が雲で覆われているため、太陽光に頼っていては地球の3/4はデータを得られない。その課題を解決するのが、自分で電波を出してデータ取得する合成開口レーダーの役割。われわれの強みは、合成開口レーダーを特殊な設計ノウハウを駆使して小型化し、観測できるデータ量を増やせること。これは世界で唯一の技術である。レーダーで撮れるのは画像ではなくシマシマのよく分からない反射データ。うちの会社には、それをディープラーニングで解析するテクノロジーにおいて世界でトップクラスの人材がいる。更にこれから、それらを人工衛星上でディープラーニングを実現させる予定」


東京大学大学院で航空宇宙工学専攻していた在学中、3機の超小型衛星の開発に携わりその後、株式会社アクセルスペース代表取締役CEOとなった中村友哉氏は、宇宙ビジネスの鍵は既存技術との組み合わせであり「総合格闘技」のようなものだと語る。


「突出した“宇宙技術”があるわけではなく、制御や設計、他にも機械、電気などをいかに組み合わせてシステムとして動かすか。ここに宇宙技術の難しさがある。また技術だけではなく、法律など関連するさまざまな知識や経験がなければ、ビジネスとして動かせない。我々は、衛星開発から打ち上げまでの流れを何回も経験し、多くの知見を貯めてきている。しかも、従来の衛星よりも安価で実用的」

今までにないビジネスモデルの創出

次に石田氏は、具体的なビジネスモデルやマネタイズ方法について問いかけた。中村氏は、2週間や1ヶ月毎にターゲットを撮影した写真を販売するビジネスを根底から変えたという。


「世界中で毎日撮影している画像をサブスクリプションモデルで提供し、その画像からさまざまな業界のビジネスインサイトを抽出して届けるという仕組みを2019年5月にリリースした。一日毎の変化を見られるところに価値があり、一枚ずつ購入させる仕組みはナンセンスだと考えたからだ」

 

加えて、ユーザーにとってより利用しやすいビジネスにしていきたいと語った。


「近い将来、我々のサービスをAPI化して、お客様側でデータを自動的に取得できるようにしたい。また、画像だけをエンドユーザーに直接提供するのではなく、解析サービスを付加したり、BtoBtoBスタイルで間に企業が入り、さまざまなデータと組み合わせたりして価値を高めていきたいと考えている」


岡島氏は、私たちはマネタイズが分かりやすくて速いと語った。


「私たちの事業のマネタイズ方法は2種類。1つ目は、シティプロモーションやテーマパークに人工流れ星を提供し楽しんでもらうBtoBtoCモデルで、マーケットとしてはエンターテイメントの領域。2つ目は、流れ星を流すことによって観測できる60㎞~80㎞の中間圏のデータの販売。中間圏の研究はまだまだ進んでいないが、実はこれが気候変動の肝になっている。我々は今、世界中の研究者たちとコネクションを構築していて、共同研究のドラフトを作っている最中」

ここで、モデレーターの石田氏が会場の参加者に「人工流れ星1粒いくらだったら買いますか?」と投げかけ模擬リアルファンディングを始めた。すると多くの方が興味関心を持ち1万円から100万円までで手をあげ、1,000万円出すという方までいて場が盛り上がりをみせた。会場の反応も踏まえて、岡島氏に「このような前例のないサービスに対してどのように値付けをしているのか」と尋ねた。


「基本は、仮説を立てヒアリングして検証しています。人工流れ星による体験や感動、特別感が価値だと考えているので、コストがこれくらいかかったので何円という感じよりも、人工流れ星は宝石などのラグジュアリーブランドに近い売り方なのだろうと思っている」

宇宙には未知のマーケットが拡がっている

テクノロジーの進化に伴い、政府もオープンフリーなデータを提供するなど、データの無料化が進んでいる今日。石田氏は、それを踏まえて今後は衛星から得られるデータと地上のデータ、他にもさまざまなビッグデータを統合して新たな価値を生む必要があるのではと投げかけた。


白坂氏は、グローバル市場における石油貯蔵量のモニタリングと分析を行っているオービタル・インサイトの事例をあげて、益々広がるマーケットの可能性を示唆した。

「世界中のトレンドを見ても、衛星データのみではなく何か他のデータと組み合わせて使っている。オービタル・インサイトでは、石油タンクの影の衛星データから高さを推測し、更にそこから残量を推測するという、グローバルスケールでの石油貯蔵量という前例のないデータを提供している。1つのデータから分かることではなく、データの組み合わせや連鎖を見つけることができれば、独自サービスはいくらでもできる。このように宇宙ビジネスはまだまだ可能性があり、まだ存在しないマーケットを生み出せる余地があるので、ぜひ皆さんにも参入してきてほしい」


大量のデータをいかに顧客の課題解決に活かすか。そこが事業開発の腕の見せどころだと中村氏は語った。

「世の中のビジネスは、完成された商品やサービスを『どう売るか?』を考える人が多いが、宇宙ではそれは成り立たない。なぜなら、それを使ったことがある人がいないから。あるものを売りに行こうとするのではなく、お客さんの課題を見つけてこう活用すれば解決できるのではないかと自ら発見しにいく必要がある。この事業開発までできる人材はアメリカなどを見ていても少ない。単に、衛星画像を買ってくれませんか?で買う人はいない。事業開発が得意な方がいればぜひ飛び込んできていただけたら、一気に新しいマーケットがつくれる経験ができるかと思います」


宇宙ビジネスは夢のある世界だと岡島氏も続いた。


「『人工流れ星』のように一見マネタイズが難しそうなものでも、新たなマーケットを生み出せる。そのために重要なのは、宇宙技術に偏らない幅広い知見と知識、それらを組み合わせてデータを活用する事業開発への工夫だ」

パネリストたちは口を揃えて「必ずしも宇宙分野の専門家である必要はない。むしろ宇宙以外の知識や経験を宇宙ビジネスに活かしたい人に来てほしい」と語っていたことが印象的だった。宇宙には、まだ誰も手を付けていないマーケットが無限に残されており、多様な人材との化学反応で新しい未来を創り出せる舞台が用意されている。

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

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