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ロボティクス最前線~AI×データが変える産業と社会~

2020年01月07日

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モデレーター

島田 太郎氏 株式会社東芝執行役常務 最高デジタル責任者

パネリスト

河瀬 航大氏 株式会社フォトシンス代表取締役社長
高橋 智隆氏 株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長
村田 大介氏 村田機械株式会社代表取締役社長

※あすか会議とは

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、グロービス経営大学院の在校生・卒業生および教員、各界のトップランナーが一同に会する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第15回目となる2019年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,500名が浜松に集い開催しました。

ロボティクスと人間が共存する未来

人工知能(AI)という言葉が初めて登場したとされる1956年からおよそ60年、その後実用面での応用が拡大し、今は第3次AIブームと言われている。激化する競争環境において今や最重要課題となった「AI×データの活用」と、日本の強みである「ロボティクス」。これらを活用して未来のビジネスを切り拓くために有効な視点や求められる発想とはどのようなものだろうか。


冒頭でモデレーターの株式会社東芝執行役常務 最高デジタル責任者である島田太郎氏は、パネリストらに現状のビジネスについて問いかけた。

株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授の高橋氏は、ロボットと人間が当たり前のように一緒に暮らす世の中を目指して奮闘していると語った。


 「スマホのような機能を持つ『RoBoHoN(ロボホン)』を開発してみたものの、一般の方が利用するには、まだまだ抵抗がある。機械だけなら合理的にできることが、人と関わりを持たせるとそうはいかず、関わり方の難しさを痛感している。高性能・高品質・高機能は行き着くところまできていて、良いモノを作ったからといってヒットするわけでもない。今はスマホみたいなものを作って、徐々に手足が生えてきて動いたりするのが当たり前になるとか、そんな面白さや笑いが起きるような新たな切り口を模索している」

世界初の後付け型スマートロック「Akerun(アケルン)」で注目される株式会社フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏は、「5年前の創業当初は、スマートロックという言葉が世界のどこにもなかった」とテクノロジーとアイデアの掛け合わせについて語った。


「ロボットの定義は難しいが我々は『人が鍵を開ける』という行為をリプレースし、センシングして駆動させることができるクラウド型入退室管理システムを開発した。我々のサービスはそんなに数が売れるわけではないので、単価を上げていくことにこだわっている。もともとは家庭用に売り切り3万6,000円で売っていたが、どれだけ売ってもサポート代などで日数が経つにつれてコストがかさんだ。そこで法人向けに初期費用なしで、月額1万7,500円のレンタルモデルに切り替えて展開し、今に至っている。技術はいくらでも組み合わせ出来るので、新しいアイデアを形にするセンスと事業をやり切れるかどうかが肝心」

加えて、技術的に優位性がなくても勝てると断言しイシュー(課題設定力)の重要性についても言及した。


 「私はまったく製造業の経験はなくIT・マーケティングの人間なので、製造系メンバーを新たに集め開発した。例えば、僕らは『日本中のどんなサムターン(錠のつまみ)にもフィットし自動で開閉可能なサービスを作る』という前代未聞の課題設定から始めた。こうした無謀でも仲間が面白がって集まってくるような課題設定力が大切。ソリューションを開発できれば、特許を得られる可能性もある。課題解決にどのテクノロジーを組み合わせるかを考えるには、センスがある程度必要だがこれらの力があれば、優位性のない状態でベンチャー企業が切り込んだとしても勝てると思っている」

日本産業の勝ち筋とは

社内で工場や配送センターなどの自動化ソリューションを長年開発し、製造業界や物流業界に提供してきた村田機械株式会社代表取締役社長の村田大介氏。日本の強みは「メーカーが商品を生み、顧客に販売・メンテナンスして、ロングテールで次の開発に繋げていくまでをさまざまな企業とタイアップし協働するエコシステムができ上がっているところにある」と日本産業のひと1つの勝ちパターンを語りつつ今の課題点を指摘した。

「ドイツなど海外の会社はすべてを1つの会社で完結するふしがあり、オープンイノベーションも1回で終わってしまいがち。今は日本でも三次元プリンターで図面があればすぐに製造できるため、中間の企業を中抜きにできるがこれが裏目に出ることもある。中間企業の知見や技術がブラックボックス化され、幅広い視点から皆で改善や変更していくことが難しくなる。やはり日本の製造業の強みは、開発や製造に携わる企業のレイヤーが豊かで、産業クラスターが整っていること。日本はこの関係性を改めて見直すことで、新しいアイデアが生まれるのではないか」


第3次AIブームともいわれ、すべての産業がAIとの掛け合わせで変革が求められている今日。島田氏は、「日本企業はAIとのマッチングがよく、かけ算しやすいのではないか」と投げかけ、三者にその親和性についての見識を問いかけた。


 河瀬氏は「士業だけでなく、PCで完結できる事務系の仕事は、いずれAIに置き換わるだろう。この辺のビジネスはアメリカや中国が圧倒的に強い。しかしそこから先の家事や農業、福祉など、生身の人間が行う分野では日本は、勝機を見出せるのではないか」と語った。

高橋氏は「人間が関わった瞬間に問題が起きる。それを一つずつ泥臭く解決する過程にこそ次のイノベーションがある」と述べた。その後、村田氏は日本の伝統文化の象徴でもある京都の老舗企業として、違った切り口からの意見を伝えた。


「SDGsの17項目には『文化・伝統』がない。すべて物質的な指標で、経済目標の最低限の条件としては正しいと思うが、そこに『人間らしさ』は存在しない。だから実現できたからと言って皆が幸せになれるとは限らない。我々は京都出身の企業としては文化や伝統を大事にしたい。AIに関してもツールとしてはすごく便利だが、新しい発想やビジネスモデルは、AIからは出ない。候補は出せても最後には人間が選ぶもの。それを理解した上で活用することができれば、AIは可能性を広げる心強いツールとなるはずだ」

日本から世界を凌駕するプロダクトを

ロボットの製造台数で世界1位を誇る日本。その強みを活かしたビジネスモデルを生み出すには、そして今後も日本が発展していくためには、どのように動くべきかという島田氏の問いかけに、河瀬氏は日本の役割について触れた。


「皆さんは、ロボットの製造や開発分野では日本は勝てると考える一方で、AIでは海外勢に勝てないと感じているのではないか。その状況を逆手に取り、今こそテクノロジーの組み合わせで、新しい商品やサービスを作るのが日本の役割だと思っている」


村田氏は、各社の絶対的な強みを持ちながらの協業することが大事だと改めて伝えた。


「半導体や工作機、自動車など日本は、製造業のプレイヤーが多すぎる。技術を集中して投下できないことが産業を伸ばす足かせになってきたが、恐らく数を減らすことは難しい。だから現状を活かして企業間同士の連携を進める中に、一つの可能性がある気がしている。弊社もこの分野は日本一とか、各社も世界一の分野を持ちながら、協業できたらと思う」

ロボットクリエイターとして開発を続ける高橋氏からは、日本でこそ世界を変えられるプロダクトが作れるのではと熱く語った。


「あれほど繊細で考えられたインターフェイスを持つiPhoneは、実はとても日本的なプロダクトだったと思う。そう考えれば日本からも新たなプロダクトを作れるはず。今は誰でも、どの企業でも、一つのプロダクトで世界を変えられるチャンスがある。私自身も、その成功者となるため、規模は関係なくアイデアと技術をどうインテグレートさせていくかを考えている」


これらを受けて、島田氏は「もうモノマネはやめよう」と声を揚げた。


「今の日本のIoTやインダストリー4.0などは、すべて世界のトップメーカーである米ゼネラル・エレクトロニックや独シーメンスの描いたストーリーの上にうまいこと乗せられて、モノマネしている気がする。日本は、アメリカやドイツには絶対にできないようなことをしている。それと今世の中に出てきている儲けのセオリーとを掛け合わせれば世界を凌駕できる」

世界に誇れる日本の製造技術力をどう活かして、世の中を驚かすプロダクトを生み出すか。課題設定やアイデア、企業同士の協業によって、いくらでも道は切り開ける。そんなトップランナーたちの言葉が、参加者たちの心を奮い立たせた。

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

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高橋 智隆氏株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長

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