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疑問を顕在化できれば誰でもイノベーションを興せる――横浜市の場作りに学ぶ

2019年12月05日

  • 創造
  • 変革
  • 先進事例
立石 健 横浜市経済局 成長戦略推進部長
難波 美帆 グロービス経営大学院 教員

横浜市ではイノベーション推進のため、YOXO BOX、アクセラレータープログラムなど様々なことに取り組んでいます。どんな意図があるのか。具体的な仕組みについて横浜市経済局の立石健 成長戦略推進部長にお話をうかがいました。(全2回、前編はこちら

アクセラレータープログラムで有望企業を発掘

難波:ベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」でどんなことをなさるのですか。


立石:定期的に情報発信イベントや交流会イベントを開催し、イベントを通して、事業成長を目指すスタートアップとの横のつながりを広げます。さらに、事業成長を後押ししてくれるメンターや各種専門家、ベンチャーキャピタル、投資家、支援者とのネットワークづくりも支援します。目玉となる取り組みの第1弾が、「YOXOアクセラレータープログラム」です。


難波:アクセラレータープログラムの期間は3~4カ月と聞いていますが、参加者は何社程度と考えていますか。


立石:横浜市に拠点を持つスタートアップが対象で、5~10社程度でしょうか。初年度は約半年で10社以上、次年度は年間で20社以上の参加を募ります。初回は12月から来年3月までの予定です。対面のメンタリングのほか、プレゼンテーション技術や資金調達、マーケティングなど事業開発に必要なスキル、ノウハウを提供したり、他のスタートアップとのミートアップを実施したりします。プログラムの最後に、横浜と東京で事業報告会を開催し、投資家やスタートアップとの協業を検討している大手企業の担当者の前でピッチしていただくという流れになっています。


難波:昨年の11月、米国ボストンのイノベーションエリアを訪れました。市が中心になって港湾地区の倉庫を改造して広大なぶち抜きのフロアをつくり、そこに数十社のスタートアップを入れ、アクセラレータープログラムを実施していました。プログラム期間中は、常設のラボとして場も提供していました。


立石:こちらも期間中、採択された企業にはオープンスペースにはなりますが、YOXO BOXを活動拠点として使っていただけるようにと考えています。


今後は、アクセラレータープログラムのメンターとは別に、YOXO BOX拠点のメンターやサポート企業を増やし、ベンチャー企業が「こういう企業とマッチングしたい」「こんな人の話を聞きたい」といったときに、ここで打ち合わせをするといった活用法も考えています。

単に助成金を出すのではなく、汗をかく

難波:グロービス経営大学院も横浜に常設のキャンパスが開設されます。起業を目指す学生さんと共にYOXOを使わせていただきたいです。我々も様々なアクセラレータープログラムで、スタートアップの育成に関わっています。ぜひ一緒に取り組ませていただけたらと思います。ちなみに、どんなスタートアップ企業が出てきたらいいなといった期待はお持ちですか。


立石:あまりこちらが決めないほうがいいと思いますが、やはり社会課題を解決してくれるスタートアップは歓迎ですよね。市としても一緒になって解決していきたいと思います。


難波:そのときに睨んでいる社会課題は人口減少や少子高齢化でしょうか。


立石:そうですね。日本のみならず世界の課題でもあり、裏を返せば企業にとってもビジネスチャンスですよね。日本は課題先進国でもあるので、日本でできるということは海外でも横展開される可能性は十分にあると思います。そういった課題に立ち向かえるようなスタートアップがここから出てきたらいいなと。


先日、エストニア大使館や中国の深センの企業の方も視察に来ました。海外の方からも注目いただいているようです。


難波:横浜市ということでオリジナリティを出しやすいのではと思います。横浜市にオフィスを構える大企業も参加するとか。


立石:富士ゼロックス、京セラなどみなとみらい21地区に誘致してきた企業が多く参加予定です。村田製作所の方が「横浜だったら何かできそうな気がする」と話されていて、ありがたいなと思いました。そういうワクワク感は大事ですよね。


横浜市は今年、米ニューヨークに事務所を開所しました。中国・上海市やドイツ・フランクフルト市、インド・ムンバイ市など海外8都市と姉妹・友好都市の関係にあります。そうしたつながりをうまく利用しつつ、対日投資と海外販路の開拓面でもベンチャー企業をサポートできると考えています。


難波:今、日本の大企業はシーズを探してシリコンバレーなどに行っています。反対に、海外の企業が日本に来るケースもあります。つい先日もドイツのスタートアップ企業数社から「日本企業や日本の技術と出会う場を紹介してほしい」という相談がありました。海外のスタートアップ企業も歓迎ですか。


立石:もちろんです。実は、横浜市はジェトロと経産省が手掛ける「地域への対日直接投資カンファレンス(Regional Business Conference:RBC)」に採択されています。これは、対日投資に意欲のある欧米のライフサイエンス系企業の代表を招き、市内企業とのマッチングを行うというものです。実際、今年10月に9社が来日し、マッチングを実施しています。いずれは横浜市に拠点を構えてもらうことが目標です。


難波:まさに世界に開かれた窓、横浜らしいですね。いろいろな取り組みに市が汗をかいてくれるのはありがたいですね。

疑問の顕在化がイノベーションにつながる

難波:取り組みを加速させ、今後イノベーションを興していくためにどんな人材が必要だと考えていますか。


立石:これまでの経験では、勇気をもって一歩を踏み出そうという人が集まってくると、自然と化学反応が起きてさらに前へ前へと進めるような気がします。ふとした疑問を顕在化させることができれば、誰でもイノベーションを興せると思います。こちらは一歩を踏み出す、そのきっかけづくりをさせていただくだけです。


難波:疑問を顕在化さえできれば、誰にでもイノベーションは可能である、と。名言ですね。


立石:これまで生きてきた中で、「そういえば、あのとき疑問に思ったよな」ということを引き出すところがあれば面白いんじゃないかな、と。その中で同じ疑問を持っている人たちを引き合わせると、次の動きが出てくるのではないかと期待しています。


難波:誰もが持っている原体験や原風景が引き合える場所になったらいい?


立石:ただ、話しているだけでは分かりません。この間、ここで名刺交換会を開いたのですがすごく盛り上がり、おかげで誰も帰ってくれなくて大変でした(笑)。そういう刺激を与え続けることが一番ではないかと思っています。それ以前に「ここに来れば何か面白いことができそう」と感じてもらえる場所にしないといけませんね。


難波:我々は長年、起業家を育成していますが、やはり同じモチベーションを持った人同士が集える場はとても大切だと実感しています。


立石:海外から来られたお客様には最初にこう言うんです。「みなさん、いつ来られたのですか? 横浜には『3日住めば浜っ子』という言葉があります。だから、もうみなさん浜っ子ですね。一緒にやりましょう」って。


難波:横浜はよそ者を歓迎する土地柄なんですね。この記事を読んだ人にはすぐにYOXOにGOです。我々と一緒に浜っ子になりましょう。


(文=荻島央江)

立石 健横浜市経済局 成長戦略推進部長

※肩書は公開当時のものです

難波 美帆グロービス経営大学院 教員

大学卒業後、講談社に入社し若者向けエンターテインメント小説の編集者を務める。その後、フリーランスとなり主に科学や医療の書籍や雑誌の編集・記事執筆を行う。2005年より北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット特任准教授、早稲田大学大学院政治学研究科准教授、北海道大学URAステーション特任准教授、同高等教育推進機構大学院教育部特任准教授を経て、2016年よりグロービス経営大学院。この間、日本医療政策機構、国立開発研究法人科学技術振興機構、サイエンス・メディア・センターなど、大学やNPO、研究機関など非営利セクターの新規事業の立ち上げをやり続けている。科学技術コミュニケーション、対話によるイノベーション創発のデザインを研究・実践している。


※肩書は公開当時のものです

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