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投稿日:2019年10月25日

投稿日:2019年10月25日

持株会社って何?メリットとデメリットは?

溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員

最近では、○○ホールディング、△△HD、××グループという会社名も珍しくなくなってきたように思います。このホールディングス、HD、グループという会社名は、「持株会社」という意味です。今回は、持株会社についてザックリ説明します。

持株会社の種類

持株会社とは、他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社です。企業グループの親会社と言うとイメージしやすいと思います。持株会社には、以下の種類があります。

  • 事業持株会社
  • 純粋持株会社
  • 金融持株会社

事業持株会社は、親会社である持株会社が傘下の子会社を支配しつつも自らも事業を行っている会社です。これに対して、純粋持株会社は、親会社である持株会社自身は特定の事業を営まず、もっぱら他の会社の事業活動を支配することを目的とした会社を指します。金融持株会社は、グループ傘下の会社のほとんどが金融機関である場合のみに適用される持株会社の形態です。したがって、一般の事業会社には事業持株会社と純粋持株会社が適用されます。

第二次大戦後、独禁法により純粋持株会社が禁止されたため、日本の持株会社は事業持株会社が一般的でした。1997年に金融ビッグバンの一環として独禁法が改正され、純粋持株会社が解禁されたことを契機に純粋持株会社へ移行する会社が増加しています。

純粋持株会社へ移行するメリットとデメリットは、一般的には以下が挙げられます。

純粋持株会社のメリット

■グループ全体の経営戦略の促進
親会社である純粋持株会社が特定の事業に傾倒しないため、グループ全体の視点に立った経営戦略の策定が促進されます。

■経営意思決定のスピードアップ
純粋持株会社が特定の事業から切り離され、グループ全体の経営戦略の策定や事業会社の業績管理が主たる事業となるため、グループ全体の経営意思決定のスピード化が図れます。

■事業評価・再編の効率化
傘下の事業会社を別会社とすることで、会社ごとに財務や決算が独立するため、事業の業績評価がしやすくなります。同時に、M&Aへの対応がスムーズになります。

■事業に即した人事制度
傘下の子会社を事業ごとに別会社とすることで、事業に適した人事制度等を導入することが出来ます。

純粋持株会社のデメリット

■法人維持コストの増加
会社を分割することで、例えば人事、総務、経理などの業務の重複による費用増、あるいは会社単位で発生する税金等の法人維持コストが増加します。

■グループ間のミスコミュニケーション
親会社、傘下の事業会社がそれぞれ別会社となるため、運用によっては親会社である純粋持株会社に対して事業会社の情報が適時適切に伝わらない恐れがあります。また、事業会社間の意思疎通も困難となることが考えられます。その結果、グループ全体の経営意思決定に悪影響が出ることがあります。

また、純粋持株会社の売上高は事業会社からの配当収入、経営指導料程度になるため、純粋持株会社の個別財務諸表からはグループ全体の業績を把握することは困難となります。純粋持株会社を中心としたグループ全体の業績を把握するには、連結財務諸表やセグメント情報が有効になります。

溝口 聖規

グロービス経営大学院 教員

京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。

(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)