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医療×ブロックチェーンの起業家が説く、デジタルヘルス元年の創造と変革 ――グロービス経営大学院・公認クラブ「製薬ビジネスの会」 イベントレポート②

2019年06月25日

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クラブ活動 製薬ビジネスの会 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。

前回のインタビューに続き、先日行われたグロービス経営大学院 公認クラブ活動「製薬ビジネスの会」が主催する勉強会の内容をお届けします。

ブロックチェーンにまつわる誤解

「ブロックチェーンの特長をまとめると、『改ざんできない』『ゼロダウンタイム』『取引手数料がタダ同然』『スマートコントラクト』の4つです」と前田氏。


コンピュータがひとつでも動いていれば24時間365日稼働し続けるブロックチェーンはゼロダウンタイムのサービスであり、メンテナンスなどでサービスが停止するオンラインバンキングと比較し、世界最強のネットワークではないかと言われている。P2P方式が使われているSkypeがかつて無料であったのと同じように、取引手数料は銀行にくらべて格安だ。また、ブロック内にプログラムを書き込めるビットコインとは異なる種類のブロックチェーンでは、「民泊のドアの鍵をスマホで開けた瞬間に送金」といったスマートコントラクト(契約の自動化)を実現できる。


「ビットコインはトランザクション履歴が丸見えなので、『ブロックチェーンを電子カルテなどに応用するのはまずいのでは』という声も聞かれますが、それは誤解。仮想通貨のビットコインやイーサリアム(「分散型アプリケーション(DApps)」や「スマートコントラクト」を動かすためのプラットフォーム)はパブリックチェーンと呼ばれるブロックチェーンですが、特定のネットワーク参加者によって管理されるプライベートチェーンも存在します。プライベートチェーンの代表的なプラットフォームには、HyperledgerやR3社のCordaがあります」

さらに、仮想通貨界に衝撃を与えたマウントゴックス事件にも触れた前田氏。


「マウントゴックスは仮想通貨と法定通貨を交換する取引所ですが、ハッキング被害によりビットコインと現金を消失し、経営破綻に追い込まれました。この事件やコインチェックなどの流出事件により、『ブロックチェーンは信用ならない』と思う方もいるようですが、そういうわけではありません。銀行に泥棒が入っても日本円の信用は落ちませんよね。それと同じで、ブロックチェーンのシステム自体が悪いのではなく、問題は取引所の管理体制。ここ2年くらいは金融庁が法規制を進めており、むしろ安定する方向に向かっています」


ここで参加者からあがったのは「ブロックチェーンという見えないものを信用してもらうのが難しい」という声。前田氏は、「銀行の仕組みを知らなくても銀行を信用しているように、ブロックチェーンのリテラシーがいらない時代が近いうちに来ると思います」と言及した。

ヘルスケア業界でのブロックチェーン応用例

仮想通貨以外でも、さまざまな領域で応用され始めているブロックチェーン。電子クーポン、地域通貨、不動産登記、遊休資産の活用、トレーサビリティ(商品の生産から最終消費段階までの経過を追跡可能にする仕組み)など、ブロックチェーンを応用したアプリケーションが続々と登場。先ほど触れた民泊の例をはじめ、宅配システムや電力取引でも実用化され始めている。


ヘルスケアもまた、ブロックチェーンが積極的に応用されている領域だ。前田氏からは、ヘルスケア関連のブロックチェーン企業の事例がいくつか紹介された。


たとえばHealthereumでは、患者と医師の関係性を向上させ、オペレーションや医療費の適正化を図るプラットフォームを提供。予約時間を守って来院した患者に対してトークンを発行したり、患者と医療機関が互いを評価する仕組みが導入されている。


Medicohealthでは、医師に匿名で相談ができるプラットフォームを提供。Grapevine Worldでは、個人が特定されないように医療データを分析・研究機関へ送れる仕組みを開発している。セカンドオピニオンプラットフォームを提供するHeal Pointは、多数の医師が診断の評価を行い、評価の精度などに応じてトークンを受け取るサービスを展開している。

「ヘルスケア業界は、製薬会社、病院、患者など複数のステークホルダーがいて複雑。そこをスマートコントラクト化することはとても意義があります。患者中心型の医療を目指す目的でアメリカを中心に広がっているのが、患者の医療データの財産化。検診に行くと『検査結果は研究に使用します』といった同意書にサインすることがありますが、自分のデータが誰にどこでどう使われたのかは結局不明です。そこでブロックチェーンによりデータの取引情報を記録し、実際に使われたら医療データのもともとの提供者である患者に報酬が支払われるというプラットフォームを開発する企業も登場しています」

デジタルヘルスの検討がなかなか進まないときは

最後の約20分で、ブロックチェーンの事業活用についてチームごとにディスカッションが行われた。まずは各自で「事業の特徴」「顧客」「顧客の課題」「ブロックチェーンでなければならない理由」をワークシートに書き込み、それをもとにチームで議論を進める流れだ。

ディスカッション後には、いくつかのチームによる発表の時間も設けられた。病院・薬局・個人のスマホをつなげる電子カルテ、製薬会社が患者から治験データを直接買えるプラットフォーム、治験データをブロックチェーンで記録することによる承認審査の迅速化、医薬品のトレーサビリティの確保、健康な人の検診データを予防医療に活かす仕組み…など、さまざまな案がシェアされた。

最後に、デジタルヘルス事業を推進するにあたっては、技術を学ぶ以外にも重要なことがあると前田氏はつけ加える。それは製薬業界とデジタル業界の違いを理解し、自社の戦略の意図を知ること。


「シンプルに言うと、製薬業界はアナログ。安全性が最重要なのでリスクをとることは極力避けますし、企業価値は利益、売上は価格×数量、収益の源泉は医薬品です。一方でデジタル業界は、トライ&エラーのカルチャーで企業価値はマルチプル、売上はユーザー数、収益の源泉はサブスクリプションフィーや広告、アプリダウンロードなどマルチチャネル。この違いを理解して落としどころを考えなければ、検討はなかなか進みません」


また、経営層が「デジタルヘルスをやろう」と言い出したときは、戦略の意図を汲む必要があるという。「医薬品の次の事業の柱として真剣にやりたいというパターンと、売上目標との差異を埋めるための補完としてやっておきたいというパターンがあり、両者の本気度のレベルにはかなりのギャップがあります。医薬品は当たると数百億円以上の売上に達することがあるので、デジタル事業がいきなり事業の柱と見込む向きは割と多くはないというのが印象です。ですので意図をしっかりと見極めてビジネスプランを立てることが大切です」

ヘルスケアとデジタルが交差する歴史的瞬間を迎えた現代。既存ビジネスの変革、あるいは新規ビジネスの創造を果たすチャンスはいたるところに転がっている。前田氏は「グロービスで経営を学ぶみなさんなら成功できると思っています」と、参加者へエールを送った。

「製薬ビジネスの会」とは

本クラブには、製薬企業を中心に、医療、IT、コンサルなど幅広く製薬ビジネスに関わるメンバーが400名近く在籍しております。各分野の取組み事例を共有、議論することで、既存ビジネスの変革および新規ビジネスの創造を促進するとともに、会員相互のネットワークを構築し、会員それぞれの自己実現を目指しております。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。


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